芸能界でも夫がうつ病になるケースは多く見られます。たとえば、女性タレントの渡辺満里奈さんの夫であるお笑い芸人の名倉潤さんも、うつ病のため仕事を休んだというニュースがありました。夫が鬱っぽい状態に陥ると、心の健康だけでなく経済的な不安も押し寄せます。夫のうつ病に対処する際には、支える姿勢が非常に重要です。
この記事では、夫が鬱っぽい状態になった場合に、あなたができることや留意すべきポイントをまとめました。夫への接し方や、あなた自身が疲れたと感じたときの対処方法、そして経済的な心配を解消するためのアドバイスを提供します。これらの情報を活用することで、あなたと夫の未来に向けてより良い生活を築く手助けになることでしょう。
夫が鬱っぽい状態にあるとき、彼を支える姿勢は非常に重要です。この記事を通じて、あなたの理解とサポート力を高め、共に乗り越えていく力を身につけるお手伝いをいたします。
目次
1、妻が夫のうつ病に気づくきっかけ
夫がうつ病になったと知らされれば、誰もが「まさか」と驚くものです。
しかし、思い返せば仕事の愚痴や体調の不調を漏らすことが増えた、夜なかなか眠れない様子だった、急に朝が苦手になって寝坊しがちになったなど、生活の中で夫の何気ない変化に違和感を覚えていた妻も多く、近所の人から夫の不審な行動を指摘されて様子のおかしさに気付くケースもあります。
2、夫のうつ病のサイン
具体的にどのような言動がうつ病のサインとして考えられるのか、家庭内と仕事中それぞれのポイントをチェックしてみましょう。
(1)家庭内で見られるサイン
妻が普段目にする家庭の中で気付きやすいうつ病のサインには、次のようなものがあります。
- 口数が減って、家族と話をしなくなった
- 食欲がなく、食事を残すことが増えた
- 驚くほどネガティブな言葉を口にすることがある
- 休みの日は1日寝ている
- 寝付きが悪い・変な時間に起きるなど睡眠のリズムが乱れている
- 朝からぐったり疲れていることが多い
- 部屋を散らかしっぱなしにしている
- お風呂に入らない・歯を磨かない日がある
(2)仕事中に見られるサイン
一方、うつ病は職場での振る舞いにも次のような影響を及ぼしているケースがあります。
- 遅刻・欠勤することが増えた
- 小さなミスを繰り返すようになった
- 複数の物事を同時進行することができない
- 同僚とのコミュニケーションを避ける
- 話しかけても上の空なことがある
- ちょっとしたことでパニックに陥る
3、夫がうつ病を発症したときの対応
夫がうつ病と診断されたら、みなさんは妻としてどのように対応するべきなのでしょうか。
接し方のコツをまとめてご紹介していきます。
(1)アドバイスするよりも共感に徹する
うつ病の人が身近な人に何より求めているのは、論理的なアドバイスではなく共感です。
たとえそれが相手を思うゆえの助言であっても、「こうしたほうが良いんじゃない?」「私はこうするべきだと思うよ」というような言葉は相手を混乱させることにしかつながりません。
余計に症状を悪化させる事態も招きかねないため、まずは夫の言動をできる限り受け入れ、「そうだよね、辛いよね」と共感の姿勢を示しましょう。
(2)彼のペースを大切にしてあげる
はたから見ていてイライラすることがあっても、夫のペースに寄り添い、温かく見守ることが回復への1番の近道になります。
休職期間が長引くと生活費などの不安も膨らんでいくかと思いますが、焦っても良いことは何ひとつありません。
夫には夫のペースがあることを理解し、その頑張りを尊重しましょう。
(3)精神科や心療内科に診てもらう
うつ病を治療するためには、他の病気の場合と同じく病院を受診することが必要不可欠です。
夫とともに精神科や心療内科に足を運び、適切なカウンセリングを受けましょう。
4、うつ病の夫にしてはいけないこと
ここからは、うつ病の夫と暮らす上で気を付けたいポイントについてもあわせてお伝えしていきます。
(1)自殺をにおわせる発言をスルーしない
うつ病になると、気分が極度に落ち込むことから「自分なんていないほうが良いんだ」「今すぐ死にたい」というような自殺をほのめかす発言を繰り返すこともあります。
多くの場合それが直接的な行動につながるわけではないため、「あぁまた言ってる」と次第にスルーしたくなる気持ちも湧いてきますが、自殺願望を口にするのは「自分に注目してほしい」「自分のことを大切にしてほしい」という本人の心の叫びでもあります。
スルーしてしまうと「やっぱり自分は必要ないんだ」という確信を深めてしまうことにもつながるため、1回1回辛抱強く寄り添うよう心がけましょう。
(2)外出などを強制しない
ときには荒療治も必要!と無理に外に連れ出そうとするのは多くの場合逆効果です。
本人の心の準備ができていない段階で次のステップに進もうとしても、余計に事態をこじらせるだけになってしまいます。
本人の希望や医師の指示があった場合は別ですが、そうでない場合はどんな行動も強制することは避けましょう。
(3)反論したり言い負かすようなこと
夫の言うことに筋が通っていなかったり、明らかに間違ったことを口にしたりしていても、反論をするのはやめたほうがベター。
うつ病の患者は特に自分を否定されることに敏感で、ちょっとした意見でもすぐに「相手から攻撃されている」「自分は馬鹿にされている」と悪い方向に物事を解釈してしまいます。
(4)放置
たとえ「もう放っておいて!」と言われたとしても、その言葉通りに実行するのは少し待ったほうが良いかもしれません。
うつ病の人はとても心が不安定で、自分でも本当に望んでいることと実際に口にしていることのギャップに戸惑っているケースが多いです。
放っておいてと言われたら、「分かった、でもすぐそばにいるからね」というように、あくまでも夫のことを気にかけている・本当に放置するわけではないということを伝えて、様子を見てみましょう。
(5)無理な要求
うつ病になると、普段よりもできることの幅や心のキャパが小さくなってしまいます。
「これくらいできるでしょ?」と要求を押し付けるのではなく、できたことに対する喜びを共有するように考え方を変えていきましょう。
(6)集中しているとき無理に話しかける
1つのことに集中すると、なかなか気持ちを切り替えることができないのもうつ病の症状のひとつです。
無理に作業を中断させられることでパニックに陥ることもあるため、話しかけても返事がないときにはそのまましばらくそっとしておきましょう。
決してみなさんのことを故意に無視しているわけではありません。
5、うつ病の夫が働けないから生活が不安…家計の支出を抑えるコツ
夫が一時的に仕事を休職、場合によっては退職することで、これまでよりも毎月の収入がガクッと減ってしまったことを不安に感じている人も多いでしょう。
みなさんがもっと稼げる仕事に転職する、働く時間を増やす、副業を始めるなどの収入を増やす工夫も必要にはなりますが、やはり1番に手を付けるべきは支出の見直しです。
「見直すといっても、具体的に何をどうすれば良いのか分からない…」というみなさんは、ぜひ次のポイントに注目して今より節約を行うことができないかどうかチェックしてみてください。
- 食費:外食や中食の利用が多い人は、自炊の頻度を増やしてみましょう。
- 光熱費:電気のつけっぱなし・水道の流しっぱなしに気を付けましょう。
- 通信費:利用していない固定電話の解約や、携帯を格安スマホに乗り換えるなどの工夫をしてみましょう。
- 生命保険料:保障内容が過剰でないか見直しましょう。
- その他:クリーニングに出すのではなく自分で洗濯してアイロンをかける、読んでいない新聞は解約する、美容院に行く頻度を減らせる髪型にするなど、ちょっとしたことでも定期的に発生する支出を抑えることで、意外と大きな節約につなげることができます。
6、うつ病の夫がいる場合、公的制度を利用してお金の不安を減らす方法もある
自分でできる節約と並行して、次の公的制度を利用できるかどうか確認してみるのもおすすめです。
(1)傷病手当
傷病手当とは、業務外での病気やケガで会社を休職していても標準報酬日額の3分の2を受け取ることができる健康保険の制度のことで、自宅療養中の場合も対象になります。
支給期間は最大で1年半と長めなので、落ち着いてうつ病の治療を行いたいときにも家計の助けとなってくれるでしょう。
(2)労災保険
労災保険とは、業務中や通勤の際の病気やケガに対して保険給付を行う制度です。
こちらは、主に
- 支給金額(平均給与の80%。所得税、住民税が非課税。加えて治療額全額が支給)
- 支給期間(病気が治癒(症状固定)するまで)
の面で傷病手当より上をいきます。
また、治療中の解雇は認められないため、解雇の心配もありません。
一般的に、精神疾患にかかる労災認定はおりづらいイメージがあるかもしれません。
しかし現在は、精神疾患にかかる労災認定は3人に1人におりています。
業務に関連して発症した可能性が高い場合は、労災の申請をすべきです。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。
(3)障害年金
うつ病の症状が重度の障害と認定されれば、そのレベルによって以下の障害年金を受け取ることも可能です。
- 1級:975,100円/年
- 2級:780,100円/年
受給資格があるのはうつ病と初めて診断された日に国民年金に加入している人で、厚生年金・共済年金に加入している場合は上記の基礎年金+障害厚生年金を受け取ることもできます。
また、障害厚生年金には2級の下に3級の基準も設けられており、2級までに該当しなかった場合でも年金の対象となることがありますので、1度申請してみましょう。
(4)雇用保険
うつ病で退職を余儀なくされた場合はもちろん、病気やケガとは関係のない失業の場合も、元の賃金の50~80%が支給される雇用保険を利用できます。
支給期間は保険に加入していた期間と本人の年齢、退職が会社都合か自己都合かによっても異なり、90~330日間と幅がありますが、会社を辞めたときには忘れず手続きを行いましょう。
7、うつを克服して夫婦で楽しく生きていくために考えて欲しいこと
うつ病の夫をサポートすることはみなさんにとっても負担が大きく、「なぜ私ばかりがこんな苦労をしなくてはならないのか」とイライラしたり思いがけず涙があふれてきたりすることもあるかもしれません。
「もう限界だ」「別れたい」と離婚が頭をよぎる瞬間もあるかと思いますが、そんなときには1度冷静になって「自分は一体何に対して不公平感を抱いているのか」「具体的に相手に何をしてほしいのか」をじっくり考えてみましょう。
できれば現在うつ病で苦しんでいる夫にも同じポイントで自分の考えを整理してもらい、まとめた結果を夫婦で打ち明け合うと、お互いに誤解を解くことができ、新たな気付きを得ることもできます。
何より目に見えないモヤモヤとした気持ちがスッと解消されることを実感できると思いますので、ぜひ試してみてください。
8、一人で抱え込まないで!あなたの「SOS」を受け止めてくれる相談先
夫がうつ病の場合、妻はどうしても「サポート」する側です。
夫のうつ病という全く予期しない、また仕事でもないプライベートの時間におけるサポート業に、みなさん自身の心も悲鳴をあげることは当然のこと。支える側にも支える人が必要なのです。
あなたに手を差し伸べてくれる次の窓口へ、なるべく早めに相談しましょう。
(1)こころの耳
こころの耳は、うつ病の本人だけでなく支える家族のためのコンテンツも充実しているメンタルヘルス・ポータルサイトです。
うつ病の夫にどう対応して良いか分からない、自分自身の疲労も溜まってきた…というときに、悩みを相談することができます。
(2)保健所・精神保健福祉センター
行政の精神保健福祉センターも、心の病気に悩む人の強い味方です。
電話と面談の両方で相談が受け付けられています。
(3)カウンセラー
うつ病の夫を支える日々に疲れたら、その話を誰かに聞いてもらうだけでも気分が楽になることはあります。
プロのカウンセラーならみなさんの精神的な負担を減らすための方法も適宜アドバイスしてくれますので、また前向きな気持ちで夫と向き合えるようになります。
(4)インターネット掲示板
うつ病の家族を支える悩みは、同じ立場の人の体験談を読んだり苦労を共有したりすることで解消されるケースもあります。
まずは気軽にできるところから始めたいという場合、インターネット掲示板を利用してみるのがおすすめです。
(5)精神科や心療内科の医師
夫との接し方に悩んだら、夫を診察してくれている医師に相談してみるのもひとつの手。
治療の方針をよく理解することで、今夫にとって必要なものは何なのかがハッキリするというメリットもあります。
9、どうしても夫から離れたい、離婚したいと思ったら弁護士へ相談してみよう
うつ病の夫を支える日々はもう限界、でも夫を見捨てて離婚するなんて…と、気持ちの板挟みに苦しんでいるのはあなただけではありません。
実際、結婚直後に発覚した夫のうつ病と向き合うことに深い疲れと孤独を感じ、結婚から1年3ヶ月で離婚する道を選んだ女性もいます。
この女性は悩みを誰にも相談することができず、ひたすら1人で耐え続けた結果、最後には夫への愛情すら分からなくなってしまいました。
このように気持ちが追い詰められているケースでは特に、弁護士に相談することが最善の選択です。
弁護士なら離婚に関するあらゆるアドバイスを行ってくれることはもちろん、みなさんの精神的な負担ができる限り少ない形での解決方法も示してくれます。
弁護士を依頼する際のポイントや夫のうつ病が原因で離婚する場合の注意点などは、次の記事でもご紹介していますのであわせて参考にしてください。
まとめ
夫がうつ病と診断されたら、その後の生活には気を付けたほうが良いポイントがいくつかあります。
1番は夫に対する接し方で、何かを強制したり夫を否定するような言葉を投げかけるのは絶対にNG。
アドバイスも混乱を招く火種となる危険があるので、夫の話にはただただ共感を示し、優しく寄り添うことを心がけましょう。
また、休職や退職による経済的な不安を解消するためには、傷病手当などの公的制度の活用・家計の見直しが効果的です。
うつかも?と思ったときにチェックしたいうつ病のサインや、みなさん自身のSOSを受け止めてくれる相談先もご紹介しましたので、ぜひこれらを上手に利用してうつの克服を目指してみてください。