重要事項説明の注意点~失敗しないためのポイントを解説

重要事項説明

不動産購入の際には「重要事項説明」がなされます。重要事項説明については、「言葉は知っているけど難しそう」「どこに注意すればいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。実際に、重要事項説明をめぐって後からトラブルが発生してしまうことがあります。

そこで今回は

  • 重要事項説明とは何か?
  • 重要事項説明の内容
  • 重要事項説明の注意点

などについて解説します。

この記事が、不動産購入を控えている方のための手助けとなれば幸いです。

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1、重要事項説明とは?

重要事項説明とは?

まずは、そもそも重要事項説明が何かを説明していきます。

(1)重要事項説明の意義

重要事項説明とは、不動産を売買する際に、不動産会社の宅地建物取引士(宅建士)が、購入者に対して、不動産に関する重要情報について説明をするものです。
宅地建物取引業法(宅建業法)によって説明が義務付けられていますので、必ず行われることになります。

(2)重要事項説明の目的

重要事項説明の目的は買主の保護です。
買主である一般の方は、不動産を頻繁に取引することはありません。そのため、不動産会社に比べて、圧倒的に知識や経験が少ないことになります。
しかも、不動産は高価であり、不動産に何か問題があった場合に受ける損害は大きいです。買主が購入する不動産の状態や取引条件について確実に理解したうえで取引し、損害を受けないために、重要事項説明がなされます。

(3)契約書との違い

重要事項説明書は、契約書とは異なります。
重要事項説明書は、買主が重要事項を把握し、契約するかどうかを判断するための書面です。そのため、署名・捺印をしても、買主が重要事項説明を受けたことが証明されるのみで、契約そのものの証明にはなりません。

それに対して契約書は、契約後のトラブルを防ぐための書面で、売買に関する取り決めが主な内容です。
契約書があることで、売買契約を結んだことそのものが証明されます。
どちらも同じように署名・捺印するため勘違いしがちですが、位置づけが異なるものなのです。

2、重要事項説明がなされるタイミングと方法

重要事項説明がなされるタイミングと方法

次に、重要事項説明がなされるタイミングや、その方法について説明します。

(1)重要事項説明のタイミング

重要事項説明がなされるのは、「契約前」です。宅建業法でも、契約前の説明が義務付けられています。

契約成立前であればいつ行ってもよいのですが、実際には契約日に、契約を結ぶ直前になされることも多いです。
契約直前となると、説明を聞いても慎重に検討できる時間がないので、事前に書面のコピーを受け取るなどして内容を確認できるようにしておくとよいでしょう。

(2)重要事項説明の方法

重要事項説明は、宅建士が対面で書面を読み上げるかたちでなされます。この際、書面は買主に渡され、買主も書面を見ながら説明を受けます。
なお、宅建士は説明前に、「取引士証」という資格を証明するカードを提示しなければなりません。

説明が終わると、買主が書面に署名・捺印をして、内容を把握したことを示します。この書面には、宅建士の署名・捺印もなされています。

(3)重要事項説明デジタル化の動き

現在、重要事項説明をデジタル化する動きが進んでいます。
重要事項説明はこれまで対面で行われてきましたが、令和3年3月30日より、オンラインによる説明(IT重説)の本格運用が始まりました。
重要事項説明書を事前に送付していれば、テレビ会議のシステムを用いて、オンラインで重要事項説明ができるようになったのです。これにより、互いの都合の合う時間・場所で重要事項説明ができることとなり、利便性が向上しました。

また、IT重説では、書面を事前に郵送しておく必要がありますが、さらに進んで、書面を電子化する社会実験も進められています。
書面の電子化も実現すれば、IT重説とあわせてより利便性が高くなるでしょう。

3、重要事項説明の内容

重要事項説明の内容

重要事項説明に書かれている内容は、大きく分けて、売買する物件に関する情報と、取引条件に関する情報です。
マンションの場合には、追加で説明される情報があります。非常に内容が多いので、難しく感じるかもしれませんが、大まかな説明事項をつかめれば十分です。

なお、令和2年8月28日から、水害ハザードマップにおける所在地の説明が義務化されています。

(1)対象物件に関する事項

  • 登記された権利の種類、内容等
  • 都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要
  • 私道に関する負担
  • 飲用水・電気・ガスの供給・排水施設の整備状況またはその見通し
  • (未完成物件のとき)宅地造成または建物建築の工事完了時における形状、構造等
  • (既存の建物のとき)建物状況調査の結果の概要
  • (既存の建物のとき)建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存状況
  • 造成宅地防災区域内か否か
  • 土砂災害警戒区域内か否か
  • 津波災害警戒区域内か否か
  • 水害ハザードマップにおける所在地
  • 石綿(アスベスト)使用調査結果の内容
  • 耐震診断の内容
  • (住宅性能評価を受けた新築住宅のとき)住宅性能評価書交付の有無

(2)取引条件に関する事項

  • 代金、交換差金以外に授受される金額及びその目的
  • 契約の解除に関する事項
  • 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
  • (業者が自ら売主の場合)手付金等の保全措置の概要
  • 支払金または預り金の保全措置の概要
  • 金銭の賃借のあっせん
  • 担保責任の履行に関して講ずる措置の内容
  • 割賦販売に係る事項

(3)マンションの場合に必要となる事項

  • 敷地に関する権利の種類及び内容
  • 共用部分に関する規約等の定め
  • 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定め
  • 専用使用権に関する規約等の定め
  • 所有者が負担すべき費用を特定の者のみ減免する旨の規約等の定め
  • 修繕積立金等に関する規約等の定め
  • 通常の管理費用の額
  • マンション管理の委託先
  • 建物の維持修繕の実施状況の記録

4、重要事項説明で注意すべきポイント

重要事項説明で注意すべきポイント

重要事項説明の中でも、特に注意するべきポイントを解説します。

(1)対象物件に関する事項

①登記された権利の種類、内容

不動産に設定されている権利がわかります。

①―1 所有権にかかる権利に関する事項

現在の所有者のほかに権利を持っている人がいないか確認しましょう。ほかの人の権利があると、不動産を所有できなくなるおそれがあります。

①―2 所有権以外の権利に関する事項

金融機関等の抵当権が設定されているかをみます。通常は、引き渡しまでに登記が抹消されていることが条件になりますので、抹消される時期を確認しましょう。

②法令に基づく制限

主にどのような建物が建てられるかという点に注目しましょう。

②―1 都市計画区域

「市街化調整区域」だと、建物が建てにくくなります。

②―2 用途地域

どのような建物が建てられる地域なのかを示すものです。一戸建てが多いのか、マンションが多いのか、商業施設や工場があるのかといった特徴や、建てられる建物の制限を確認しましょう。

②―3 建ぺい率、容積率、高さ制限

どのような高さ、面積の建物を建てられるかを示すものです。建物の建築や建て替えを考えている場合にはよく確認してください。

②―4 敷地と道路との関係

敷地が道路に2m以上接していないと建物を建てられません。また、道路の幅が4m未満の場合には、建てる際に道路から後退(セットバック)して建てなければなりません。

③飲用水・電気・ガスの供給・排水施設の整備状況

インフラの整備状況について示されています。
整備状況だけでなく、何らかの金銭的負担が生じないかも確認しましょう。

④(未完成物件のとき)宅地造成または建物建築の工事完了時における形状、構造

契約前に不動産が完成していない場合には、完成後の状態について説明があります。完成後にトラブルが発生しないように、気になる点がないかよく注意しましょう。

⑤(既存の建物のとき)建物状況調査の結果の概要

中古の場合には、建物状況調査が実施されているかが記載されます。実施されている場合には、調査結果を確認してください。

⑥造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域の各区域内か否か、水害ハザードマップにおける所在地

災害に関する情報です。リスクが高いのか、何らかの制限がないかについて確認しておきましょう。

(2)取引条件に関する事項

①代金、交換差金以外に授受される金額及びその目的

手付金などの、売買代金以外に必要な金銭が示されています。それぞれの金銭の目的や金額を把握しておく必要があります。

②契約の解除に関する事項

契約解除が可能な条件が示されています。トラブルがあった場合に必要となる情報ですので、事前に売買契約書とあわせてしっかりと確認しておきましょう。
例えば手付解除は、法律上の原則では、買主は手付を放棄することで、売主は手付の倍額を支払うことで解除ができます。この原則をベースとして判断するとよいでしょう。

③損害賠償額の予定または違約金に関する事項

契約違反があった場合の損害賠償額や違約金についての説明です。売買契約にも書かれているもので、確実に理解しておく必要があります。売買代金の20%以内にするのが一般的です。

④金銭の賃借のあっせん

住宅ローンについての記載があります。金融機関、金額、金利といった条件が正しく記載されているかを確認しましょう。融資審査に落ちた場合には契約を解除できるとの特約も、ここに記載された住宅ローンでないと使えないので、注意してください。

(3)マンションの場合に必要となる事項

マンション購入の場合には、共用部分があるため、権利関係が複雑になります。項目が増えて大変ですが、しっかりと確認しておきましょう。

①共用部分に関する規約等の定め

エントランス、廊下、エレベーターなどの共用部分に関する定めです。管理方法などについて、規約を把握しておきましょう。

②専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定め

自分の部屋であっても、リフォーム、事務所利用、ペット飼育、楽器使用などが管理規約によって禁止されていることがあります。忘れず確認してください。

③専用使用権に関する規約等の定め

共用部分についても、トランクルーム、駐車場など、専用使用権を有する場合があります。使用できる人や、使用料金について確認しましょう。売主が駐車場を使っていても、そのまま使用できるとは限りませんので注意してください。

④修繕積立金等に関する規約等の定め、通常の管理費用の額

修繕積立金や管理費用の額などについて記載があります。購入後にも負担しなければならないものですので必ず確認してください。売主がこれらを滞納していた場合、その扱いには注意が必要です。

5、重要事項説明後に争いになったらどうする?

重要事項説明後に争いになったらどうする?

重要事項説明についてしっかりと理解したうえで説明を受け、売買契約をしたとしても、説明不足や行き違いなどから、後にトラブルが発生してしまうこともあります。

その場合、まずは相手とじっくりと話し合いをしましょう。いきなり「法的手段をとる」などと言ってしまうと、話し合いにならなくなってしまいます。

相手が話し合いに応じなかったり、納得のいく対応をしてくれなかったりした場合には、法的な手段を検討する必要があります。
不動産に関する争いは、多くの法律が関係することもあり、複雑になりがちです。専門家の手を借りるとよいでしょう。とりわけ争いが深刻な場合には、弁護士に相談して、対応を検討することをおすすめします。

まとめ

この記事では、重要事項説明の意味や内容、チェックポイントを解説してきました。

重要事項説明は、契約の前提事項を説明する、大事なものです。事前に準備して、聞き流すことなく、気になる点はしっかりと確認するようにしてください。
万が一、トラブルになってしまった場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

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