突如として自身には関知していない借金の返済請求が届き、家族や友人に勝手に借金の連帯保証人とされていることに気付き、どのように対処すべきかお困りではありませんか?
もしかすると、自身が連帯保証人になることに同意していないから、問題ないと考えているかもしれません。しかし、実際には勝手に連帯保証人とされた借金を放置すれば、さらなるトラブルが生じる可能性が高いことを理解しておくべきです。
この記事では、勝手に連帯保証人にされた場合の適切な対処法について詳しく解説します。自身が知らないうちに保証人にされた借金について、どのように対処し、問題を解決するべきかをご案内します。
この情報が、連帯保証人としての突然の負担に直面している方々にとって有益であることを願っています。
目次
1、勝手に連帯保証人にされたときの2つの重要ポイント
自分の知らない間に借金の連帯保証人に勝手に契約されてしまっていたというトラブルが発生した場合、確認すべき2つの重要なポイントがあります。
勝手に連帯保証人契約を結ばれてしまっていることに気付いた場合には、次の2つのポイントについて確認を行いましょう。
- 連帯保証人にされた経緯
- 債権者側の落ち度
(1)勝手に連帯保証人にされたときの重要ポイント1〜連帯保証人にされた経緯
まずは、勝手に連帯保証人にされてしまうまでの経緯について探りましょう。
連帯保証人になるには、保証契約書に署名や実印を押すなどして合意しているはずです。
親や子供など家族が勝手に印鑑を持ち出して保証人の押印しているようなケースもあれば、口約束で保証人になるという約束を以前にしていたようなケースもあるでしょう。
また、闇金業者に緊急連絡先として誰かが情報を伝え、勝手に保証人扱いされてしまっているようなケースも考えられます。
勝手に連帯保証人にされてしまった経緯によって今後の対応や結論も変わってくるため、連帯保証人にされてしまった経緯を探ることが重要です。
裁判においても、連帯保証人にされた経緯を明らかにすることで連帯保証人になる意思がなかったことが証明されやすくなります。
(2)勝手に連帯保証人にされたときの重要ポイント2〜債権者側の落ち度
勝手に連帯保証人にされた時の2つ目の重要ポイントは、「債権者(お金を貸した人)側の落ち度」です。
連帯保証人になる意思のない人が連帯保証人になってしまっているということを、なぜ債権者は知らなかったのかという点が重要になってきます。
もし連帯保証人になる意思がなかったことを債権者側が知っていたのであれば、その保証契約は無効になります。
また、債権者側が嘘をついていたような場合には詐欺を主張することで契約を無効にできる可能性が高まります。
債権者側の落ち度の有無や、どの程度の落ち度であるのか探ってみましょう。
2、パターン別|勝手に連帯保証人にされた場合の結論
勝手に連帯保証人にされた場合でも借金の返済義務があるのかどうかが一番関心の大きな部分でしょう。
勝手に連帯保証人にされてしまった場合にその借金に返済義務があるかどうかの結論は、連帯保証人にされてしまった経緯によって変わってきます。
最も多い経緯としては、
- 「債務者と債権者が勝手に約束してしまうパターン」
- 「債務者が勝手に印鑑を押印したパターン」
の2つのパターンが挙げられます。
それぞれのパターン別にどのような結論になるのか見ていきましょう。
(1)債務者と債権者が勝手に約束していた
債務者と債権者が勝手にあなたを保証人になる約束を行い、連帯保証人になってしまっているようなケースが1つめのパターンとして挙げられます。
例を挙げると、債務者(お金を借りた人)が債権者に勝手に「●●(あなた)が保証人になると言っている」と口約束をしてしまいます。
そして、その口約束から債権者が債務者の返済できない借金の請求を保証人であるあなたに対して行っているのです。
この場合、あなたが保証義務を追うようなことはありません。
保証人になる契約を「保証契約」と言いますが、保証契約は口約束では効力を生じないことが民法446条2項に規定されています。
そのため、多くの契約は口約束でも法律上の効力が認められますが、保証契約の場合は保証契約書が作成されていなければ保証契約は成立しないという扱いになっています。
(2)債務者が保証契約書に勝手に保証人の印鑑を押印した
債務者が勝手に保証人の印鑑を保証契約書へ押印してしまい、借金が請求されるようになるというケースもあります。
この場合、どのようにして債務者があなたの印鑑を勝手に押印することができたのか、経緯ごとに結果が異なります。
- 保証人の知らない間に印鑑が持ち出されてしまった場合
- 印鑑を偽造されてしまった場合
などでは、無権代理(本人に代わって契約を結ぶなどの権利のない者が勝手に代理人として振舞うこと)としてその保証契約が無効になることが民法第113条に規定されています。
しかし、代理権なしに債務者が保証契約に押印したとしても、責任を負わなければならないようなケースもあるので注意が必要です。
- 保証人が自身の印鑑を債務者が使用することを積極的に認めていたような場合
- 内容はよく分かっていなかったものの保証契約に押印することを承諾するような言葉を発していたような場合
には表見代理(無権代理であっても相手方を保護するために本人に効果が生じるという制度)として認められる可能性があります。(民法第109条〜112条)
表見代理については次の項目で更に詳しくご紹介します。
3、勝手に連帯保証人にされていた場合に返済義務が生じるケース
ここまで確認してきたように勝手に連帯保証人にされてしまっていた場合でも、返済義務が生じるようなケースがあります。
知らずに借金の請求を無視していれば、いつの間にか請求額が膨れ上がってしまっていたというような事態になり兼ねません。
どのような場合に連帯保証人の返済義務は生じるのかここで更に詳しく確認しましょう。
- 表見代理が成立するケース
- 債権者が金融機関等である場合は表見代理は成立しづらい
(1)表見代理が成立するケース
代理権のない第三者が代理として契約を締結してしまうことを法律上では「無権代理」と呼び、本人がその追認(遡って事実を認めること)をしなければ契約は無効になることが民法第113条に規定されています。
債務者が保証契約書に勝手に保証人の印鑑を押印することで連帯保証人にされていた場合、保証人の意思で依頼していないのであれば無権代理に該当します。
しかし、この場合、債権者側に何らかの落ち度がなければ債権者側に損害が発生してしまう恐れがあります。
そのため、第三者があなたの代理人であると債権者が信じることが妥当であるような場合には、債権者側の信頼を守る「表見代理」と言う制度が存在しています。
表見代理が成立すれば無権代理の保証契約も有効になるため、保証人は保証義務を負うことになります。
- 実際に代理権は与えていないものの、代理権を与えたような言動や行動があった:(代理権授与の表示による表見代理/民法第109条)
- 代理権を与えていたものの、代理人がその権限外の行為をした:(権限外の行為の表見代理/民法第110条)
- 代理権がなくなった後に、代理人だった人がまだ代理権があるかのように振舞った:(代理権消滅後の表見代理/民法第112条)
上記のような場合に、表見代理が成立すると考えられています。
(2)債権者が金融機関等である場合は表見代理は成立しづらい
繰り返しになりますが、勝手に連帯保証人にされた場合でも、表見代理が成立すれば連帯保証人として返済義務が生じる可能性があります。
しかし、債権者が金融機関などの「業者」である場合、表見代理は成立しづらい傾向にあります。なぜならば、債権者側が過失もなく何も知らない状態の「善意無過失」であることが表見代理の要件だからです。
銀行などの金融機関は金銭消費貸借のプロであり、保証人に本当に保証する意思があるのか調査する義務があると考えられています。そのため、本人の意思確認を怠っている場合には、債権者側にも落ち度があったと判断されることが多くなっています。
4、勝手に連帯保証人にされたことが判明した際の対処手順
自分が勝手に連帯保証人にされてしまうことは、誰しも想定していない出来事のはずです。そのため、連帯保証人になってしまっていることに気付いた場合、焦りや困惑から請求された金額を支払ってしまうという方もいます。
しかし、いきなり請求通りに支払わず、まずは次の対処を行うようにしましょう。
- 請求を勝手に放置しない
- 事実関係を整理
- 弁護士に相談
- 債権者へ内容証明郵便を送付
(1)請求を勝手に放置しない
身に覚えのない借金の返済請求がきた場合、自分には関係ないと無視してしまう方も多いでしょう。
また、この記事を読んで、勝手に連帯保証人にされたものの自分には支払い義務はないと判断し、請求を放置してしまう方もいるかもしれません。
しかし、連帯保証人として債権者に請求されるということは、債権者側はあなたを連帯保証人であると考えていることになります。
そのため、そのまま請求を放置しておけば、
- 裁判
- 強制執行
などに発展する恐れもあります。
身に覚えがないような場合や、支払い義務がないというような場合でも、請求を放置せずにきちんと確認するようにしましょう。
(2)事実関係を整理
なぜ勝手に連帯保証人にされてしまったのか経緯を整理してみましょう。
債務者が債権者と勝手に口約束で保証人にしている場合であれば、その契約は無効であることを主張することができます。
一方で、保証契約書に勝手に押印等されているような場合ならば、債務者がどのような経緯で押印したのかを探る必要があります。
その経緯によって本人に責任が生じるか否かが決まります。
債務者と話ができるようであれば、どのような経緯で保証契約を行ったのか詳しく聞いてみてください。
(3)弁護士に相談
事実関係を整理できたら、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。
自分は連帯保証人になることに合意していないと主張したとしても、それでは済まないことが大半です。そのため、専門家である弁護士に相談し、状況を説明することで
- 今後の適切な対応
- 今後の流れ
について見通しをつけるべきだと言えます。
ご自身で債権者とやり取りを行った場合、身に覚えのない保証契約も追認したと判断されてしまうようなことがあります。そうなれば、保証義務が発生してしまうため、債権者とやり取りを行う前に弁護士に相談することをおすすめします。
(4)債権者へ内容証明郵便を送付
自分の意思ではなく、連帯保証人になってしまったことを債権者に伝える書面を準備し、内容用証明郵便で送付します。
この際に、保証契約を追認するつもりはないことも明記しましょう。
内容証明郵便の送付はご自身でも準備することができますが、弁護士に依頼すれば弁護士名で送付することができるため効果的だと言えます。
内容証明郵便の送付と同時に保証契約書の開示も請求し、債権者からの返答を待ちます。
この後の流れについてはケースバイケースになり、債権者側の出方次第になるでしょう。
債権者側が保証契約の有効性を主張し、あなたが保証契約を全面拒否する場合には裁判に発展する可能性があります。
一方で、債権者側が債務者の返済計画の見直しに応じることや、新たな担保の要求に応じるなどして解決するようなケースもあります。
また、債務者とあなたの関係性によっては、あなた自身が一部金額の返済をすることに債権者が応じるかもしれません。
いずれにしても
- 債権者と冷静な話し合いを行いたい場合
- 相手が金融機関になるような場合
にはプロである弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
勝手に保証契約書に署名や押印をされた場合でも、債権者から借金の返済請求が届くことがあります。
身に覚えがないため放置してしまうことや焦って支払ってしまうことは避け、まずは冷静に保証人になってしまった経緯を探るようにしましょう。
そして、一人で対応しようとはせずに、専門家である弁護士に相談してみてください。
ご自身で対応すれば、更なる大きなトラブルに発展してしまう恐れもあるため、慎重に対処することが大切です。
弁護士に相談することで適切な対処法やアドバイスを得ることができ、トラブルの解決を目指したサポートを受けることができます。