母子家庭が直面する貧困問題は、特に新型コロナウイルスの影響で深刻化しています。
離婚後、母親が子供の主な養育者となり、生活費の管理が大きな課題になることが多いです。
この記事では、母子家庭の生活費計算、公的支援、養育費請求方法、財政的ストレスを軽減するアドバイスなど、ベリーベスト法律事務所の弁護士の監修のもと、母子家庭の経済的な安定を目指すための情報を提供します。
目次
1、シングルマザー(母子家庭)の生活費の平均と内訳
まず、母子家庭の場合の生活費の平均や内訳を、実際にシミュレーションで見てみましょう。
(1)子供1人のケース
生活費は、子どもの人数や年齢、性別によって異なります。
そこで、まずはモデルケースとして、小学生程度の子どもが1人いる場合にどのくらいかかるのか、見てみましょう。
①家賃 5万円程度
子どもが小さい場合には、もう少し狭い場所に住んで家賃を節約することも可能です。
②光熱費 1万円~2万円程度
電気代やガス代です。こまめにコンセントを抜いたりして節約する方も多いですが、平均してこのくらいは必要です。
③携帯代 8千円~1万円程度(キッズ携帯含む)
いくら節約しても携帯は必要ですし、子どもにも持たせるのでこの程度の費用はかかります。
④食費 2万円~3万円程度
子どもが食べ盛りの男の子などの場合には、より多くの食費がかかります。
⑤日用品 3千円程度
⑥生命保険料 3千円程度(掛け捨て)
節約していても、自分に何かあったときのため、生命保険に加入しておく必要があります。掛け捨ての安い保険に入っても、この程度の金額にはなるでしょう。
⑦ガソリン代 1万円(通勤で使用)
通勤で車が必要なケースでは、毎月ガソリン代が必要です。
⑧給食費 4500円程度
子どもが小学校に通っている場合、給食費も必要です。
⑨美容院・化粧品など 5千円程度
⑩衣料費 6千円程度(年平均)
⑪号交際費・レジャー費 1万円程度
いかに節約をしていても、最低限の交際費はかかりますし、子どもをレジャーに連れて行くこともあります。この程度はかかると見ておきましょう。
⑫子供習い事 1万円程度
子家庭でも、なるべく子どもに不自由な思いはさせたくないものです。好きな習いごとがあったらさせてあげたいと思うのが親心ですから、習い事の費用として、1万円程度は見ておきましょう。
以上、子どもが1人の場合で、生活費の平均はだいたい15万円程度になります。子どもの性別や年齢によってはもっと多くなることもあります。
また、これ以外に、車の車検費用が8万円くらいかかりますし、自動車保険代も必要です。PTA会費や子供会の会費、冠婚葬祭費用などの臨時出費も必要なので、こうした臨時の出費も考えておかねばなりません。
(2)子供2人のケース
次に、子ども2人だとどのくらいになるのかを見てみましょう。
生活費の費目としては、子ども1人のケースと変わりませんが、人数が増えるため金額が上がります。
①家賃 6万円程度
②光熱費 1万3千円~2万円程度
人数が増えると、その分光熱費は上がることが普通です。
③携帯代 1万円~1万5千円程度(キッズ携帯含む)
子どもに携帯を与える場合、人数分の費用がかかります。
④食費 3万円~3万5千円程度
子どもの数が増えると、食費は上がります。よく食べる男の子が複数いると、食費をまかなうのが大変になります。
⑤日用品 3千円程度
⑥生命保険料 3千円程度(掛け捨て)
⑦ガソリン代 1万円程度(通勤で使用)
⑧給食費 9千円程度
給食費用は、子どもが2人だと2倍になります。
⑨美容院・化粧品など 6千円程度
⑩衣料費 8千円程度(年平均)
⑪交際費・レジャー費 1万5千円程度
レジャーの費用も、子どもの数が増えるとその分上がると考えるべきです。
⑫子供習い事 2万円程度
子どもが2人いたら、単純に習い事の費用も2倍になります。節約しても、2万円程度は必要になるでしょう。子どもが2人いると、生活費の総額は16万円~17万円程度にはなります。
(3)子供3人のケース
子どもが3人だとどのくらいの生活費がかかるのか、シミュレーションしてみましょう。
①家賃 6万円~8万円程度
子どもが3人になってくると、家族4人ですから狭い場所での暮らしは厳しくなってきます。住む地域や地方にもよりますが、このくらいはかかるでしょう。
②光熱費 1万5千円~2万5千円程度
子どもの年齢にもよりますが、この程度はかかると考えましょう。
③携帯代 1万5千円~2万円程度(キッズ携帯含む)
子どもに携帯を与えると人数分の費用がかかります。節約するため、子どもが小さい場合には携帯を渡さないという教育方針もあり得ます。
④食費 3万5千円~4万円程度
子どもの数が増えると、食費は上がります。成長期の男の子が3人もいたら、節約は難しくなってくることがあります。
⑤日用品 5千円程度
⑥生命保険料 3千円程度(掛け捨て)
⑦ガソリン代 1万円程度(通勤で使用)
⑧給食費 1万3千円程度
給食費用は、子どもが3人だと3倍です。
⑨美容院・化粧品など 6千円程度
⑩衣料費 1万円程度(年平均)
子どもにも服が必要ですから、人数が増えると被服費も上がります。
⑪交際費・レジャー費 2万円程度
レジャーの費用も、子どもの数が増えるとその分上がります。
⑫子供習い事 2万5千円~3万円程度
子どもが多いと、習い事の費用が相当かさんでしまいます。習い事は最低限にして、費用がかからないものを探すなどの工夫も必要になってくるでしょう。
以上、子どもが3人いると、生活費は20万円以上かかってくることも普通です。
他にも、子どもがケガや病気などで入院した場合には、突如医療費などもかかってしまう可能性があります。
2、母子家庭等が受けられる公的扶助(手当)や優遇措置
母子家庭では、自分だけの収入で生活をまかなうのは難しいので、公的支援を検討する必要があります。以下で、どういった支援や優遇制度があるのか、確認していきましょう。
①児童手当
0歳から中学生を卒業までの子どもが対象になります。受給金額は、3歳未満の場合には月額1万円、3歳以上の場合第1子と第2子は月額5千円、第3子以降は月額1万円です。
②児童扶養手当
一人親の家庭が受けられる支援です。金額は、所得に応じて変わりますが、基本の額は4万円~5万円程度です。所得制限があります。
③児童育成手当
子どもが18歳になるまで(高校生卒業まで)のひとり親家庭が対象で、子ども1人について月額1万3500円の支給を受けられます。所得制限があります。
④特別児童扶養手当
子どもに障害がある場合に支給される手当です。1級の場合には5万円程度、2級の場合には3万3千円程度となります。所得制限があります。
⑤遺族年金
夫と死別した場合には、遺族年金を受けとることができます。
⑥ひとり親家庭の住宅手当
20歳未満の子どもがいるひとり親家庭で、月額1万円を超える家賃を負担している場合、市町村から助成金を受けられます。
⑦生活保護
自力ではどうしても生活出来ない場合には、生活保護を受けることも可能です。
⑧ひとり親家族の医療費助成制度
ひとり親の場合、市町村から医療助成を受けることができます。所得制限があります。
⑨国民年金・国民健康保険の免除
所得が少なく支払いが困難な場合、免除や減額してもらうことができます。
⑩交通機関の割引
ひとり親の場合、電車やバスなどで割引を受けられるケースがあります。
⑪粗大ごみ等処理手数料の減免
⑫上下水道の減免
ひとり親世帯が児童扶養手当を受給している場合、水道代を減免してもらえることがあります。
⑬保育料の減免
3、母子家庭等が受けられる公的貸付制度
母子家庭でどうしてもお金が足りないときや、子どもを学校に通わせるためにどうしてもお金が必要な場合、自治体から貸付を受けられる母子福祉資金貸付制度があります。保証人を立てると無利子、立てない場合にも低金利で借り入れができるので、普通に借金をするより有利です。
借入出来る金額は子どもの年齢や状態(自宅通学か自宅外通学か)などによって変わり、返済期間は3年から20年です。詳細は、自治体に問い合わせましょう。
4、母子家庭になった理由別の平均収入
それでは、母子家庭の平均収入はどのくらいになっているのでしょうか?母子家庭全体の平均と、母子家庭になった理由別の平均を見てみましょう。
(1)母子家庭全体の平均収入
まず、母子家庭全体の平均収入を確認します。
平成23年における厚生労働省の統計資料によると、母子家庭の収入は平均223万円です。ここには各種の補助や養育費などの金額も含まれているため、純粋に母親の就労による収入に限ると、平均は181万円に下がります。
仕事をしているシングルマザーの割合は80.6%ですが、正社員の割合となると39.4%に下がります。これに対しパートやアルバイトが47.4%となっており、シングルマザーの収入は、低い上に不安定であることがわかります。
(2)理由別の母子家庭の収入
母子家庭になった理由別に見ると、平均収入は以下の通りです。
①離婚
離婚は、母子家庭になった理由で最も多いものです。全体の80.8%の母子家庭は、離婚によって生まれています。
離婚が原因の母子家庭の平均収入(就労収入)は、175万円です。母子家庭全体の平均である181万円より少し少ない数字です。
②死別
死別によって母子家庭となる割合は、全体の7.5%であり、比較的少ないです。この場合の平均就労収入は256万円となっており、母子家庭全体の就労収入である181万円より大幅に高い数値です。夫と死別して母子家庭になった場合には、比較的高い収入を得られる人が多いことがわかります。
③未婚の母のケース
未婚のまま子どもを産んで母子家庭になったケースは、全体の7.8%で、死別のケースと同じくらいあることがわかります。
未婚の母の平均就労収入は、160万円となっていて、非常に低いです。これは、未婚の母の場合、年齢が若く、就労前(社会に出る前)に子どもを産んでしまう例なども多いことが関係していると考えられます。
以上のように、母子家庭で最も多い原因である「離婚」では、年間収入がたった175万円です。これを12ヶ月で割ると、1ヶ月に使える生活費は145,800円程度です。
母子家庭の平均生活費が15万円~20万円として、ぎりぎりか足りない数字になっています。特に、子どもが多い場合には不足することが必至です。
5、母子家庭の生活費が苦しい…養育費のもらい方
母子家庭でも父親が生きている場合、相手に対して養育費を請求することができます。
離婚した場合でも未婚のまま母親になった場合でも可能ですが、その方法が異なるため、以下では分けて説明します。
(1)離婚の場合
まず、離婚の場合、相手に直接連絡をして、養育費を支払ってくれるよう、要求しましょう。相手が支払いに応じない場合には、家庭裁判所で「養育費調停」を申し立てると良いです。
養育費調停では、調停委員が間に入って話を進めてくれて、相手の説得もしてくれるので、相手と合意しやすくなりますし、相手がどうしても支払いに応じない場合には、「審判」という手続きに移行して、裁判所が相手に支払い命令を出してくれます。相手が審判内容に従わない場合には、給料を差し押さえることも可能です。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
(2)未婚の場合
未婚のままシングルマザーとなり、相手に養育費を請求する場合には、まずは相手に「認知」をしてもらう必要があります。認知とは、法律的に父子関係を明らかにすることです。
相手が認知に応じてくれる場合、役所に認知届を提出してもらうと手続きができます。
これに対し、相手が認知に応じない場合には、家庭裁判所で、「認知調停」をしなければなりません。調停で相手が認知に応じたら、父子関係が確認されるのですが、調停でも相手が認知しない場合、「認知訴訟」という裁判が必要になってしまいます。
認知訴訟では、DNA鑑定などをして、父子関係を確認します。これにより、裁判所が判決で認知の決定をしてくれます。これで、ようやく認知ができて、子どもと相手の父子関係が確定します。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
その上で、相手に養育費の請求をします。相手が任意に支払いに応じない場合には、離婚でシングルマザーになったケースと同様、家庭裁判所で「養育費調停」をします。調停で相手が養育費の支払いに応じない場合には、やはり審判になって、裁判所が支払い命令を出してくれます。
このように、未婚の場合、まずは認知、その後養育費請求という2つのステップが必要になります。
まとめ
今回は、母子家庭の生活費や収入、受けられる補助などについて解説しました。
確かに母子家庭の収入は低く、生活は苦しくなりがちです。受けられる公的支援はフルに受けて、父親にも責任をとらせるべく養育費の支払を請求しましょう。
今回の記事を参考にして、シングルマザーであっても、子どもと一緒に強く、賢く生きていきましょう。