未来を前向きに考える中で、「卒婚」を検討する方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、
- 「卒婚」とは?離婚との違い
- 卒婚のための4つの準備
- 夫が卒婚を拒否した場合の対処法
について解説します。
目次
1、卒婚とは?
卒婚とは、戸籍上の婚姻関係は残したまま夫婦お互いが自由に生活することです。
お互いを扶助することなく別居の形態をとったり、同居でもお互いに干渉せずに生活することを指しています。
自由が欲しいなら離婚をすればいいのでは?と感じるかもしれません。
しかし、子どものためや世間体などでどうしても離婚は選択したくはない夫婦にはありがたい形になるでしょう。
2、離婚と違う6つの嬉しいポイントとは
卒婚の自由なイメージは離婚とどう違うのか?が気になることでしょう。
離婚とは違う嬉しい6つのポイントをご紹介します。
(1)入籍したまま
卒婚は離婚とは違い入籍したままです。
つまり婚姻関係は継続したまま自由だけを手に入れる手段と考えてください。
もちろん面倒な手続きも必要ありません。
離婚手続きをしないので、夫との話し合いでいつでも卒婚を解消して元の結婚生活に戻れることもポイント。
少しだけ自由を手に入れたいという場合には数年間限定で卒婚してみるのもありです。
(2)家族でありながらもお互いに細かな点を干渉しない
婚姻関係は継続するわけですから、卒婚しても家族であることには変わりはありません。
家族とのイベントは、今まで通り楽しむことができるのです。
それでも、卒婚したことで夫婦お互いに細かな点で干渉できなくなります。
例えば、休日に夫がだらだら寝てばかりいたとしても、干渉されずにいつまでも好きなだけダラダラできますし、お酒を好きなだけ飲むこともできるでしょう。
妻も友人と夜食事に出ても夫に干渉されることはなくなります。
数日間洗濯物を溜め込んだとしてもそれは本人の自由なのです。
(3)相続関係がそのまま
卒婚では法定相続関係がそのままです。
夫の財産の相続権は妻にあります。
離婚をすれば、長年夫婦として歩んできて夫の支えとなってきた妻であっても夫の財産の相続することができなくなってしまいます。
ですが、卒婚ならば、長年支えた夫の財産は正当に相続できるということです。
(4)居住スタイルを選択できる
離婚とは違い、同居するのも別居するのも自由です。
お互いに同意ができたなら婚姻関係はそのままに別居できる特徴も。
離婚をすれば同居のまま離婚、とは世間体もありなかなかいきませんが、当事者の意思のみで成り立っている卒婚ならば、相談次第で住居スタイルは自由に選択することができます。
卒婚の3つのスタイルを見ていきましょう。
①家庭内卒婚
いきなり別居をする経済的な自信がない方は、家庭内卒婚を選べばいいでしょう。
同居しながらもお互いに干渉せずに自由を満喫するスタイルです。
話し合いで家事の一切を別にすることもできますし、家事はするけどその報酬を夫から受け取るスタイルもありです。
②週末卒婚
週末だけ卒婚するスタイルを選ぶ夫婦もいます。
いきなり別居をして新居を構えることが難しい場合には、週末だけ一方がホテル住まいするなどの方法。気分もリフレッシュできますし、平日は普段通りの結婚生活を送るスタイル。
週末だけは自由を手に入れるという方法です。
なんだかんだ言って夫を放ってはおけないタイプや、少しだけ自由を手に入れたいタイプの妻には適したスタイルになるでしょう。
③別居卒婚
完全に生活を別にしたい場合には別居卒婚がおすすめ。
本心では離婚をしたい、住環境を夫に今まで合わせてきたなどのケースでは(夫が都会派、自分は田舎派など)、別居卒婚をすべきです。
完全に別居するわけですから、夫と顔をあわせる機会も少なく、それでも結婚している世間体は保てます。
(5)お互いに世間体を保てる
離婚と違い卒婚では、お互いに配偶者がいるという世間体は保てるのがポイント。
例えば、会社の部下の結婚式や親族の集まりの際にはお互いに合意し一緒に参加することができます。
「最近旦那さんどうしたの?」などの問いに対しても「仕事が忙しいみたい」などと配偶者の近況に答えることも。
各種書類の配偶者の欄も空欄にする必要はありません。
(6)子どもや親を傷つけない
何よりも離婚と違う卒婚のメリットは子どもや親を傷つけないことではないでしょうか。
幾つになっても両親の離婚は子どもの心を傷つけます。
また、熟年離婚をしては年老いた両親が心配するケースもあるでしょう。
3、みんなの卒婚したい理由
では、みなさんどういう理由から卒婚という形を取り入れたいのでしょうか。
ご紹介します。
(1)夫の世話から解放されたいから
子どもが巣立った場合や夫の定年退職を契機に、どうせなら夫の世話から解放されたいと感じる女性はたくさんいます。
夫が朝から晩まで家にいる場合には、会社勤めのときとは変わり、一日中世話を焼かなければいけません。
夫が在宅していれば自由に出歩くことも制約される可能性があるでしょう。
卒婚を取り入れることで夫の世話の一切から解放されます。
(2)友人などと自由に旅行を楽しみたいから
結婚生活では、自由に出歩くことも夫から制約を受けてしまいます。
友人と旅行に行くにも夫の許可が必要だったことでしょう。
しかし、卒婚することで自分だけの都合で自由に出歩くことができます。
家族の世話から解放された主婦が最初にやりたいことは、自由に出歩くことではないでしょうか。
(3)趣味や仕事に時間を忘れて没頭したいから
趣味や仕事に没頭したい方にも卒婚はおすすめ。
時間を気にせず好きなことができるので自由を満喫できるでしょう。
子育てや夫の世話があれば自由に時間を使うことはできません。
その点、卒婚で時間の自由を手に入れられるのです。
(4)自由になりたいから
当然、卒婚をしたい大きな理由は広義の意味での自由の入手です。
誰にも口出しされずに自分だけの時間を手に入れるためには、家族の世話があってはできるものではありません。
一人暮らしと、1人だけの時間を手に入れられる点で、卒婚を選択する人が増えています。
(5)ずっと我慢してきたから
(1)〜(4)の理由は、どんな妻にもあるでしょう。
しかし、卒婚をしなければこれらの自由を叶えられないのは、これまで夫が妻に、圧を加え続けていたからかもしれません。
働いてきた夫を支え、子育てもほぼワンオペでこなし、時にはパートで家計を支え、家族に尽くしてきたあなた。
または夫の仕事に付いて住居も転々とし、まともに親しい近所づきあいもできない結婚生活だったかもしれません。
家族を優先してやりたかった仕事を辞めたり、自分の希望の生活をさせてもらえなかったり・・内容はさまざまではありますが、あなたはずっと、夫に合わせてきたのではないでしょうか。
本当におつかれさまでした。
法律上も、離婚時は婚姻期間に培った財産は折半することが基本ですので、妻の支えは夫の仕事と同じレベルの偉業です。
しかし、夫がそれに気づかない。
当たり前の顔をして、なんなら自分の方が偉いかのような態度。
「卒業」という言葉は、何かをやりきったときに行われるもの。
あなたはきっと、結婚生活における自らの仕事を、やりきったと感じていることでしょう。
4、卒婚に隠された4つのリスク
良いことづくしのように感じられる卒婚ですが、実はリスクも存在します。
リスクを理解した上で卒婚には踏み切るようにしてください。
(1)離婚と違い再婚はできない
戸籍の上では夫婦ですから、卒婚を選んだ場合に再婚はできません。
もしも他に好きな人ができて再婚目的に卒婚するなら間違いです。
正式に離婚してからでないと再婚はできません。この手の方には卒婚は不向きになるでしょう。
(2)離婚ではないので恋人ができたら不貞行為となり得る
万が一卒婚で自由を手にして好きな異性ができたとしても、恋人としてお付き合いをするのは要注意。離婚していない限りは不貞行為になりえます。
もしも配偶者に事実が知られた場合には、慰謝料請求の対象になる場合も。
最悪のケースでは離婚に発展してしまいます。
そうならないためには卒婚で恋愛は自由にできるなどの取り決めをしておき、書面に残しておければ安心です。
(3)十分な生活費がないと難しい
卒婚で自由を手に入れたい場合には、十分な生活費が必要になるでしょう。
別居卒婚ならば当然家賃や光熱費、通信費など多額のお金がかかります。
週末卒婚でも週末の宿泊費用や、自由に出歩くお金は必要です。
家庭内卒婚であれ、家事の一切を放棄するならそれなりのお金は必要になるでしょう。
(4)離婚につながる危険性がある
卒婚から離婚につながるリスクはどうしても高くなります。
長期間の別居を行えば互いの愛は冷めてしまい、夫もどうして遺産を卒婚した妻に残す必要があるのか?と疑問を感じ始めます。
卒婚は初めの内は自由を満喫できることにお互い喜びを感じるかもしれません。
しかし長引くほどに他に好きな人ができたり、どうせなら離婚した方が一切のしがらみがなくなり良いのでは?と感じることもあるでしょう。
そもそも長期間の別居は、夫婦関係の破綻を意味するとされています。
きちんと、単なる別居ではなく「卒婚」なのだということを書面などに記しておかなければ、夫が離婚裁判を起こせば、離婚につながる危険性は高くなるといえます。
5、卒婚に前向きになっても良い家庭の特徴3つ
では、卒婚に前向きになっても良さそうな家庭の特徴を3つご紹介します。
うちは適してるの?と考える方、参考にされてください。
(1)妻が職に就いているか預貯金が多い
卒婚するためにはある程度のお金が必要です。
これまで夫に扶養してもらっていた主婦なら貯金を貯めておくか、職業についている方が無難でしょう。
法律上、夫への婚姻費用の請求は可能ですが、夫が支払いに合意しない場合、卒婚では裁判してまで獲得するというのはおそらく妻側も望むところではないでしょう。
卒婚を夫に申し入れるならある程度のお金は必要です。
時間ができても、お金がなくては自由を満喫できないでしょう。
(2)子どもや夫が自立した生活をしている
まだ子育てが終わっていない段階での卒婚は、自由時間があまり持てないためおすすめできません。
子どもと一緒に家を出たとしても、今まで健康だったはずの子どもの急な病気、学校でのトラブルなど、子どもの世話が一気に妻に押し寄せてきてしまいます。
できるなら子どもが独り立ちしている方が卒婚を満喫できるでしょう。
また、夫も自立した生活ができなければ、そもそも卒婚を受け入れてもらえない可能性が高いでしょう。
(3)夫に趣味などがあり自由を欲しがっている
また、卒婚は夫婦共に自由を満喫することが目的です。
ですから、妻だけではなく夫が自由を欲しがっている夫婦こそ卒婚が向いている家庭といえるでしょう。
夫に趣味があり、時間を気にせずに没頭したがっているなら卒婚を受け入れらやすくなります。
6、卒婚のための4つの準備
自分の家庭には卒婚がぴったりだと感じた方は、卒婚に向けた準備を始めた方がいいでしょう。
いきなり、卒婚しようとしても夫は困惑しますし、生活ができなくなってしまいます。
用意周到こそ卒婚には必要です。
夫婦間で卒婚についてよく話し合い話し合った内容は書面に残しておきましょう。後からのトラブルを防げます。
(1)家族の同意を得る
卒婚するためには、夫や子どもから同意をとっておきましょう。
一方の勝手な思いで卒婚はできません。
夫婦でお互いに目的を明確にし、お互いのメリットを確認してから同意してください。
(2)これからの夫婦の生活費を確認
卒婚したなら、お互いに自由を得る代わりに自分のことは自分でしなければいけません。
これまで通りに婚姻費用(生活費)を得られるケースは少ないもの。
自分の貯金や職業などをしっかり確保し卒婚してもゆとりある生活ができるように準備を進めてください。
家庭内卒婚のケースでは、家事をこれまで通りにする代わりに報酬を夫から得る方法もあります。
各家庭でどうするのかを話し合って決めていくといいでしょう。
また、夫の方から卒婚を望んでいるケースではこれまで通りに婚姻費用をもらえる可能性が高いもの。
卒婚しても生活費をもらえることをしっかり確認するといいでしょう。
(3)新居を探す
別居卒婚なら、卒婚するまでには新居を探しておいた方がスムーズです。
新居と共に生活に必要な家具・家電製品なども取り揃えておけるといいでしょう。
卒婚とは婚姻関係はそのままですから、卒婚後に夫婦で会う頻度などを決めて、その頻度に合わせた距離感の場所に新居を探すようにしてください。
今後一切理由がない限りは関わらないなどと決めているなら、遠くに引っ越しても問題ないかもしれません。
ですが、子どもを介して月に一回は会う可能性がある場合は比較的に近い距離に住んでいた方が便利といえます。
(4)お互いが病気になった場合、介護が必要になった場合にどうするのかの取り決め
卒婚は離婚とは違います。相続関係も継続するものです。
お互いに自由を満喫できる間は卒婚で満足できますが、病気や怪我などがあった場合には1人では満足できないケースもあるでしょう。
そういった事情が生じた場合には、元の結婚生活に戻るのか?それともお互いに他人として生きていくのか?ということを取り決めておければ安心できます。
卒婚はあくまでも離婚とは違うことを認識し、お互いに介護が必要になった場合なども想定して卒婚をそれでも継続するのか夫婦間で話し合っておきましょう。
7、夫が卒婚に同意しない場合には?
夫が卒婚に同意しない場合にはどのように対処すればいいのでしょうか。
お気づきかもしれませんが、卒婚は男性にはさほどメリットはなく、女性に嬉しいメリットの方が多いものです。
ですから、自立できていない夫や妻に依存傾向のある夫から同意を取るのは難しく、卒婚を望んだとしても実現できない場合もあるでしょう。
その場合には面倒でも離婚を選択するしかないかもしれません。
(1)いつでも夫からの申し入れで卒婚を解消し夫婦関係に戻れる条件をつける
もしも夫が卒婚に同意してくれない場合には、「いつでも夫からの申し入れで卒婚を解消でき夫婦関係に戻れる」と書面に残してみてください。
最初は卒婚に不安を感じた夫も安心できる可能性があります。
もしかしたら、夫も卒婚を満喫し羽を伸ばして過ごすうちに卒婚の良さを理解できる可能性があるでしょう。
ただし、約束した限りは夫からの申し入れがあれば夫婦に戻る必要があります。
(2)自分で生活費が工面できる場合は生活費はいらないと宣言する
婚姻関係は続いているわけですから、卒婚でも婚姻費用は請求できます。
ですが、夫がどうしても卒婚に同意しない場合には、「生活費は必要ありません」と宣言してみてください。
お金が要らないなら、自由をあげようと夫も納得してくれるはずです。
(3)恋人は自由に作っても良いと取り決める
卒婚したなら、お互いに恋人は自由に作っても良いと明言すれば、男性は卒婚を受け入れる可能性があります。
これまで浮気を繰り返すタイプだった男性や、浮気中の男性になら受け入れられやすい条件になるでしょう。
(4)弁護士に相談する
弁護士は、あなたの気持ちを全て受け止めます。
離婚をしない方法として夫に卒婚を提案したい場合、あなた一人では説得しきれないときは、あなたを影からサポートし、アドバイスをすることも可能ですし、また、間に入って話し合いを調整することも可能です。
8、卒婚に関するトラブルは弁護士に相談
卒婚は法律で定められている制度ではないため、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるでしょう。
そんなときには迷わずに弁護士に相談してください。
卒婚からの遺産相続に関するトラブルや、卒婚からの離婚トラブルなどに対応してもらえます。
卒婚に関するQ&A
Q1.卒婚とは?
卒婚とは、戸籍上の婚姻関係は残したまま夫婦お互いが自由に生活することです。
お互いを扶助することなく別居の形態をとったり、同居でもお互いに干渉せずに生活することを指しています。
Q2.みんなの卒婚したい理由とは?
- 夫の世話から解放されたいから
- 友人などと自由に旅行を楽しみたいから
- 趣味や仕事に時間を忘れて没頭したいから
- 自由になりたいから
- ずっと我慢してきたから
Q3.離婚と違う6つの嬉しいポイントとは?
- 入籍したまま
- 家族でありながらもお互いに細かな点を干渉しない
- 相続関係がそのまま
- 居住スタイルを選択できる
- お互いに世間体を保てる
- 子どもや親を傷つけない
まとめ
卒婚は自由を手に入れたい女性には嬉しい選択です。
これまでの人生に自分の時間がなかった女性で、でも離婚を決意できないなら、卒婚は嬉しい手段になるでしょう。
卒婚に慣れて1人で生活する自信が持てたなら、離婚を選択することもできます。
一方、自由を満喫した後にやはり、夫を愛している、放っておけないと感じたなら、いつでも結婚生活に戻れるメリットも。
離婚するほどではなく自由が欲しい方は、卒婚を選んで今後の人生を満喫していきましょう。