高齢者講習とは|内容や受け方など高齢者講習の9つのこと

高齢者講習とは、どのようなものでしょうか。

近年、高齢者による交通事故が頻発し、マスコミ等でも大きく報じられています。
そこでよく耳にする言葉が「高齢者講習」ではないでしょうか?

「高齢者講習」という言葉はよく耳にするとしても、

  • いつ、誰が、どんなことをするのか?
  • 高齢者講習を受けた後の流れ、受けなかった場合の流れ

については詳しくご存じの方は少ないと思います。

そこで、今回はそんな疑問にお答えするべく、「高齢者講習」の具体的中身についてまとめてみましたので、ぜひ参考にしていただければと思います。この記事が皆さまのお役に立てば幸いです。

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1、高齢者講習とは

高齢者講習とは

高齢者講習とは、運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が70歳以上の方が運転免許を更新する際に受けなければならない講習をいいます。

2、高齢者講習の内容

高齢者講習の内容

(1)講習の内容

70歳〜74歳の方の講習の内容は以下の通りです。

  • 双方向型講義
  • 運転適性検査
  • 実車指導

75歳以上の方の講習の内容は以下の通りです。

  • 双方向型講義
  • 運転適性検査
  • 実車指導
  • 個人指導
  • 映像教養

(2)手数料

70歳〜74歳の方の講習手数料は5100円です。

75歳以上の方の講習手数料は、

  • 記憶力・判断力心配がない方(認知機能低下のおそれなし):5850円
  • 記憶力・判断力が少し低くなっている方(認知機能低下のおそれあり)で臨時適性検査又は主治医等の診断において認知症ではないと判断された方:8700円
  • 記憶力・判断力が低くなっている方(認知症のおそれあり)で:8700円

となります(認知機能検査手数料750円を含む)。

(3)受講時期

運転免許証の更新期間満了日の6か月前から受講することができます。ご自宅に「案内はがき」が送られてきます。

(4)受講場所

「案内はがき」に記載されている自動車教習所等です。

3、75歳以上の免許更新に加わる手続きとは

75歳以上の免許更新に加わる手続きとは

(1)75歳以上の免許更新では高齢者講習の前に「認知機能検査」

75歳以降の高齢者における免許更新では、高齢者講習の前に「認知機能検査」を受けなければなりません(30分)。

(2)「認知機能検査」とは

「認知機能検査」とは、車を運転するにあたって必要な「認知機能」に衰えがないかを調べる検査です。認知症かどうかを調べる検査とも言えます。

認知機能検査の内容は以下の通りです。所要時間はおよそ30分です。

  • 時間の見当識…検査を受けているときの年月日時、曜日を回答する検査
  • 手がかり再生…16種類のイラストを見た後、思い出して回答する検査
  • 時計描画…時計盤と指定した時刻をイラストで描く検査

4、「認知機能検査」の結果の種類

「認知機能検査」の結果の種類

「認知機能検査」は、認知機能に問題がないかを検査するものです。
この検査の結果次第では、これ以上車を運転できなくなる可能性も出てきます。

この検査は、どのように検査結果が分類されているのでしょうか。以下、見ていきましょう。

(1)点数制

最高点100点、最低点0点で判定され、点数よって第1分類から第3分類に分けられます。

(2)第3分類

第3分類(76点以上から100点)の方は、認知機能(記憶力・判断力)に心配なしと判断された方です。

第3分類の方々は、70歳以上75歳未満の方々と同じ「高齢者講習」を受けることになります。

(3)第2分類

第2分類(49点以上76点未満)の方は、認知機能(記憶力・判断力)が少し低くなっていると判断された方です。

この場合も第3分類と同様、高齢者講習を受ければ免許更新し運転を継続することができますが、所要時間が1時間長い講習を受けなければなりません。

(4)第1分類

第1分類(49点未満)の方は、記憶力・判断力が低くなっており、認知症のおそれがあると判断された方です。

この場合、医師による臨時適性検査を受けるか、主治医等の診断書を提出しなければなりません。
これらの検査・診断における最終的な医師の判断により「認知症」と診断されると、運転免許証の取消し、または停止の行政処分を受けます。
逆に、医師の判断で「認知症」ではないと診断された場合には、第2分類の方と同じ高齢者講習を受講すれば免許更新をして運転を継続することができます。

5、75歳以上のドライバーで一定の違反行為をした場合の手続き

75歳以上のドライバーで一定の違反行為をした場合の手続き

75歳未満のドライバーが信号無視などの違反行為をした場合、点数が加点されるなどの行政罰が加えられるだけですが、75歳以上のドライバーの方が下記の認知機能が低下した場合に行われやすいと考えられている一定の違反行為をすると、「臨時認知機能検査」という検査を受けなければならなくなります。

(1)一定の違反行為とは

一定の違反行為とは、次の行為をいいます。

  • 信号無視
  • 通行禁止違反
  • 通行区分違反
  • 横断等禁止違反
  • 進路変更禁止違反
  • しゃ断踏切立入り等
  • 交差点右左折等方法違反
  • 指定通行区分違反
  • 環状交差点左折等方法違反
  • 優先道路通行車妨害等・交差点安全進行義務違反
  • 交差点優先車妨害
  • 環状交差点通行車妨害等・環状交差点安全進行義務違反
  • 横断歩行者等妨害等
  • 徐行場所違反
  • 指定場所一時不停止等
  • 合図不履行
  • 安全運転義務違反

(2)受検期間

ご自宅に送られてくる「臨時認知機能検査通知書」を受け取った日の翌日から1か月です。

(3)受験場所

臨時認知機能検査通知書に記載されている自動車運転免許試験場です。

(4)検査内容

臨時認知機能検査の内容は以下の通りです。所要時間は30分です。

  • 時間の見当識…検査を受けているときの年月日時、曜日を回答する検査
  • 手がかり再生…16種類のイラストを見た後、思い出して回答する検査
  • 時計描画…時計盤と指定した時刻をイラストで描く検査

(5)受検手数料

受検手数料は750円です。

6、「臨時認知機能検査」の結果の種類

「臨時認知機能検査」の結果の種類

臨時認知検査機能も認知機能検査と同様、その結果次第ではこれ以上車を運転できなくなる可能性も出てきます。
この検査は、どのように検査結果が分類されているのでしょうか。

以下、見ていきましょう。

(1)第1分類

認知機能検査同様、認知症のおそれがあると判断された方です。

この結果が出た場合については、認知機能検査と同様です。

(2)直近の認知機能検査と比較して点数が悪くなっていた

この場合は「臨時高齢者講習」(下記(4)参照)を受けることになります。

(3)その他の場合

特段講習等を受けることなく運転を継続することができます。

(4)臨時高齢者講習とは

臨時高齢者講習とは、臨時認知機能検査の結果によって用意されている高齢者講習です。

①講習内容

実車指導(1時間)、個人指導(30分)、映像教養(30分)です。

②受講期間

ご自宅に送られてくる「臨時高齢者講習通知書」を受け取った日の翌日から1か月です。

③受講場所 

臨時高齢者講習通知書に記載されている自動車運転免許試験場等です。

④受講手数料

受講手数料は5800円です。

7、高齢者講習を受けないとどうなるの?

高齢者講習を受けないとどうなるの?

高齢者講習を受けなければ、運転免許を更新することができません。

また、臨時高齢者講習の対象者が講習を受けなければ、運転免許の停止又は取消し処分を受けます(もっとも、受講期間、受検期間に海外へいっている等のやむを得ない事情がある場合は別です。このような場合は警察の高齢者講習相談窓口へご相談ください)。

8、高齢者講習を受けなくても良い場合とは?

高齢者講習を受けなくても良い場合とは?

「1」でみたように、高齢者講習は長時間を要します。
実は、一定の場合に高齢者講習の免除を受けられる制度があります。その名も「チャレンジ講習」です。

(1)チャレンジ講習とは

約30分、うち実技が約10分の講習です。
実際に教習所のコースで運転をするなどして、運転に必要な機能が低下していないかどうかを確認する講習をいいます。

75歳以上の方は、チャレンジ講習受講前に認知機能検査を受検する必要があります。

(2)チャレンジ講習に合格すると

チャレンジ講習に合格すると、「チャレンジ講習受講結果確認書」がもらえます。
その場合、比較的短時間で終了する「特定任意高齢者講習」(所要時間1時間)を受ければよく、「特定任意高齢者講習」を受ければ高齢者講習は免除されます。

(3)チャレンジ講習で不合格だと

チャレンジ講習で不合格であった場合は、高齢者講習を受けるか、再びチャレンジ講習を受けることもできます。

(4)手数料

チャレンジ講習の手数料は2,650円です。

また、「特定任意高齢者講習」でも手数料がかかり、その金額は1,800円です。

9、免許を継続するか返納するか

免許を継続するか返納するか

この記事をご覧になられている方の中には、免許の返納も頭をかすめている方や、ご高齢の家族が免許を更新しようとしていることに不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
高齢者の事故が頻発した時期のテレビの報道では、高齢者が運転を継続することの是非が問われたり、タレントなどの有名人が率先して免許を返納したニュースなどが取り上げられていました。

運転免許を返納する場合、今の生活ができなくなってしまうのではないかという不安や、それ以前に、若い頃とは違う自分(身体機能が低下している自分)であることを認めることへの抵抗感など、快くない気持ちになることは確かかもしれません。

しかし、年齢を重ねると身体機能が低下するのは皆同じです。
特に病気が重い状態であったりしなければ、身体機能が低下しているからといって健康であることには変わりありません。

運転免許の返納に際しては、運転の「必要性」と「許容性」が判断基準になると思います。

「必要性」とは、車を使う必要があるかどうかです。
仕事、趣味、通院、買い物等の日常生活等、さまざまな場面における運転の必要があると思いますが、代替手段も含めてしっかりと必要性について判断することが大切です。
「今までの習慣だから車がないと生活できない」というだけで必要性を判断せずに、自らが運転しなければ生活が立ち行かないのか、ご家族とも相談してみるのも良いでしょう。
ご家族で助け合うことで、自分で思うほど必要ではなかった、というケースも考えられます。

「許容性」については、今までに触れてきた高齢者講習や認知機能検査により、ある程度は担保されるように思われます。
しかし、上記の説明でお分かりのように、わずか数時間で加齢に伴って生じる身体の機能の低下を正確に判定することには困難が伴うため、明らかな認知症症状が出ている場合以外は、チェックの目をかいくぐって免許の更新が認められてしまうこともあるでしょう。
そのため、ご自身の体についての「許容性」については、「免許更新時の認知機能検査で問題がなかったから大丈夫」ということではなく、ご自身でしっかりと把握し、判断することが必要です。

まとめ

以上、高齢者講習について紹介いたしました。

高齢者扱いされて若い人と比べて長時間の検査・講習を強いられ、億劫に感じるかもしれません。
しかし、高齢者高周波、高齢運転者が加害者となる悲惨な事故を1件でも減らすために必要な制度です。

身体機能に自信がある方は、ぜひチャレンジ講習を受けてみてください。

そして、免許を保持し続ける理由についても、今一度自分自身でよく確認してみましょう。
一人一人が車を運転することの危険性についてしっかりと考えることが、事故を防ぐ第一歩になるのではないでしょうか。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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