破産者にとって、倒産や経済的な困難は避けて通れない壁となることがあります。債務整理や破産手続きは、そのような厳しい状況を乗り越える手段として注目されています。
しかし、破産者というと、世間的なイメージも悪く、さまざまな不利益を受けるのではないか心配だという方もいらっしゃるでしょう。
破産者になることで受ける制限とその解消方法を正しく把握することによって、破産すべきかについて適切に判断し、また、破産後に訪れる制限に適切に対処することができるようになります。
この記事が自己破産を検討する方の不安を取り除き、適切な判断をして、一日も早く借金から解放されるための助けになれば幸いです。
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目次
1、破産者とは
そもそも「破産者」とは、どのような人のことを言うのでしょうか?
破産者というと、自己破産をした人のことだと思うかもしれません。
確かに、自己破産をした場合も破産者ですが、破産手続は債権者からも申し立てることができます。
そこで、債権者申立てによって破産の手続きにかかった場合にも、債務者は破産者となります。
また、破産と免責は異なる制度です。
そこで、免責を受けられなくても、破産を申し立てて破産手続開始決定が出たら、債務者はその時点で破産者となります。
2、破産者になると、ブラック状態になる
それでは、破産者になると、どのような影響があるのか、以下で確認していきましょう。
破産者となったときのデメリットとして、ローンやクレジットカードなどを利用できなくなる問題があります。
破産をすると、銀行のローンやクレジットカードの新規発行、サラ金のキャッシングなどの借金ができなくなるのです。
住宅ローンや車のローン、事業用のローンも利用できませんし、他人の借金の連帯保証人になることもできません。
このように、破産によって借金できなくなるのは、個人信用情報に、事故情報というネガティブな情報が登録されるためです。
全国の貸金業者や金融機関は、3つある指定信用情報機関のいずれかに加盟しています。
そして、自社にローンやカード発行の申込みがあると、申込者の個人信用情報を確認します。
このとき、事故情報などの問題のある情報が登録されていると、信用できない人だという判断をして、審査を通しません。
そこで、自己破産によって個人信用情報に事故情報が登録されていると、ローンやカードの審査に通らなくなって、これらを利用することができなくなるのです。
世間では、このように個人信用情報に事故情報が登録されてローンやカードを利用できなくなった状態のことを、「ブラック状態」や「ブラックリスト」などと言うことがあります。
自己破産をすると、手続き後5年~10年程度、個人信用情報に事故情報が登録され続けます。
つまり、破産後は、5年~10年の間、借金ができなくなるということです。
なお、ブラック状態は、自己破産だけが原因になるものではなく、他の債務整理をした場合にも、個人信用情報に事故情報が登録されますし、借金の支払いを長期間遅延した場合にも、やはり遅延情報が登録されてブラック状態となります。
3、破産者になると、官報公告が行われる
破産者になると、「官報公告」が行われることも知っておきましょう。
官報とは、政府が発行している機関誌(新聞のようなもの)です。
毎日発行されています。
官報公告とは、その官報に情報が掲載されることです。
破産をしたということは、重要な情報ですし、その事実をまだ知らない債権者がいたら、知らせる必要もあります。
そこで、官報公告をすることにより、破産者の情報を世間に知らせるのです。
破産したときに官報公告されるタイミングは、
- 破産手続開始決定が出たとき
- 免責決定が出たとき
です。
掲載される情報は
- 破産者の氏名
- 破産者の住所
- 事件番号
- 決定内容
- 破産管財人の氏名、事務所の場所
- 債権者集会の日時、場所
などです。
電話番号やメールアドレスを掲載されることはありません。
官報公告が行われると、「破産したことを家族や会社などに知られるのではないか?」とおそれる方が多いのですが、そういった心配はほとんどありません。
官報は、毎日発行されているのですが、実際に読んでいる人はほとんどいないためです。
官報公告されることの主なデメリットは、自己破産後に闇金業者からDMが送られてくることです。
破産者は、ローンやクレジットカードを利用できなくなる上、もともと借金癖がある人が多いので、闇金にとっては良い顧客です。
そこで、闇金は、官報公告の破産者情報をチェックしていて、手続き後、破産者に対し、DMで借金の誘いをかけます。
ですから、自己破産後、闇金から自宅宛にDMなどが送られてきても、決して借入をしてはいけません。
闇金に手を出すと、せっかく自己破産をして借金問題を解決した意味がなくなってしまうためです。
4、破産者名簿とは?
破産者になると、「破産者名簿」に氏名等の情報が掲載される、ということを聞いたことがあるかもしれません。
破産者名簿とは、各自治体が保管している破産者の情報に関するリストです。
ただ、これは秘密情報なので、外部に公開されることはありませんし、外部から閲覧することもできません。
また、破産者となったとしても、必ずしも破産者名簿に氏名が登録されるわけではありません。
自己破産をしたとしても、最終的に免責決定を受けることができたら、氏名を抹消してもらうことができます。
そのため、破産者となっても、破産者名簿に載ることを、過剰に心配する必要はありません。
5、破産者になると、仕事ができない?
(1)破産者になると制限される資格
破産者になると、一部の仕事ができなくなるのではないか?と心配されている方もいるでしょう。
破産者には、「資格制限」が生じます。
資格制限とは、一定の職業や資格についての制限を受けることです。
具体的には以下の通りです。
- 弁護士や税理士、公認会計士、司法書士などの士業
- 宅建業者
- 貸金業
- 旅行業者
- 生命保険外交員
- 警備員
これらの職業や資格の制限を受けます(上記は一例で、他にも、たくさんあります)。
また、認知症になった人の代わりに財産管理などを行う「成年後見人」や「保佐人」「補助人」などになることもできなくなります。
(2)資格制限が解除される「復権」とは
ただ、資格制限を受けるのは、免責決定が出るまでの間です。
免責決定が下りると、資格制限は解除されるので、制限されていた職業に就くこともできます。
これを「復権」といいます。
(3)復権のタイミング
破産手続開始決定後免責決定が出るまでの期間は、同時廃止の場合3ヶ月程度、管財事件の場合には3~6ヶ月程度なので、その間資格制限を受けても問題がなければ、このリスクをさほど心配する必要はありません。
詳しくは「復権して破産のデメリットを解消し人生をやり直すための4つの知識」をご参照ください。
6、破産者になったら、周囲に知られることがある?
破産者になると、周囲に自己破産したことを知られてしまうのではないかが心配だと言う方がとてもたくさんいます。
結論からお伝えすると、自己破産をしても、周囲にそのことを知られるリスクは大きくはありません。
先ほどもお伝えしたように、自己破産の情報を知ることができるのは主に官報公告ですが、これを、実際に読んでいる人はほとんどいないためです。
特に、弁護士に手続きを依頼すると、同居の家族にも知られずに破産免責を受けることも十分可能です。
弁護士に自己破産を依頼したら、弁護士が債権者に受任通知を送ります。
すると、その時点で債権者から債務者への直接の連絡がなくなるので、債権者からの通知や連絡によって家族に借金を知られる可能性がなくなります。
また、自己破産の申立ての準備なども基本的にすべて弁護士が行いますし、裁判所や債権者との連絡も全て弁護士が行うので、債務者は、何もせずに普通に生活を続けたら良いだけです。
裁判所に行く回数や頻度も、そう多くはないので、その日だけ仕事を休めば済みます。
自宅を普段通りの時間に出て、普段の時間に帰宅したら、家族に心配をかけることもありません。
もっとも、家族にきちんと話をするに越したことはありません。
さらに、自己破産をしても、戸籍や住民表、免許証などの公的な証明書類にそのことが掲載されることはありません。
そこで、そういった書類を他者に見られて自己破産を知られるリスクもありません。
このように、周囲に秘密にしたまま自己破産をすることは十分に可能なので、不安な方は、弁護士に相談してみると良いでしょう。
ただし、裁判所によっては、同居の家族の収入について申告したり、その証拠として給料明細の提出を求められることもありますので、できる限り協力を求めた方がいいでしょう。
7、破産者になっても、残る債務がある!
自己破産して破産者となると、借金がすべてなくなると思われていることが多いのですが、実際には破産者となっても残る債務があるので、注意が必要です。
破産して免責を受けても、なくならない債権のことを、「非免責債権」と言います。
非免責債権には、以下のようなものがあります。
(1)税金、健康保険料等の租税公課
たとえば、住民税や固定資産税、相続税などの税金、健康保険料や年金保険料などの滞納がある場合には、破産免責受けても、支払義務が残ります。
(2)故意または重過失により、生命や身体に対して加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権
たとえば、故意に相手に暴行を加えてケガをさせた場合などの賠償責任は自己破産をしても残ります。
(3)悪意で加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権
相手の生命や身体に対する侵害ではない場合でも、「悪意」をもって加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権は、免責の対象になりません。
たとえば、相手の物を盗んだり、詐欺を働いたり横領をしたりなど、犯罪行為をして迷惑をかけた場合などには非免責債権になると考えましょう。
(4)養育費や扶養料などの請求権
養育費や婚姻費用などの支払い義務がある場合、破産免責を受けても免責してもらうことができません。
これらの扶養料を支払えない場合には、家庭裁判所において、養育費や婚姻費用の減額調停を行う必要があります。
「養育費を払わない方法はあるか。払いたくないなら知っておくべきこと」と「別居時に婚姻費用算定表を正しく利用して請求できる金額を計算する方法」も併せてご参照ください。
(5)給料の請求権
雇用関係のある労働者にからの未払の給与請求権などです。
(6)罰金
刑事罰を受けた場合の罰金等です。
(7)あえて債権者名簿に記載しなかった債権者の債権
一部の債権者を特別扱いしたいため、わざと債権者名簿に記載しなかった場合には、その債権を免責してもらえなくなる可能性があります。
まとめ – 破産者となっても、意外とリスクは小さい
今回は、破産者となったときの影響やリスクについて、説明をしました。
破産者となると、ブラックリスト状態になることを始めとして、いろいろなリスクがあることは確かです。
ただ、周囲に秘密にしたまま破産免責を受けることも可能ですし、破産者になっても、賃貸借契約や生命保険の契約などは、問題なく行うことができます。
銀行口座の開設や口座の利用などにも問題はありません。
借金問題を放置しておくことの方がよほど大きな問題があるので、借金返済に困っているなら、まずは一度、債務整理に強い弁護士に相談をしてみると良いでしょう。
「自己破産」についての詳細をご覧になりたい方はこちらをご確認ください。