メルカリで現金などの違法な目的があると思われる商品の出品が相次ぎ、問題となっています。
「メルカリ」とは、個人間で不用になった物などを売買できるフリマアプリです。
なぜ、このような事態が発生しているのでしょうか。ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、メルカリに出品されている物には現金以外にもいかがわしいものが…
メルカリでは次のような物が出品されているとSNS等で話題になっています。
- 現金
- 紙幣を素材とした創作物
- ギフト券やチャージ済みの電子マネー
- パチンコの特殊景品
- 領収書
- 妊娠菌が付着したとする商品
- 女子生徒の着用済みの衣類
一見、何に使うのかよく分からずどこに違法性があるのかわからないもの、それから違法とまではいかないものの“いかがわしい”ものもあります。
また、実際に出品されていたか定かではありませんが、覚せい剤や麻薬を表す隠語を使用した出品がなされることが度々あるようです。言うまでもなく覚せい剤や麻薬の売買は犯罪であり、覚せい剤の営利目的の売買で1年以上の懲役刑、麻薬(ジアセチルモルヒネ等以外)の営利目的の売買でも1年以上10年以下の懲役刑が科せられます。このような商品が出品されているのを見かけた場合、興味本位であっても当然ながら購入してはなりません。
2、なぜ現金が額面以上の金額で出品されていたのか
(1)クレジットカードの現金化に使用されていた
以前、メルカリで現金がその額面以上の金額で取引されていることが話題になりました。その目的のひとつとして、クレジットカードの現金化が言及されていました。
クレジットカードにはキャッシング機能が付いていることが多く、現金を借り入れることができますが、もちろん無限に借りることができるわけではなく、限度額が設定されています。限度額いっぱいに借りてしまった場合は、それ以上のキャッシングができなくなります。しかし、ショッピング枠はキャッシングの限度額とは別に設定されています。
借金の返済などで、どうしても現金が必要ということもあるでしょう。しかし、キャッシングはもうできない……。そこで「ショッピング枠の現金化」というニーズが生じるのです。クレジットカードのショッピング枠を利用してメルカリで現金を購入すれば、クレジットカードの現金化ができるという仕組みです。額面以上の価格で現金が出品されていても、いますぐ現金が欲しい人にとってはそれだけのお金を払う価値があるのです。
クレジットカードの現金化は、どこのカード会社を利用していても規約違反となります。そのため、メルカリで現金や換金目的の商品を購入すると、規約違反で強制解約になる可能性があります。
強制解約となると、いわゆるブラックリストにも載せられ、利用中のクレジットカードが利用できなくなったり、新たにクレジットカードを作成することができなくなります。最悪の場合はカード会社から詐欺で訴えられる可能性もあります。現時点では、クレジットカードの現金化が明らかに違法とまでは言えない状況ですが、グレーな行為であることは間違いないでしょう。
また、現金や商品券などを出品している人のなかには、犯罪組織に関わる人物がいる可能性もあり、そのような人物に自己のクレジットカード番号や住所、氏名等の個人情報を開示することは非常に危険です。
(2)メルカリポイントの現金化にも…
次に、もうひとつの目的であるメルカリポイントの現金化について説明します。
メルカリでは、中古品が他の市場よりも高値で取引されることもあります。例えば、バザーで買ったものをメルカリに出品して購入額より高値でメルカリで転売すれば、利鞘が儲けが生出じることがあります。転売によって益を得る利鞘を稼ぐことを日常的におこない、それなりの収益を上げている人もいます。
こうして得たメルカリ上での売上は「メルカリポイント」となり、換金することやメルカリ内で商品を購入することができます。現金が欲しければ換金すればよいのですが、“換金せずに現金を得たい”と考える人もいます。換金すると銀行等の口座に入金されますが、特定の目的を持っている人にとっては口座を経由せずに収入を得るメリットがあるためです。
例えば、生活保護などの手当を受給している場合、口座の残高がチェックされ、収入が多いと支給が減額されたり打ち切られることがあります。それを避けるために、口座を経由せずに収入を得られる現金の購入というニーズが存在するのです。しかし、このような収入を隠す行為は「生活保護手当の不正受給」として、悪質であれば詐欺罪(刑法246条)に該当する刑事罰の対象となる可能性があります。
現在では現金の出品が禁止され、出品された場合は運営者が発見次第削除しています。しかし、運営者の監視の目を盗んで、現金や換金が容易な有価証券等がいまだに出品されています。1万円札を折って作った創作物や、チャージ済みのICカード、パチンコの特殊景品などがそれです。
3、面白半分で取引をおこなっているといつの間にか法律に抵触してしまうことも
また、メルカリには違法な目的で使用することが可能なものも出品されています。
その一つである領収書は、購入者が個人事業主であれば経費として不正計上し、脱税に用いることが可能ですし、購入者が会社員であれば、経費申請をして会社から不正にお金を受け取ることも考えられます。こういった場合に、購入者の行為が犯罪行為であることはもちろんですが、出品者の行為も共犯として犯罪行為に該当してしまうおそれがまったくないとは言えません。
画期的なサービスには、法律の抜け道も散見されるため、違法性が疑われるような取引がなされればそれに対応して運営会社が利用規約を変更するといった“いたちごっこ”の状況になることが往々にして見受けられます。
しかし、利用規約によってルールが明文化されたとしてもその文量は膨大です。ユーザーがそのすべてにくまなく目を通すことは現実的ではありません。解放感のある取引のフィールドに感覚が麻痺し、規約が更新されたことに気づかないうちに面白半分で違法な目的に使用されるおそれがあるものを出品すると、実際にそれが犯罪に使われた際に共犯関係を疑われる可能性もあります。
まとめ
メルカリにこのようなものが出品されやすい背景には、出品手続きが簡単で、かつ、若い利用者が多いという事情があります。そのなかで違法性を帯びたものが出品されても、大部分の人に「どうせまた冗談でしょ」と受け取られ、よい隠れ蓑になっているということも違法性が疑われる物の出品が後を絶たない原因として挙げられるでしょう。
メルカリは、多くのユーザーに支持され成長し続けているサービスであり、正しく利用すれば便利なアプリであることに疑いはありません。しかし、利用にあたっては違法な出品ではないかと思ったら一歩立ち止まって考えてみる必要があります。