過払い金返還請求ができなくなる、いわゆる過払い金返還請求の手続きの期限についてご存じでしょうか?
最近だとテレビ等でもこのことを取り上げていますので耳にしたことがある方も多いでしょう。
期限を設け、過払い金返還請求ができなくなってしまうことはおかしいとも思いますが、支払う側の義務が永遠に続くことも酷なことです。そのため、法律上、一定の期間を経過すると過払い金返還請求ができなくなることが定められています。
今回は、
- 過払い金返還請求ができなくなってしまう期限
- 過払い金返還請求ができなくなる期限が到来するのを防ぐ方法
等について紹介したいと思います。ご参考になれば幸いです。
過払い金に関してはこちらの記事をご覧ください。
1、過払い金はそのままにしておくと返還請求できなくなってしまう?
はい。実は、過払い金は、発生しても放置しておくと一定の期間が経過することで請求できなくなってしまいます。したがって、過払い金が発生していることをご存じであれば、なるべく早く返還請求をするのが望ましいと言えます。
2、過払い金返還請求ができなくなる仕組みは?
(1)そもそも過払い金が発生する仕組みは?
過払い金返還請求ができなくなるのはなぜかを知るためには、そもそも 過払い金が発生する仕組みを知る必要があります。
過払い金とは、一言でいえば、払い過ぎた利息です。消費者金融やクレジット会社等の貸金業者からお金を借りていた人が、本来支払わなければいけない利率以上の利息を払わされていた場合には、その余分に支払わされていた利息分を貸金業者から取り返せますが、この余分に支払った利息分が過払い金という訳です。
本来払わなければいけない利率以上の利息を支払わされるという事態が生じたのは、利息に関する二つの法律である出資法と利息制限法が、上限利息についてそれぞれ異なる定めをしていたためです。出資法の上限利息を超える利率での貸付は罰則が科されますが、利息制限法の上限利息を超える利率での貸付については罰則が科されていませんでした。
そこで貸金業者は、利息制限法では違法ですが出資法では違法ではない範囲の金利(これを「グレーゾーン金利」といいます。)での貸付を行っていました。しかし、最高裁はこのグレーゾーン金利の支払いは無効であり、返還を請求できるとしたのです。
(2)過払い金が請求できなくなるメカニズムは?
このように、過払い金返還請求とは、本来支払わなくてよかったはずの金利の返還を求めるものです。少し難しい話になりますが、この請求権を法律的に説明すると、不当利得返還請求権です。不当利得とは、法律上の原因がないのに得た利益のことです。
最高裁が、グレーゾーン金利の支払いは無効、すなわち法律上の原因がないと判断しましたから、過払い金は不当利得になります。したがって、過払い金返還請求は不当利得返還請求ということになるのです。
そして、不当利得返還請求権も10年で時効によって消滅するとされているのです(最判昭和55年1月24日)。そのため、不当利得返還請求権である過払い金の返還請求権も10年経つと時効で消滅するため、過払い金の返還を請求することができなくなるのです。
問題は、いつから10年で返還請求ができなくなるかですが、これは、最終取引日を起算点とするとされています(最判平成21年1月22日)。通常、最終取引日は完済の日のことが多いですから、完済の日から10年経過すると過払い金返還請求権は時効によって消滅し、返還を求めることができなくなるのです。
途中で完済と借入を繰り返している場合等より詳しいことについては「過払い金返還請求する権利の消滅時効期間と時効を止める方法」をご覧ください。
3、過払い金返還請求ができなくなる時効消滅を回避する方法は2つ
ここまで読んでみて、「もしかしたら時効が迫っているかもしれない!」と焦られている方がいらっしゃるかもしれません。しかし落ち着いて下さい。実は過払い金請求の時効を止める方法があります。
(1)裁判上の請求
時効期間の進行を止め、ふりだしに戻す方法として裁判上の請求があります。裁判上の請求とは、訴訟の提起、支払督促の申立て、民事調停の申立てなどのことをいいます。時効期間が満了するのを回避するためには、訴訟の提起など裁判上の請求をするのが一番です。
(2)時間がない場合には「催告」を!
裁判上の請求を行うのが一番いいのですが、訴訟の提起や支払督促の申立てにあたっては、準備に一定の時間が必要になりますから、余裕がない場合もあるでしょう。そのような場合に利用したいのが「催告」です。
催告とは、内容証明郵便等の書面を送付して過払い金の返還請求をする意思を表示しておけば、消滅時効期間を6カ月間延長させられる制度です。消滅時効期間が迫っている場合には、まず内容証明郵便等を送って時効期間を延長させましょう。
そこから6ヶ月以内に訴訟等裁判上の請求を行えば、消滅時効期間が満了して過払い金が消滅することを回避できます。逆に、6ヶ月以内に裁判上の請求ができなければ、催告の効果が失われて消滅時効が完成してしまいます。
まとめ
以上、今回は、過払い金が請求できなくなる理由とそれを回避する方法についてご説明しました。貸金業者に対して過払い金がある方は、参考にしていただき、せっかくの過払い金を失わないようにご注意いただけますと幸いです。