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離婚時の財産分与割合を決めるための5つのステップ

離婚において、財産分与の割合をどのように決定すればよいのでしょうか。財産分与についての話が進まないと、離婚手続きも難航し、対処に困ることもあります。

離婚における財産分与の割合は、一般的な原則と特別な例外が存在し、自分がどのケースに該当するかを把握することが重要です。

この記事では、財産分与の割合に関する以下のポイントについて詳しく説明します。

  • 財産分与の割合の一般的な原則
  • 財産分与の割合の特別なケースとは

財産分与の割合を決定する方法と注意点

また、財産分与の割合を最大化するための方法についても解説します。

この記事が、財産分与に関する問題で困惑している方々の手助けとなれば幸いです。

また、財産分与全般についてお知りになりたい方はは以下の記事を併せてご参照ください。

さらに、退職金も財産分与の対象になるか?についてYouTubeでも紹介しているのでこちらも併せてご参照ください。

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1、財産分与の割合は基本的に2分の1ずつが原則

財産分与の割合は基本的に2分の1ずつが原則

離婚するときに財産分与を請求できることは知っていても、いったいどのような割合で財産を分ければ良いのかがわからない方も多いことでしょう

基本的には、夫婦共有財産を2分の1ずつ分け合うことになります。たとえ妻が専業主婦であっても、2分の1ずつが基本です。

この点は意外に感じる方も多いと思いますので、まずはその理由についてご説明します。

(1)財産を2分の1ずつに分けるべき理由

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いてきた財産を清算するために分け合うことをいいます。

通常、夫婦はそれぞれが様々な形で財産の形成・維持に貢献しています。
それぞれの貢献度に応じて財産を分け合うというのが、財産分与の基本的な考え方です。

以前には、一般的に夫の方が財産形成・維持における貢献度が高いと考えられ、妻は少しの財産しか受け取れないという傾向もありました。

しかし、現在は家庭裁判所でも財産の形成・維持についての貢献度は、夫も妻も同程度と考えられており、原則として2分の1ずつの財産分与を認めています。

家庭裁判所におけるこの運用のことを、財産分与における「2分の1ルール」と呼びます。

(2)専業主婦も2分の1の財産をもらえる

妻が専業主婦で収入を得ていなくても、2分の1ルールは適用されます。妻が家庭で家事や子育てを行うからこそ、夫は外で働いて収入を得られるからです。
妻が行う「家事労働」にも財産的価値があり、夫が会社などで行う労働と同等の価値であると、現在では考えられています。専業主婦も、夫婦共有財産の形成・維持に夫と対等の貢献をしているといえるのです。

以上が、財産分与で専業主婦も2分の1の財産をもらえる理由です。

2分の1ルールを正しく理解しておかなければ、財産分与を請求する妻は損してしまう可能性がありますので、ご注意ください。

2、財産分与の割合が2分の1ずつにならないケース

財産分与の割合が2分の1ずつにならないケース

財産分与の割合は、夫婦共有財産の形成・維持に対する貢献度に応じて決めるべきものです。
そのため、明らかに貢献度に偏りがある場合には、2分の1ルールが修正されます。

夫婦間で財産形成の貢献度に偏りがある場合、財産分与の割合は2分の1ずつにはならず、貢献度の高い方が多くの財産を取得します。

2分の1ルールが修正されるのは、以下のようなケースです。

(1)一方の特別な才能によって財産が築かれた場合

夫婦の一方が芸能人やスポーツ選手などの場合で、その特別な才能によって高収入を得て多額の財産が築かれたと考えられる場合には、2分の1ルールが修正されます。

裁判例では、以下のように夫に多くの財産分与割合を認めた事例があります。

  • 夫が一部上場企業の社長であったケースで、夫95%:妻5%としたもの(東京地裁平成15年9月26日判決)
  • 夫が医師として医療法人を経営していたケースで、夫60%:妻40%としたもの(大阪高裁平成26年3月13日判決)

ただ、夫が経営者や医師・弁護士であっても、本当にその特別な才能によって財産が築かれたといえるのかについては慎重に判断する必要があります。

妻も資格はないものの共同経営者として事業に貢献していたり、そこまでではなくても重要な権限を有していたりするような場合には、財産の形成・維持に対する貢献度は夫婦で同等とすべき場合も多いと考えられます。

(2)一方の特有財産が財産に含まれている場合

特有財産とは、夫婦の協力とは無関係に、一方が取得した財産のことをいいます。

財産分与は、夫婦が協力して築いた財産を分け合うものですから、共有財産は財産分与の対象となりません。例えば、夫婦の一方が結婚前から持っていた財産や、結婚後に取得した財産でも相続や贈与によって取得したものは、特有財産です。

結婚後に築かれた財産でも、元手に一方の特有財産が含まれている場合があります。その場合は財産分与の対象になりますが、2分の1ルールが修正されるため、注意が必要です。
例えば、以下のような場合には、財産分与の際に、元手となった特有財産に相当する金額を差し引くことになります。

  • マイホームを購入する際に、夫が結婚前から持っていた貯金を代金支払の一部に充てた場合
  • 夫が結婚前から持っていた貯金を株式の購入代金の一部に充てて、その株式を運用して利益を得た場合

(3)一方が浪費していた場合

夫婦の一方が著しい浪費をしたために、夫婦共有財産が増えなかったり、減ったりした場合にも、2分の1ルールが修正されることがあります。

何にいくら使ったら、浪費として2分の1ルールが修正されるのかについても、明確な基準があるわけではありません。浪費が顕著な場合に限って、2分の1ルールは修正されます。

裁判例では、約1億7,000万円相当の夫婦共有財産があったものの、夫に浪費傾向が認められた事例で、財産分与の割合を夫30%:妻70%と判断したものがありました(水戸家庭裁判所平成28年3月判決)。
この事例では、夫が浪費をして約580万円の借金を抱えていたのに対して、妻は倹約に努めて財産を築いていたことが認められています。

他にも、共働きであったのに妻の方が家事労働の負担が大きく、妻の母親からの金銭面での援助や相続もあったことなども考慮されて、2分の1ルールが修正されました。

多少の浪費があったというだけでは、2分の1ルールを修正することは難しいでしょう。

世帯年収との関係などについても、考慮する必要があります。
例えば、夫がギャンブルに年間100万円を費やしたとしても、世帯年収が数百万円程度なら浪費にあたる可能性が高いでしょう。

一方、世帯年収が1,000万円を超えるなら、2分の1ルールを修正するほどの浪費にはあたらない可能性もあります。

(4)夫婦財産契約を結んでいる場合

夫婦財産契約とは、結婚前に夫婦間で財産関係をどのようにするかを、契約で決めておくことをいいます。

夫婦の話し合いによって、自由に財産分与の割合を決めることができます。
夫婦財産契約で決めていた場合は、2分の1ルールよりも契約の方が優先して適用されるのです。

裁判例では、夫婦財産契約で決めた財産分与割合があまりにも不合理な場合は、公序良俗に反するものとして、無効とされた事例もあります。
また、協議離婚の場合の財産分与割合が契約で決められていても、裁判離婚する場合にはその割合を適用すべきでないとした事例もありました。
夫婦財産契約で財産分与割合を決めていたとしても、必ずしもその割合がストレートに適用されるとは限らないのです。

(5)財産分与に別の要素を加味する場合

ここまで、財産分与が夫婦共有財産を「清算」するものであることを前提に、ご説明してきました。

しかし、次の二つの場合のように、財産分与を行う際には、「清算」の他に慰謝料や扶養の要素を加味して割合が決められることもあります。

①慰謝料的財産分与

一つは、「慰謝料的財産分与」です。

離婚に至った原因について、夫婦の一方に非があるものの慰謝料が発生するほど重い責任ではない場合には、財産分与において慰謝料的要素が加味されます。

②扶養的財産分与

二つめは、「扶養的財産分与」です。

妻が長年専業主婦として生活してきたため、離婚してもすぐに自立して生活することが難しいような場合には、当面の生活費相当額が財産分与に加味されることもあります。

以上の場合は、2分の1ルールが修正されることになります。

慰謝料的財産分与と扶養的財産分与について詳しくは、以下の記事をご参照ください。

3、財産分与の割合を決める方法

 

財産分与の割合を決める方法

それでは、実際に財産分与の割合を決めるには、どのような方法をとればよいのでしょうか。

(1)話し合いなら割合を自由に決められる

まずは、夫婦で話し合いましょう。
話し合いでお互いに合意すれば、どのような割合でも自由に決めることができます。

分けるべき財産の中には、不動産や自動車のように分割しづらいものもあると思いますので、柔軟な分け方を話し合うとよいでしょう。

話し合いがまとまった場合は、合意内容を書面化し、公正証書にしておくことをおすすめします。
公正証書を作成しておけば、万が一相手方が約束を守らない場合、強制執行手続きによって相手方の財産を差し押さえることができます。

(2)調停

夫婦だけで話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立てましょう。

離婚に際して財産分与を求める場合は、「夫婦関係調整調停」(離婚調停)を申し立てます。

離婚後に財産分与のみを請求する場合は、「財産分与請求調停」を申し立てることになります。

調停では、男女2名の調停委員が中立・公平な立場でアドバイスを交えつつ話し合いを進めてくれるので、適切な内容で合意に至りやすくなるでしょう。

(3)審判

調停でも話し合いがまとまらない場合は、審判手続きを利用しましょう。

審判では、それまでに当事者が提出した主張や証拠を踏まえて、家庭裁判所が相当と考える財産分与割合を決定します。

財産分与請求調停の場合は、調停不成立となれば自動的に審判手続きに移行します。

離婚調停の場合は、審判手続きに移行させることも可能ですが、さらに争うために離婚訴訟へ進むのが一般的です。

(4)訴訟

離婚に際して財産分与を請求した場合で、調停がまとまらなかった場合は、離婚訴訟を提起して、その中で財産分与についてもさらに争うことになります。

訴訟では、ご自身の主張を裏づける証拠を提出することが重要になります。相手方の財産や、その財産の形成・維持に対するご自身の貢献度を証拠で証明することができなければ、希望する財産分与割合を獲得することはできません。

もっとも、訴訟の途中で話し合いによって、和解が成立することもよくあります。

4、財産分与の割合を修正して少しでも多くの財産をもらう方法

財産分与の割合を修正して少しでも多くの財産をもらう方法

財産分与を請求するなら、2分の1ルールを修正して、少しでも多くの財産を獲得したいところでしょう。

ここでは、そのための方法についてご説明します。

(1)前提として財産調査が重要

財産分与を請求する前提として、財産調査を行うことが重要となります。夫婦共有財産がいくらあるのかを、明らかにする必要があるからです。

相手方が財産を隠していると、いかに有利な財産分与割合を獲得できたとしても、実際にもらえる財産は少なくなってしまいます。

財産調査の方法としては、「文書送付嘱託」「調査嘱託」「23条照会」といった手段があります。

①文書送付嘱託・調査嘱託

文書送付嘱託と調査嘱託は、裁判所を通じて公私の団体に対して文書の送付や調査事項への回答を求める手続きです。
例えば、金融機関に対して配偶者名義の口座があれば、口座番号や預金残高を記載した文書を裁判所へ送付するよう求めることができます。

この2つの手続きは、法律上は調停でも利用可能ですが、家庭裁判所は話し合いが主となる調停段階ではこれらの手続きをとることに消極的です。一般的には、離婚訴訟にまで進んだ場合に利用可能な手続きであるといえます。

②23条照会

23条照会は、弁護士が行う手続きです。
弁護士法第23条の2の規定に基づいて、弁護士会を通じて文書送付嘱託や調査嘱託と同じような調査を行うものです。

こちらの手続きは、調停段階でも調停前でも利用可能です。

ただし、裁判所を通じた手続きではないため法的拘束力がありません。

金融機関は個人情報の保護を理由に、情報の開示に消極的であるという問題もあります。

状況に応じていずれかの方法を選択し、しっかりと財産調査を行いましょう。

(2)財産形成への寄与度を具体的に主張する

夫婦共有財産が明らかになったら、実際に財産分与を請求していきます。
有利な財産分与割合を獲得するためには、財産形成への寄与度を具体的に主張することが重要です。

(3)相手方の浪費を具体的に主張する

相手方が浪費をしていた場合は、具体的に浪費の事情を主張しましょう。

浪費があると思われるケースでも、相手方が何にお金を使ったのかわかりにくい場合もあります。

上記の場合は、「使途不明金」がいくらあるのかを具体的にすることが大切です。そのためには、家計をしっかりと把握しておきましょう。

(4)離婚原因について相手の責任を主張する

相手方が離婚原因を作った場合には、慰謝料的財産分与を請求できる可能性があります。

法律上の離婚原因は、民法第770条1項で以下の5つが定められています。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

引用元:民法

重要なのは、以上の離婚原因に該当する相手方の行為を具体的に主張することです。

例えば、相手方が不倫をした場合なら、いつ・誰と・どこで不貞行為を行ったのかをある程度具体的に特定できなければなりません。

相手方が何度も不貞行為を働き、不貞行為の事実を証明できる証拠を確保していれば、財産分与とは別に慰謝料を請求した方が高額のお金を獲得できるでしょう。

(5)離婚後の生活保障の必要性を主張する

扶養的財産分与を請求する場合は、離婚後の生活保障の必要性を具体的に主張することです。

離婚によって、ご自身が使えるお金がいくら減るのかを明らかにした上で、離婚後に必要な生活費や子育てにかかる費用を具体的に計算して主張しましょう。

子育てにかかる費用については、将来的に必要となる学費も含めて算出すると良いでしょう。
子供が未成年の場合に多額の扶養的財産分与を受け取ると、別途養育費を請求する際に、相場よりも低くなる可能性があることにご注意ください。

養育費については、財産分与と分けて考え、別途請求した方がわかりやすいかもしれません。

5、財産分与の割合でお悩みなら必ず弁護士に相談を

財産分与の割合でお悩みなら弁護士に相談を

実際に財産分与を請求する際には、難しいことやわからないことが多々あるかと思います。

そんなときは、ひとりで悩まずに弁護士に相談しましょう。
弁護士から専門的なアドバイスを受ければ、さまざまな疑問を解消できるでしょうし、依頼すれば有利な結果を獲得できる可能性も高まります。

ご自身で財産調査の手続きをする場合には、離婚訴訟にまで進んだ上で文書送付嘱託や調査嘱託を利用しなければなりません。

一方、弁護士に依頼すれば、23条照会によってすぐに財産調査が可能です。相手方との交渉は弁護士が代行し、法律に基づいた適切な主張をしてくれます。
裁判が必要となった場合も、複雑な手続きをすべて代行してもらえます。
弁護士という味方を得れば、ひとりで悩む必要はありません。

まとめ

離婚する際、慰謝料や養育費については徹底的に争っても、財産分与については取り決めないケースもあります。

もしくは、財産分与について取り決めても、適当な判断で決めてしまうケースが少なくありません。

しかし、夫婦共有財産は離婚するときに分け合うべきものであり、法律や判例で分け合う際のルールも確立されています。

財産分与に関するルールを正しく知って対応していかないと、離婚する際に損をしてしまうおそれがあります。

財産分与について不安がある場合は、弁護士に相談してみましょう。

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