個人再生は債務整理の中では最も複雑な手続きの一つですが、自己申告することもできます。自己申告すれば、弁護士費用を省くことができます。
しかし、複雑な手続きに不安を感じる場合、最終的に弁護士に頼むべきかどうか悩むかもしれません。
今回は、
- 個人再生を弁護士に頼むメリット
- 個人再生の弁護士費用の一般的な相場
について解説します。
個人再生の基本については以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、個人再生は弁護士に依頼せずに自分で手続きすることは可能か?
個人再生の手続きを弁護士に依頼せずに債務者自身で行うことは、法律上禁止されているわけではありません。
したがって、正確に手続きができるのであれば、ご自身で個人再生を申し立てても問題はありません。
しかし、実際に弁護士に依頼せずに個人再生を申し立てることは、あまりおすすめできません。
現状では、個人再生申し立てる方のほとんどは、弁護士に依頼しています。
裁判所でも、できる限り弁護士に依頼して申し立てることを推奨しているようです。
なぜでしょうか?
以下、詳しくみていきましょう。
2、個人再生を弁護士に依頼せずに行う3つのデメリット
個人再生を弁護士に依頼せずにご自身で行うデメリットは、第一に「面倒」であることです。
しかし、現実はそれだけでなく、以下の3つのデメリットがあるのです。
(1)個人再生に失敗するリスクが高くなる
個人再生は債務整理の中でも最も複雑な手続きなので、ご自身で行うには多大な労力と時間を要します。
最悪の場合、個人再生に失敗してしまうリスクもあります。
具体的にはまず、数多くの必要書類をそろえた上で、申立書を作成して裁判所に提出する必要があります。
この時点で不備があった場合、軽微な不備であれば裁判所からの指示に従って補充や訂正をすることもできます。
しかし、重大な不備がある場合や申立て要件を満たしていない場合には、却下や棄却の対象となります。
例えば、借金総額が5,000万円を超えている場合は個人再生をすることはできないのに、気付かずに申し立てると却下されてしまいます。
また、高価な資産があると個人再生による返済額も大きくなってしまいますが、気付かずに申し立てて返済の見込みが認められないと、棄却されます。
他にも、債権者の計上漏れ、債権額の計算違いなどのミスも考えられますし、個人再生を申し立てた途端に保証人に迷惑がかかるといった事態も考えられます。
さらに、個人再生の重要な手続きとして、再生計画案の作成があります。
今後の借金の返済計画(返済すべき総額、返済方法)を債務者自身で作成し、裁判所や債権者のチェックを受ける必要があるのです。
このとき、いわゆる「素人考え」でご自身に都合の良い再生計画案を作成してしまうと、債権者から不同意にされたり、裁判所による認可決定が得られない可能性が高まります。
かといって、再生計画案において返済額を多くしすぎると、実際の返済に行き詰まってしまうこともありますし、そもそも裁判所から「返済の見込みなし」と判断されるおそれもあります。
(2)個人再生委員が選任される
個人再生を弁護士に依頼をせずに、ご自身で申し立てた場合、原則として「個人再生委員」が裁判所によって選任されます。
個人再生委員とは、個人再生手続きが適正に進められるように裁判所を補佐する人のことで、申し立てた地域の弁護士の中から選ばれます。
個人再生委員が選任される場合には、個人再生委員の報酬を予納金として納める必要があります。
報酬の金額は裁判所によって異なる場合もありますが、おおよそ25万円程度が目安です。
この金額を、申立人ご自身が負担しなければなりません。
したがって、弁護士に依頼をせずに個人再生を申し立てることによって弁護士への依頼費用をカットできたとしても、金銭的なメリットが大きいとは言い切れません。
(3)予納金が高くなる(東京地方裁判所の場合)
もっとも、東京地方裁判所においては、弁護士からの申立てかどうかを問わず、全件で個人再生委員が選任されるという運用がなされています。
東京地方裁判所では、申請件数が多いことと、予納金を分割で支払わせることで「再生計画の履行テスト」を行うことがその理由です。
ただ、弁護士に依頼した場合とご自身と申し立てた場合とでは、予納金の金額が異なります。
ご自身で申し立てた場合の予納金は25万円ですが、弁護士に依頼した場合は個人再生委員の負担も減りますので、予納金が15万円に減額されるのです。
3、弁護士に依頼せず個人再生に失敗するとどうなる?
ご自身で個人再生を申し立てても、きちんと手続きができるのであれば問題ないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
たしかにそうなのですが、「2」でご説明したように、ご自身で申し立てると失敗するリスクが高まります。
ここでは、もし個人再生に失敗してしまうとどうなるのか、をご説明します。
(1)再度の申立ては可能だが難易度が上がる
個人再生に失敗すると、借金は一切減額されることなく、そのまま個人再生手続きは終了します。
その後に再度、個人再生を申し立てることも可能ですが、失敗した原因を解消しなければ何度申し立てても結果は同じです。
再生計画案が債権者から不同意にされて不認可となったのであれば、その債権者の理解を得てから再度の申立てをする必要があります。
実は「小規模個人再生」ではなく「給与所得者等再生」の手続きを選択すれば、債権者の同意・不同意にかかわらず認可を得ることが可能です。
ただし、給与所得者等再生の手続きは小規模個人再生よりも複雑で細かな計算も必要になるので、難易度が上がります。
(2)弁護士に依頼すると二度手間となる
いったん個人再生に失敗した後に、弁護士に依頼して再度申し立てることも可能です。
しかし、一度申し立てていたからといって手続きが簡略化されることはなく、一からのやり直しとなります。
結局、二度手間となってしまうのです。
1回目の申立ての際にかかった印紙代や実費なども、無駄になってしまいます。
(3)自己破産せざるを得なくなる可能性もある
個人再生に一度失敗した後もご自身での申立てにこだわる方もいらっしゃいますが、失敗した原因を解消できずにいると、問題が深刻化していくおそれがあります。
借金は減額されないばかりか遅延損害金が加算され、債権者からの催促も厳しくなってくるでしょう。
借金額が増えると個人再生による返済額も増えるので、返済可能な再生計画案を作成できない場合は自己破産せざるを得なくなる可能性もあります。
遅延損害金が加算されることによって借金総額が5,000万円を超えて個人再生を利用できなくなり、自己破産しか選択肢がなくなるケースもあります。
4、個人再生を弁護士に依頼する4つのメリット
とはいえ、弁護士に依頼する際に気になるのはその費用でしょう。
本項では、その費用に見合ったリターンがどのくらいあるのか、念のため具体的に確認してみましょう。
(1)取り立てがすぐに止まる
まず、弁護士に個人再生を依頼した時点で、貸金業者からの取り立てがすぐに止まるというメリットがあります。
弁護士は、個人再生の依頼を受けると最初に「受任通知」を各債権者宛に送付します。
この受任通知が届いた後は、貸金業者は債務者に対して直接取り立てをしてはならないことが貸金業法で定められているのです。
通常は受任通知は速達で送付されますので、早ければ依頼した翌日には貸金業者からの連絡が一切なくなります。
ご自身で個人再生を申し立てる場合には、実際に裁判所に申し立てて、「開始決定」が出る間では取り立てが止まりません。
債権者からの催促を受けながら申し立ての準備を進めなければならないことになります。
その点、弁護士に依頼すればすぐに取り立てが止まりますので、落ち着いて生活をしながら、弁護士との打ち合わせにも臨むことができます。
(2)複雑な手続きをすべて任せられる
弁護士に依頼すれば、その弁護士が代理人として個人再生のすべての手続きを代行してくれます。
複雑な手続きをご自身で行う必要はなくなりますので、何も考える必要はありません。
仕事や家庭生活を安心して送ることができるのです。
(3)個人再生に成功する可能性が高くなる
複雑な個人再生の手続きも、慣れた弁護士にとっては難しいことではありません。
難しい事情があるケースでも、弁護士の専門的な知識やノウハウを活用することによって、個人再生を成功に導くことでしょう。
(4)柔軟な解決策を考えてくれる
ひと口に個人再生といっても、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。
小規模個人再生は給与所得者等再生ほどには手続きが複雑ではなく、返済額も低額に抑えやすいですが、債権者からの不同意意見が多いと認可が得られないというデメリットもあります。
一方、給与所得者等再生は債権者の意向にかかわらず法律上の要件を満たしていれば認可が得られますが、細かな要件が定められていて手続きが特に複雑であることと、返済額が高額になってしまう可能性もあるというデメリットがあります。
給与所得者の方でも小規模個人再生を申し立てることは可能ですし、逆に個人事業主の方でも収入が安定していれば給与所得者等再生を申し立てることができます。
しかし、一般の方にとっては、どちらで申し立てるのが得策かの判断はなかなか難しいところです。
弁護士に依頼すれば、ご依頼者の事情に応じてベストな選択をすることが可能になります。
また、ご依頼者の状況によっては、個人再生ではなく、任意整理や自己破産など他の債務整理方法の方が適している場合もあります。
借金問題に強い弁護士であれば、幅広い視点からご依頼者にとって最善の解決方法を柔軟に考えてくれるので、お一人で問題に立ち向かうときよりも良い結果が期待できます。
5、個人再生を弁護士に依頼したときの費用の相場
ここまでで、弁護士に依頼した場合のイメージはついたでしょうか。
弁護士に依頼すれば、これからの債務整理も心強いはずです。一人ではありません。
親身になって、これからの人生のリセットを応援する味方になってくれるのですから。
そんな味方をつけるためには、どれくらいの費用がかかるのか。
本項では、気になる弁護士費用を中心として、個人再生にかかる費用をご説明します。
(1)弁護士費用
①相談料
弁護士への相談料は、30分あたり5,000円(税別)程度が相場です。
ただ、借金問題については無料で相談を行っている法律事務所も多くあるので、事前に確認の上で無料相談を利用するとよいでしょう。
②着手金
着手金とは、弁護士に個人再生を依頼する際に支払う費用のことで、最終的な結果にかかわらず(仮に個人再生に失敗した場合でも)、基本的には返還されないお金です。
個人再生の着手金は事案によって異なりますが、相場としては20~50万円程度です。
なお、いわゆる住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用する場合には、着手金がさらに10万円ほど上乗せされることが多いです。
③報酬金
報酬金とは、裁判所で再生計画案を認可され、個人再生手続きに成功したときに支払うお金のことです。
相場としては20万円程度ですが、住宅ローン特則を利用した場合には、さらに5~10万円ほど上乗せされることが多いです。
なお、報酬金はかからない(着手金のみ)事務所も多くあります。
ただし、その場合は着手金が高めに設定されていることもありますので、トータルでいくら必要となるのかを依頼前に確認するようにしましょう。
(2)弁護士費用はこわくない!
結局何十万円もかかりそうな弁護士費用。
借金に追われてそんな大金あるはずない・・・。
そんな風に思っていませんか?
何百万〜何千万円もの借金を軽くできる制度ですから、それを思えば必要経費ではあるでしょう。
でもそんな金はない!
そんなときは、分割払いを相談してみましょう。辛くない分割額で支払いが可能になる可能性があります。
弁護士費用を分割払いできるのかどうかは、法律事務所によります。
法律事務所が分割払いのシステムをとっているか、もしくは「法テラス」(政府が運営している、弁護士費用の立て替えサービスを行う公的な機関)と契約をしていれば、分割払いが可能です。
複数の法律事務所を探し、支払方法について確認してみてください。
債務整理に力を入れている法律事務所であれば、報酬の支払い方を柔軟にしている事務所は多いはずです。
(3)弁護士費用以外の個人再生にかかる費用
①実費
実費としては、必要書類の取得費や郵送料などの通信費がかかります。
通常は数千円程度です。
②裁判所へ納める費用
個人再生を申し立てる際は、どのようなケースでも以下の費用を裁判所に納める必要があります。
1.収入印紙(申立手数料) 10,000円
2.官報公告費用 13,744円
3.郵便切手 3,000円~5,000円程度(目安)
郵便切手については、債権者の数によって金額が異なりますし、裁判所によっても金額や切手の種類の組み合わせが異なります。
弁護士に依頼する場合は弁護士が手配するのが一般的なので、ご自身で確認・準備される必要はありません。
個人再生にかかる費用について、より詳しくは以下の記事をご参照ください。
6、個人再生を依頼する弁護士の選び方
弁護士なら誰でもいいの?誰でもいいなら知り合いが懇意にしている法律事務所に聞いてもらおうかなぁ・・・。
このように弁護士を探す方も少なくありません。
しかし、ご説明してきた個人再生を弁護士に依頼するメリットですが、実はどんな弁護士に依頼しても大きなメリットが受けられるとは限りません。
医師にも専門分野があるように、弁護士にも得意分野がありますので、弁護士を選ぶ際には個人再生を得意としていて、かつ、良い弁護士を探すことが大切です。
そのためには、以下のポイントに注意しましょう。
(1)個人再生の申立て実績が豊富
まず、個人再生の申立て実績が豊富にある弁護士を選ぶことが必須です。
慣れない弁護士に依頼すると、せっかく費用を支払っても結果はご自身で申し立てた場合とあまり変わらないことになるおそれもあります。
経験豊富な弁護士に依頼してこそ、正確で確実な案件処理が期待できますし、ご依頼者の事情に応じた柔軟な解決も可能になります。
弁護士の実績は法律事務所のホームページに掲載されていることもありますし、相談した際に直接聞いてみるのもよいでしょう。
(2)説明が分かりやすい
次に、弁護士の説明がわかりやすいことも重要なポイントです。
説明された内容がわからなければ不安ですし、ご自身にとってベストな解決方法を選択できないおそれもあります。
良い弁護士は、専門的で難解な内容でも一般の方にわかりやすいように説明してくれるものです。
相談の際にも、わからないことがあれば弁護士に遠慮なく質問しましょう。
その回答がわかりにくい内容であれば、もしかすると個人再生に慣れていない弁護士なのかもしれません。
(3)話を聞いてくれる
弁護士に依頼する際には、こちらの話をよく聞いてくれるかどうかも重視しましょう。
いくら弁護士に専門的な知識があるといっても、依頼を受けた案件を適切に処理するにはご依頼者の話をじっくり聞くことが必須です。
なぜなら、重要な事情を聞き漏らして弁護士が勝手に手続きを進めてしまうと、個人再生の手続きにも失敗するおそれがあるからです。
また、ご依頼者にとっても円滑にコミュニケーションが取れなければストレスがたまることでしょう。
相談や打ち合わせの際に、随時「聞きたいことはないですか」「言いたいことはないですか」と確認してくれる弁護士であれば安心です。
(4)実際に相談して比較する
良い弁護士にも様々なタイプの弁護士がいるので、最終的に重要となるのは、あなたと相性が合うかどうかという点です。
ミスマッチが起こると、言いたいことが言えずにストレスがたまったり、最悪の場合は個人再生に失敗してしまうおそれもあります。
そのため、依頼する前には必ず実際に相談して、弁護士の人となりやご自身との相性などを確認するようにしましょう。
また、無料相談を受け付けている法律事務所はたくさんありますので、複数の事務所の無料相談を利用してみて比較した上で、最も相性の合う弁護士を選ぶのがおすすめです。
7、個人再生で弁護士をお探しならベリーベスト法律事務所へ
個人再生弁護士をお探しの方は、ぜひベリーベスト法律事務所へご相談ください。
当事務所では「お客様の最高のパートナーでありたい」ことをモットーとして、各弁護士が親身に対応させていただいております。
事務所設立以来、個人再生の分野においても豊富な実績を重ねております。
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借金問題のご相談は何度でも無料ですので、お気軽にご連絡ください。
まとめ
個人再生をご自身で申し立てるのもよいのですが、メリットが少なく、デメリットが大きいというのが実情です。
無事に良い結果が得られればいいですが、様々なわからないことを調べたりして、多大な労力と時間を要して苦労されることと思います。
弁護士に依頼すれば、そういった苦労から解放されますし、より良い結果も期待できます。
お困りのときは一人で悩まず、まずは無料相談をご利用されてみてはいかがでしょうか。