インターネット上で書き込み被害に遭った場合、一刻も早く削除したいものです。
インターネットは私たちの生活に利便性を与えてくれる反面、特に近年は、ネット上での炎上をきっかけとして特定人に対する誹謗中傷が後を絶たず、深刻な被害を与えています。
この記事では、そんな方々に向けて
- ネット上での誹謗中傷の書き込みを削除する方法
などについてご紹介します。
この記事が皆さまのお役に立つことができれば幸いです。
ネットの誹謗中傷について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
目次
1、書き込みを削除したい!ネットでの誹謗中傷が大きな問題に
内閣府は、平成29年10月5日から同月15日にかけて、全国の日本国籍を有する18歳以上の方 3000人を対象(有効回答数1758人)に、「人権擁護に関する世論調査」を行っています。
その調査の中で、
「インターネットによる人権侵害に関し、現在、どのような問題が起きていると思いますか?(複数回答可)」
との問いに対し、
「他人を誹謗中傷する情報が掲載されていること」
と回答した人が62.9%、
「プライバシーに関する情報が掲載されること」
と回答した人が53.4%といずれも過半数を超えており、ネットでの誹謗中傷などの書き込みが社会問題として認知されていることがうかがえます。
2、書き込みを削除したいときの対処法①|自分で対応
では、具体的な削除の方法をご紹介します。
(1)削除申請フォームや報告フォームを利用
サイト上に「削除申請フォーム」がある場合は、そのフォームを使ってサイト管理者、運営者に対し削除申請することができます。
予め設けられている申請フォームを用いるため、申請費用の負担なく手軽にできます。
たとえば、ツイッターでは、次の「削除申請フォーム」が設けられており、誹謗中傷、プライバシー侵害などに当たるおそれがある書き込みを発見した場合に、このフォームを使ってツイッター社に直接、削除申請をかけることができます。
サイト独自の利用規約の要件を満たせば、削除してもらえる可能性があります。
しかし、管理運営者が対応してくれるかどうか、不安は残ります。
なぜなら、管理運営者が恣意的に記載内容を削除することは、サービスの運営に支障を与えるからです。
誰でも、せっかく書き込んだ内容が勝手に削除されるようなサイトには、投稿する気もなくなってしまいます。
そのため、管理者としても、削除をすることの正当性をきちんと説明できなければなりません。
しかしながら、これはとても難しいことです。
管理運営者には、書き込み内容が真実かどうかなどはわからない場合が多いでしょうから、明らかに誹謗中傷をしている場合はともかくとして、削除すべき内容なのかどうかの判断がつかない場合もあるのです。
(2)「送信防止措置依頼書」をサイト管理者や運営会社に対して送る
①送信防止措置とは
送信防止措置という言葉は、プロバイダー責任制限法という法律の3条2項2号に出てきます。
プロバイダー責任制限法は直接的には送信防止措置のための法律ではなく、その名のとおり、プロバイダーの責任を制限するための法律です。
つまり、送信防止措置によって情報の「発信者」に損害が生じた場合でも、プロバイダーは損害賠償の責任を負いませんよ、ということなどが規定されています。
送信防止措置として、プロバイダーが情報の「受信者」の申出に基づいて、情報の発信者に対し、受信者の権利を侵害したと認める情報の送信を防止する措置(情報の削除など)ということができます。
* プロバイダーとは *
プロバイダー責任法2条3号の「特定電気通信役務提供者」に当たります。
特定電気通信役務提供者とは、特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者をいいます。
そこで、プロバイダー責任法でいうプロバイダーには、皆さんがイメージされるインターネット接続業者(特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する者)のほか、投稿サイト運営者、ブログの運営者(特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者)なども含まれます。
②どんな場合にできるの?
プロバイダー責任制限法3条2項2号では、「自己の権利を侵害されたとする」と規定されています。
まず、「自己」、つまり、あくまでご自身の権利が対象となるのであって、知人、友人などの権利は対象ではありません。
ただ、「侵害された」ではなく、「侵害されたとする」と規定されていることに注意が必要です。
つまり、権利を侵害されたことが明らかである場合はもちろん、申出段階では「権利を侵害されたかどうか不明だ」「分からない」などという場合でも申出することができます。
③申出の手続きは?
プロバイダーによって異なりますが、プロバイダー宛に「送信防止措置依頼書」を郵送する、専用フォームから申出をする方法があります。
依頼書の書式は決められていませんが、プロバイダーによっては、サイトに所定の様式を掲載していますので活用しましょう。
書式やサイトに記載事項が掲載されています。プロバイダー責任制限法によれば、「権利を侵害したとする情報」、「侵害されたとする権利」、「権利が侵害されたとする理由」を示して申出をすることが求められています。
プロバイダーによっては、この他にも、情報が掲載されているURLなどを必要としています。
3、書き込みを削除したいときの対処法②|弁護士に依頼
前記「2」でご紹介した方法によっても、最終的に書き込みを削除するか否かはプロバイダーの判断に委ねられます。
対応してくれない、削除してくれない、という場合は、専門家である弁護士に依頼しましょう。
(1)弁護士による削除申請、申出(任意手段)
プロバイダーが個人の場合、合理的な理由がないにも関わらず、削除申請等を無視されるということもあります。
そのような場合、弁護士が代理人として削除申請等をすることで、相手に「対応しなければ法的措置を取られてしまう。」などと思わせ、対応措置を取らせることができる可能性があります。
また、弁護士が送信防止措置を代理することも可能です。
個人で削除申請等をするよりも、弁護士名義で行った方がプロバイダーに与えるインパクトが大きく、誠実に対応してくれる可能性があります。
また、先にご紹介したように、削除申請等をするにはどのような権利が侵害されたのかを特定する必要があります。
そのため、削除申請には法的知識が必要となります。
弁護士であれば、この点につき的確に判断してくれます。
なお、申請から削除までには早くても1か月程度の期間を要します。
(2)仮処分の申立て(強制手段)
①仮処分とは
任意の削除申請、申出にもかかわらず相手がこれに応じない場合は、強制的手段を取る必要があります。
強制手段として挙げられるのが、仮処分の申立てです。
仮処分は、民事保全法第13条に基づく処分です。
権利が侵害されたあるいは侵害されそうな場合に、ただちに保全措置(情報の削除等)を取られなければ取り返しのつかない損害が発生してしまうなど緊急性の高い場合にとられる処分です。
②仮処分申立ての手続き
裁判所に申立書を提出して行います。
この際、どんな権利(名誉権、プライバシー権など)が侵害されたのか、なぜ保全の必要があるのか記載し、それを疎明するための証拠を添付する必要があります。
申立て後は、裁判所で、裁判官の審尋(面談)を受けます。
権利内容が不明確、証拠が不十分な場合などは質問を受けたり、新たな証拠の提出を求められたりすることがあります。
また、サイト運営者、プロバイダー側も同様の審尋を受け、反論することが予想されますから、反論に対応できるだけの主張、証拠を固めておく必要があります。
その後、裁判所が申立ての要件を認め仮処分命令を出す場合は、申立人にその旨通知します。
通知を受けた申立人は、法務局で供託金を納付し、供託書を裁判所に提出されば、仮処分命令が発せられます。
仮処分はあくまで「仮」の処分ですから、本来、命令が発せられた後、訴訟を提起する必要がありますが、書き込みが削除された場合はそれ自体で目的が完結されますから、あらためて訴訟を提起する必要性は低いでしょう。
なお、申立てから命令が発せられるまでにははやくて「1か月から2か月」、相手方から争われた場合は「半年から1年」程度を要する場合もあります。
③相手が命令に応じなかったら?
仮処分は強制力を伴うものです。
したがって、相手方が命令に応じない場合は、強制力を行使できます。
書き込みの削除の場合、相手にこれを実行させることは期待できませんから、裁判所にお金を納付させる間接強制という手段が用いられます。
【削除請求にかかる弁護士費用】
成功報酬は、書き込み1件ごとに5万円~が相場です。
ただし、書き込む相手や内容によっては別の書き込みと判断され、その場合は新たに費用が発生することもあります。
また、成功報酬とは別に着手金や実費、日当などが発生しますから、法律事務所の料金体系を確認しましょう。
4、書き込みを削除したいときの対処法③|逆SEO
SEOとは、グーグルなどの検索で検索されやすくするための対策です。
これに対して、逆SEOとは、検索されにくくするための対策のことをいいます。
皆さんも、「検索」という箇所に、キーワードを入力するとそれに関連したワードが一気に抽出されるという経験をされていると思います。
そこに、ネガティブなキーワードを表示させない(通常のキーワードを表示させる)、悪意のあるサイトを退け、意図するサイトを上位表示させるなどといった対策が逆SEO対策です。
書き込みの削除そのものではありませんが、被害の軽減にはつながります。
逆SEO対策は弁護士ではなく、SEOの専門家へ依頼しましょう。
【逆SEO対策にかかる費用】
月額5万円~30万円が相場です。
成功報酬型と定額型があり、初期費用がかかる場合かからない場合があります。
それぞれのメリット、デメリットを勘案して賢く選択しましょう。
5、書き込み者に対抗する方法は削除以外にもある
誹謗中傷の書き込みをした相手に対抗する方法は、削除だけではありません。
削除請求のほか、損害賠償請求、刑事告訴等をすることができます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
6、書き込み削除はネット問題に強い弁護士に相談しよう
(1)削除請求代行サービス業者へ依頼しても良い?
インターネットの検索エンジン上で「誹謗中傷削除」といったキーワードで検索すると、削除請求代行サービスを提供している会社のページが複数ヒットします。
専門の業者が存在するのであれば、削除を委託するのが安全のような気がするかもしれませんが、こちらはお薦めしません。
なぜなら、弁護士法に抵触している可能性があるからです。
弁護士以外の人は報酬を得る目的で「法律事件」に関して「法律事務」を取り扱うことができないと弁護士法で定められています。
削除請求代行業者が法律事務として削除請求を行う場合、弁護士法に抵触する可能性があります。
そしてそのような場合、削除請求を受けた相手方としても、実質的な権限のない者からの請求であるからとして、真っ向から向き合ってくれない可能性があるのです。
(2)誹謗中傷の書き込み削除の相談は弁護士がおすすめ
このように、削除業者による削除行為には問題点があります。
まずは、「2」でご紹介した方法を試してみて、それでも削除が難しいという場合は弁護士に相談しましょう。
弁護士であれば、ご紹介した方法以外にも、プロバイダー等に発信者の情報を開示するよう求めたり、開示された情報を基に発信者に損害賠償請求するなどの方法を含め、様々な角度から的確に法的措置を取ることが可能です。
なお、発信者の情報開示も請求する場合は、早めの対応が必須です。
2021年2月現在においては、プロバイダー等では、発信者の情報を保存する義務がなく、一般的に保存されているのが3ヶ月程度と言われています。
そのため、書き込みから3ヶ月以内に手を打つ必要があるのです。
まとめ
以上、この記事では、書き込みを削除する方法として
- ご自身でできる方法
- 弁護士に依頼する方法
- SEOの専門家に依頼する方法
をご紹介してきました。
ネット上で誹謗中傷を受けると、誰が書き込んだかわからず、ご自身ではどのような対策を取ればおいのかわからない、という場合も多いかと思われます。
まずは一人で悩まれず、弁護士にご相談ください。
どの方法がご自身にとって最適かを早めに見極め、有効な対策を取りましょう。