結婚相手に連れ子がいるケースでは、結婚時または結婚後に、連れ子と養子縁組をする場合があります。
連れ子との養子縁組は、法的にも精神的にも、家族の絆を深めることに役立ちます。
しかし、結局配偶者と離婚することになってしまった場合、連れ子との養子縁組だけが残ってしまっては不都合なことが多いでしょう。その際には、連れ子との養子縁組の解消を検討することになります。
この記事では、
- 配偶者の連れ子との養子縁組を解消する際の手続きや注意点
などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
養子縁組について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
目次
1、養子縁組解消(離縁)の効果とは?
養子縁組を解消することは、民法上「離縁」と呼ばれています。
まずは、養子縁組解消(離縁)の効果について、養親側と養子側の両面から見ていきましょう。
(1)養親側
養親側からみた、養子縁組解消(離縁)の効果は以下のとおりです。
①養育義務(扶養義務)からの解放
養子縁組をした状態では、養親・養子間には法律上の親子関係が存在します。
親子は「直系血族」の関係にありますので、民法第877条第1項により、互いを扶養する義務を負います。養子側がすでに大人になっているケースであれば、扶養義務を負うことはお互い様です。
しかし、養子がまだ子どものケースでは事実上、扶養義務は専ら養親側が負っているといえます。
そのため、離婚後も、養子を扶養するために養育費を支払う必要があります。
他方で、養子縁組を解消した場合には、養親側はこの扶養義務から解放されます。
したがって、養子縁組を解消をした場合は、配偶者との離婚後に、養子についての養育費を負担する必要はありません。
②親権の喪失
養子縁組を解消すると、養親・養子間の親子関係が消滅しますので、当然ながら養親の養子に対する親権は失われます。
(2)養子側
一方、養子側から見た養子縁組解消(離縁)の効果は以下のとおりです。
①扶養請求権の喪失
養親が扶養義務から解放されることの裏返しとして、養子は養親に対する扶養請求権を失います。
ただし、親子の扶養義務は、法律上は双方向とされています。つまり、養子は扶養請求権を失う一方で、大人になって収入を得るようになった際に養親を扶養する必要もなくなります。
②養親についての相続権の喪失
養子縁組の解消によって、養子は養親についての相続権を失います。
相続では、亡くなった被相続人の子は常に相続人となります(民法第887条第1項)。
しかし、養子縁組の解消により親子関係が消滅するため、必然的に養子側は相続権を失うことになるのです。
③苗字が原則として元に戻る
養子縁組を解消した場合、養子側の苗字は、養子縁組前のものに戻ります(民法第816条第1項本文)。
しかし、養子縁組から7年以上が経過した後に離縁した場合には、離縁の日から3か月以内に戸籍法に従った届出を行うことにより、養子は養親の苗字を再び名乗ることができます(民法第816条第2項)。
この点は、養子の選択に委ねられています。
④養親の戸籍から脱退
養子縁組を解消すると、養子は養親の戸籍から脱退します。
この場合、養子は養子縁組前の戸籍に戻るか、自分で新しく世帯主として戸籍を作るかの選択をすることが必要です。
⑤実親との親子関係に影響はない
なお、養子縁組の解消によって養親との親子関係を消滅させたとしても、養子と実親との間の親子関係に影響はありません。
そもそも養子縁組による親子関係は、実の親子関係と両立するものです。
そのため、養親と養子縁組をした後でも、実親との間の法律上の親子関係は有効に存続しています。
よって、養親との親子関係が消滅しても、実親との親子関係は以前から何も変わらず存続し続けることになるのです。
2、養子縁組を解消できる場合とは?
養子縁組を解消するための方法は、大きく①協議上の離縁と②裁判上の離縁の2つに分かれます。
一方、実親と養親が離婚したり、養親が死亡したりした場合でも、直ちに養子縁組が解消されるわけではないということに注意する必要があります。
以下では、養子縁組を解消できる場合について見ていきましょう。
(1)離縁届を役所に提出(協議上の離縁)
養子縁組を解消するためのもっともポピュラーな方法は、養親・養子間で話し合って離縁を決断する「協議上の離縁」です。
養親・養子が離縁について合意している協議上の離縁では、離縁届を役所に提出すれば離縁が完了します。
(2)養子側が離縁に同意しない場合には裁判上の離縁
一方、養親が養子縁組を解消しようと思っても、養子側がそれに同意しない場合には、協議上の離縁は成立しません。
この場合は、「裁判上の離縁」を行う必要があります。
裁判上の離縁とは、訴訟で離縁判決を得ることによって養子縁組を解消する方法です。
裁判上の離縁が認められるためには、一定の離縁事由を満たす必要があります。具体的な離縁事由などについては、次の項目で解説します。
(3)養親の離婚や死亡だけでは養子縁組は解消されない
実親と養親が離婚した場合や、養親が死亡した場合であっても、自動的に養子縁組が解消されるわけではありません。
まず、養親が離婚した場合については、養子縁組を解消するには別途離縁の手続きが必要です。
また、養親が死亡した場合については、離縁には家庭裁判所の許可を得る必要があります(民法第811条第6項)。
3、養子縁組解消の手順とは?
実際に連れ子との養子縁組を解消しようとする場合、どのような流れを辿るのか、事前にイメージを持っておきたいところです。
以下では、養子縁組を解消する際の流れ・手順について解説します。
(1)養親・養子間で離縁についての話し合いを行う
養子縁組の解消を目指す際には、まずは協議上の離縁を目指して、養親・養子間での話し合いを行うことになります。
これは、協議上の離縁の方が、裁判上の離縁よりも手続きが簡単に済むためです。
離縁の話し合いの中では、端的に「養子縁組を解消する」ということだけが合意されることもあれば、養親側から養子側に対して一定の金銭を給付するなどの条件が付けられる場合もあります。
また、養子の実親(離婚を機に離縁する場合には、養親の配偶者)が離縁に関する協議に参加し、一緒に話し合うというケースも多々あります。
特に養子が15歳未満である場合には、離縁についての協議は、養親と「養子の離縁後にその法定代理人となるべき者」との間で行うこととされています(民法第811条第2項)。
したがって、離婚を機に養子縁組を解消する場合で、養子が15歳未満のときは、離婚をしようとする夫婦の間で、離婚の協議と同時進行で離縁の協議が進められることが多いでしょう。
なおその際、養子自身が同席する必要はありません。
(2)話し合いがまとまらなければ離縁調停を申し立てる
当事者同士だけでは離縁の話し合いがまとまらない場合には、裁判所に対して離縁調停を申し立てることも考えられます。
(参考:「離縁調停」(裁判所HP))
離縁調停では、調停委員が養親・養子双方の言い分を聞き、お互いに納得できる離縁の条件などが模索・提案されます。
そして、裁判所側が示す調停案に養親・養子双方が同意すれば、調停成立により離縁が成立します。
離縁調停では、基本的には養親と養子が直接顔を合わせることなく、調停委員を介したやり取りにて手続きが進められます。
そのため、いたずらに感情的な対立を深めてしまうことなく、冷静な話し合いが期待できるでしょう。
(3)最後の手段として離縁裁判に訴える
離縁調停の場でも話し合いがまとまらない場合には、最後の手段として、裁判上の離縁を目指して離縁裁判に訴えるほかありません。
離縁裁判において離縁を認める判決がなされるためには、法律上の離縁事由として、以下のいずれかを満たす必要があります。
①相手から悪意で遺棄されたとき
②相手の生死が3年以上明らかでないとき
③その他養子縁組を継続し難い重大な事由があるとき
離婚時に、養親側から養子に対して離縁を申し入れるケースでは、上記のうち「③その他養子縁組を継続し難い重大な事由があるとき」に当たるかどうかが主に問題となるでしょう。
一般論としては、実親と養親が離婚をしたにもかかわらず、養親との親子関係が存続するというのは不自然です。
したがって、実親と養親の離婚という事実をもって、「養子縁組を継続し難い重大な事由」に該当すると判断される可能性はあるでしょう。
しかし、養子縁組が養子の幼少期から成人まで継続していたなどのケースでは、養親・養子は実の親子同然とみなされ、実親と養親の離婚だけでは離縁事由として認められないことも考えられるでしょう。
4、養親側の都合による養子縁組解消の場合、養子からの損害賠償請求は可能か?
養親が養子に対して、離婚を理由に養子縁組の解消を申し入れる場合、離縁の責任は養親側にあると判断されるようにも思われます。
実際のところ、養親側の都合によって養子縁組を解消する場合、養子から養親に対して損害賠償を請求することは可能なのでしょうか。
(1)養親側の不法行為が認められる場合もある
養子から養親に対する損害賠償請求が認められるには、養親が不法行為により離縁の原因を作ったといえるかどうかが焦点となります。
たとえば、実親と養親が離婚するケースでは、養子縁組解消(離縁)の原因は離婚であるといえるでしょう。
このとき、離婚の原因が養親側の不貞行為やDVであるようなケースでは、離縁の大元の原因を作った責任は専ら養親にあると判断されやすいでしょう。
その場合、養子は養親に対して、不法行為に基づく損害賠償請求ができる場合があります(民法第709条)
(2)和解で金銭的解決を行うこともあり得る
また、養子側が離縁について反対しているようなケースでは、養子側の歩み寄りを促すため、養親から養子に対して、解決金のような名目で金銭の給付が行われることもあります。
5、養子縁組解消に関するトラブルは弁護士へ相談を
もし配偶者と離婚をすることになり、結婚当時に養子縁組をした配偶者の子どもと離縁したいという場合には、弁護士へのご相談をおすすめいたします。
協議上の離縁に関する交渉の段階では、養子側が求めている条件などについて的確に把握し、自らの希望との間での落としどころを探ることが重要になります。
ベリーベスト法律事務所の弁護士は、法律上の規定などを踏まえたうえで、必要に応じて養子側を説得し、依頼者である養親側にとって負担が少ないかたちでの離縁実現を目指します。
また、万が一裁判などの法的手続きに移行する必要が生じた場合でも、その手続きを代理して行うことが可能です。
連れ子との養子縁組を解消したいとお考えの方は、ぜひベリーベスト法律事務所にご相談ください。
まとめ
養子縁組を解消するための方法は、大きく①協議上の離縁と②裁判上の離縁の2つに分かれます。
協議上の離縁は、養親・養子がともに同意すれば、原則としてどのような内容でも認められます。
一方、裁判上の離縁を求める場合、民法第814条第1項の規定に従い、一定の離縁事由を満たすことが必要です。
どちらのケースでも、ベリーベスト法律事務所にご相談をいただければ、依頼者の状況に応じて親身になって対応いたします。
連れ子との養子縁組を解消したいとお考えの方は、お早めに弁護士にご相談ください。