おまとめローンとは、複数ある借金を一つにまとめることができる金融商品のことをいいます。
今回の記事では、
- おまとめローンの基本的な知識
- おまとめローンの利用条件、審査基準
- おまとめローンのデメリット
等について解説をしていきます。おまとめローンを上手に使い、賢く借金に対応していきましょう。
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目次
1、おまとめローンとは
おまとめローンとは、複数の借入先から借金のある方向けに用意されている商品で、複数の借入をひとつの金融機関にまとめる金融商品です。
おまとめローンを利用することで、支払先や支払日が1つになるため、返済に関する手間が省け、完済までの具体的な計画も立てやすくなります。
(1)おまとめローンの基本知識
おまとめローンの基本的な知識として、「どのような借金をまとめることが出来るか」を説明します。複数のカードローンをまとめることはイメージがつきやすいと思いますが、では、ショッピングローンはどうなのか、クレジットカードのキャッシングのリボ払いはどうなのか、住宅ローンなどの大きな借金もまとめられるのか、友人から借りた借金はどうなのか、など、誰から、何のために借りた借金を対象にするのか、気になるところでしょう。
基本的には、「金融機関からの借入」はほとんどおまとめローンの対象になっています。そのため、ショッピングローンやリボ払いなどであっても、おまとめローンを利用することができます(ただし金融機関によっては対象外になっているものもあります。)。
しかしながら、友人から借りた借金など、プライベートな関係における借金は、おまとめローンの対象から除外されます。
というのも、後述しますが、おまとめローンは、審査の際、「信用情報」の確認がされます。金融機関以外からの借入については、この信用情報での確認ができません。そうすると、「他への借金返済」を唯一の貸出目的とするおまとめローンでは、貸出総額をいくらに設定すべきか判断ができないわけです。そのため、友人から借りた借金など、信用情報で確認ができない借金は、基本的にはおまとめローンの対象とすることができません。
また一般的なおまとめローン以外にも、住宅ローン、自動車ローンなど、比較的高額な借金をまとめることができる商品もあります。このような商品を利用することにより、住宅ローン等がある場合であっても複数の借金をまとめることができます。
(2)おまとめローンの審査
おまとめローンの審査では、主に
①支払能力
②借入残高、件数
③信用情報の記録
が判断対象となります。以下、順番にみていきましょう。
①支払能力
おまとめローンの審査の際、「支払能力がしっかりとあるかどうか」は基本的な判断材料になります。
「支払能力」とは、簡単にいうと「収入額」です。
当然ながら、収入が少ない場合はおまとめローンの審査には通りにくくなり、おまとめローンとしての借入額に比例して、審査通過に求められる収入額は高くなる傾向にあります。
また、年収の額だけではなく、勤務先や雇用形態なども一要素として考慮の対象となります。
②借入残高、件数
おまとめローンでは、他社からの借入残高、借入件数について審査の対象になります。
仮に年収が多かったとしても、既に多額の借入がある場合、つまり年収の3分の1を超える借金がある場合は審査には通りにくくなります(住宅ローン等の高額ローンを含む場合を除きます)。
複数社からの借入をまとめることを目的としたおまとめローンですが、借入先が4社以上ある場合は、借入件数多数として、審査の上でマイナスの評価になるケースもあるようです。
③信用情報機関の履歴
信用情報とは、クレジットカードやローン等の申込や契約に関する情報をいいます。信用情報機関であるCICやJICC、KSCが信用情報を記録しており、ローン等の支払状況(滞納状況)や債務残高、契約内容などが記載されています。
信用情報は、加盟しているクレジット会社等の中で情報が共有されることになるため、これを見れば、審査対象者の滞納の有無などが分かるのです。
おまとめローンの審査においてもこの信用情報はかなり重視される傾向にあり、債務の滞納などがある場合は審査は通りにくくなります。
なお、①、②、③で記載したことは一つの参考であり、明確な基準があるわけではありません。審査と金利は表裏一体(審査が緩ければ金利が高い)になっています。
2、おまとめローンを利用する目的・メリット
おまとめローンは主に、何のために利用されるのでしょうか。
本項では、おまとめローンの目的やメリットをみていきましょう。
(1)毎月の返済が楽になる
おまとめローンを利用すると、毎月の返済額を減らすことができます。
消費者金融、また銀行での借入においては、通常、「最低返済額」というものが設定されています。そのため、1つ1つの借入先に対し、最低返済額を上回る支払をしなければなりません。たとえば3社から借入れをしていれば、それぞれ最低返済額を上回る額を返済することになり、総額として高額化するわけです。
また、消費者金融などは高い金利が設定をされています(18%程度)ので、金利以上の支払をしなければ元金は減りません。
このようなことを総合して考えますと、複数の借入先への返済では月々の返済が高額になりやすい傾向にあります。
一方で、おまとめローンを利用すると、一つの借入先への返済で済みます。そのため、最低返済額について一つの会社との関係だけ考えれば良いため、毎月の返済額は低くなる傾向にあります。
また、おまとめローンでは金利が低めに設定をされていることが通常です。
このようなことから、月の返済額を減らせることになります。
(2)振込の手間が省ける
複数社から借金をしていると、返済先も違う、返済日も違うでしょう。そのため、振込返済をしている場合は、返済に大きな手間がかかってしまいます。
一方で、おまとめローンを利用することにより、1社にだけ返済すれば良くなるため、各金融機関への振込の手間が省けるのです。また、振り込む度に発生する振込手数料も抑えることができます。
(3)返済額が明らかになり、将来の返済計画が立てやすくなる
複数の借入先があると、金利の計算なども複雑化し、借金の総額が掴みづらくなります。そこへ、月の返済額が違うなどの事情も加わり、返済計画が立てにくいのが通例です。
一方で、おまとめローンを利用することで、返済額が明らかになり、返済計画を立てやすくなります。
借金の返済においては、毎月の返済をすることに目を取られがちです。
しかし、借金をした場合、目指すは「完済」です。
無計画で刹那的に返済をしていると、借金総額が多くなればなるほど、いずれ精神的にも苦しいものとなってきます。そのため、完済に向けた「返済計画」は、大変重要なものなのです。
3、おまとめローンと総量規制の問題
消費者金融のような貸金業者からの借入の際には、法律上、借りられる総額が規制をされています。このような規制を「総量規制」と呼びますが、おまとめローンでもこの総量規制が適用されるのか、以下解説をします。
(1)総量規制とは
総量規制とは、貸金業者が消費者に対し、年収の3分の1を超える貸付をすることはできない、という規制を言います。
貸金業者が過剰に貸付を行うことが出来てしまうと、消費者は収入に対して過度な借金を負ってしまう可能性があるためこのような制限が課されています。
総量規制は消費者金融のような貸金業者に対する規制ですので、銀行のような貸金業者以外からの借入の際には総量規制は適用されません。
(2)借金総額が総量規制を超えている場合、おまとめローンは不可?
結論から述べますと、総借入額が年収の3分の1を超えていても、おまとめローンでは総量規制の例外貸付となり、借入を行うことができます。
どうしておまとめローンでは総量規制の例外といえるのか、どの金融機関のおまとめローンでも総量規制の対象外なのか解説します。
①総量規制の例外について
そもそも総量規制は、消費者の利益を守ることにその制度趣旨にあります。そのため、消費者の利益の保護に支障を生ずることがない貸付であれば、総量規制の例外として貸付をできるとされています。
②おまとめローンも総量規制の例外に
そして、おまとめローンについても「顧客に一方的有利となる借換え」として総量規制の例外にあたります。そのため、貸金業者のおまとめローンであっても、年収の3分の1を超えて利用ができる可能性があります(もっとも、年収の3分の1を超えている場合、審査に通りにくいことは前述のとおりです。)。
なお、前述のとおり、貸金業者以外が提供しているおまとめローンは、そもそも総量規制の対象外ですので、総量規制の問題は生じません。
4、おまとめローンを選ぶ基準
次に、おまとめローンを選ぶ際の基準について説明をしていきます。
おまとめローンは、各金融会社から様々な商品が出ています。
おまとめローンを選ぶ際には、大きくは、
- 金利
- 限度額
- 審理内容
を検討・比較していく必要があります。
(1)金利
まずは、金利が低いものを選ぶことが基本です。
一般的に、労働金庫(いわゆる「ろうきん」)が一番安く、銀行、消費者金融といった順で金利は高くなる傾向にあります。
名称 | 商品名 | 上限金利 | 補足 |
中国ろうきん | フリーローン | 8.77% |
|
中央ろうきん | フリーローン | 5.8% | 構成員のみ |
近畿労金 | スマートチョイス | 5.5% | 団体会員限定 |
東京スター銀行 | スターワン乗り換えローン | 12.50% |
|
横浜銀行 | カードローン | 14.60% |
|
アコム | 貸金業法に基づく借換え専用ローン | 18% |
|
アイフル | おまとめMAX | 17.50% |
|
(2)限度額
金利の次に考えるべきことは、おまとめローンの限度額になります。
限度額とは借換えを行うことができる金額のことをいいます。
限度額が高いほど、借金を一つにまとめられる可能性が高く、追加で借入をすることもできるようになります。限度額の一応の目安としては、以下のとおりです。
①ろうきん系
300万円~500万円
②銀行系
500万円~1000万円
③消費者金融
300万円~800万円
(3)審査内容
審査の難易度については一概にはいえませんが、「金利」と「審査」には、一定の相関関係があります。つまり、金利が高い金融機関ほど審査は緩い、ということです。
審査を厳しくすることで、返済の可能性の高い顧客を囲うことができますが、一方で、「もしかしたら返済してくれないかも」という顧客を逃すことになります。
それと比して、審査を緩くすることで、「もしかしたら返済してくれないかも」という顧客をもターゲットとすることができる一方で、返済されないリスクも負うわけですが、このリスクを金利を高くすることで補うというわけです。
要するに、審査を緩くすることでなんらかのメリットを得て、それに対するリスクヘッジを設計できている会社は、審査を緩くすることができるのです。リスクヘッジは、金利を上げるだけではありません。グループ会社などでは利益を連結で考えるところもありますので、当該金融機関単体で考えなくて良いことから審査を緩くできるというところもあるでしょう。
どの金融機関がそれができているのかは、口コミなどで調べることになろうかと思いますが、ご自身の状況にあった審査体制をとっているところを選ぶことが重要です。
5、おまとめローンを使ったシミュレーション
本項では、おまとめローンを使ったシミュレーションをみていきましょう。
ここでは、
- 借入先を4社
- それぞれの借金額が50万円(合計200万円の借金)
とします。
(1)ろうきん(5パーセント)の場合
金利5パーセントの場合ですと、1年間で10万円の金利がかかるということを意識しなければなりません。
例えば、3年間での完済を考えた場合、毎月59,941円の返済が必要となります。
また、5年間での完済を考えた場合は、毎月37,742円の返済が必要となります。
(2)銀行(15パーセント)の場合
次に、金利15パーセントの場合にどのようになるか見ていきましょう。
金利15パーセントですと、1年間に30万円の利息がかかることになります。
3年間での完済を考えた場合、毎月69,330円の返済が必要となります。
また、5年間での完済を考えた場合、毎月47,579円の返済が必要となります。
(3)消費者金融(18パーセント)の場合
金利18パーセントですと、1年間に36万円もの利息がかかってくることになります。
3年間での完済を考えた場合、毎月72,304円の返済が必要となります。
5年間での完済を考えた場合、毎月50,786円の返済が必要となります。
このように金利によって毎月の返済額や総返済額は大きく変わってきます。
そのため、現在高い金利の貸付を受けている場合、おまとめローンを利用して少しでも低い金利に借り換えることは、借金返済を楽にする大きな手段となるのです。
| ろうきん(5%)の場合 | 銀行(15%)の場合 | 消費者金融(18%)の場合 |
1年間にかかる利息 | 10万円 | 30万円 | 36万円 |
3年間|月額の返済額 | 59,941円 | 69,330円 | 72,304円 |
5年間|月額の返済額 | 37,742円 | 47,579円 | 50,786円 |
6、おまとめローンのデメリット(注意点)
これまでおまとめローンのメリットを説明してきましたが、おまとめローンには注意すべきデメリットもあります。
(1)返済長期化の危険
おまとめローンの利用で最も注意をしなければならないことは、返済が長期化することです。月々の返済額を減らすことに注力をしすぎると、完済まで長期間を要することになります。
先に説明した返済シミュレーションを見るとわかるように、労金であっても長期間の返済になるとかなりの金額を利息に費やすことになります。早期に返済をしなければ利息ばかりを支払うことになってしまい、無駄な支出が増えてしまいます。借金は、返せるときに素早く返済する、ということが基本なのです。
(2)返済総額の増加
返済長期化と重複してしまいますが、借入の返済は借入額+利息であるということを強く意識する必要があります。
多重債務状態で法律相談にいらっしゃる方の多くは、高い買い物や遊びほうけている方ではありません。返済計画が甘く、利息の返済に追われている方なのです。
利息の危険性を強く意識し、早めに専門家への無料相談などを通じて借入の見直しを行いましょう。
(3)追加借入は原則行えない
一般的に、おまとめローンは、元々借りていた借入額以上を借りることはできません。
たとえば現在合計で200万円の借金がある場合に、おまとめローンを利用すると200万円の借り換えという形になります。
例外的に追加融資可能なおまとめローンもありますが、あくまでも例外的な商品となります。
またおまとめローンでは、基本的に返済のみを続けていくことになります。そのため新たに借入をしたい場合は、別の金融機関等へ相談することになります。
7、おまとめローン以外の多重債務の解決法
以上のように、おまとめローンについて解説をいたしました。
この中でも触れましたが、おまとめローンは、あくまでも複数の借入先を1つにまとめるものです。そのため借金「総額」については基本的に変わらず、むしろ返済の長期化による総債務額の増額も考えられるものです。
また、上記に触れた「限度額」を越している場合、すべての借金をまとめきることができません。
このような場合は、おまとめローン以外の方法により、多重債務状態を解決していく必要があります。
(1)債務整理の利用
その方法として、「債務整理」が挙げられます。
債務整理とは、借金の減額・免除を求めていくことです。
代表的な債務整理として、任意整理、自己破産、個人再生があります。
(2)債務整理のメリット
債務整理のメリットは、確実に総返済額を減らせる点にあります。
また、おまとめローンのメリットにも挙げられていた「返済計画が立てやすい」といった利点は債務整理でも享受できます。
債務整理では、多くのケースで弁護士に一任をすることになるため、毎月の返済計画をしっかりと立て、完済までの具体的な流れが分かることになります。
(3)債務整理の際の返済シミュレーション
債務整理のうち、任意整理と個人再生では3年間~5年間の間で毎月の支払額を決めていくことになります(自己破産では債務はゼロになります)。
任意整理では、将来利息はカットされます。そのため、例えば、200万円の借入れがある場合、任意整理を利用すると毎月55,555円を支払うことで、約3年で完済が可能になります。
まとめ
以上のように、おまとめローンには様々なメリットがあるため、多重債務で返済が苦しい場合は利用を考えてみると良いでしょう。
しかし、
「借金額が大きくなりすぎて自力では難しい」
「本気で早く完済したい」
と考えている方は、おまとめローンでは無く、債務整理を検討することも必要です。一度、無料の法律相談を利用してみると良いでしょう。