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経営者の離婚で生じるリスクとは?注意すべき4つのポイント

経営者が離婚の危機を感じたら…離婚する際の注意点と離婚を解説

会社の経営者が離婚をする際、気をつけるべきことはなんでしょうか?

経営者が離婚するときに一番注意すべき内容は、財産分与です。経営者の財産には、株式をはじめとする会社関係の財産があります。財産分与次第では、企業経営に影響をもたらす可能性があるのです。

そこで今回は、

  • 経営者が離婚するときに注意すべきこと
  • 経営者が離婚を避けるために考えるべきこと
  • 離婚が避けられない場合に有利な条件を獲得する方法

について紹介、解説していきます。

会社経営に全力を傾けている一方で、離婚の危機に直面している経営者の方のご参考になれば幸いです。

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1、経営者が離婚する際に注意すべき4つのこと

経営者が離婚する際に注意すべき4つのこと

離婚する際には、さまざまな条件を取り決めることになります。
経営者が離婚する際には、以下の4点について、一般的なサラリーマンなどの夫婦の離婚の場合とは異なる考慮が必要になります。

(1)財産分与

財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産を離婚に伴って分け合うことです。

原則として、夫婦共有財産を2分の1ずつ分け合うことになります。なぜなら、たとえ妻が専業主婦であっても、家事労働によって夫の収入に貢献していますので、基本的には結婚後に取得した財産に対する貢献は夫婦とも2分の1ずつと考えられるからです。

しかし、経営者が離婚する場合には、この「2分の1ルール」を機械的に適用すべきではないケースがあります。また、どのような財産をどのように分与すべきかについても特有の考慮が必要になってきます。

以下、順にご説明します。

①財産の2分の1を渡す必要はないケースがありうる

上記の「2分の1ルール」は、基本的には一般的なサラリーマンなどの夫婦が離婚する場合に適用されるものです。一般的な労働者の家庭では、夫の労働による収入と妻の家事労働による貢献がおおむね見合っていると考えられます。

しかし、夫が経営者で収入が高い場合には、その限りではありません。

多くの場合、夫の個人的な才覚や努力によって経営手腕を振るい、それによって会社の業績を上げることによって、高い収入を得ているケースもあるでしょう。そのような場合にまで離婚の際に財産の2分の1を相手に渡すとすれば、不公平な結果となってしまいます。

したがって、財産分与で相手に渡すべき財産は、妻の家事労働に見合う部分だけに限られる場合もあります。
それが具体的に何%になるのかは、それぞれの夫婦における事情によって異なりますが、裁判例では妻の取り分を5%と判断した事例もあります(東京地裁平成15年9月26日判決)。

②会社名義の財産を渡す必要はない

会社名義の財産は個人の財産とは区別されますので、財産分与の対象とはなりません。
財産分与の際に会社名義の財産まで含めて考えてしまうと、財産を渡しすぎることになるのでご注意ください。

ただ、中小企業や個人事業を経営している方で、会社名義の財産を私用でも使っている場合には注意が必要です。
会社の財産と個人の財産とが判別しがたい状態で、実質的に個人の財産として使っているようなものは、財産分与の対象となります。

③自社株を分与するときは評価に注意する

株式会社を経営している場合は、ご自身がお持ちの自社株も財産分与の対象となる場合もあります。
株式を財産分与する際には、その評価をどうするかが問題となります。

上場会社の株式であれば、インターネットや経済新聞などを見ればすぐに時価がわかりますが、非上場会社の株式を評価するのは簡単ではありません。
小規模の会社であれば、原則として「純資産価額方式」で評価しますが、離婚する妻に株式を譲る場合には「配当還元方式」という評価方法をとることも可能です。

それぞれの計算方法をごく簡単に言いますと、純資産価額方式は会社の純資産額を発行済み株式数で割る方式で、配当還元方式は過去2年間の配当金額を10%の利率で還元して計算する方式です。
純資産額方式の方が計算は簡単ですが、多くの場合、配当還元方式の方が評価額は低くなる傾向にあります。

分与する側としては評価額が低い方が有利になりますが、それでは妻が納得しないことが多いでしょう。

しかし、正確な評価額を求めようとすれば、公認会計士等の専門家に鑑定を依頼しなければならず、高額の費用がかかってしまいます。鑑定費用を支払うと、そのぶん分与できる財産も減るので、妻の取り分も減ってしまいます。

評価方式でもめた場合は、このあたりの事情を説明して、上記の簡易的な評価で話を進めるのが得策でしょう。

なお、非上場会社であっても、妻に自社株をゆずると経営権も分散してしまうことになります。
そのため、離婚の際には自社株は分与せず、そのぶん他の財産を分与することで調整するように話し合った方がよいでしょう。

④財産分与を多くすることで全体的な支出を抑えられることも

ここまで、財産分与をできる限り抑えるためにできることをご説明してきました。

しかし、逆に財産分与を多くすることで、離婚に伴う支出を全体的に抑えることも可能です。

財産分与の基本は、婚姻中に取得した夫婦共有財産を清算すること(清算的財産分与)ですが、慰謝料や離婚後の一定期間の妻の扶養といった意味合いを兼ねることもできます。
慰謝料の意味合いを兼ねた財産分のことを「慰謝料的財産分与」、扶養の意味合いを兼ねた財産分与のことを「扶養的財産分与」といいます。
これらの財産分与を行うことで、分与する財産は増えてしまいますが、慰謝料や養育費・婚姻費用をカットできる場合もあるので、全体的な支出を抑えることができる可能性があります。

(2)養育費(婚姻費用)

離婚後に妻が子どもの親権者となった場合は、養育費を支払わなければなりません。

また、離婚前に別居した場合は、離婚が成立するまでの間、妻の生活費の一部を婚姻費用として負担する必要があります。

これらの養育費・婚姻費用の金額は、基本的には裁判所の算定表に記載された金額を目安として、話し合いによって決めます。

参照:養育費・婚姻費用の算定表

算定表には子どもの年齢や人数、両親それぞれの年収に応じて養育費・婚姻費用の目安となる金額が掲載されています。

ただ、支払義務者の年収が一定の金額を超えた場合の金額は掲載されていません。妻はさらに高額の支払いを求めてくるかもしれませんが、無制限に請求に応じる必要はありません。
算定表を作成する際に用いられた計算式を用いて個別に計算すればおよその目安は確認することができます。

また、養育費・婚姻費用の金額は話し合いによって自由に決めることも可能です。
例えば、住宅を妻に譲渡することによって養育費・婚姻費用を一括で支払ったことにするというような支払い方もできます。
状況に応じて、柔軟な支払い方を検討してみるとよいでしょう。

(3)慰謝料

慰謝料とは、民法上の不法行為によって相手に精神的苦痛を与えた場合に、その損害賠償として支払うお金のことです。

離婚の慰謝料は、離婚原因を作った側が相手方に対して支払うものです。
したがって、あなたが離婚原因を作った場合でない限り、慰謝料を支払う必要はないということをまず知っておきましょう。

民法上の離婚原因は、以下のとおりです。

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

引用元:民法

代表的なものとしては、不倫や浮気、DV、モラハラなどが挙げられます。

仕事が忙しくて家庭を顧みなかった場合、妻からは「悪意で遺棄された」に該当すると主張されるかもしれません。しかし、生活費を妻に渡していれば、基本的にこれに該当することはありません。

離婚の理由としてしばしばあげられる性格の不一致ですが、これはどちらが悪いという問題ではないので、基本的に慰謝料は発生しません。

仕事が忙しいために妻とすれ違い、離婚に至ったという場合は、他に不倫やDVなどの離婚原因がない限り、慰謝料の支払い義務は発生しないと考えて良いでしょう。

ただし、争いを収めるために、あえて慰謝料名目で金銭を支払うことも考えられます。
特に離婚原因がなくても、夫から妻に慰謝料を支払って離婚する夫婦も数多くいます。
このようなお金は、法的には「解決金」ということになりますが、一般的には慰謝料という名目で支払われているようです。
財産分与も養育費・婚姻費用もすべて含めて「解決金」を支払うことで処理することも可能です。
妻の気持ちを汲み取りながら十分に話し合い、相応の解決金を支払うことで合意できれば、離婚協議にかかる時間や労力を節約することができるでしょう。

(4)配偶者の雇用

ご自身が経営している会社で配偶者を雇用していた場合は、離婚したことを理由に退職させることはできません。労働契約が成立している以上、解雇するには正当な理由が必要です。離婚したことだけでは、正当な理由には当たりません。

したがって、妻が離婚後もその会社で働くことを希望する場合には、雇用の継続に応じる義務があります。辞めてもらいたい場合は、相応の退職金を提供するなどして話し合う必要があるでしょう。

ただ、退職金の問題についても、上記の慰謝料に関してご説明した「解決金」に含めて話し合うことで解決することが可能です。

2、経営者が妻から離婚を切り出されたなら一旦考えるべきこと

妻から離婚を切り出されたなら一旦考えるべきこと

前項で、経営者が離婚する場合の注意点を先にご説明しましたが、妻から離婚を切り出されても離婚したくないという方も多いことでしょう。

その場合は、以下のようなことを考えてみる必要があります。

(1)家庭生活が自己満に終わっていないか

会社を経営して収入も高いあなたであれば、たとえ家族との時間が十分にとれなくても、生活費はきちんと渡していることでしょう。

しかし、十分なお金を支払っている、不自由はさせていない、という自己満足に陥っていないでしょうか。

妻としては、お金も大切ですし、あなたの仕事が大変なことも理解はしているでしょう。
しかし、そうだからといって生活のすべてを夫のペースに合わせていたのでは満足できませんし、何のために結婚したのかと考えてしまうのも無理はありません。

「豊かな生活をさせてやっているのに」と妻を責めるのはお門違いというべきでしょう。まずは、妻が結婚生活に何を望んでいるのかを理解することが重要です。

(2)あなたにとっての「家庭」とは

妻の気持ちを考える一方で、あなたにとって「家庭」とは何かということも、一度立ち止まって考えてみましょう。

あなた自身は家庭を楽しんでいるでしょうか。
「養わなければならないもの」といった義務感だけで生活費を渡しているようなところはないでしょうか。

あなたの犠牲心で養われていても、家族は幸せに思いません。あなたにとっての「家庭」とは何かをあらためて考えてみれば、あなた自身が今の家庭(家族)を必要としているのかどうかがわかるでしょう。

(3)仕事との切り替えは不可ではない

仕事で抱えるものが多く、家庭に気が行かないことは往々にしてあるものです。

しかし、結婚して家族の一員である以上、意識的に家族のために時間を設けることが求められています。

「家庭=空いた時間を潰す場所」ではなく、「大切な商談」と同じレベルで時間を設けることを考えてみましょう。こうしたことは、意識すればできるはずです。

しかし、今までずっと仕事を最優先に考えてきた人にとっては、最初はなかなか難しいことかもしれません。あなたにとって家庭が大切なものだと思うのであれば、できる限り早めに家庭の時間を意識して、デフォルト化するように心がけましょう。

(4)世間体を考える時代ではない

次に、少し角度を変えて、あなたが離婚したくない理由が何であるかも考えてみてください。

もし、世間体だけが気になって離婚を躊躇しているのであれば、妻の人生をいたずらに拘束することになってしまいます。それはお互いにとって幸せなことではありません。

いまは世間体を考える時代ではありません。
本項でお伝えしたことをよく考えた結果、離婚した方がお互いのためによいと判断された場合は、結婚生活にこだわらない方がよいでしょう。
その場合は、前記「1」でご説明した事項に注意した上で、離婚の話し合いを上手に進めましょう。

3、経営者がより賢く離婚をするなら弁護士に相談を

賢く離婚をするなら弁護士に相談を

いずれにしても、離婚問題でお悩みの場合は、お早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

離婚問題に強い弁護士への相談には、以下のメリットがあります。

(1)離婚を回避したい場合も対応

弁護士には、離婚するための相談だけでなく、離婚を回避するための相談もできます。

離婚問題に強い弁護士は、さまざまな離婚の危機に瀕した夫婦のケースを見てきています。そのため、離婚を回避する方法も熟知しています。

あなたが本心から相談することで、ベストな解決方法が見つかるはずです。

(2)離婚が避けられない場合は有利な条件を獲得できる

どうしても離婚が避けられない場合には、できる限り有利な離婚条件を獲得したいところでしょう。

しかし、そのためには専門的な知識や交渉術が必要です。お一人で対応されると、離婚したい一心の妻に押し切られて、不利な離婚条件を押し付けられてしまうおそれがあります。

弁護士の専門的な知識とノウハウを活用することで、有利な離婚条件を獲得することが期待できます。

(3)相手方との交渉を任せることができる

弁護士に依頼すれば、相手方との交渉は弁護士が代理人として代わりに行ってくれます。
あなたは相手方と直接やりとりする必要がなくなるので、離婚協議にかかる時間と手間が省けます。
会社経営に専念しながら、適切な交渉を進めることが可能になります。

まとめ

夫婦間で離婚問題が発生すると、離婚するにせよしないにせよ、大きなエネルギーと時間を消費してしまうものです。その分、会社経営に割けるリソースが減ってしまいます。

離婚を回避したい場合も、有利な条件で離婚したい場合も、弁護士があなたの味方となります。

お困りの場合は、お気軽に弁護士までご相談ください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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