「休職診断書をもらわないと会社を休職することはできないのかな?」と気になってはいませんか?
精神的にギリギリのところまでストレスが溜まってしまった人の中には、会社を休職することを考えている人が少なくありません。精神的に追い詰められ、休職診断書をもらいに行く元気すら残っていない人もいるでしょう。
休職制度とは、何らかの身体的・精神的事情により、労働者が労働をすることができなくなった場合に、会社との労働契約を保持したまま就業を免除される仕組みです。
また、休職診断書とは休職が必要である旨の医師の診断を証明する診断書です。休職制度の細かい規定については会社ごとに内容が異なります。
そこで今回は、
- 休職の手続きをする際に休職診断書が必要なのか
- 休職の手続きの流れ
等について解説します。
仕事休みたいとお悩みの方は以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、休職に休職診断書は必須?休職診断書の貰い方
ここではまず、休職する際に休職診断書は必須となるのかを確認していきましょう。
(1)休職の際に休職診断書の提出義務はあるのか
休職の際に、休職診断書の提出義務があるのか気になっている人も多いと思いますが、休職診断書の提出は基本的には任意です。
休職診断書の提出を求めるかどうかは、
- 休職の理由
- 就業規則(ここに義務として記載されていると提出が必須)
によって判断するのが一般的です。
一概に必須とは言えませんが、多くの場合提出が必要になるので、上長などに確認をしましょう。
(2)まずは会社の休職制度について確認する
休職を検討している人の中には、自分が勤めている会社の休職制度について何も知らない人も多いでしょう。
会社を休職する場合は、その間の生活費の目処を立てるためにも、以下の点について会社の休職制度を確認しておきましょう。
ただし、とても具合が悪く休職制度について確認する余裕がないときは
- 心療内科
- 精神科
などへの相談を優先してください。
①休職可能期間
精神的事情により労働できないからといって、永遠に休職できるわけではありません。休職が可能な期間は会社によって扱いが異なりますので、会社のルールを確認しておきましょう。
なお、医師が必要と判断する休職期間全部の休職が認められるかは、会社により判断が異なりますので、注意しましょう。
②休職中の給料
休職中の給料が、どのような扱いになるのかは最も気になる点の一つですよね。休職中の給料については、会社により扱いが異なります。休職中の給料が、一部支払われる場合もあれば、一切支払われない場合もあるので、この点も会社の規定を確認しておきましょう。
休職中の給料が、会社から一切支払われない場合は、後述の傷病手当金を申請していくことになります。
③休職中の社会保険
通常、社会保険料は、給料から天引きされています。そのため、従業員は、通常、自分で社会保険料の支払をする必要がありません。
しかし、休職中は扱いが異なる可能性があります。
休職期間中は、無給となって給料からの天引きが出来なくなりますと、自分で社会保険料の支払をする可能性もあるので、保険料の支払方法は、会社に確認しておきましょう。
④休職中の連絡方法
休職中の会社の窓口が誰であるか、どのように連絡を取り合うのかは、事前に確認しておきましょう。
(3)心療内科や精神科へ相談
休職を検討している人は、何らかの精神的ストレスを抱えていることがほとんどなので、早めに心療内科や精神科に相談しましょう。自分ではさほど問題がないように感じていても、医師からすると休職の必要性が大いにある場合もあります。
休職するかどうかは別として、まずは一度専門家の意見を聞いてみましょう。
(4)診断書が必要な場合は、専門機関で休職診断書を書いてもらう
休職するにあたって休職診断書が必要な場合は、専門機関で休職診断書を書いてもらいましょう。
診断書を書いてもらう際には通常3000〜5000円ほどの費用がかかります。休職は、通常、会社都合ではなく個人都合なので、診断書の費用も休職をする労働者が負担することになるでしょう。
(5)休職手続きを進める
以上の確認を終えたら、休職の手続きを進めていきます。
必要書類の記入・提出が必要となりますので、不明点は会社の担当者に確認しながら進めていきましょう。
2、休職診断書なしで休職するには?
休職の際に休職診断者が必要となるかは会社により規定が異なります。就業規則で休職診断書の提出が義務づけられていなければ休職診断書なしで休職できることもあるでしょう。
一方、休職診断書の提出が就業規則で義務づけられている場合は注意が必要です。提出が義務づけられているということは、休職診断書を提出しなければ休職が認められないことになります。休職が認められなければ労働者が欠勤をしている扱いとなるため、
- 解雇
- 懲戒処分
などの恐れがあります。
休職後の復職の事例ではありますが、就労することが可能と判断できる診断書を、労働者が提出すべきであったにもかかわらず、これを提出しなかった事案で、解雇が有効と判断された事例もあります(大建工業事件・大阪地裁平成15年4月16日決定・労判849号35頁)。
就業規則に記載があるものの休職、診断書を出したくない事情がある場合は
- 有給休暇等を利用する
- 上長に事情を相談する
- 労災申請や異動の申し出
などの手段を取るべきでしょう。
これらの手段も難しい場合は職場に問題がある可能性が高いので弁護士への相談も検討してみてください。
3、傷病手当金(休職手当金)の受け取り
休職期間中、会社から給料が支払われなかったとしても傷病手当金というものを受け取ることができるので、以下確認していきましょう。
(1)傷病手当金とは(健康保険法99条)
傷病手当金とは、会社の業務とは関係のない病気等で労働ができなくなった場合に、会社ではなく健康保険から給付されるお金です。
傷病手当金の受給が認められれば、一月あたり、標準報酬月額(≒毎月の給料)の3分の2相当額を受け取ることができます。
(2)傷病手当金が支給されるための条件
傷病手当金が支給されるためには、以下の条件が必要です。
- 会社員や公務員などで、勤務先で社会保険制度に加入している
- 業務外の病気やけがで療養中である
- 療養のため、労務不能である
- 4日以上仕事を休んでいる(療養のために仕事を休み始めた日から連続した3日間=待機期間=を除いて、4日目から支給対象)
- 給与の支払いがない(給与が一部支給されている場合は、支給額が傷病手当金より少ない場合は、傷病手当金から給与支給分を減額して支給されます。)
(3)傷病手当金が支給される期間
傷病手当金の受給期間は、最長で1年6ヶ月までです(健康保険法99条4項)。
(4)傷病手当金を受け取るために休職診断書は必要?
傷病手当金の申請に当たっては、休職診断書の作成までは必要とされません(健康保険法施行規則84条2項1号)。ただし、会社が従業員の休職を判断するための資料として、医師の診断書が必要になるケースが一般的です。
(5)傷病手当金の申請方法
一般的には、会社を経由して傷病手当金の申請をします。
- 加入している公的医療保険の窓口に問い合わせて、申請書を取り寄せる
- 「被保険者記入用」部分を本人(従業員)が記入する
- 「療養担当者(担当医師)記入用」部分を医師が記入する
- 「事業主記入用」部分を事業主(会社)が記入する
- 本人(従業員)が記入する2枚、医師が記入する1枚、事業主(会社)が記入する1枚の計4ページの書類と、条件によって必要となる書類を提出する
4、休職診断書を書いてもらえない場合の対処法
(1)会社内の産業医の場合
会社内の産業医に診断書を書いてもらえない場合は、自分で心療内科等を受診し休職診断書を書いてもらいましょう。
(2)会社外の心療内科などの場合
心療内科で休職診断書を書いてもらえなかった場合、他の心療内科を受診するのも一つの選択肢です。また、自分の症状をうまく医師に伝えられていないケースもあるので、症状をしっかりと伝えるようにしましょう。
5、会社に休職診断書を提出したのに休職を拒否された場合の対処法
精神に支障をきたし会社を休職したいものの、会社が休職を拒否するケースがあります。会社が休職を認めてくれず働かざるを得ない場合や、最悪の場合解雇されてしまうケースすらあります。
ここからは、会社に休職を拒否された場合や解雇されたときの対処法をご紹介します。
(1)就業規則や理由の確認
まずは就業規則を確認しましょう。
休職については会社ごとにルールが異なります。休職について就業規則に規定がある場合は、どんな病気の場合に、どんな理由で、どんな要件を満たせば休職制度を利用できるのか確認しましょう。会社の休職拒否が違法なのかは会社の就業規則を確認しないとわかりません。
(2)弁護士に相談して違法性を主張する
会社が休職を認めてくれない場合、会社の対応に違法性が認められる可能性があります。会社が休職を認めてくれないときや休職診断書を受け取ろうとせず休ませてくれない場合は、弁護士に相談して、会社の対応を是正できないか、検討してみましょう。
6、休職から復帰するときに気をつけること
休職後、会社への復帰が見えてきた人は、復職を検討する際に以下のことに気をつけていきましょう。
(1)復職を焦らない
まずは復職を焦らないことです。会社を休職して社内の人に迷惑をかけていることに、罪悪感を感じ、復職を焦っているかもしれませんが、焦って復職をすると、また精神的ストレスを抱えてしまう可能性があります。ゆっくり休んで、心の状態を回復させてから復職を考えましょう。
(2)復職のタイミングは担当医と相談する
復職のタイミングは、自分で判断せず、担当医と相談しましょう。
自分の認識と専門家である医師の判断は、ずれていることがよくあります。早く復職すればよいというものではありませんから、独断で復職のタイミングを決めないようにしてください。
(3)ストレスを溜め込みすぎない
休職中、休職していることに罪悪感を感じたり、ストレスを溜め込みすぎたりする人がいますが、ストレスを抱えているとなかなか精神状態が回復しにくいです。休職中は、会社や仕事のことは忘れて、自分自身をリラックスさせてあげましょう。
(4)緩やかなタイムスケジュールで過ごしてみる
会社を休職して、仕事をしていなかった人が、急に会社に復帰すると、なかなか体がついていかない可能性があります。復帰後の生活に体を慣らせていくために、緩やかなタイムスケジュールで過ごしてみるのもおすすめです。
(5)無理をしない
最後に、決して無理はしないようにしましょう。焦って復帰しても、その後さらに精神状態が悪くなる可能性があります。
7、休職や退職にあたって少しでも不安がある場合は、弁護士に相談を
休職や退職にあたって少しでも不安がある場合は、一度弁護士に相談をしてみてください。
休職を検討するほど精神的ストレスが溜まっているときは、落ち着いた検討ができない可能性があります。一人で抱え込まず弁護士からのアドバイスを参考にしていきましょう。
まとめ
以上、休職制度や休職診断書についての解説でした。休職について検討している人は、上記の流れに沿って準備を進めていきましょう。
会社が休職を認めてくれない場合や、休職の手続きがうまく進まない場合は、早めの対応が必要になってきますので、少しでも不安があるときは、弁護士に相談をしてみてください。