自己破産が結婚生活に与える影響は? 内緒にしておける?

自己破産結婚

自己破産したいと思っても、自己破産することには不安を感じる人もたくさんいます。
特に、結婚を控えている人の場合には、

「結婚相手にバレてしまわないか」
「結婚生活に悪影響が出ないか」
「将来生まれる子供に不利益が生じないか」

など、さまざまなことが気になるでしょう。

結論からいえば、自分の力で返済することの難しくなった多額の借金があるときには、1日も早く債務整理で解決すべきなのですが、自己破産のデメリットが気になって決断しきれないという人も多いと思います。

そこで今回は、

  • 自己破産が結婚生活に与える影響

などについて解説していきます。ご参考になれば幸いです。

自己破産 デメリット」に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。

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1、自己破産のデメリットと結婚生活への影響

自己破産した場合には、一定の不利益が生じる場合があります。よく知られているデメリットには信用情報の悪化がありますが、これが結婚に与える影響の程度などについて確認していきましょう。

(1)信用情報悪化による結婚生活への影響

自己破産をすると、そのことが信用情報として登録されてしまいます。自己破産の情報が登録されていることは、金融機関による審査においては大きなマイナスとなりますので、次のようなデメリットが生じます。

  • 金融機関からの借金(カードローン・住宅ローン)の審査に通りづらくなる
  • クレジットカードの新規発行が難しくなる
  • 自己破産のときに保有していたカードも解約・更新不可となる可能性がある
  • 他人の連帯保証人になることが難しい

「クレジットカードが持てなくなる」というのは、キャッシュレス決済が多く行われるいまの生活では非常に不便といえます。そのため、「カードが持てなくなるのはイヤ」と考えて自己破産・債務整理に躊躇してしまう人は実際にも少なくありません。

しかし、いまではクレジットカード以外にも、プリペイド式のキャッシュレス決済(Suicaなど)なども普及していますので、カードがなければ何もできないというわけでもありません。

(2)結婚前の自己破産と住宅ローン

信用情報の悪化との関係では、住宅ローンへの影響が気になるという人が多いと思います。

たしかに、多額の借入れを行う住宅ローンの審査では、「過去に自己破産の経験がある」ということは当然不利な事情といえます。

しかし、住宅ローンは、無担保のカードローンと比べれば、「過去の自己破産」が与える影響は小さいと考えることもできます。なぜなら、住宅ローンでは、土地建物を担保に提供することが前提になるからです。住宅ローン申込みに際して、十分な頭金をそろえることができれば、それによって金融機関の心証を良化させられる可能性もゼロではありません。

自己破産によって免責を得られれば、借金返済は完全に免除されますので、これまで返済に充てていた分は「将来のための蓄え」に当てることも可能です。

また、マイホームの購入時期によっては、過去の自己破産のブラック情報がすでに消去されている場合も考えられます。いわゆるブラック情報は「一生残る」というわけではないからです。

その意味では、「結婚したらマイホームを買いたい」と考えている場合こそ、1日も早く自己破産をして、家計状況を安定させることが大事であるということもできます。

(3)結婚相手(配偶者)に迷惑をかけることはあるか?

自分が自己破産していることで「結婚相手に迷惑をかける」ということを気にする人も多いと思います。しかし、自己破産のデメリットは、自己破産をした本人だけに生じるものですから、結婚相手やその家族に直接の迷惑をかけることはありません。

たとえば、結婚相手にも一定の収入があるのであれば、結婚相手が自分の名義でローンやクレジットカードの申込みをすることは何の問題もありません

また、自己破産した場合に差押えの対象となる財産も、破産をする本人名義の財産に限定されるので、結婚を考えている相手と同棲しているような場合であっても、恋人(同棲相手)の財産が差し押さえられるようなこともありません。

(4)将来生まれてくる子に悪影響を与えることはあるか?

親が過去に自己破産していることが「将来生まれてくる子に迷惑をかける」ことを気にしてしまう人も多いようです。しかし、この点についても子には直接の迷惑をかけることはないといえるでしょう。

①自己破産の情報は戸籍や住民票には残らない

自己破産したことは戸籍や住民票といった帳票に記録が残ることはありません。したがって、子が将来結婚する際などに「親の過去の自己破産を知られてしまう」という心配は不要といえます。

また、いまの役所の事務要領によれば、免責を得られることが確実なケースであれば、本籍地の市区町村で管理される破産者名簿(市区町村が「破産者ではない身分証明書」を発行する際に用いる一般には非公開の帳票)にも氏名などが記載されることはありません。

②子の進学・就職に悪影響を与えることもない

高校や大学などの推薦試験(面接試験)において、親の経済状況などについて質問することは、ほとんどの学校で禁止されています(親の仕事の内容を質問するようなことも禁止されているのが一般的です)。

私立の幼稚園や小学校などの例外的な場合を除けば、親の経済状況(過去の自己破産)が、「子供の進学に影響を与える」ということはないと考えておいてよいといえます。

また、信用情報の照会(調査)は、信用情報機関に加盟している金融機関が、正当な目的のあるときだけに行えるものです。学校などは加盟機関ではありませんので、そもそも保護者の信用情報を調査することもできません。この点は、子の就職などの場合においても同様に考えることができます。

③子が奨学金を借りる際にも悪影響は生じない

近年では、奨学金の貸与を受けて進学する子の割合が増えていて、「大学生の2人に1人は奨学生」といわれています。

奨学金の貸与を受ける際には、親が連帯保証人になることが一般的といえますが、この点についても過去の自己破産が障害になる可能性は低いといえます。

たとえば、大学進学のために奨学金を借りる場合であれば、結婚から18年以上経っている場合がほとんどといえます。自己破産の信用情報は、最大で登録から10年(KSC加盟の債権者がいた場合)となりますから、結婚前の自己破産であれば、子の大学進学の際には消去されているというわけです。

また、いまの奨学金制度は、「保証会社による機関保証」を選択することも可能ですから、絶対に連帯保証人が必要というわけでもありませんので、親の自己破産が与える影響はほとんどないといえます。

④親の自己破産は学資保険には影響がない

子供が生まれた場合には、将来の進学に備えて学資保険を積み立てる場合も多いでしょう。学資保険は、生命保険の一種なので、その加入に際し信用情報(過去の自己破産)が問題となることはありません。

2、自己破産したことは結婚相手にも内緒にしておけるか?

借金を抱えている人であれば「結婚前に解決したい」と考えることは自然な思いだといえます。しかしながら、その他方で「自己破産したことは結婚相手にも内緒にしておきたい」という気持ちが芽生えることも自然といえます。

(1)過去の自己破産を内緒にしておくことは不可能ではない

理屈からいえば、過去の自己破産を結婚相手に内緒にしておくことは不可能ではありません。
すでに説明したように、自己破産をしたとしても、戸籍や住民票に記載されるわけではありませんから、自己破産したことを結婚相手に気づかれないという可能性は十分にあるからです。

また、信用情報についても、一般の人が調査をすることは不可能といえます。
その意味では、「自己破産したのは結婚の何年も前」で、「いまは全く借金がない」というような場合には、結婚相手に伏せておくというのも選択肢のひとつになるかもしれません。

(2)過去の自己破産を結婚相手に隠し通すのが難しい場合

しかしながら、「過去に自己破産した経験がある」ということは、結婚相手には打ち明けておいた方がよい場合が多いといえます。

過去の自己破産を隠し通すことは、不可能ではありませんが簡単なことでもないからです。内緒にしていたはずの過去の自己破産を結婚相手などに知られてしまう主なパターンとしては次のようなケースがあります。

  • 過去の官報記事を調査されてしまう
  • 信用情報が悪化していることで生じる日常生活への影響から気づかれてしまう

自己破産した場合には、氏名や住所などが官報によって公告されてしまいます。官報というのは、政府が発行している広報誌(公の回覧板)のようなもので、直近のものであれば、インターネットを利用すれば誰でも無料で閲覧することができます。

結婚前(何年も前)の自己破産についての官報公告は、一般の人が調査するには費用や手間がかかってしまいますので簡単ではありませんが、調査が不可能というわけではありません。実際にも、結婚相手(の親など)が、興信所などを利用して身辺調査を行うようなケースは珍しくないといえるでしょう。

また、上でも解説したように、自己破産によって信用情報がブラックになっている間は、その人名義でローンを組むことや、他人の連帯保証人となることは難しいといえます。自分たちが住む住宅ローンであれば、配偶者に気づかれないように購入時期を遅らせていくなどの方法でごまかしきれる場合もあるかもしれませんが、結婚相手の親族の連帯保証人などを頼まれてしまうケースは、こちらの努力だけでは対応しきれません。

以上のように、自分の努力ではどうにもならない事情で過去の自己破産を知られてしまう可能性があることを考えれば、結婚前に過去に自己破産について打ち明けておいた方が、最終的に抱えるリスクも小さくなる場合が多いといえます。

(3)過去の自己破産を内緒にしておいたことは離婚の原因になるのか?

過去に自己破産していたことは、結婚相手に必ず伝えなければならないというものではありません。したがって、自己破産していたことを告げなかったことが現在の結婚生活において「重大な背信行為にあたる」といえない限りは、裁判離婚が認められる理由にはならないといえます。また、重大な背信行為といえる場合もかなり限定的といえるでしょう。

とはいえ、結婚は夫婦の信頼関係を前提とするものですから、過去のこととはいえ自己破産の経験があることを秘密にしていたことを「許せないほどの裏切り」と感じてしまうこともあるかもしれません。

それが原因で長期間の別居となったような場合には、裁判離婚が認められてしまう可能性も高くなってしまいます。

3、自己破産を遅らせることが結婚に与えるリスク

自己破産は、誰にとっても不安なものですから、「可能なら自己破産せずに借金を解決したい」と考える人も多いといえます。

たしかに、すぐに返済ができなくなってしまう状況でないのであれば、自己破産せずとも借金を無事に解決できることもあるかもしれません。

しかし、近い将来に結婚を考えている人が、自力で返済が簡単ではない借金を抱えているときには、早期に自己破産で借金を根本的に解決した方がよい場合が多いといえるでしょう。

自己破産での解決を遅らせると、その後の結婚生活に大きなリスクを生じさせる可能性があるからです。

(1)借金を解決できないまま結婚するリスク

自己破産するタイミングを逸してしまえば、借金を解決できないまま結婚生活を迎えてしまう場合もあります。

債務者が結婚をしたからといって借金返済の負担を減らしてもらえるわけではありませんから、借金が残ったまま結婚をすれば、その返済の負担は結婚後の家計にも当然響いてきます。

結婚前の借金については、結婚の相手方に法律上の返済義務はありません。しかし、実際に共同生活を送る以上は無視することはできないでしょう。借金返済の負担が重くなるほど、結婚生活に与える影響も大きくなりますから、過去の借金が夫婦の関係にヒビがはいる原因になってしまう可能性もあります。

(2)ブラック情報の消去が遅くなるリスク

自己破産をした場合の信用情報(いわゆるブラック情報)は、登録から一定期間(5~10年)が経過しなければ消去されません。

したがって、借金を自己破産で解決するのであれば、1日でも早く手続を行った方がブラック情報登録によるデメリットからの解放も早くなるということになります。

それとは逆に、結婚直前まで自己破産を先延ばしにしてしまったような場合には、結婚から10年近くの間ブラック情報による影響を気にしながら生活しなければならないというわけです。

また、ブラック情報は、自己破産(債務整理)をした場合だけでなく、借金返済を長期間(2ヶ月または3ヶ月以上)滞納した場合にも登録されてしまいます。この場合のブラック情報は、滞納解消ではなく「借金完済から5年」を経過しないと消去されません。そのため、対応次第によっては、自己破産しなかった方がブラック情報に悩まされる期間が長くなるということもありうるわけです。

4、結婚生活に自己破産がどう影響するか、不安なことは弁護士に相談してみましょう

多くの一般の人にとって自己破産は、一生に一度あるかないかの出来事です。わからないことや不安なことがたくさんあることは当然といえます。しかし、わからないことがある、不安ことがあるからといって、それだけの理由で「自己破産をやめてしまう」というのは、デメリットの方が大きいといえます。

すでに解説したように、独身時代の自己破産が結婚後の生活に悪影響を与える程度は、限定的なものといえる場合が多いでしょう。むしろ、誤った情報や判断に基づいて、借金の解決を先送りした場合の方が、結婚してからトラブルになるリスクも高くなるといえます。

ネットなどの媒体では、一般的な情報しか提供することができませんので、個々のケースにおいてわからないことや不安なことは、弁護士に直接相談してみるのが一番といえるでしょう。

借金問題についての相談は、無料で受けられる事務所が増えていますので、費用の心配もいりません。

まとめ

お金のトラブルは、家族や恋人であっても相談しづらいものです。また、「自己破産」についての一般的なイメージもふまえれば、「できれば自己破産せずに借金を解決したい」、「過去の自己破産は内緒にしておきたい」と思ってしまうことも仕方のないことといえます。

しかし、すでに返済が苦しくなっている借金を抱えているのであれば、1日も早く自己破産などの方法で負担を軽減してもらうべきといえます。借金の返済能力を短期間で改善させることは容易なことではないからです。手をこまねいているうちに借金が膨らんでしまうというケースは少なくありません。そうなれば、結婚どころではなくなってしまうかもしれません。

債務整理は、借金でトラブルを抱えてしまった人の「再チャレンジ」を支援するための公的な手続であるともいえます。結婚までに借金を解決したいと考えているのであれば、1日も早く弁護士に相談してみましょう。

自己破産」に関する詳細はこちらの記事をご参照ください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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