破産申立を成功させるために押さえておくべき8つのこと

破産申立という制度をご存知ですか?
借金を抱えて返済が苦しいと感じている方は、自己破産しようと考えることも多いのではないでしょうか?

破産するときには、裁判所に対する「申立て」の手続きが必要です。

破産申立をするときには、どのような方法をとれば良いのでしょうか?

また、破産申立を成功させるためのポイントがあるならば、押さえておくべきです。

破産申立は、自分で行なうこともできますが、多くの場合は弁護士などの専門家に依頼します(自分で行なう方の割合は2.66%(出典:日本弁護士連合会消費者対策委員会「2014年破産事件及び個人再生事件記録調査」))。

自分で破産申立を行おうと考えている方は勿論、弁護士に依頼としようと考えている方も申立ての流れを掴んでおくことによって、スムーズに手続きが進みます。

今回は、多数の破産申立を行ってきたベリーベスト法律事務所の弁護士が、破産申立の流れと申立てを成功させるためのポイントを解説します。

自己破産 手続き」に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。

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1、破産申立のゴールは免責確定

破産申立のゴールは免責確定

自己破産をしたら、借金がなくなる

一般的に、そのように理解されています。

ただ、この理解は、必ずしも正確ではありません

まず、借金がなくなるのは、破産の効果ではありません

破産は、債務と財産を清算するための手続きなので、これによって債務がなくなるわけではないからです。

自己破産したら借金がなくなるのは、「免責」をしてもらえるからです。

免責とは、借金を始めとした債務の支払い義務をなくすことです。

自己破産をするときには、破産後に免責をしてもらえるので、その効果により、借金をなくしてもらうことができます。

ただし、財産の隠匿等の免責不許可事由がある場合には、免責が得られない場合もありますし、税金の支払い債務等、免責の対象とならない債務もあります。

破産すれば、すべての債務が必ず免責されるわけではないことに留意しましょう。

2、破産手続は、申立てによって開始する

破産手続は、申立てによって開始する

それでは、破産をするときには、まずはなにから始めたら良いのでしょうか?

この場合、まずは「申立て」に向けた準備を進める必要があります。

破産は、裁判所を利用した手続きですが、裁判所での手続きというものは、利用したい人が「申立て」をすることで始まるものが多いからです。

裁判所の方から、何もしないのに破産手続きを開始してくれることはありません。

現在、破産免責を進めるときには、多くの場合、債務者が自分で破産申立をする「自己破産」の方法をとります。

そこで、以下ではまず、自己破産を申し立てる方法を説明していきます。

3、破産申立先の裁判所

申立て先の裁判所

破産の申立先の裁判所は、申立人の住所がある場所を管轄する地方裁判所です。

住所と居所(実際に住んでいる場所)が異なる場合には、居所を管轄する地方裁判所に申立てを行います

4、破産申立に必要な書類を用意する

破産申立に必要な書類を用意する

(1)破産申立書

自己破産(+免責)の申立てをしたいときには、まずは「破産申立書」を作成する必要があります。

破産申立書には、債務者の氏名や住所、連絡先、債権者の数、債権総額などを書き込みます。

そして、「破産者について、破産手続を開始する」という申立内容を記載します。

同時廃止の場合「破産手続きを廃止する」という文面も記載します。

破産申立書は、裁判所で定められた書式があるので、基本的にはその書式に従って書き込めばできあがります。

弁護士に自己破産の申立を依頼している場合には、弁護士が書類を作成してくれます

(2)債権者一覧表

自己破産の申立てのためには、「債権者一覧表」という書類を作成する必要もあります。

債権者一覧表とは、どのような債権者がいて、それぞれどのくらいの借入があるのかということをまとめた表のことです。

破産申立前に、債権調査を行い、その結果にもとづいて表を作成します。

債権者一覧表についても、裁判所で定められた書式があるので、それを使って作成します。

弁護士に手続きを依頼している場合には、弁護士が債権調査を行い、債権者一覧表を作成してくれるので、債務者は特に何もしなくても構いません。

(3)財産目録

自己破産を申し立てるためには「財産目録」という書類も作成しなければなりません。

財産目録とは、債務者にどのような財産があり、それぞれがどのくらいの価値を持っているのかをまとめた一覧表のことです。

たとえば現金や預貯金、生命保険や車両、不動産などについて、財産の種類ごとに、物の特定とそれぞれの評価額を記載していきます。

財産目録についても、裁判所に書式があるので、その書式を使って作成します。

弁護士に依頼していたら、債務者が集めた財産の資料にもとづいて、弁護士が作成してくれます。

(4)陳述書

自己破産をするとき「陳述書」という書類を作成する必要があります。

これは、債務者のこれまでの職歴、結婚離婚歴、家族の状況、家族の収入、借金をするに至った事情などを具体的に書き入れる書類です。

免責不許可事由がある場合には、その内容も書き入れないといけません。

作成するときには、弁護士が債務者から聞き取りを行い、書面を作成してくれます。

聞き取りの際には、これまでの職歴や借金が膨らんできた事情などを具体的に説明しないといけないので、弁護士との打ち合わせ前に、きちんと整理しておきましょう。

弁護士に手続きを依頼すると、書類は弁護士が作成してくれます。

(5)家計収支表

自己破産の申立てをするためには、「家計収支表」を作成する必要があります。

家計収支表とは、債務者の収入と支出の実情を記載した表です。

家計簿のようなものだと考えると良いでしょう。

月ごとの収入(手取り)と、具体的な支出額を記入します。

家族がいる人の場合、自分一人ではなく世帯全員分の家計収支を明らかにする必要があります。

家計収支表を作成するとき、1つ注意点があります。

それは、月の収支がマイナスになってはいけないということです。

現実には、お財布の中がマイナスになることはあり得ないので、マイナスになっていると、嘘だということになるためです。

そこで、前月からの繰り越し分なども考慮しながら、収支がマイナスにならないように、記載していきましょう。

家計収支表は、自己破産の申立前2ヶ月分のものが必要とされることが多いです。

自己破産を弁護士に依頼すると、家計収支表の書式を渡してもらうことができるので、まずはそれに書き込みましょう。

ペンで書くと、まちがってしまう可能性があるので、鉛筆やシャープペンシルを使うと良いでしょう。

書き込んだ家計収支表を弁護士に渡したら、弁護士が提出用のものを清書して作成します。

(6)添付資料

自己破産をするときには、かなりたくさんの書類を集める必要があります。

すべての書類がそろわないと申立をすることができないので、大変ですが、確実に集めていきましょう。

例えば、住民票や給与明細書、源泉徴収票、確定申告書、住民税の証明書、年金の証明書、預貯金通帳のコピー、生命保険証書のコピー、解約返戻金証明書、不動産の全部事項証明書、不動産の評価書類、退職金証明書、車検証、車の評価書類などが必要となります。

必要書類は、ケースによっても異なるので、自己破産を依頼している弁護士に確認をして、その指示を受けて集めていきましょう。

収集方法がわからない場合にも、弁護士に聞くと良いです。

5、破産申立に必要な費用

申立てに必要な費用

申立書などの書類を作成し、必要書類がそろったら、いよいよ破産の申立てを行います。

破産申立をするときには、費用がかかります

まずは、破産申立にかかる裁判所の手数料が必要です。

これは、1件1500円となり、収入印紙の形で支払をします

破産申立書に貼付して、裁判所に提出をします。

また、官報公告費用の支払いも必要です。

これは、破産の手続きについての決定を官報に掲載してもらうための費用です。

裁判所に対し「予納金」という形で支払います。

金額は、1万円あまりです。

同時廃止の場合には、基本的にこれだけですが、管財事件の場合には、これに足して「管財予納金」が必要になります。

管財予納金とは、破産管財人の報酬に充てられるお金です。

管財事件では、破産管財人が選任されて業務を進めていくことになるので、その報酬の引き当てが必要になるのです。

管財予納金も、予納金なので裁判所に納付します。

金額は裁判所によって異なりますが、弁護士申立の場合には最低20万円以上となることが多く、本人申立や複雑な事案の場合には、それより高額になることがあります。

以上により、同時廃止の場合には、自己破産申立にかかる費用は12000円程度ですが、管財事件の場合には、最低でも212000円程度の費用がかかることになります。

また、これらの申立てにかかる費用については、分割払いは認められず、すべて一括払いとなります(東京地裁では4回の分割払いが可能です)

費用の支払をしないと、破産手続を開始してもらうこともできないので、裁判所の費用だけはきちんと用意することが大切です。

6、破産申立後に手続開始決定が下りる

破産手続開始決定が下りる

破産の申立てを行い、特に不備がなければ破産手続開始決定が下りて、破産の手続きが開始します。

同時廃止の場合には、開始と同時に手続きが廃止されて、その後は免責についての判断が行われます。

申立方法に不備がある場合には、裁判所から補正(訂正)の指示が来るので、その内容にしたがって補正をしたら、破産手続開始決定を出してもらうことができます。

7、破産申立を自分で進めることが難しい場合

破産申立を自分で進めることが難しい場合

破産申立の際には、債権調査も必要ですし、たくさんの書類を集める必要もあります。

また、破産申立書を始めとした、いろいろな書類を作成する必要もありますし、裁判所からの補正の指示に従って適切に補正する必要もあります。

こうした手続きを、素人である債務者が自分一人で進めることは、かなりの困難を伴います。

自分で手続をしようとすると、いつまで経っても申立てができないままになることも多いですし、債務者が裁判所に行って破産申立をしようとすると、書記官から「弁護士に相談した方が良いですよ」と言われることもあります。

そこで、自己破産をしたいときには、弁護士に手続を依頼することが一般的であり、早く免責を受けられることにもつながるでしょう。

また、弁護士に依頼すると、弁護士が債権者に受任通知を送った時点で債権者は債務者本人に直接連絡を取ることが禁じられ借金の取り立てから解放されるというメリットもあります。

8、債権者から破産申立をされることもある

債権者から破産申立をされることもある

破産をするとき、債務者が自分で申立てをする自己破産が主流となっていますが、これとは異なり、債権者が破産申立をすることも認められています

この方法のことを、債権者破産申立と言います。

例えば、債務者がお金を払わないけれども財産を持っている場合には、債権者が破産を申し立てて、財産を配当に回させることができます。

債権者破産申立の場合には、免責の申立てが行われないので、破産手続き終了後に免責をしてもらいたいのであれば、債務者側から免責申立てを行う必要があります。

まとめ

借金問題に苦しんでいて、これから自己破産をしたい場合には、まずは一度、この記事を読んで自分で申立てをすることを検討してみてもよいでしょう。

しかし、自分では難しいと感じた場合は、債務整理に強い弁護士に相談してみると良いでしょう。

自己破産」に関する詳細はこちらの記事をご参照ください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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