建物明渡しを依頼する際の弁護士費用はいくら?パターン別に計算

建物明渡しを依頼する際の弁護士費用はいくら?パターン別に計算

建物明渡しを弁護士に依頼したいと考えているけど、弁護士費用がいくらかかるか分からずに不安を感じている方もいらっしゃると思います。弁護士費用は、依頼する内容や法律事務所によって異なるため、分かりにくいものといえます。

この記事では、パターン別に弁護士費用の相場を解説します
ご自身の相談内容と比較をして弁護士費用を計算してみて下さい。

本記事がお役に立てば幸いです。

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1、建物明渡しに弁護士費用はつきもの

建物明渡しを考えた場合、ご自身で全ての明渡し手続きを行うのは現実的ではありません。任意に明渡しをしてくれる賃借人であれば良いのですが、そうでない場合は、法律の規定に則って強制執行まで行わなければならないためです。

(1)建物明渡しを自力で行うのは難しい

建物明渡し手続きを全て自分で行うことは難しいといえます。

例えば、賃料未払が半年間続いており、何度も連絡を取っていたとしても、「今は難しい」、「次の賞与でまとめて払う」などと言って中々支払いをしてくれないケースを想定します。

仮に賃貸借契約書で、未払が3ヶ月続いた場合は、賃貸借契約を解除できるとの規定があるとします。しかし、実際には、賃借人が目的不動産を占有している以上、自力で明渡しという目的を達成することはできません。 勝手に、家の中に入り、賃借人の物を廃棄してしまうと、住居侵入罪や器物損壊罪、窃盗罪により、犯罪になってしまう危険性もあります。

こういった不利益を避けるためには、訴訟により判決を得た上で、強制執行手続きを踏む必要がありますこの手続きは多分に法的な内容が含まれておりますので、全てを自力で行うということは大変です

このように、建物明渡し手続きを自力で行うことは難しいといえます。

(2)弁護士に依頼をすると着手金、報酬金、その他手数料がかかる

では、弁護士に依頼するといくらかかるのでしょう。

弁護士費用は、

  1. 着手金
  2. 報酬金
  3. その他の手数料等

と3つに分かれております。

着手金とは、弁護士に依頼した際に支払う金額のことを言います。この金額は、初めに支払う必要がありますので、最も関心が強いところかと思われます。 

報酬金とは、いわゆる成功報酬のことで、全ての弁護士の業務が終了した際に支払う金額のことを言います

手数料とは、例えば、現地に行った場合の交通費、内容証明郵便を送付した通知料などになります。手数料も最後に清算をすることが多いかと思います。弁護士が遠方に行くことが無い場合は、この金額が多額になるということはあまりありません。 

ざっくりと説明すると以上の金額を合わせたものが弁護士費用の総額となります。

(3)弁護士費用は、段階的に加算される

少しややこしいのですが、弁護士費用は、交渉段階、訴訟段階、強制執行段階などで、その都度、発生する仕組みになっております。弁護士に依頼した時点では、相手方との交渉が実際に行われていませんので、訴訟や強制執行が必要なのかがはっきりとは分かりません。 

そのため、全体の費用の説明は行いますが、実際には、訴訟を行う場合、強制執行を行う場合で、その都度弁護士と契約を締結し、それぞれの段階で着手金、報酬金等がかかってくることが多いです

このように、基本的には、弁護士費用は加算方式になっているといえます。

2、弁護士費用に統一的な決まりは無い

各法律事務所が定める弁護士費用には、実は統一的な決まりはありません。そのため、費用については直接法律事務所のHPや電話をして確認をする必要があります以下、弁護士費用を決定する際のポイントについて解説します。

(1)弁護士の報酬はそれぞれの法律事務所が自由に設定できる

弁護士報酬は、弁護士会で何か決まりがあるものではありません。以前は旧日弁連報酬基準(以下「旧報酬基準」といいます。)というものがあり、それに従って弁護士費用を決めておりました。

しかし、平成16年にこの旧報酬基準が廃止されてからは、それぞれの法律事務所が独自に報酬基準を置いております。とはいえ、老舗の法律事務所では、未だにこの基準を採用しているところも多く、法律事務所の弁護士報酬が相場よりも高いかどうかの目安にはなります。

(2)事案の複雑さによって着手金、報酬金は変動しうる

現在では多くの法律事務所のHPでは、簡単に着手金や報酬金が記載をされております。しかし、法律問題というのは、多種多様のものであり、建物明け渡しの事案といってもその内容は様々あります。

そのため、弁護士は、依頼者から相談を受け、実際に契約書を交わす際には、そのような事案の複雑さなどを考慮して着手金もしくは報酬金に上乗せして提示をしてくる場合もあります

ですので、時間に余裕のあるのでしたら、実際に複数の法律事務所へ相談に行き、見積もりを出してもらうことをおすすめします。

3、家賃滞納の場合の弁護士費用の一例

家賃滞納で建物明渡しを求める場合に弁護士費用がどの程度かかるか一例を紹介します。
ここでは、初めから全て弁護士に依頼をしていることを前提にしており、訴訟前の相談や交渉費用は一切かかっていないことを前提とします。

(1)明渡しを求める類型の中では低価格

家賃滞納の場合は、明渡しを求める類型の中では、比較的低価格であることが多いといえます。これは、家賃滞納というのが、客観的な証拠から明らかになりやすいということが挙げられます。

そのため、訴訟も比較的短期間のうちに終わることが考えられます。このように類型として簡単であることから弁護士費用も低価格に設定をされているということになります

(2)明渡訴訟の弁護士費用

では、実際にいくらになるのかを法律事務所のHPなどを参考に解説をしていきます。法律事務所では、建物明渡訴訟の弁護士費用として以下のように設定をされているようです。

  • 着手金33万円、報酬金33万円
  • 着手金25万円、報酬金25万円
  • 着手金22万円、報酬金22万円

これは数ある法律事務所のうち、ほんの一部ですが、着手金としては20万円~35万円程度、報酬金としては20万円~35万円程度に設定をしている事務所がありました。 

また、訴訟の前に仮処分を申し立てる必要がある場合(訴訟中に賃借人が変わることが予想される場合)には上記金額に加えて5万円~10万円程度の費用がかかることが多いようです

(3)強制執行の弁護士費用

強制執行とは、明渡の訴訟により勝訴判決を取ったにもかかわらず、賃借人が占有を継続している状態であり、任意に明渡をしない場合に、強制的に明渡しを行う手続きのことをいいます。

この強制執行では、10~20万円程度かかるとされている法律事務所が多くあります

(4)回収した家賃については別途報酬となる場合も

また、家賃滞納の場合は、賃借人から未払家賃の一部を回収することが考えられます。その場合は、成功報酬として、回収額の数20%が弁護士費用としてかかることがあります

(5)費用に関するまとめ

以上のように、家賃滞納の場合の弁護士費用は、強制執行や仮処分も必要である場合ですと、合計で50万円~100万円程度かかることがあります。

ちなみにベリーベスト法律事務所では、債権回収を除く明け渡し手続きに関する包括プランとして、38万5000円の弁護士費用で対応することが可能です。詳しくは、https://www.vbest.jp/tateake/ を参考にしてみて下さい。

4、用法遵守義務違反の場合の弁護士費用一例

用法遵守義務違反とは、居住用のために目的不動産を貸していたにもかかわらず賃借人が勝手に目的不動産で居酒屋を経営していたなどといった事情がある類型をいいます。

賃貸人と賃借人は信頼関係が基礎にあるため、このような用法遵守義務違反の場合は、信頼関係が破綻したと考え建物の明渡しを主張することができます。

(1)争いが生じやすいため料金は高め

用法遵守義務違反の類型は、家賃滞納事案と比較して、賃借人との争いが生じやすい類型であるといえます。そのため、弁護士費用も高めに設定をされております。

(2)訴訟の弁護士費用

HPを参考にすると、用法遵守義務違反の場合の弁護士費用は以下のように設定をされておりました。

  • 着手金35万円、報酬金は60万円
  • 着手金40万円、報酬金50万円
  • 着手金33万円、報酬金55万円
  • 着手金44万円、報酬金55万円

このように、着手金は33万円〜44万円、報酬金50万円〜60万円くらいが一般的であるといえそうです。

(3)強制執行の弁護士費用

10万円〜66万円であるといえます

法律事務所によって、費用にかなり開きがありました。

弁護士費用を考える上では、訴訟だけでは無く、強制執行まで見据えて概算を立てる必要がありそうです。

(4)用法遵守義務違反の場合の費用まとめ

以上のように、用法遵守義務違反の場合は、弁護士費用として100万円〜150万円くらいの費用がかかることがあります。ちなみに実際には、弁護士費用に加えて、強制執行の予納金や実費等もかかってきます。

5、契約書作成や内容証明郵便だけ依頼する場合

全てを弁護士に依頼せず、一部分の交渉等だけ弁護士に依頼をするということも考えられます。一例を示しますので、ご参照下さい。

(1)訴訟や強制執行を依頼する場合と異なり、費用は安くなる

当然ながら、弁護士に強制執行まで全てを任せる場合に比較すると、弁護士費用は格段に安くなります

例えば、賃借人との話し合いはほとんど出来ているが、念のため、示談書を作成したいといったケースが考えられます。このような場合では、弁護士に示談書を作成してもらい、ご自身で相手方に示談書にサインをもらうだけで紛争は終了します。

(2)弁護士費用

典型的な契約書では、10万円程度になることが多いです。さらに、弁護士費用を抑えたいとお考えの方は、ご自身で契約書を作成し、弁護士に契約書のチェックだけを任せるといった方法もあります。

6、弁護士費用を安くする方法

できるだけ弁護士費用を安くするにはどのようにしたら良いか、考えられる方法を解説します。

とはいえ、しっかりと明渡しという結果を得られなければ意味が無いため、その点に影響をしない方法を紹介します。

(1)無料相談などを利用して見通しを聞く

ご自身でどこまで弁護士に依頼をするべきか検討もつかない場合は、弁護士会や一部の法律事務所でなどで行われている無料相談を利用することが考えられます。

無料相談を利用して、ご自身の事案について見通しを聞いてみましょう。無料相談でも弁護士から良い助言をもらえることは多々あります。見通しを聞くことによって、自分の紛争が複雑なものなのか、弁護士に依頼をしなければならないのかが判断できると思います。初回の相談料が無料の法律事務所も多々ありますので、ご利用してみて下さい。

(2)明渡手続きに精通している弁護士に依頼をする

実際に弁護士に依頼をする場合、どのような弁護士に依頼をするべきか悩まれるかもしれません。このような場合は、なるべく多く明渡続きを行っている弁護士に依頼をすることで早期解決に繋がります。

弁護士によっては、このような不動産関係の手続きをあまりしたことが無い方もいらっしゃいます。特に不動産の明け渡しでは早期に解決することで、その不動産から収益を上げることもできます。そのため、早期に解決をすることが結果として、損害額を抑えることにつながってきます。

以上のように、弁護士費用を比較検討することもとても大切ではありますが、十分な経験があるかどうか、早期に解決が出来そうかどうかも含めた上での弁護士選択が必要になるでしょう

まとめ

この記事では、明渡を求める類型において、弁護士費用がどのくらいかかるのか、弁護士費用を抑えるためにはどのようにすれば良いのか中心に解説をしてきました。弁護士への依頼はそう多く経験をするものではありませんので、不安に感じられる方もいらっしゃるかと思います。

本記事の内容を参考にして、納得のできる弁護士へ依頼をされて下さい。

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