借地権を地主に買い取ってもらう3つのコツとは?弁護士が解説

借地権 地主に買い取ってもらう

借地権を相続しても、そこに住む予定がないことから地主に買い取ってもらうことを考えている方もいるかもしれません。
地主としても借地権を買い取ることによって、その土地を自由に有効活用することができますので、地主が買い取りに応じてくれる可能性は十分にあります。
ただし、借地権を地主に買い取ってもらうには、地主との交渉が必要になりますので、交渉のコツを押さえた上で話し合いを進めていくことが大切です。

今回は、

  • 借地権を地主に買い取ってもらう場合の価格相場
  • 借地権を地主に買い取ってもらうメリット・デメリット
  • 借地権を地主に買い取ってもらうための交渉のコツ

などについて解説します。

この記事が、借地権の売却でお悩みの方の手助けとなれば幸いです。

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1、借地権を地主に買い取ってもらう権利はあるのか?

借地権とは、建物を所有する目的で地主から借りた土地を利用する権利のことをいいます(借地借家法2条1号)
普通借地権では存続期間が30年以上(借地借家法3条)、一般定期借地権では存続期間が50以上(借地借家法22条1項)とされていますので、借地権者が死亡した場合には、借地権を相続することもあるでしょう。

このような場合には、借地権を相続した相続人が引き続き土地を利用することができます
しかし 
、遠方に居住しているなどの理由で借地権の対象となっている土地を利用する予定がないという場合には、地主に借地権を買い取ってもらうことができるのでしょうか。

結論からいえば、借地権者には、地主に対して借地権の買い取りを求める権利はありません。
そのため、借地権を買い取ってもらうには地主と話し合って交渉をまとめる必要があります。

2、借地権を地主に買い取ってもらう場合の価格相場

借地権を地主に買い取ってもらう場合の価格相場

借地権を地主に買い取ってもらう場合には、どのくらいの価格で買い取ってもらうことができるのでしょうか。

(1)地主が要求する場合

借地権の買い取りを地主側から打診する場合には、「自用地評価額×借地権割合」で計算をした借地権評価額が売却金額の相場になります。

自用地評価額とは、更地の状態での土地の評価額のことをいい、価格の決定方法には、以下の4種類の方法があります。

  • 実勢価格
  • 公示価格
  • 路線価
  • 固定資産税評価額

借地権割合とは、土地の権利のうち借地が何割を占めているのかを示す割合です。
借地権割合は、国税庁のウェブサイトに掲載されている「路線価図・評価倍率表」から確認することができ、30~90%(10%刻み)で設定されています。
一般的に、地価が高いほど借地権割合も高くなる傾向にあり、住宅地では60~70%、商業地では80~90%の借地権割合が一般的です。

そのため、一般的な宅地の借地権の場合には、更地価格の60~70%が借地権の買い取り価格の相場になります。
ただし、地主から借地権の買い取りを提案する場合には、借地人が転居する際の引っ越し費用などが上乗せして支払われることもあります。

(2)借地人が要求する場合

借地権の買い取りを借地人側から打診する場合には、上記の借地権評価額よりも借地権の買い取り価格が低くなります。
なぜなら、地主は、存続期間中は土地を貸すことを前提としており、自らお金を払ってまで土地を取り戻す必要性がないからです。

具体的な金額については、地主との交渉によって決めることになりますので、あくまでもケースバイケースにはなりますが、更地価格の50%程度が借地権の買い取り価格になることが多いです。

3、借地権を地主に買い取ってもらうメリットとデメリット

借地権を地主に買い取ってもらうメリットとデメリット

借地権を地主に買い取ってもらう場合には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

(1)メリット

借地権を地主に買い取ってもらうメリットとしては、以下のものが挙げられます。

地代の支払いの負担から解放される

借地権を相続したとしても、借地上の建物を利用する予定がない場合には、毎年借地料の負担だけが生じてしまいます。
借地権の存続期間が何十年も残っている場合には、借地料の支払いの負担も非常に大きくなります。

借地権を地主に買い取ってもらうことができれば、無駄な地代の支払いをする必要がなくなるというメリットがあります。 

第三者に売却するよりも交渉がスムーズ

借地権を売却する方法には、地主に買い取ってもらう方法以外にも第三者に売却する方法があります。

第三者に借地権を売却する場合には、借地人と第三者との合意だけでは足りず、地主の承諾が必要になります。
そのため、借地人は、借地権の買い手である第三者を探さなければならないという負担と地主から承諾を取り付けなければならないという負担が生じてしまいます。

地主に売却する場合には、地主の承諾を得るだけで足りますので、交渉がスムーズに進むといえます。

(2)デメリット

借地権を地主に買い取ってもらうデメリットとしては、以下のものが挙げられます。

地主の資力によっては希望額での売却ができない可能性がある

借地権を地主に買い取ってもらう場合には、ある程度の価格相場がありますので、相場に近い金額で売却ができるように地主と交渉を進めていきます。

しかし、地価の高い土地では、借地権価格も高額になりますので、地主の資力によっては、借地人が希望する金額で借地権を買い取ってもらうことができない可能性があります。

地主に足元を見られるおそれがある

借地人側から借地権の買い取りを打診する場合には、地主には借地権の買い取りに応じる動機がないことが多いです。
借地人から借地権の買い取りの打診を受けたとしても、それに応じる義務はありませんので、借地人が借地権を手放したいという弱みにつけ込んで、借地権の買い取り価格を下げられてしまうおそれがあります。

お互いの需要と供給に基づいて売却を行う第三者への売却とは異なり、地主によ買い取りの場合には、適正な金額で売却することが難しい場合もありますので注意が必要です。

4、借地権を地主に買い取ってもらうための交渉のコツ

借地権を地主に買い取ってもらうためには、以下のようなコツを押さえた上で、交渉を進めていくとよいでしょう。

(1)不動産会社に依頼する

借地権を地主に買い取ってもらうためには、地主と交渉を行わなければなりません。
しかし、多くの借地人が借地権の買い取り交渉をするのが初めての経験になりますので、ひとりで交渉をするのが難しい場合もあります。

そのような場合には不動産会社に借地権の買い取り交渉の仲介を依頼するとよいでしょう。
不動産会社には、専門的なノウハウと豊富な経験がありますので、適正な借地権価格を算定し、地主との間でスムーズな交渉を進めてもらうことができます。

ひとりでの交渉に不安を感じる場合には、専門業者のノウハウを活用する方が得策となるでしょう。 

(2)適正価格で買い取ってくれる業者を見つけた上で交渉する

地主に借地権の買い取りを打診する前に、適正価格で買い取ってくれる業者(または第三者)を見つけることも有効な手段となります。

地主以外の買い取り先を見つけておけば、地主との交渉において、「第三者に売却されるか、買い取るか」という二者択一の選択を迫ることができます。当初は、借地権を買い取る意向がなかったとしても、「第三者に売却されるくらいなら自分が買い取る」と翻意して、適正価格で買い取ってくれる     可能性もあります。

ただし、そのような買取り業者を自分で見つけることは容易ではないかもしれません。不動産会社または弁護士のネットワークに頼った方がよいでしょう

(3)多少は譲歩の姿勢を見せる

借地権の売却価格にはある程度の相場がありますが、実際の売却は、当事者同士の交渉によって行うことになりますので、必ずしも相場どおりの金額で売却できるとは限りません。
相場での買い取りに固執していると、借地権の買い取りに応じてもらえないこともありますので、一定の譲歩をみせることも大切です。

なお、第三者に借地権を売却する場合には、地主から承諾が得られたとしても借地権評価額の10%程度を承諾料として地主に支払うのが一般的です。地主に借地権を買い取ってもらえれば承諾料が不要になりますので、買取価格がある程度下がるのはやむを得ないといえます。
ただし、どこまで譲歩すればよいのかについて、やはり不動産会社または弁護士のアドバイスを受けた方がよいでしょう。 

5、借地権の買取交渉が決裂した場合の対処法

借地権の買取交渉が決裂した場合の対処法

借地権の買取交渉が決裂した場合には、以下のような対処法を検討しましょう。

(1)第三者に売却する

借地権の売却は、地主に買い取ってもらう方法だけではなく第三者に売却するという方法もあります。
地主から借地権の買い取りを断られてしまった場合には、第三者への売却を検討しましょう。

ただし、第三者に売却する場合には、地主の承諾が必要になりますので、別途地主との交渉が必要です。
また、地主の承諾が得られた場合には承諾料の支払いも必要になります。

(2)借地非訟を申し立てる

借地権の買い取りに応じてくれる第三者が見つかったとしても、地主が借地権の売却に承諾をしてくれない場合があります。そのような場合には、裁判所の借地非訟手続きを利用するとよいでしょう(借地借家法19条1項)

借地非訟手続きとは、借地契約に関する紛争を解決するための法的手続きのことです。裁判所が相当と認めれば地主の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。
それによって、地主の承諾がなくても借地権の売却を行うことが可能になります。

6、借地権の買い取りで地主ともめたら弁護士に相談を

借地権の買い取りで地主ともめたら弁護士に相談を

借地権の買い取りで地主ともめている場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

(1)借地権者に代わって地主と交渉ができる

地主に借地権の買い取りを求める場合には、地主と交渉を行わなければなりません。
地主には、借地権の買い取りに応じる義務はありませんので、うまく交渉を進めなければ、地主に借地権の買い取りを断られてしまうおそれがあります。

弁護士であれば、借地権者に代わって地主と交渉ができますので、借地権の買い取り相場を踏まえた適正金額での交渉が可能です。
交渉に関する専門的な知識とノウハウがありますので、譲歩する姿勢を見せつつ、円満に解決することが期待できます。 

(2)借地非訟手続きが必要になった場合も任せることができる

地主が第三者への借地権の売却に応じない場合には、裁判所の借地非訟手続きを利用する必要があります。
しかし、ほとんどの方が借地非訟手続きを利用するのが初めてですので、ひとりではどのように進めればよいのかわからないことが多いでしょう

弁護士であれば借地非訟手続きの対応を熟知していますので、安心して任せることができます。 

借地権を地主に買い取ってもらう際のQ&A

Q1.借地権とは?

借地権とは、建物を所有する目的で地主から借りた土地を利用する権利のことをいいます。

Q2.借地権を地主に買い取ってもらう権利はあるのか?

普通借地権では存続期間が30年以上(借地借家法3条)、一般定期借地権では存続期間が50以上(借地借家法22条1項)とされていますので、借地権者が死亡した場合には、借地権を相続することもあるでしょう。

このような場合には、借地権を相続した相続人が引き続き土地を利用することができます
しかし 
、遠方に居住しているなどの理由で借地権の対象となっている土地を利用する予定がないという場合には、地主に借地権を買い取ってもらうことができるのでしょうか。

結論からいえば、借地権者には、地主に対して借地権の買い取りを求める権利はありません。
そのため、借地権を買い取ってもらうには地主と話し合って交渉をまとめる必要があります。

Q3.借地権を地主に買い取ってもらうメリットとデメリット

・メリット

地代の支払いの負担から解放される

借地権を相続したとしても、借地上の建物を利用する予定がない場合には、毎年借地料の負担だけが生じてしまいます。
借地権の存続期間が何十年も残っている場合には、借地料の支払いの負担も非常に大きくなります。

借地権を地主に買い取ってもらうことができれば、無駄な地代の支払いをする必要がなくなるというメリットがあります。 

第三者に売却するよりも交渉がスムーズ

借地権を売却する方法には、地主に買い取ってもらう方法以外にも第三者に売却する方法があります。

第三者に借地権を売却する場合には、借地人と第三者との合意だけでは足りず、地主の承諾が必要になります。
そのため、借地人は、借地権の買い手である第三者を探さなければならないという負担と地主から承諾を取り付けなければならないという負担が生じてしまいます。

地主に売却する場合には、地主の承諾を得るだけで足りますので、交渉がスムーズに進むといえます。

・デメリット

地主の資力によっては希望額での売却ができない可能性がある

借地権を地主に買い取ってもらう場合には、ある程度の価格相場がありますので、相場に近い金額で売却ができるように地主と交渉を進めていきます。

しかし、地価の高い土地では、借地権価格も高額になりますので、地主の資力によっては、借地人が希望する金額で借地権を買い取ってもらうことができない可能性があります。

地主に足元を見られるおそれがある

借地人側から借地権の買い取りを打診する場合には、地主には借地権の買い取りに応じる動機がないことが多いです。
借地人から借地権の買い取りの打診を受けたとしても、それに応じる義務はありませんので、借地人が借地権を手放したいという弱みにつけ込んで、借地権の買い取り価格を下げられてしまうおそれがあります。

お互いの需要と供給に基づいて売却を行う第三者への売却とは異なり、地主によ買い取りの場合には、適正な金額で売却することが難しい場合もありますので注意が必要です。

まとめ

借地権を手放したいという場合には、借地権を地主に買い取ってもらえる可能性もあります。 
ただし、買取を求める法的な権利はありませんので、地主に借地権を買い取ってもらうためには、交渉を進めていかなければなりません。

借地権を適正な価格で買い取ってもらうためには、法的知識や交渉のノウハウが必要になりますので、まずは、弁護士に相談をするようにしましょう。

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