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離婚調停を取り下げるべきケースと方法:裁判での解決への切り替え

離婚調停を取り下げた方がよい3つのケースと取り下げる方法を解説

離婚調停中に「スムーズに進まないから取り下げて裁判で決着をつけたい」と考えることはあります。

しかし、離婚調停を取り下げる際には注意が必要です。この記事では、離婚調停を取り下げるべきケースや注意点、取り下げの方法について詳しく解説します。離婚問題に関わる専門家の知見を活用し、離婚調停の選択肢を検討する際の参考にしてください。

弁護士相談に不安がある方!こちらをご覧ください。

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1、離婚調停の取り下げとは?

離婚調停の取り下げとは、離婚調停の申し立てを撤回し、調停を終了させる手続きのことです。

話し合いがまとまる前に調停の手続きが終了しますので、離婚問題についての結論は何も出ないままとなります。

まずは、離婚調停の取り下げに関する基本的なことをもう少し詳しくご説明します。

(1)申立人はいつでも取り下げが可能

離婚調停の申立人(申し立てた人)は、調停が成立する前ならいつでも申立てを取り下げることができます(家事事件手続法第273条1項)。

取り下げる際に理由は必要なく、取り下げたいと思ったら自由に取り下げることが可能です。

なお、取り下げができるのは申立人だけです。相手方が取り下げることは認められていません。

(2)相手方の同意は不要

離婚調停を取り下げる際には、相手方の同意も不要です。申立人の一存で取り下げることができます。

この点、裁判(訴訟)の場合、1回でも裁判期日が開かれた後や、その前でも相手方が主張を記載した書面を提出した後には、被告(相手方)の同意がない限り訴えの取り下げが認められない(民事訴訟法第261条2項)ので対照的です。

裁判(訴訟)は、法的なトラブルについて判決による強制的な解決を図る手続きです。被告が自分の利益を守るための行動をとった以上、原告(訴えた側)の一存で取り下げることはできなくなるのです。

それに対して、調停は話し合いによる手続きであり、強制的な要素はありません。そのため、途中で取り下げても相手方に法的な不利益が及ぶことがないので、申立人は相手方の同意がなくても取り下げることが認められるのです。

(3)調停不成立との違い

離婚調停で何も結論が出ないまま手続きが終了するケースとしてもうひとつ、「調停不成立」というものもあります。

調停不成立とは、これ以上話し合いを続けても当事者が合意する見込みがないと調停委員会(裁判官と2名の調停委員)が判断した場合に、調停を打ち切って終了させる手続きのことを指します。

調停の取り下げと調停不成立の違いをまとめると、以下の表のようになります。

 

調停の取り下げ

調停不成立

打ち切りを決める人

申立人                 

調停委員会

打ち切る理由

不要(申立人の自由)

必要(当事者が合意する見込みがないこと)

打ち切るタイミング

いつでも可能

ある程度の話し合いが行われるか、話し合いを試みた後に限られる

2、離婚調停を取り下げた方がよい3つのケースとは

申立人が離婚調停を申し立てる目的は、当然ですが調停委員を介して相手方と話し合うことによって、離婚問題を解決することにあるでしょう。

それにもかかわらず、離婚調停を取り下げた方がよいケースとしては、以下の3つの場合が考えられます。

(1)調停が不利な流れで進んでいる場合

離婚調停を申し立てても、必ずしも申立人の有利に進むとは限りません。

  • 離婚や慰謝料などを請求する根拠を十分に検討できていなかった
  • 相手方からの反論に説得力があり、再反論が難しい
  • 相手方の不倫を証明できる証拠を確保できていない
  • 相手方が不倫の事実を否定する強力な証拠を出してきた
  • 調停で不利な発言をしてしまい、調停委員が相手方の味方に付いてしまった

その他にも、さまざまな原因で調停が自分に不利な流れで進むことがあります。

形勢逆転が可能な場合もありますが、難しい場合はそのまま調停を続けても時間や労力が無駄になるおそれがあります。そんなときは、いったん離婚調停を取り下げた方が得策です。

そして、自分の主張を整理して、証拠も確保した上で仕切り直し、改めて離婚協議や離婚調停を行うようにしましょう。

(2)早く離婚裁判で決着をつけたい場合

申立人が明確で説得力のある主張をして、十分な証拠を提出した場合でも、相手方が不合理な弁解に終始するために離婚調停が長引くケースもあります。調停委員も当事者に意見を押しつけることはできませんので、相手方が同意しない限り、離婚調停はまとまりません。

こんなときは、早期に離婚調停を打ち切り、離婚裁判(訴訟)に進んだ方が早く、かつ適切な条件で離婚できる可能性があります。そのために、申立人は離婚調停を取り下げることができます。

ただし、あまりにも早期に取り下げた場合は、「実質的な話し合いが行われていない」と判断され、離婚裁判(訴訟)の提起が認められない可能性もあります。したがって、ある程度は相手方の弁解に付き合うことも必要です。

どの程度話し合えば離婚裁判(訴訟)に進めるのかについては、後ほど「3」(2)で詳しく解説します。

(3)夫婦関係を修復したくなった場合

離婚調停をいったん申し立てても、その後に事情が変わったり、相手方の意見を聞いているうちに気が変わったりして、夫婦関係を修復したくなる場合もあるでしょう。

そんなときは、離婚調停を続ける意味はありませんので、取り下げるべきです。

また夫婦だけで関係修復の話し合いをするのは不安なので調停手続きを利用したいという場合は、「夫婦関係調整調停(円満)」を改めて申し立てましょう。

3、離婚調停を取り下げる前に注意すべきポイント

離婚調停を取り下げるときには、離婚裁判(訴訟)に進みたい、あるいは改めて離婚調停を申し立てて仕切り直したいなどの目的があることでしょう。

その場合には、以下の3つのポイントに注意しておく必要があります。

(1)いったん取り下げたら再度の調停はできない?

離婚調停の申し立てに回数制限はありませんし、取り下げたからといって再度の申立てが制限されるわけではありません。したがって、離婚調停をいったん取り下げても、再度の調停申立は可能です。

しかし、取り下げて間もない時期にすぐ申し立てても、事情が変わっていないため、調停委員会(裁判官と2名の調停委員)の判断で調停をしないまま手続き終了(家事事件手続法第271条)となる可能性が高いです。

再度の離婚調停で仕切り直したい場合は、少なくとも取り下げから1~2年の期間を置いてから申し立てた方がよいでしょう。

ただし、相手方が不倫していることが取り下げ後に判明した場合や、取り下げ後に新たな証拠を確保した場合など、事情が変わった場合にはすぐに申し立てても構いません。

(2)調停を取り下げた場合も離婚裁判に進める?

離婚裁判(訴訟)を起こすには、その前に離婚調停を申し立てていなければなりません(家事事件手続法第257条1項)。この原則のことを「調停前置主義」といいます。

では、離婚調停の申し立てを取り下げた場合も調停前置の要件を満たし、離婚裁判(訴訟)に進めるのでしょうか。

この点は、調停でどの程度の話し合いが行われたのかによって決まります。

調停前置主義が採用されている理由は、離婚問題という夫婦間の人間的な対立を背景としたトラブルについては、訴訟で白黒をつけるよりも、できる限り調停における話し合いによって当事者双方が納得できる解決を図る方が望ましいと考えられているからです。

すると、調停前置の要件を満たすのは、

「当事者双方が主張すべきことを主張して話し合ったにもかかわらず、合意できなかったとき」

または、

「当事者の一方に話し合う意思がないため、話し合いが成立しないことが明らかなとき」

ということになります。

実際に離婚裁判(訴訟)に進めるかどうかは、離婚の訴えを受け付けた裁判所の判断によります。調停で1~2回の期日が開かれ、話し合った後で取り下げたのであれば、ほとんどの場合は離婚裁判(訴訟)に進めます。

話し合いが行われなかった場合でも、相手方が調停の裁判所から呼び出しを2~3度受けたにもかかわらず無断欠席を続けていたような場合は、離婚裁判(訴訟)に進めます。この場合は、相手方に話し合う意思がないことが明らかだからです。

ただし、第1回調停期日に相手方が来ないからといってすぐに調停を取り下げた場合は、離婚裁判(訴訟)に進めない可能性が高いので、ご注意ください。

(3)調停取り下げ後、何年以内に離婚裁判を起こせばよい?

調停前置の要件を満たす場合には離婚裁判(訴訟)に進めますが、その前に主張を整理したり、証拠を集めたりするために時間を確保したいという場合もあるでしょう。

では、調停取り下げ(または調停不成立)後、何年以内に離婚裁判(訴訟)を起こせばよいのでしょうか。この点については法律の定めがないため、離婚の訴えを受けた裁判所の判断次第となります。

調停の取り下げまたは調停不成立から数年が経過してしまうと、夫婦間の事情が変化していることが多いため、再度調停を行わなければ調停前置の要件を満たさないと判断される可能性が高いです。

いつまでなら大丈夫ということは一概に言えませんが、できる限り半年程度以内に離婚裁判(訴訟)を起こした方がよいでしょう。

なお、調停不成立から2週間以内に離婚裁判(訴訟)を起こした場合は、離婚調停を申し立てたときに訴訟提起があったものとみなされます(家事事件手続法第272条3項)。

したがって、相手の不貞行為に対する慰謝料の時効期間(3年)が満了する前のぎりぎりの時期に離婚調停を申し立てた場合には、取り下げではなく不成立とし、2週間以内に離婚裁判(訴訟)を起こしましょう。

また、2週間以内に離婚裁判(訴訟)を起こせば、離婚調停の申立時に納めた手数料(1,200円)が離婚の訴え提起の手数料に充当されるという特典もあります。

いずれにせよ、調停終了後は早めに離婚裁判(訴訟)を起こす方が望ましいといえます。

主張の整理や証拠集めは、離婚調停を申し立てる前の段階でしっかりとやっておきたいところです。

4、離婚調停を取り下げる方法

次に、離婚調停を取り下げる方法を解説します。

(1)取下書を提出すれば手続きは完了

離婚調停の取り下げは非常に簡単で、裁判所に取下書を提出するだけです。

相手方の同意は不要なので、自分で取下書を作成して提出すれば、手続きは完了します。

(2)取下書の書き方

離婚調停の取下書は、書き方も簡単です。A4の紙に以下の事項を書くだけです。

  • 「取下書」というタイトル
  • 提出先の裁判所名
  • 申立人と相手方の氏名
  • 事件番号・事件名
  • 調停の全部または一部を取り下げる旨
  • 取下書の作成日付
  • 申立人の署名・押印(認印可)

こちらの裁判所のページで雛形と記載例をダウンロードできます。こちらをご覧になればすぐにご自身で作成できると思いますので、参考になさってください。

参考:裁判所|調停申立て取下書

5、離婚裁判に進む場合、調停の取り下げと不成立のどちらがよい?

離婚調停から離婚裁判(訴訟)に進む場合、「調停の取り下げ」と「調停不成立」のどちらがよいのかで悩む人もいるかもしれません。

しかし、結論としてどちらでも大差はありません

強いて言えば、少しでも早く調停を打ち切って離婚裁判(訴訟)を始めたいときは、調停を取り下げるとよいでしょう。

逆に、

  • 法定離婚事由がない
  • 証拠を確保できていない

などの理由でじっくりと話し合いたい場合は、裁判官や調停委員から「調停不成立」を宣告されるまで話し合うとよいでしょう。

取り下げる場合、タイミングが早すぎると調停前置の要件を満たさない可能性がありますので、不安なときは弁護士に相談し、確認してから取り下げるようにしましょう。

6、離婚調停の取り下げを考えたときは弁護士に相談を

離婚調停を取り下げようかと考えたときは、まず弁護士に相談することをおすすめします。

早く離婚裁判(訴訟)に進みたいときは、主張の整理や証拠の確保がしっかりできているかを確認する必要があります。

まだ不十分という場合でも、調停が続いている間はある程度、時間に余裕があるはずです。その間に弁護士のサポートを受けて、主張の整理と証拠の収集を進めましょう。

離婚調停が自分に不利な流れで進んでいる場合は、調停の途中からでも弁護士に依頼すれば形勢を逆転できる可能性が高まります。

逆転できなかったとしても、弁護士のサポートを受ければ再度の調停で仕切り直さなくても、離婚裁判(訴訟)に進んで、有利な条件で離婚することも期待できます。

夫婦関係を修復したくなった場合でも、調停を取り下げるかどうかや、その後の話し合いにおけるポイントについて、弁護士の専門的なアドバイスを受けることができます。弁護士に間に入ってもらって、修復に向けて話し合っていくことも可能です。

どのようなケースでも、弁護士はあなたの味方として最善のアドバイスをしてくれますので、気軽に相談してみましょう。

離婚調停の取り下げのQ&A

Q1.離婚調停の取り下げとは?

離婚調停の取り下げとは、離婚調停の申し立てを撤回し、調停を終了させる手続きのことです。

Q2.離婚調停を取り下げた方がよいケースは?

  • 調停が不利な流れで進んでいる場合
  • 早く離婚裁判で決着をつけたい場合
  • 夫婦関係を修復したくなった場合

Q3.離婚調停を取り下げる方法は?

離婚調停から離婚裁判(訴訟)に進む場合、「調停の取り下げ」と「調停不成立」のどちらがよいのかで悩む人もいるかもしれません。

しかし、結論としてどちらでも大差はありません

まとめ

離婚調停は話し合いの手続きですので、取り下げた場合も、不成立となった場合も、何も決まらないまま調停手続きが終了するだけです。その意味では、どちらの場合も申立人にとって大きなデメリットはありません。

離婚を急ぐあまり、不利な条件で無理に調停を成立させるよりは、いったん取り下げて仕切り直した方がよいでしょう。

しかし、せっかく離婚調停を申し立てたのであれば、できる限りスムーズに、かつ有利な条件で離婚を成立させたいところだと思います。

そのためには、一人で抱え込まず、弁護士の力を借りるのがおすすめです。まずは、お気軽に無料相談を利用してみてはいかがでしょうか。

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※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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