無断転載とは?許される場合と許されない場合の違いを弁護士が解説

近年は各種SNSやブログ、YouTubeなどで誰もが簡単に情報を発信できるようになりましたが、無断転載には注意しなければなりません。

他人の著作物を無断で転載することは、一定の場合を除いて法律で禁止されています。違反すると慰謝料請求や刑事罰などのペナルティを受けることがあります。そのとき、「法律違反とは知らなかった」という言い訳は許されません。

情報を発信する際に、知らずのうちに法律違反をしてしまわないよう、他人の著作物を転載する際に守らなければならないルールを知っておく必要があります。

そこで今回は、

  • 無断転載とは
  • 無断転載が許されるケースと許されないケース
  • 無断転載をしてしまったときの対処法

などについて、著作権の問題に詳しいベリーベスト法律事務所の弁護士がやさしく解説していきます。

無断転載のリスクを避けてSNS等を安心して利用したい方の手助けとなれば幸いです。

著作権の基本は以下の関連記事をご覧ください。

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1、無断転載とは

まずは、無断転載とは何かということを正確に理解しておきましょう。

(1)無断転載の定義

無断転載とは、他人の著作物を無断で複製し掲載することをいいます。

著作物はすべて、著作権法で守られています。著作物を複製・コピーする権利は著作者のみが有するものとされている(著作権法第21条)ので、一定の例外を除いて他の人が複製・コピーすることは認められないのです。

著作物というと、書物や映画、音楽などのうち、有料で広く公表されたものだけに認められるというイメージがあるかもしれませんが、この考え方は誤りです。

著作権法では、「思想または感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を著作物と定義しています(同法第2条1項1号)。

他人がSNSやブログなどに掲載した文章や画像、動画も、その人の思想や感情を創作的に表現したものなので、著作物に該当します。

したがって、ネットに掲載されている文章や動画・画像でも、掲載した人の許諾を得ることなく転載した場合は、無断転載にあたり得るといえます。

著作権について詳しくはこちらの記事で解説していますので、ぜひ併せてご参照ください。

(2)引用との違い

無断転載と混同しやすい行為として「引用」というものもあります。

引用も他人の著作物を無断で転載するという意味では「無断転載」と同じですが、一定のルールに従って行う場合は合法なものとして認められています(著作権法第32条1項)。

「一定のルール」について、法律上は次の3点が定められています。

  • 公表された著作物の引用であること
  • 引用が公正な慣行に合致するものであること
  • 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれること

抽象的で分かりにくいルールですが、私たちがSNSやブログで情報を発信する際には、次の5つのポイントを守れば合法的に引用することができます。

  1. 自分と他人の著作物の主従関係を明確にすること(引用部分が「従」であること)
  2. 引用部分が明確に特定すること
  3. 引用する必要性と正当性があること
  4. 引用した内容を改変しないこと
  5. 引用物の出所を明示すること

引用が許される条件と引用を行う具体的な方法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。

(3)無断転載に対するペナルティ

違法な無断転載を行ってしまうと、以下のように民事・刑事の両面でペナルティを受ける可能性があります。

①民事上のペナルティ

民事上のペナルティとしては、著作権を侵害された被害者から以下のような請求を受けることがあります。

  1. 侵害行為の差止請求
  2. 名誉回復などの措置をとることの請求
  3. 損害賠償請求
  4. 不当利得返還請求

重要なのは、「3 損害賠償請求」と「4 不当利得返還請求」です。

損害賠償請求とは、主に慰謝料請求のことです。慰謝料の相場は数十万円程度ですが、事案によっては100万円を超える請求を受けることもあります。慰謝料が高額化しやすい要素については、後ほど「4、(2)」でご説明します。

不当利得返還請求とは、無断転載をすることであなたが経済的利益を得た場合に、その利益の返還を求められることをいいます。

他人の著作物を無断で使用して経済的利益を得た場合、その利益は本来著作者が得るべきものと考えられますので、返還を求められるものです。

②刑事上のペナルティ

無断転載は犯罪であり、刑事罰も用意されています。

無断転載によって他人の著作権を侵害した場合の刑罰は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方です(著作権法第119条1項)。

法人が無断転載をして他人の著作権を侵害した場合は、法人に対する罰金が3億円以下に引き上げられます(著作権法第124条1項)。

なお、引用など例外的に許される方法で他人の著作物を転載した場合に、出所を明示しなかった場合には50万円以下の罰金に科されます(著作権法122条)。

著作権法違反の罪は重いものなので、十分に注意することが必要です。

2、無断転載とならず許されるケース

著作権法には大変厳しいルールが定められていることがお分かりいただけたと思いますが、他人の著作物を使いたいと思うこともあるでしょう。

ここでは、他人の著作物を使っても無断転載に該当せず許される5つのケースをご紹介します。

(1)著作物に当たらないものを転載した場合

ネットで拾った情報や書物などに掲載されている情報の中には、著作権で保護される「著作物」に当たらないものもあります。そのような情報を無断で転載しても、違法にはなりません。

著作物に当たらないものとは、前記「1、(1)」でご紹介した著作物の定義の裏返しで、「思想や感情を創作的に表現したものではないもの」ということができます。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 事実の伝達に過ぎない雑報や時事の報道
  • 思想や感情があらわれていない情報(実験データなど)
  • 作者の個性があらわれているとはいえない短文
  • 法律、通達、裁判所の判決など
  • 歴史的事実・データ
  • プログラム言語、プログラムにおける規約や解法
  • アイデア

もっとも、実際に著作物に当たらないかどうかについては、解釈上問題になる場合も少なくありません。気になるときは、弁護士に相談して確認するか、著作権者の許可を得た方が無難といえます。

(2)著作権者の許可を得た場合

著作物を複製する権利は著作権者が専属的に有していますので、著作権者の許可を得れば転載することが可能になります。

ただし、許可を得る際には転載する著作物の範囲や目的、転載先、転載する方法などを明確にして許可を得なければ、許可された範囲を逸脱して違法となる可能性があるので注意が必要です。

(3)ルールに従って引用した場合

前記「1、(2)」でご説明したとおり、ルールに従って引用する場合には著作権者の許可を得なくても合法となります。

ただし、引用物の出所の明示をし忘れた場合など、ルールを守れなかった場合にはペナルティを受ける可能性があるので、引用は慎重に行いましょう。

(4)一定の公的な情報を転載した場合

国や地方公共団体などの公的機関が一般に周知させる目的で公表した資料や報告書などを、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載する場合には、それを禁止する旨の表示がない限り、著作者の許可なく転載できます(著作権法第32条2項)。

また、新聞や雑誌に掲載して発行された時事問題に関する論説を、他の新聞や雑誌などに転載する場合も、それを禁止する旨の表示がない限り、著作者の許可なく転載することが可能です(著作権法第39条1項)。

(5)私的使用のために複製した場合

他人の著作物を個人的に楽しむためだけに複製や保存をすることは許容されています(著作権法第30条)。

ただし、複製・保存した情報や動画像をSNS等で公開したり、無償であっても友人等にメールなどで配布する行為は「私的使用」の範囲を逸脱し、著作権侵害となる可能性があります。

3、無断転載として許されない行為でよくある事例

著作権法上のルールを理解したつもりでも、ついうっかりして無断転載をしてしまうケースが少なくありません。

そこで、ここでは無断転載として許されない行為でよくある事例をご紹介します。

ただし、以下に挙げる事例はほんの一例に過ぎません。他人がアップした情報や動画像を転載する際には、くれぐれもご注意ください。

(1)ネットで拾った画像を自分のSNSにアップする

最も典型的な事例は、自分のSNSに何か画像をアップしたいと思ったときに、他の人のSNSやサイトで画像を拾ってアップする行為です。

このような行為をしても何の咎めも受けないことは多々ありますが、それは著作者が無断転載に気づいていないか、気づいたとしても実害がないため何も言わないからに過ぎません。

(2)他人のブログ記事を自分のブログに転載する

ブログに掲載する文章を書くのは、意外に骨が折れるものです。とはいえ、他人のブログ記事に掲載されている文章を断りなく転載すると、無断転載となります。

また、他人のブログでよい記事を見つけると感銘を受けて、自分のブログで紹介したいと思うこともあるでしょう。そんなときでも、断りなくコピー&ペーストをして自分のブログにアップすると無断転載に当たります。

他人のブログ記事を活用して自分のブログ記事を書きたい場合には、自分の言葉を使って内容をまとめるか、ルールに従って引用するようにしましょう。

(3)他人の小説、漫画、イラストなどの作品を無断で転載する

他人の小説や漫画、イラストといった「作品」も著作権法で保護されているので、無断で転載してはいけません。

漫画の一コマや映画・ドラマのワンシーンなどのキャプチャー画像がツイッターやインスタグラムなどに転載されていることがありますが、このような行為も基本的には無断転載に当たります。

ただ、漫画や映画・ドラマなどもルールに従って引用する場合には合法となります。その場合は当然ながら、引用物の出所を明示することなど引用のルールを守る必要があります。

(4)映画やテレビ番組を無断で動画サイトにアップする

映画やテレビ番組などを録画したものをYouTubeなどの動画サイトにアップする行為が無断転載に当たることも、容易にお分かりいただけることでしょう。

ただ、実際にYouTubeなどには過去の映画やテレビ番組が多数アップされており、削除されずに残っているのが実情です。

そのような動画は、解像度を下げることなどによって技術的にYouTubeの監視体制をすり抜けるという手口が使われているようです。

明らかに違法なアップロードですので、いずれ検挙される可能性が十分にあります。違法アップロードは絶対にやめておきましょう。

なお、違法アップロードや海賊版ダウンロードの問題については、こちらの記事で解説していますので、参考になさってください。

4、無断転載をしてしまったときの対処法

それでは、無断転載をしてしまったことに気づいたときは、どうすればよいのでしょうか。

その場合は、できる限り速やかに以下の対処法を行うことが大切です。

(1)転載したものを直ちに削除する

まずは、無断転載してしまったものを直ちに削除しましょう。多くの場合は、それだけで深刻なトラブルは回避することができます。

ただし、注目度が高い情報や動画像をアップして、それが拡散されてしまった場合には責任を追及される可能性があります。

著作者に実害が及んでからでは遅いので、気づいたら直ちに削除することが重要です。

(2)慰謝料の相場を知っておく

無断転載による慰謝料の相場は、一般の個人が趣味で掲載した情報や動画像などを無断転載したような場合には、数十万円程度です。10万円以下というケースもあるでしょう。

しかし、映画やテレビ番組の他、漫画やイラストなど有料で販売・配布されている作品や、企業のイメージシンボルなどを無断転載したような場合で、著作者に営業上の損失が生じた場合は、慰謝料が高額化しがちです。100万円を超えるケースもあります。

どのような著作物を、どのような方法で無断転載したのかによって、大まかな慰謝料額が分かりますので、ご自身の行為による責任がどの程度重いのかを知っておきましょう。

(3)相手方と誠実に話し合う

相手方が何も言ってこない場合は様子を見るのもひとつの方法ですが、相手方が判明している場合は誠実に話し合うことをおすすめします。

無断転載の罪は「親告罪」といって、被害者が捜査機関に告訴をしなければ処罰されることはありません。

示談ができれば告訴を思いとどまってもらえる可能性も十分にありますので、まずは真摯に謝罪して、話し合いを行いましょう。

話し合いにおいては、慰謝料の金額の交渉をすることになる可能性が高いです。慰謝料の相場は上記のとおりですが、こちらの誠意が伝われば減額してもらえる可能性もあります。

(4)弁護士に相談する

相手方から責任を追及された場合は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

相手方との話し合いは、弁護士に依頼すれば代行してもらうことができます。弁護士があなたに代わって専門家としての見地から交渉してくれますので、民事・刑事とも責任の軽減が期待できます。

できれば、無断転載に気づいた時点で弁護士に相談してアドバイスを受けた方がよいでしょう。最善の解決方法を提案してもらえるので、円満に解決できる可能性も高くなります。

まとめ

インターネットで情報を発信していれば、悪気がなくてもうっかりと無断転載をしてしまう可能性があります。

トラブルを回避するためには、著作権法に関する知識を持っておくとともに、もし無断転載をしてしまった場合には早急に適切な対処をとることが大切です。

不安や疑問があるときや、困ったときは弁護士に相談してみるのがよいでしょう。

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