配偶者が出会い系を使って不倫していることを知り、悩んでいる方も少なくないようです。
不倫や浮気というと、今も昔も職場の仲間や昔の同級生などが相手になるケースが多いです。
しかし、近年では男性も女性も、出会い系サイトに登録し、そこで知り合った相手と不倫・浮気に至るケースも増えています。
出会い系の利用では、特定の相手とメールのやりとりを重ねて本格的な不倫をするケースもありますが、見ず知らずの相手と次々に割り切った関係を結ぶケースも多いのが特徴的です。
配偶者が出会い系で不倫した場合も、通常の不倫の場合と同様に離婚や慰謝料請求はできるのでしょうか。
今回は、
- 出会い系を利用した交際も不倫に当たる?
- 出会い系で不倫した配偶者に離婚・慰謝料を請求する方法
- 出会い系の不倫相手に慰謝料を請求する方法
などについて、離婚・不倫問題で解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
この記事が、出会い系で不倫をした配偶者や不倫相手に対して離婚や慰謝料の請求をお考えの方の手助けとなれば幸いです。
浮気の定義については以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、出会い系を利用した場合も不倫に当たる?
出会い系の利用も不倫に当たるかどうかを判断するには、そもそも不倫とは何かを押さえておく必要があります。
ここでは、不倫の定義をご紹介した上で、出会い系の利用が不倫に当たるケースと当たらないケース、その他の注意点をご説明します。
(1)そもそも不倫とは
日常生活の中で「不倫」という言葉を使う場合、その定義は人によって様々に異なります。
配偶者以外の異性とメールをするだけでも不倫と解釈する人もいれば、2人でデートすれば不倫と解釈する人もいます。一方では、ハグやキスをしても問題ないと考えている人もいるでしょう。
それに対して、法律的に問題となる「不倫」は、「配偶者以外の異性と、自由な意思に基づいて、肉体関係を持つこと」と定義されています。
ここにいう「配偶者」には、法律上の配偶者だけでなく、内縁関係のパートナーも含まれます。
「自由な意思に基づいて」とは、力づくで無理矢理に関係を持たされたり、断ることが不可能な状況で関係を持たされたような場合ではないという意味です。
「肉体関係」とは、性交渉のことを指します。
出会い系の利用が「不倫」に当たるかどうかも、この定義に該当するかどうかによって判断することになります。
(2)出会い系の利用が不倫に当たるケース
上記の定義に当てはめて考えると、出会い系の利用が不倫に当たるのは以下のケースです。
- 出会い系で知り合った相手と会って性交渉を行った
出会い系では金銭の支払いと引き換えに性的行為が行われることも少なくありませんが、金銭を介した関係であったかどうかは問題となりません。
性交渉または性交類似行為が行われれば、不倫に当たります。
(3)不倫に当たらないケース
一方で、性交渉が行われなかった場合は、出会い系を利用しても不倫には当たりません。
例えば、以下のようなケースは配偶者にとっては納得できないこともあるかもしれませんが、「不倫」としての法的責任を問うことはできません。
- 出会い系で知り合った相手と会って食事をした
- 性交渉をしようと思ったがキスやハグのみにとどまった
- 相手とホテルに行ったが、裸を見せてもらっただけ
- 相手の下着を売ってもらった
- メールのやりとりのみで楽しんでいる
(4)不倫だけにとどまらない!出会い系に潜むリスク
出会い系の利用には、不倫以外にも以下のリスクが潜んでいます。
- さまざまな罪に問われる可能性がある
- 美人局の被害に遭うおそれがある
出会い系では、未成年者や悪質な利用者に出会ってしまう可能性があります。
あなたが出会い系を利用した配偶者と離婚する場合には関係ないかもしれませんが、離婚しない場合には家庭にも深刻な影響が及ぶおそれがありますので、注意しましょう。
以下で、具体的に解説します。
①児童買春罪
18歳未満の児童に金品等の対価を提供して性的行為を行うと、児童買春罪として5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられることがあります(児童買春・児童ポルノ禁止法第2条1項・2項、第4条)。
②児童ポルノ製造罪
18歳未満の児童のわいせつな姿態を撮影した場合は、児童ポルノ製造罪として3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑に該当します(同法第2条3項、第7条4項)。
③都道府県の条例違反
18歳未満の児童と性的な関係を持つと、
- 相手の同意があったか否か
- 金品の提供があったか否か
にかかわらず、都道府県の条例違反の罪に問われる可能性があります。
条例の名称や罰則は都道府県によって異なりますが、東京都の場合は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」により、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(同条例第18条の6、第24条の3)。
④強制性交等罪
13歳未満の児童と性的関係を持った場合は、相手の同意があったとしても強制性交等罪(旧強姦罪)として5年以上の懲役に処せられます(刑法第177条後段)。
⑤出会い系サイト規制法違反
出会い系サイトで援助交際(金品等の対価を提供して性的関係を結ぶこと)に誘う書き込みをしただけでも、出会い系サイト規制法違反の罪として100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律第6条1号、第33条)。
⑥美人局の被害
美人局(つつもたせ)とは、主に男性が被害に遭う犯罪行為で、ある女性と性的関係を持った後、その女性の夫や恋人などと名乗る男性が現れて、金品をゆすり取る犯行です。
出会い系サイトで知り合った女性と性的関係を持ったところ、美人局の被害に遭うケースは少なくありません。
2、配偶者が出会い系で不倫した場合に請求できること
ここでは、配偶者の出会い系の利用が法的な「不倫」に該当する場合、配偶者に対してどのような請求ができるのかを解説します。
(1)離婚請求
法律上は、不倫のことを「不貞行為」と呼んでいます。
不貞行為は、法定離婚事由のひとつとされています(民法第770条1項1号)。
法定離婚事由とは、相手が該当する事由を作った場合には裁判で強制的に離婚が認められる事情として民法に定められているもののことです。
したがって、出会い系を利用した配偶者が離婚に反対しても、あなたが裁判をすれば強制的に離婚することが可能です。
(2)慰謝料請求
不貞行為は、夫婦間で貞操を守る義務に違反して配偶者に精神的苦痛を与える行為ですので、不倫された側の配偶者は慰謝料を請求できます。
離婚する場合はもちろんのこと、離婚しない場合でも慰謝料請求は可能です。
不倫慰謝料の相場は数十万円~300万円程度と言われており、この幅の中で様々な具体的事情を総合的に考慮して金額が決められます。
おおよそですが、
- 離婚しない場合は数十万円~100万円前後
- 離婚する場合は200万円~300万円程度
とされるケースが比較的多くなっています。
もっとも、夫婦間の話し合いで合意ができれば、金額は自由に決めることができます。
(3)1回きりの不貞行為でも離婚・慰謝料請求は可能?
配偶者の不貞行為が1回だけなら離婚請求も慰謝料請求も認められないという話を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、理論上は1回きりの不貞行為でも離婚・慰謝料請求も可能です。
ただ、実際には1回きりの不貞行為では離婚・慰謝料請求も認められないケースもあることは否定できません。
なぜなら、法定離婚事由を規定しいている民法第770条では、その2項で次のように規定しているからです。
裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
引用:民法
実際のところ、配偶者が1度または数度の過ちを犯したとしても、夫婦関係が完全には破綻していないと判断され、離婚請求が認められないことがあります。
慰謝料請求も認められないか、認められても違法性が低いため数十万円にとどまるでしょう。
例えば、風俗店を1回利用しただけなら、離婚請求も慰謝料請求も認められない可能性が十分にあります。
出会い系で見知らぬ相手と1度だけ割り切った関係を持ったような場合も、概ね同様と考えられます。
離婚・慰謝料請求が認められるかどうかは、配偶者が反省・謝罪をしているか、夫婦関係の状況はどうであったかなど、他の事情にもよります。弁護士に相談して確認した方がよいでしょう。
3、出会い系による不倫で離婚・慰謝料請求のために集めるべき証拠
出会い系による不倫で配偶者に対して離婚・慰謝料請求を決意した場合は、まず証拠を確保することが重要です。証拠がなければ、相手に事実を否定されると話し合いを進めることができなくなりますし、裁判でも主張が認められないからです。
ここでは、出会い系で不倫した場合に集めるべき証拠や集める際の注意点を解説します。
(1)メッセージのやりとり
出会い系による不倫では多くの場合、メッセージをやりとりして会う約束をしています。
出会い系のサイト内でメッセージのやりとりをしている場合もあれば、メールやLINEに移行してやりとりしている場合もあります。
いずれにしても、会う約束をしているメッセージを表示した画面を撮影するなどして、証拠化しましょう。
(2)会う約束をした日時に配偶者が出かけたことの記録
会う約束をしているメッセージだけでは、まだ「肉体関係を持ったこと」の証拠として完全ではありません。
約束をした日時に配偶者が出かけたことも証拠化できると、証明力が増強されます。
その証拠としては、日記などで配偶者の行動を継続的に記録しておくことが有効です。
(3)その他、不倫の一般的な証拠
その他にも、不倫の一般的な証拠をできる限り数多く集めておいた方が、離婚・慰謝料請求が認められる可能性が高まります。
不倫の証拠としては、メッセージのやりとりの他にも、一般的に以下のものが有効です。
- 2人でラブホテルに出入りしている写真
- 性交渉中の模様を撮影した画像や動画
- 領収書やクレジットカードの利用明細
- GPSの記録
- 配偶者や不倫相手が不倫を認めた発言の録音や写真
こちらの記事でも不倫・浮気の証拠について詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
(4)配偶者の携帯・スマホを見るときの注意点
配偶者といえども、携帯やスマホを勝手に見ると場合によってはプライバシーの侵害となり、逆に慰謝料を請求される可能性もあります。
上記(1)でメッセージのやりとりを撮影することをおすすめしましたが、これを勝手に行うことは違法になるということです。
違法な手段で入手した証拠は、理論上は裁判で証拠として採用されない可能性もあります。
ではどうすればよいのかというと、配偶者の同意を得て携帯・スマホを見せてもらうことです。
まずはメッセージ以外の証拠を確保した上で配偶者との話し合いを開始し、その場で携帯・スマホを見せるように求めることが理想的です。
(5)証拠集めは探偵の利用も検討しよう
実際には、配偶者の携帯・スマホを見ることなく不倫の証拠を集めるのは、難しいことが多いものです。
そんなときは、プロの探偵に調査を依頼することも検討しましょう。
探偵に配偶者を尾行してもらい、不倫の現場を押さえた調査報告書を作成してもらえれば、強力な証拠となります。
探偵に依頼する方法や費用についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せて参考になさってください。
4、出会い系で不倫した配偶者に離婚・慰謝料を請求する方法
不倫の証拠が確保できたとして、次に、出会い系で不倫した配偶者に離婚・慰謝料を請求するための具体的な方法をご紹介します。
(1)話し合い
まずは、夫婦間で話し合いをします。離婚を求める場合には、話し合いを始める前に、慰謝料の他にも
- 財産分与
- 親権
- 養育費
などについても希望する条件を考えておきましょう。
話し合いでは、冷静に、かつ証拠に基づいて事実を指摘することがポイントとなります。
相手が言い逃れできず話し合いがまとまった場合は、口約束で済ませるのではなく、離婚協議書や合意書を作成しておきましょう。
(2)離婚調停
夫婦間での話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てます。
調停では、離婚に関する専門知識を有する調停委員が話し合いを仲介します。
話し合いが進めば調停案が提示され、必要に応じて調停委員が相手に対して助言や説得をしてくれることもあります。
そのため、夫婦だけで話し合う場合よりも合意に至りやすくなります。
調停を有利に進めるためには、調停委員を味方につけることがポイントとなります。
そのためには、証拠に基づいて実情を分かりやすく説明することが重要となります。
(3)離婚裁判
調停でも合意できない場合は、離婚裁判に進むのが一般的です。
離婚裁判では、双方が主張と証拠を出し合います。
証拠の裏付けがない主張は認められませんので、裁判前に十分な証拠を確保しておくことが必須です。
相手が不倫した事実と、それによってご自身が精神的苦痛を受けたことを証拠で的確に証明できれば、判決で離婚と慰謝料請求が認められます。
5、出会い系の不倫相手に慰謝料を請求する方法
不倫慰謝料は配偶者に対してだけでなく、不倫相手に対しても請求できます。
出会い系の不倫相手に慰謝料を請求するための具体的な方法は、以下のとおりです。
(1)身元調査
出会い系の不倫では多くの場合、配偶者の不倫相手はあなたがまったく知らない人です。
そのため、慰謝料請求をする前にまず、相手の身元調査を行い、氏名と連絡先を最低限把握する必要があります。
調査する方法としては、メッセージのやりとりの中にヒントがあるケースもありますが、多くの場合は、
- 配偶者に尋ねる
- 探偵に調査を依頼する
などの手法が考えられます。
配偶者も相手の素性を知らないことが少なくないため、探偵に依頼するしか方法がないこともあります。
配偶者の不倫調査を探偵に依頼する際に、不倫相手の身元調査も併せて依頼するとよいでしょう。
(2)内容証明郵便の送付
不倫相手の身元が判明したら、いよいよ慰謝料を請求します。
請求方法としては、請求書を内容証明郵便にして送付するのが一般的です。
内容証明郵便にすることで相手に心理的な威圧感を与えることができますので、話し合いを有利に進めやすくなります。
また、慰謝料請求権の時効期間内に支払いを催告したことの証拠にもなります。
(3)話し合い
内容証明郵便の送付後、相手から連絡があれば話し合いを開始します。
不倫相手と話し合う際も感情的にならず、冷静に証拠に基づいて事実を指摘することが大切です。
相手が事実を認めて話し合いがまとまったら、口約束で終わらせずに示談書または誓約書を作成しておきましょう。
(4)裁判
内容証明郵便を送付しても不倫相手が反応しないか、話し合ってもまとまらなかった場合は、裁判(慰謝料請求訴訟)を起こすことになります。
裁判では不倫の事実とご自身が受けた精神的苦痛を証拠で証明できれば、勝訴します。ただ、不倫相手から以下のような反論が出ることもあります。
- 相手が独身だと思っていた
- 相手の婚姻関係がすでに破綻していると思っていた
不倫相手がこのように信じていたとしても、通常の注意を払えばそうではないことが分かったといえる場合は、慰謝料請求が認められます。
その場合は、裁判であなたの配偶者を証人として尋問し、不倫相手に対して偽っていたことを証言させることがポイントとなります。
(5)不倫相手が未成年者の場合の注意点
出会い系では、不倫相手が未成年者の場合も少なくありません。
未成年者(満20歳未満)は単独で法律行為ができないため、本人と示談をしても法的効力が認められない可能性があります。
そのため、示談交渉は法定代理人と行わなければなりません。
未成年者の法定代理人とは、通常は親権者のことです。
両親のどちらかの氏名と連絡先を調べて、その人と話し合いをすることになります。
不倫相手の身元調査を探偵に依頼する際には、相手が未成年なら親権者の身元調査も依頼しましょう。
6、配偶者が出会い系で不倫したら弁護士に相談を
配偶者が出会い系で不倫した場合も、基本的には通常の不倫の場合と同様に、離婚や慰謝料の請求が可能です。
ただし、ケースによっては請求できない可能性もあります。
実際に請求できるかどうかの判断や、請求できる場合も金額の検討や証拠集めをする際には、専門的な知識やノウハウが必要となります。
困ったときは、弁護士に相談するのが得策です。詳しい事情を話せば、
- 慰謝料請求の可否
- 請求できる金額
- 証拠の集め方
などについて専門的なアドバイスが得られます。信頼できる探偵を紹介してもらえることもあります。
弁護士に依頼すれば、配偶者や不倫相手との話し合いを代行してもらえますし、調停や裁判が必要となった場合にも全面的なサポートが受けられます。
弁護士の力を借りることで、納得のいく解決が期待できることでしょう。
まとめ
近年では出会い系を利用している人も多く、「バレなければいい」という考えで不倫相手を探し、実際に不倫している人も少なくありません。
出会い系による不倫でも、不倫は不倫です。見過ごせない場合は離婚や慰謝料請求、あるいは夫婦関係の修復を検討する必要があるでしょう。
どのように対応すればよいのか分からない場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。