新型コロナウイルスの影響で雇用がなくなり失業してしまうと、社会保険・公共料金、家賃、クレジットカードなど、各種支払いも困難になるでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、あらゆる業界や人々に大きな影響がでています。コロナ不況が原因で勤務先が突然倒産してしまったという人は、今後ますます増加していくものと予想されます。
突然のコロナ失業に見舞われれば、毎月のさまざまな支払いに対処できなくなってしまう可能性も高いといえます。
そこで、今回は、
- コロナ不況が原因で突然失業してしまったことで、さまざまな支払いができなくなってしまった場合の対処方法
についてまとめてみました。ご参考になれば幸いです。
借金が返せない場合は以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、コロナで失業し支払いができなくても慌てない!
コロナウイルスの感染による影響は、終息する見通しもなかなか立たず長期化する可能性があります。
そのような状況では、不安な気持ちに煽られ間違った対応をしてしまうリスクも高くなりますので、慎重に落ち着いて対処することが大切です。
(1)コロナが原因の失業・減収は誰のせいでもない
まず大前提にしておかねばならないことは、今回のコロナウイルスの感染拡大で失業や大幅減収になってしまったことは、「誰のせいでもない(自分の落ち度ではない)」ということです。
つまり、「支払いが間に合わなくなる」のは不可抗力なので仕方のないことであるということです。
当たり前のことなのですが、誠実な対応をしようとする人ほど「支払日が迫っているけどお金がない」と慌ててしまいやすいので特に注意しておく必要があります。
(2)支払いを滞納しても大きな問題にはなりづらい2つの理由
実は、今回のコロナウイルス感染拡大によって、政府から緊急事態宣言が発令された状況においては、「毎月の支払いを滞納」してしまっても、平時のように大きな問題とはならない可能性も高いです。
法的には、「問題にならないから滞納してもよい」ということになるわけではありませんが、次のような状況にあることを知っておくことは、「冷静に対応できるようになる」ために大切なことといえるでしょう。
①裁判所の業務の多くは中断・停止している
政府による緊急事態宣言の発令をうけて、官公庁などの公的機関も通常時とは大きく業務体制を変更しています。
出勤制限などによって職員の安全を確保しながら、コロナ対応のために必要な業務にリソースを集中させる必要があるためです。
裁判所もその例外ではなく、緊急事態宣言の発令をうけて、訴訟手続を含めた通常業務の大半については、中断・停止の措置がとられています(既に指定されている期日も取り消された上、今後の日程は「追って指定」されるものとなっています)。
したがって、債権者による貸金訴訟・建物明渡請求訴訟などの手続についても、手続を進めることは難しいといえます。
つまり、借金の返済や家賃の滞納をしたとしても、すぐに差押えなどの措置をとられる可能性はかなり低いといえるわけです。
②今後、各種の支払いを猶予する特措法などが制定される可能性も
コロナウイルスの影響によるさまざまな問題は、国家全体の問題といえます。
コロナで失業した場合のみならず、減収その他の事情でさまざまな支払いが困難になってしまう人は、今後さらに増える可能性も高いといえるでしょう。
当然、国としてもこれらの問題を放置するわけにはいきません。
現時点でも、国などから各種業界団体にむけて、支払いの猶予などの対応について要請がなされています。
社会全体の状況がさらに悪化すれば、要請のレベルを超えて、「支払いの猶予を認める特別立法」の必要性などが検討される可能性もあるといえるでしょう。
今回の緊急事態宣言の根拠法でもある新型インフルエンザ等対策特別措置法においては、国会の閉会中などの状況下においても、支払いの猶予などを認める措置がとれる条項が定められています(新型インフルエンザ等対策特別措置法58条)。
2、各種の返済・支払い猶予制度や公的支援を利用する|コロナ失業の支払い対策方法
金融機関や官公庁などの金銭の支払いを受ける機関の多くは、上で説明した状況をふまえて、各種の支払いの猶予などの措置を既に講じているところも少なくありません。
「コロナ不況が原因で失業してしまい毎月の支払いが苦しい」という場合には、これらの猶予制度の利用を申請することが、対応の基本といえます。
以下では、毎月の支払いの代表的なものについての猶予制度を簡単に確認していきます。
(1)国民年金・健康保険の支払い
お勤めしていた人が失業(離職)した場合には、国民年金・国民健康保険に加入することになります。
とはいえ、失業によって毎月の収入が絶たれてしまえば、これらの社会保険料を納めることも難しい場合の方が多いでしょう。
しかし、年金保険・健康保険には、当初から減収・失職時の猶予(免除)の制度が用意されていますし、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、これらの措置をさらに緩和(使いやすく)する措置が講じられています。
また、ケースによっては、すでに納めた社会保険料を払い戻してもらえることもあるかもしれません。「手持ちのお金がない」ケースでは相談してみる価値があるといえるでしょう。
【参考】
【国民年金被保険者の方へ】新型コロナウイルスの感染症の影響により国民年金保険料の納付が困難となった場合の免除制度の活用について(日本年金機構ウェブサイト)
新型コロナウイルス感染症の影響により国民健康保険税の納付が困難な方へ(浦安市ウェブサイト)
(2)生命保険料・損害保険(自動車保険)などの払い込み
コロナウイルスによる感染拡大が終息しない現状では、「万が一」の場合に備える各種の保険の維持はとても重要といえます。
これら毎月の生命保険料の払い込みについても、ほとんどの保険会社が保険金の払込期限の延長(毎月の支払いの猶予)などの措置を用意しています。
また、貯蓄型の生命保険金などに付帯される「契約者貸付」の際の利息を免除してくれる生命保険会社も多いようですから、「手元のお金に余裕がない」というときには利用を検討してみるのもよいかもしれません。
【参考】
新型コロナウイルス感染症に関する各種取り扱いについて(日本生命ウェブサイト)
新型コロナウイルス感染症に関する商品・特別措置等のご案内(損保ジャパンウェブサイト)
(3)公共料金・スマホ携帯料金などの支払い
電気・ガス・水道といったライフラインの維持は、私たちの生活には欠かせないものです。
また、スマホ・携帯についてもライフラインに準じたものとして考えるべきでしょう。
これらの利用料金の支払いも猶予の申し出をすることが可能です。
また、スマホ・携帯キャリア会社の多くは、無料パケットなどの配布もしていますので、「収入が(少)なくなってしまった」ということは、これらの無料パケットなどを上手に活用することで月額利用料を減らすことも可能となります。
【参考】
新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた料金請求の取り扱いについて(NTTドコモウェブサイト)
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う電気・ガス料金の特別措置について(東京電力エナジーパートナーウェブサイト)
(4)家賃の支払い
賃貸物件に住んでいる人がコロナ不況で失業してしまった場合には、毎月の家賃の支払いに支障が出る場合も多いです。
コロナウイルスの感染拡大が終息しない限りは、再就職も簡単ではないでしょう。
このような場合には、公的支援を頼るのが最もよい方法といえます。
自治体によっては、「失業していないが大幅な減収となった」というケースでも、下記の給付金を利用できるケースがありますので、「家賃が支払えないなら立ち退くしかない」と諦めてしまわずにまずは相談してみましょう。
【参考】
住居確保給付金について(神奈川県ウェブサイト)
また、何かしらの事情で公的支援を受けられないという場合でもあっても「家賃が払えないからすぐに立ち退く」というのはあまりよい対応とはいえません。
いまの状況下で引っ越しをすることは、さまざまなリスクを抱えることにもつながるからです。
まずは、家主・管理会社に現状を伝えた上で相談してみるべきでしょう。
法律の解釈としては、「コロナが原因で家賃を滞納した」ことは、賃貸借契約の解除理由とはならない(裁判所が強制立ち退きを認めない)可能性も高いといえますので、相談してみる価値は十分にあると思われます。
(5)住宅ローンの支払い
コロナ不況で失業してしまったことで「住宅ローンを滞納して差押えにあってしまう」、「マイホームも失ってしまうかもしれない」と不安に感じている人は多いと思います。
しかし、コロナウイルスの影響で住宅ローンの支払いが難しくなった場合にも、他の支払いと同様に、毎月の支払いの猶予・減額(元金据え置き措置)・リスケジュールといった対応を相談することができます。
【参考】
新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方へのお知らせ(住宅金融支援機構ウェブサイト)
新たなお借り入れやご返済条件の変更等に関するご相談窓口(中小企業または住宅ローン等をお借り入れの個人のお客さま用)(三井住友銀行ウェブサイト)
(6)カードローンやクレジットカードの支払い
カードローンの返済やクレジットカードの支払いについても、他の支払いと同様に、多くのローン会社、消費者金融、カード会社が返済条件の変更などについての相談に応じています。
「借金の返済は待ってくれないはず」と諦めてしまわずに、まずは相談してみるとよいでしょう。
【参考】
新型コロナウイルスの影響によるお支払いに関するご相談窓口の設置について(オリコカードウェブサイト)
新型コロナウイルスにより影響を受けたお客さまへ(アコムウェブサイト)
3、コロナで失業しても「相談してみること」が重要~問題を1人で抱え込まない
失業という状況になってしまうことは、精神的にも大きな負担となります。
また、コロナウイルス感染拡大を防止するために、さまざまな社会的な活動の自粛が求められている今の状況では、再就職も簡単でないことなどの事情もあいまって、大きな不安を感じることも多いでしょう。
そのため、「毎月の支払いができない」ということは、心的なパニックに陥る原因にもなりかねません。
「支払日までに絶対にお金を工面しなければならない」と焦ってしまったために、闇金とかかわってしまったり、悪質な詐欺被害に遭ってしまうことも考えられます。
冒頭でも触れたように、「コロナ不況が原因で失業してしまったこと」、「それによって毎月の返済ができなくなったこと」は、誰の落ち度によるものでもなく、恥ずかしいと感じることのない仕方のない出来事です。
コロナウイルスの影響によるさまざまな問題については、今後公的な対応も拡充されていくと思いますが、「救済を受けるためには自分で手を挙げる(相談・申請する)」ことが条件となるものが多いと思われます。
他方で、あらゆる公的支援・救済措置について正しい情報をその都度把握することも簡単なことではありません。
まずは、わからないことや不安なことは、自治体や弁護士などの専門家に相談してみることが何よりも大切です。
たとえば、日本弁護士連合会(日弁連)では、コロナウイルス関連の法的な悩み事についての相談を電話・オンラインで受け付けています。
【参考】
コロナウイスル対応関連相談窓口(日弁連ウェブサイト)
まとめ
コロナ不況が原因で失業してしまった場合には、平時に比べて失業の状態が長期化するおそれも高いです。
ウイルスへの感染リスクも考慮した上で、「感染の蔓延が終息するまで就職活動は控えたい」と考えている人も多いと思います。
このような状況下ですから、毎月の支払いの多くは、何かしらの救済措置を受けられる可能性も高いといえます。
限られた手元資金のショートを避ける、闇金や詐欺などの余計なトラブルに巻き込まれないためには、「先延ばしにできる支払いは支払い猶予や免除などの救済制度を利用する」ことが重要です。