傘の横持ちに弁護士が警告! 知っておくべき3つのこと

傘 横持ち

傘の横持ちが危険ということはご存知ですか?

大人が横持ちした傘の先端(石突)は、後ろを歩く子どもの目に当たる危険もあり、最悪の場合、失明のおそれもあります。

傘を横持ちして人に怪我を負わせてしまった場合、刑罰を科されることはあるのでしょうか。被害者は加害者に対してどのような請求ができるのでしょうか。

また、不必要に先端が尖った傘を製造したメーカーに責任はないのでしょうか。ベリーベスト法律事務所の弁護士が説明します。

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1、傘の横持ちで怪我を負わせると30万円以下の罰金が科される可能性あり

傘の横持ちで怪我を負わせると30万円以下の罰金が科される可能性あり

刑法には「過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する」(209条1項)と定められており、この刑罰を過失傷害罪といいます。罰金と科料の違いは金額です。1万円以上のものを罰金、1万円未満のものを科料と言います。過失傷害罪で刑務所に収監されることはありません。

もし傘の横持ちをした人が、ちょっとした不注意で誰かに軽傷を負わせた程度であれば、罰金に処せられる可能性は低いでしょう。送検(事件を警察から検察に送ること)されたとしても、大抵は「起訴猶予」というかたちで不起訴処分が下されます。そもそも過失傷害罪は告訴(被害者が処罰を求めること)がなければ起訴することはできません。

そのため、横持ちの傘で過失により怪我を負わせてしまった場合、加害者が被害者と示談し告訴されないようにすることで起訴されないこともあります。

つまり、あなたが横持ちの傘の先端で突かれた被害者で加害者を処罰してほしい場合は、告訴しなければなりません。被害届を提出しただけでは告訴したことにはならないので、告訴したいという意思を警察に明示しましょう。

被害が軽微である場合など、起訴猶予になることが予想される場合において、警察は告訴を受け付けてくれないことがあります。それでもなんとかして告訴したいというときは、弁護士に相談するとよいでしょう。

2、被害者が失明した場合には賠償額が5000万円以上になるケースも

被害者が失明した場合には賠償額が5000万円以上になるケースも

加害者の責任は刑事責任だけではありません。被害者は加害者に対して民事上の責任を問い、損害賠償を請求することができます。民法には「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(709条)と定められています。

“後ろに人がいるにもかかわらず傘を横持ちして腕を振ること”は過失と言えますので、加害者には損害を賠償する責任があるのです。加害者の賠償すべき損害は、主に次の4つが考えられます。

  • 医療費
  • 休業損害
  • 労働能力喪失損害(逸失利益)
  • 慰謝料

被害者が失明した場合には、賠償額が5000万円以上になるケースもありえます。

3、傘を作ったメーカーも責任に問われる?

傘を作ったメーカーも責任に問われる?

製造物責任法には、「製造業者等は、……その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」(3条本文)と定められています。

不必要に尖った傘の先端は、製造物責任法に定める「欠陥」といえるのでしょうか。「欠陥」と言えれば、この条文を根拠に傘メーカーに損賠賠償を請求できる可能性があります。

「この法律において『欠陥』とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態……を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」(2条2項)とあります。まず傘の特性上、先端が尖っている必要性はなく、それはデザイン上の都合に過ぎません。

次に使用形態についてみると、傘の横持ちをする人が少なくない点とその危険性については以前からメディアでも指摘されており、“通常予見される使用形態”であるといえます。そのため、安全性に問題が生じるほどに先端が尖ったデザインの傘であれば、メーカーに責任を問える可能性はあります。

最後に安全性についてみると、先端の形状について日本洋傘振興協議会では「先端はほぼ平面で、その表面積が20平方ミリメートル以上であり、その周囲は鋭利でないこと」という基準を設けています。この基準によって仮に一定の安全性が担保されるとするならば、この基準を超えて、ことさらに鋭利な傘によって大怪我を負った場合は、メーカーにも損害賠償を請求できる可能性があります。

傘の横持ちにより怪我を負わせてしまった場合、多額の損害賠償支払義務が発生する可能性が大いにあります。それはもちろん、この国で定められた法律に抵触する行為であり、罪を問われるからです。傘の横持ちは、それほど危険な行為であることを十分に理解してください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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