交際相手との間に子供ができたものの何らかの事情で相手と結婚しない場合、未婚の母として生まれてくる子供を育てるという決断をする方もいらっしゃることでしょう。
しかし、未婚で子供を育てることに不安を抱えているという方も多いのではないでしょうか。
とくに収入面や子供への影響が不安要素になることが多いため、子供を産む前に不安要素は解消しておきたいものです。
そこで今回は、
- 未婚の母になることによるデメリット
- 未婚の母は養育費を請求できるのか
- 未婚の母がもらえる手当(支援制度)
などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
未婚の母になった後のことを事前に知っておき、子供を産む前にできる限りの準備ができるようにしておきましょう。
目次
1、未婚の母は多い?母子世帯に占める割合
未婚の母は世の中にどれくらい存在するのでしょうか?
厚生労働省では、全国の母子家庭を対象にした調査を行っています。
平成28年度では母子世帯が約123万世帯いると推定されており、その内の約11万人(8.7%)が未婚の母であるとされています。
平成15年では5.8%、平成18年で6.7%、平成23年で7.8%と未婚の母は年々増加傾向にあります。
参考:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
離婚によるシングルマザーも増加していることもあり、母子世帯に対する支援制度は徐々に拡充されてきています。
2、未婚の母になってしまう理由
未婚の母になってしまう理由にはさまざまな事情があるでしょう。自分で未婚の母になることを決意するようなケースもあれば、やむを得ず未婚の母になるようなケースもあります。
代表的な未婚の母になってしまう理由をご紹介します。
(1)父となる相手が結婚してくれなかった
未婚の母になってしまう理由で最も多いと考えられるものは、「男性が結婚してくれなかった」というものです。
交際をしていく中で予想外に妊娠した際に、女性は「妊娠を機に結婚したい」と考える方も多いでしょう。結婚をしていなくても交際している時点で多少なりとも信頼関係は生まれており、結婚の話なども出ているような場合もあるかもしれません。
しかし、実際に妊娠が発覚すると男性側は「責任を取れない」「結婚はしたくない」と考える方も少なくないようです。男性の年齢が若い場合には結婚して家族を養っていく覚悟がないことや、経済面でサポートできないことが理由に挙げられます。また、恋愛と結婚は別と考えるケースや、仕事を頑張りたい気持ち、まだ遊びたい気持ちが強くて結婚はまだしたくないと考えているようなケースもあるでしょう。
(2)結婚したくないが子供は欲しかった
未婚の母になることを女性側から希望するようなケースも少なくありません。
子供を産める年齢はある程度決まっていますし、年齢を重ねるほど出産や育児は体力的にも精神的にも辛いことが増えてしまいます。そのため、結婚はしたくないけれど子供は欲しいと考え、未婚の母を選択するようなケースもあります。女性の社会進出が進んでキャリアを積めるようになった現代だからこそ、未婚の母を選択しやすくなったと言えるでしょう。
また、交際相手に問題があって結婚したくないと考えた結果、未婚の母を選択するようなケースもあります。相手に借金やギャンブル癖がある、浮気癖がある、モラハラ気質だ、仕事が安定していないなど結婚したくないような問題があれば、結婚してもうまくいかないと考えて未婚の母を選択するようです。
(3)不倫相手との間に子供ができた
不倫相手との間にできた子供だったという理由で未婚の母になってしまうケースも少なくありません。
不倫をして子供ができたといっても、さまざまなケースが考えられます。気軽な気持ちで不倫をしていて予想外に妊娠してしまうようなケースもあれば、相手が「妻とは別れる」「別居している」などと言っていたので真剣に交際していて妊娠するようなケースもあるでしょう。また、既婚者とは知らずに騙されて交際をしていて妊娠してしまうようなケースもあります。
不倫相手との間に子供ができたとしても、相手が妻と離婚しなければ結婚することはできません。そのため、相手が離婚するつもりがなければ、やむを得ず未婚の母を選択することになってしまいます。
3、未婚の母になることで生じ得るデメリット
未婚の母になる場合、どのようなデメリットがあるのか事前に知っておくことが大切です。知っておくことで、出産前や出産後にどのような点に注意すべきか知ることができ、その注意点に対して対処するための準備ができるからです。
未婚の母になることで生じ得るデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
(1)経済的に苦しい生活となる
未婚の母になれば、子供を育てるために必要な収入を一人で稼いでいかなければなりません。
育児と仕事の両立は簡単なことではありませんし、そもそも産後に仕事を見つけることが大変だというようなケースもあるでしょう。
厚生労働省の調査によると、未婚の母の平均年間就労収入は177万円とされています。そこに生活保護や児童扶養手当など社会保障給付金や、子供の父親からの養育費など全ての収入を加えた場合でも平均年間収入は332万円と決して多くはありません。
そのため、未婚の母になるにはさまざまな制度の利用をすることや、子供の父親から養育費をもらうなど経済的なサポートを受けることに加えて、自力で収入を得ることも重要になると考えられます。
参考:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
(2)一人で子育てをしなければならない
未婚の母になるということは、一人で子育てをしなければいけないということです。子供を育てる責任を一人で背負わなければいけないことに不安を抱える方も多いでしょう。
しかし、一人で全てを抱え込む必要はありません。
親や兄弟姉妹など周囲の人たちの協力を得て子育てをする方法もありますし、周囲に頼れる人がいない場合には自治体の制度などを利用してサポートを受けることもできます。
また、既婚でも未婚でも育児に迷いが出るのことは当たり前のことです。子育てで迷いや疑問がある場合には、周囲のママ友や親などに相談してみてください。
(3)子供に寂しい思いをさせる
父親がいないことで子供に寂しい思いをさせてしまうのではないかと不安に思うシングルマザーは多いかもしれません。
子供を育てるには仕事をしなければならないため、子供と過ごす時間が減ってしまいます。そうすると、子供に寂しい思いをさせると感じてしまうでしょう。それだけに、子供と過ごす時間に十分な愛情を注いであげることが非常に重要となります。
しかし、父親がいなくても立派に育つ子供は多いですし、父親がいないことにも慣れているため子供は案外寂しいと思っていないこともあります。
(4)世間体が悪い
未婚の母は世間体が悪いため、周囲にはあまり知られたくないと考える方もいるのではないでしょうか。
未婚の母だから「苦労が多そう」「旦那がいなくて可哀そう」「不倫で身ごもったのでは」などと思われてしまうと考え、世間体が悪いと考えてしまいがちです。
しかし、世間体が悪いというのは自分の思い込みであり、周囲の人はとくに気にしていない可能性もあります。むしろ、未婚の母親であることを周囲に話しておけば、育児で困った時のサポートを受けやすいかもしれません。
4、未婚の母でも養育費を請求できる?
未婚の母として子供を一人で育てていくには経済面の苦労が予想されます。そのため、子供の父親に養育費を請求したいと考える方も多いと思います。
未婚の母でも養育費を請求することは可能なのでしょうか?
(1)相手に認知してもらえば養育費の請求が可能
結論から言えば、未婚の母でも養育費を請求することは可能です。
ただし、相手が拒否する場合に強制的に請求するためには「認知」必要になります。
認知とは、子供の父親に自分の子供であることを法的に認めてもらうことを指します。
認知されれば、子供の戸籍に父親の名前が記載され、法的な親子関係が認められます。
そして、親は子供を扶養する法律上の義務があります(民法第877条1項)。
これは母親との婚姻関係の有無に関係なく発生する義務なので、相手に養育費を請求することができるようになります。
(2)認知してもらう方法
認知してもらう方法には、「任意認知」と「強制認知」の2種類があります。
任意認知とは、父親の任意によって認知する方法です。出産前から認知することもできますが、その場合には母親の同意が必要になります(民法第783条1項)。
子供が生まれた後に認知する場合には母親の同意は不要となり、父親が認知届に必要事項を記載して役所に提出すれば子供が認知されます。
一方で、相手が認知してくれない場合には「強制認知」という方法を選択することになります。
強制認知は家庭裁判所に認知調停を申し立てることで行うことができます。
認知調停では、裁判所が選任した調停委員を介して認知するかどうかを話し合います。基本的にDNA鑑定が必要ですが、相手が認知に応じれば調停成立になります。
認知調停で不成立になった場合は、訴訟を起こすことになります。
(3)養育費を請求する方法
養育費を請求する方法は、協議もしくは裁判手続きの2種類です。
相手が認知をしていれば養育費を請求することができるため、まずは相手に支払ってもらう養育費の金額や支払い方法について当事者同士で協議を行います。
話し合いで合意に至った場合には、合意書を作成します。この合意書を公正証書で作成しておけば、将来的に約束が守られなかった場合は強制執行により相手の財産を差し押さえることができるようになります。
しかし、協議で合意が得られない場合には、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。
養育費請求調停では、裁判所に選任された調停委員が介入して養育費の支払いについて話し合いを行います。
調停で話し合いがまとまれば、調停が成立します。
しかし、調停が不成立になった場合は、審判の手続きへ移行します。審判では、調停で双方が行った主張や提出された証拠から裁判所が養育費の金額を決定します。
5、未婚の母が受け取れる手当とは
未婚の母はさまざまな公的支援を受けることができるため、あらかじめ調べておくとスムーズに手続きを行いやすくなります。
自治体によって支援内容や給付金などの金額に違いはありますが、主に「児童手当」や「児童扶養手当」「母子家庭の住宅手当」「ひとり親家庭の医療費助成制度」などの給付を受けることができます。
また、住民税や所得税、国民健康保険料、国民年金などの減額や免除、電車やバスの割引制度などもあります。
母子家庭が受けられる就業支援なども複数あるので、仕事探しや資格取得などに関するサポートも受けられます。
未婚の母が受けられる手当に関する詳細については、こちらの記事をご参照ください。
6、未婚の母の法的トラブルは弁護士に相談を
交際相手の子供を妊娠したものの、未婚の母になってしまう可能性がある場合には弁護士に相談してください。婚約破棄や、既婚者に騙されて交際していたなど未婚の母になってしまう理由によっては相手に慰謝料を請求することも可能です。また、生まれてくる子供を育てていくために父親である相手への認知や養育費請求に関する悩みも弁護士に相談することができます。
慰謝料や認知・養育費請求は、当事者同士で話し合っても相手が合意してくれるとは限りません。話し合いが進まないようなケースや、相手が無視して連絡が取れなくなってしまうケース、トラブルが大きくなってしまうようなケースもあるでしょう。
弁護士に依頼すれば請求や交渉、裁判の手続きなども全て任せることができ、相手も請求に応じる可能性が高まります。一人では解決が難しいことも多いので、まずは弁護士に相談して今後必要な請求や手続きを行うことを検討しましょう。
未婚の母に関してのQ&A
Q1.未婚の母になる場合、どのようなデメリットがありますか?
- 経済的に苦しい生活となる
- 一人で子育てをしなければならない
- 子供に寂しい思いをさせる
- 世間体が悪い
未婚の母になる場合、どのようなデメリットがあるのか事前に知っておくことが大切です。 そうすれば、出産前や出産後にどのような点に注意すべきか知ることができ、その注意点に対して対処するための準備を行えるようになります。
Q2.未婚の母でも養育費を請求できる?
未婚の母でも養育費を請求することは可能です。
ただし、相手が拒否する場合に強制的に請求するためには「認知」必要になります。
認知とは、子供の父親に自分の子供であることを法的に認めてもらうことを指します。
認知されれば、子供の戸籍に父親の名前が記載され、法的な親子関係が認められます。
そして、親は子供を扶養する法律上の義務があります(民法第877条1項)。
これは母親との婚姻関係の有無に関係なく発生する義務なので、相手に養育費を請求することができるようになります。
Q3.未婚の母が受け取れる手当とは?
自治体によって支援内容や給付金などの金額に違いはありますが、主に「児童手当」や「児童扶養手当」「母子家庭の住宅手当」「ひとり親家庭の医療費助成制度」などの給付を受けることができます。
また、住民税や所得税、国民健康保険料、国民年金などの減額や免除、電車やバスの割引制度などもあります。
母子家庭が受けられる就業支援なども複数あるので、仕事探しや資格取得などに関するサポートも受けられます。
まとめ
未婚の母になってしまうことには不安が多いかもしれませんが、日本では未婚の母をサポートするための支援制度が整いつつあります。公的支援や相談窓口を利用し、未婚の母になることへの不安を少しでも解消してください。
認知や養育費などの法的な問題に関しては、弁護士に相談してみましょう。養育費は子供を今後育てていくには必要な費用であり、認知されれば相手には支払う義務があります。一人では心細いかもしれませんが、弁護士のサポートは心強い味方になるはずです。