任意整理をすると、その後に3~5年間程度の期間、返済を継続しなければなりません。
「本当に返済を継続していけるのか?」
「返済期間を5年以上や3年以下の期間にすることができないのか?」
など、気になる方が多いでしょう。
また、任意整理後には個人信用情報に事故情報が登録されて、ローンやクレジットカードの利用ができなくなってしまうことも問題です。
今回は、
- 任意整理の返済期間が何年か
- 手続きの流れや期間はどのようなものか
- 個人信用情報にとのくらいの期間事故情報が登録し続けられるのか
についてまとめて解説します。任意整理の疑問を解決して、不安をなくしましょう。
任意整理に関してはこちらの記事をご覧ください。
1、任意整理後の返済期間は何年?
まずは、一般的な任意整理の事案で、合意後の返済期間がどのくらいになるのか、見てみましょう。
(1)一般的には3年程度
任意整理をすると、手続き後に3年程度の間に借入金を完済する約束にすることが多いようです。
支払い方法は毎月払いです。
たとえば200万円の借入金がある方の場合、毎月の返済額は5万5、600円程度となります。
(2)返済期間を5年に延長することもできる
ただ、「返済期間が3年だと月々の支払金額が上がって苦しい」という方もおられます。
その場合には、返済期間を5年程度にまでなら延ばせることもよくあります。
たとえば200万円の借入金を5年で返済する場合、毎月の支払額は3万3、400円程度になります。
また、5年でもどうしても返済が難しい方の場合、債権者と交渉をして、7年や10年などに延ばせるケースもあります。
期間については柔軟に対応してくれる債権者も多いため、まずは任意整理において交渉してみましょう。
2、任意整理の手続きにかかる期間と流れ
任意整理をすると、解決までにだいたいどのくらいの期間がかかるのか、見てみましょう。
(1)自分で借入金の状況を整理する
任意整理をするときには、弁護士に依頼する必要性が高いです。
ただ、いきなり何の用意もなく相談に行っても、どの業者からどのくらいの金額の借入があるのかわからなければ、説明のしようがありません。
そこで、弁護士に相談に行く前には、自分で借入金の状況を整理しておきましょう。
- どこの業者からどのくらいの借入があり、
- 現在残高がどの程度になっているのか
をまとめ、債権者から送られてきた明細書や請求書などを整理するか、簡単な表を作成しましょう。
(2)弁護士へ任意整理を依頼する
次に、弁護士を探して借金問題の法律相談を受けましょう。
相談するときには、借金問題に強く、任意整理の解決実績の高い弁護士を選ぶべきです。
弁護士を信頼できると感じたら、費用などについてもしっかりと確認した上で、任意整理を依頼しましょう。
そうすると、弁護士が各借入先に対して「受任通知」を発送します。
貸金業法により、弁護士の介入後、債権者は債務者に直接督促してはならないことになっているので、受任通知が送られると債権者から電話や郵便で督促を受けることはなくなります。
任意整理の弁護士の選び方についてはこちらの記事も参考にしてください。
(3)利息の引き直し計算を行う
弁護士が受任通知を発送すると、債権者は弁護士事務所宛に「取引履歴」を送付してきます。
取引履歴の開示にかかる期間は業者によってかなりまちまちで、受任通知後数日で送ってくるところもあれば、数か月かかる業者もあります。
弁護士は取引履歴を受けとると、「利息制限法」という法律の定める利率に引き直して再計算します。
これにより、返済すべき借入金の金額を確定できます。
(4)交渉
引き直し計算などによって返済すべき借入金額を確定できたら、任意整理後にどのくらいの期間、どのようにして支払いを行うかを検討し、返済計画を立てます。
債務者本人も了承すれば、返済計画を債権者へ送付します。
債権者が提案を受け入れればその時点で和解できますし、了承しない場合には、話し合いを継続して合意点を探ります。
提案後和解までの期間は、早いと1週間ということもありますが、意見が合わずに交渉が難航した場合には数か月かかるケースもあります。
(5)和解契約
交渉によってお互いが納得できる条件に達したら、債権者との間で「和解契約」を締結します。
このときに、借入金を何年の期間に返済すべきかが確定します。
和解ができたら「和解契約書」という契約書を作成します。
弁護士が代理人になっている場合、弁護士が契約書を作成して、依頼者に送ります。
(6)返済開始
債権者との和解後は、いよいよ返済を開始します。
和解契約の翌月からの支払いになることが多いです。
完済しないと借入金がなくなりませんし、別の債務整理をしなければならないおそれもあるので、返済が始まったら慎重に生活をして、滞納しないように注意しましょう。
以上が任意整理の大まかな流れです。
(7)任意整理にかかる期間
任意整理にかかる期間(上記(2)〜(6))は、借入先の対応によって大きく異なります。
対応の早い債権者であれば1か月で解決することもありますが、対応の遅い債権者や条件交渉に時間のかかる債権者の場合には半年以上かかるケースもあります。
また、借入件数が増えると、その分解決にかかる期間も長引きます。
一般的には3か月~半年くらいの期間をみておくと良いでしょう。
3、任意整理により信用情報機関に残る情報と登録期間
次に、任意整理をしたときに「信用情報機関」の「個人信用情報」に事故情報が登録されて、いわゆる「ブラックリスト状態」になる問題について考えてみましょう。
(1)任意整理をすると、ローンやクレジットカードを利用できなくなる
任意整理などの債務整理手続きをすると、通常、手続き後にはローンやクレジットカードを利用できなくなります。
このことを「ブラックリスト状態」と呼びます。
ブラックリスト状態になるのは、「信用情報機関」が管理している、「個人信用情報」というローン・クレジットの利用履歴に関する情報に、ネガティブな情報が登録されるからです。
(2)任意整理後、信用情報に情報登録される期間
任意整理をすると、どのくらい個人信用情報に事故情報等のネガティブ情報が登録され続けるのでしょうか?
信用情報機関には、JICC、CIC、KSCの3種類があり、それぞれ対応が異なるので、分けて説明します。
① JICC|株式会社日本信用情報機構
JICCは、主に消費者金融が加盟している信用情報機関です。
JICCの場合、任意整理を開始した時点で事故情報が登録されます。
情報の残存期間は5年なので、任意整理後5年が経過すると、事故情報が消えます。
② CIC|株式会社シー・アイ・シー
CICは、クレジットカード会社や信販会社が加盟していることの多い信用情報機関です。
CICの場合、任意整理をしたことを理由に事故情報が登録されることはありません。
ただし任意整理をする人は、手続き前に支払いを滞納していることが多いので、その時点で延滞情報が登録され、ブラックになっています。
CICの場合、完済してから5年以内の期間、契約情報が保管されます。
そこで、任意整理前に滞納していた人の場合、完済してから5年の間、クレジットカードなどを利用できない可能性があります。
③ KSC|全国銀行個人信用情報センター
KSCは、銀行や信用金庫などの金融機関が主に加盟している信用情報期間です。
KSCの場合にも、任意整理そのものによって事故情報が登録されることはありませんが、「代位弁済」の情報が残ることにより、ブラック状態になってしまいます。
代位弁済とは、保証会社が銀行ローンを支払ってしまうことです。
銀行ローンを任意整理すると「代位弁済」が起こり、その時点から5年間、記録が維持されるので、その間は銀行や信用金庫などからの借入ができなくなります。
(3)信用情報を確認する方法
自分の個人信用情報を確認したい場合には、上記の3つの信用情報機関に対し、それぞれ個人信用情報の開示請求をしましょう。
郵送、ネット、窓口における申請により、開示してもらうことができます(KSCは郵送のみ)。
書類が手元に届いたら、内容を確かめて「異動」「代位弁済」「延滞」などの情報がついていないかチェックしましょう。
これらの情報がついている限り、ブラック状態ということなので、申請してもローンの審査は通らないでしょう。
任意整理後必要な期間が経過して、個人信用情報から上記のようなブラック情報が消されてからローンやクレジットカードの申請をしましょう。
(4)詐欺業者に注意
また、いったん個人信用情報にブラック情報が登録されると、後から消すことは不可能です。
ときどき「信用情報を消してあげる」などといって費用を取ろうとする業者がいますが、詐欺なので、引っかかってはいけません。
借入金の延滞や債務整理をしたら、一定期間は借り入れができないのは仕方ないので、潔く受け入れましょう。
4、信用情報機関に情報が残っている期間にできないこと
任意整理後のブラックリスト期間中は、どのようなことができなくなるのか、確認しましょう。
(1)クレジットカードの発行
通常、クレジットカードを新たに発行することができなくなります。
ただし発行できないのは自分名義のカードに限られます。
債務整理や延滞をしていない家族名義のカードであれば発行できますし、それを本カードとした家族カードも作れるので、家族のいる方は自分のカードを作れなくても、あまり不都合を感じないかもしれません。
(2)キャッシング
サラ金などのキャッシングも利用できなくなります。
サラ金の場合、JICCに加盟していることが多いので、任意整理後5年も経過すれば再び借入ができる可能性が出てきます。
(3)各種のローン
住宅ローンや車のローン、教育ローン、物品を購入するときのローンなど、いろいろなローンがありますが、ブラック状態になると信販会社の審査に通らないので、こうしたローンはすべて利用できなくなります。
たとえば携帯電話端末代金の分割払いも難しいと思っておいた方がよいでしょう。
(4)奨学金の連帯保証人
ブラック状態になると、他人の借金の連帯保証人になることもできません。
住宅ローンや他の銀行ローン、不動産担保ローンなどの保証もできませんし、子どもの奨学金の連帯保証人になることも難しくなります。
子どもが奨学金を借りるときには、配偶者や他の身内に保証人になってもらうか、機関保証(保証機関による保証)を利用する必要があります。
まとめ
任意整理には標準的に3~6か月程度かかりますが、弁護士に依頼していればさほどの負担はありません。
任意整理の手続き期間中は支払いをする必要もないので、多少長びいても困ることはないでしょう。
任意整理後の支払期間は3~5年程度かかりますが、その間はお金の無駄遣いをせず、確実に完済することが大切です。
借金を抱えて返済が苦しいならば、一刻も早く債務整理で解決すべきです。
お困りの際には、是非とも一度、ご相談下さい。