交通事故で手や足を怪我した後に、指可動域が制限されることがあります。
指可動域の制限とは、指を曲げにくくなることをいいます。
治療を続けても指可動域の制限が残った場合には、後遺障害等級の認定を受けたうえで、その内容に応じた賠償金をもらえる可能性があります。
ただし、指が曲がりにくくなったすべての場合に後遺障害等級の認定を受けられるわけではありません。
そこで今回は、
- どのような場合に指可動域制限で後遺障害等級の認定を受けられるか
- 指可動域制限で後遺障害等級の認定を受けた場合の賠償金の相場
- 指可動域制限で適切な後遺障害等級を獲得するためのポイント
について、交通事故の損害賠償請求の実務に精通したベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。
この記事が、交通事故による怪我が原因で指が曲がりにくくなり、お困りの方の手助けとなれば幸いです。
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目次
1、指可動域制限で後遺障害の認定を受けられる?|指可動域制限とは
交通事故で手足の指を怪我した場合は、以下の要素によって後遺障害の認定を受けられる可能性の高低が異なってきます。
- どの指が曲がりにくくなったのか
- 曲がりにくくなった指が何本あるか
- どれくらい曲がりにくくなったのか
交通事故で指の可動域に制限が生じる原因としては、まず、指の骨折や脱臼、捻挫をした場合に、これらの負傷が治ったとしても指が変形したままになるケースが挙げられます。
また、指の筋肉や腱、靱帯などを損傷してしまい、治療を受けても完治せずに指を曲げ伸ばしする機能が完全に回復しないケースもあります。
これらの場合は、上記の3つの要素に該当する度合いに応じて、指可動域制限として後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
単なる突き指と診断された場合でも、腱や靱帯を損傷している場合や、骨折や脱臼を起こしている場合もあります。
そのため、事故直後は軽傷に思えても、指可動域制限の後遺障害が残るケースは決して少なくありません。
参考:https://keisei.kuhp.kyoto-u.ac.jp/contents/hands/finger/
2、指可動域制限で後遺障害等級の認定を受けるともらえるお金は?
後遺障害等級の認定を受けるメリットは、適切な賠償金がもらえるようになるということです。
交通事故の後に、ほんの少しでも以前に比べて指が曲がりにくくなった場合でも、広い意味では「後遺症」と呼んでも間違いではありません。
しかし、交通事故の損害賠償の対象となるのは、後遺症の中でも一定の基準に従って「後遺障害」と認定されたものだけです。
後遺障害に認定されてはじめて、治療費や入通院慰謝料等とは別に、以下の2つの賠償金を受け取ることが可能となります。
(1)後遺障害慰謝料
交通事故が原因で心身に障害が残ってしまうと、今後の日常生活や仕事に一定の支障をきたし、精神的苦痛を受けてしまうのが通常です。
被害者は事故に遭わなければこのような精神的苦痛を受けることはなかったのですから、その精神的苦痛を償うために「後遺障害慰謝料」という賠償金が支払われます。
治療中に受けた精神的苦痛に対しては「入通院慰謝料」が支払われ、治療を終えても残った後遺障害に対しては、別途「後遺障害慰謝料」が支払われるという仕組みになっています。
(2)逸失利益
後遺障害が残ると、通常は事故前と同じようには仕事ができないようになり、収入が減ってしまうと考えられます。
そこで、将来の収入減少を補填するために「逸失利益」という賠償金も支払われます。
ただ、逸失利益は被害者の今後の収入を継続的に補償してくれるというものではありません。
事故に遭わなければ将来得られたであろう利益を現時点において仮計算し、その金額を一度に支払うという形を取るのが原則です。
そのため、被害者の基礎収入や認定された後遺障害の等級によっては、逸失利益の金額が数千万円に上るケースも数多くあります。
3、指可動域制限の後遺障害は何級?|後遺障害等級の認定基準
指可動域制限で後遺障害の認定を受けるとしても、何級の後遺障害等級に認定されるかが重要となります。
後遺障害等級は1級から14級までに分けられています。
1級が最も重く、賠償金も高額となります。14級は最も軽く、賠償金は低額となります。
指の可動域制限で認定される可能性がある後遺障害等級は、以下の表のとおりです。
等級 | 後遺障害の内容 |
4級6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの |
7級7号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの |
7級11号 | 両足の足指の全部の用を廃したもの |
8級4号 | 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの |
9級13号 | 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの |
9級15号 | 1足の足指の全部の用を廃したもの |
10級7号 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの |
11級9号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
12級10号 | 1手のひとさし指、なか指またはくすり指の用を廃したもの |
12級12号 | 1足の第1の足指または他の4の足指の用を廃したもの |
13級6号 | 1手のこ指の用を廃したもの |
13級10号
| 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含む2の足指の用を廃したものまたは第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの |
14級7号 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
14級8号 | 1足の第3の足指以下の1または2の足指の用を廃したもの |
上記の表のうち、「手指の用を廃したもの」、「足指の用を廃したもの」、「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」の意味は、以下のように定義されています。
①手指の用を廃したもの
- 手指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
- 中手指節関節または近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの
- 母指(親指)は橈側外転または掌側外転のいずれかが、怪我をしていない側の親指の2分の1以下に制限されているもの
- 手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの
がこれに該当します。
なお、「中手指節関節」とは指の付け根の関節のことで、「近位指節間関節」は指の先端から2番目の間接のことです。
親指の「指節間関節」は親指の付け根ではなく指の先端に近い方の関節のことを指します。
親指の「橈側外転」とは手の平と水平方向に親指を外側に開く動きのことで、「掌側外転」とは手の平と直角に親指を立てる動きのことをいいます。
画像引用元:株式会社医学書院|『標準整形外科学(第12版)』 訂正表
②遠位指節間関節を屈伸することができないもの
遠位指節間関節とは、親指以外の指の最も先端にある関節のことです。この関節を「屈伸することができないもの」に該当するのは、次のいずれの場合です。
- 遠位指節間関節が強直したもの
- 屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないものまたはこれに近い状態にあるもの
「強直」とは、関節の可動域が制限されている状態のことを別の表現で言い表したものです。
③足指の用を廃したもの
これに該当するのは、次のいずれかの場合です。
- 第1の足指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
- 第1の足指以外の足指を中節骨もしくは基節骨を切断したもの又は遠位施設間関節もしくは近位施設間関節において離断したもの
- 中足指節関節または近位指節間関節(第1の足指にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの
4、指可動域制限の後遺障害でもらえる慰謝料・逸失利益の相場は?
それでは、指の可動域制限で後遺障害等級の認定を受けた場合には、どれくらいの賠償金がもらえるのでしょうか。
後遺障害慰謝料と逸失利益に分けて解説します。
(1)後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料の金額は、次の表のとおり後遺障害等級に応じて基準が設けられています。
本来なら、慰謝料は被害者が受けた精神的苦痛に応じて計算されるべきものですが、人の内心を客観的に測ることはできませんし、公平かつ迅速な損害賠償を実現するためにもある程度定額化されているのです。
等級
| 慰謝料額 | |
自賠責保険基準 | 裁判所基準 | |
4級6号 | 737万円 | 1,670万円 |
7級7号 | 419万円 | 1,000万円 |
7級11号 | 〃 | 〃 |
8級4号 | 331万円 | 830万円 |
9級13号 | 249万円 | 690万円 |
9級15号 | 〃 | 〃 |
10級7号 | 190万円 | 550万円 |
11級9号 | 136万円 | 420万円 |
12級10号 | 94万円 | 290万円 |
12級12号 | 〃 | 〃 |
13級6号 | 57万円 | 180万円 |
13級10号 | 〃 | 〃 |
14級7号 | 32万円 | 110万円 |
14級8号 | 〃 | 〃 |
後遺障害慰謝料が自賠責保険会社から支払われる場合は、上記の表のうち「自賠責保険基準」による金額となります。
任意保険会社と示談した場合に支払われる金額も、自賠責保険基準と同じか、すこし増額された程度になります。
一方、裁判で後遺障害慰謝料が認められた場合には「裁判所基準」による金額が支払われることになります。
弁護士に損害賠償請求を依頼した場合には、任意保険会社と示談する場合でも裁判所基準による金額を獲得できる可能性があります。
(2)逸失利益
逸失利益は定額ではなく、次の計算式によって算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
基礎収入とは、基本的に被害者の事故前の実収入をベースとして割り出した年収のことです。
労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて次のように定められています。
等級 | 労働能力喪失率 |
4級 | 92% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
ライプニッツ係数とは、将来得られるはずの利益を現時点で賠償するために中間利息を控除する必要があることから、その計算を行うために用いる数値のことです。
例えば、交通事故で右手を負傷して親指の用を廃し、10級6号の後遺障害に認定された人が、基礎収入300万円で、症状固定時の年齢が30歳だったとすれば、労働能力喪失期間が67歳までの37年であるため、逸失利益の金額は1,795万5,270円となります。
(計算式)
基礎収入300万円×労働能力喪失率27%×37年に対応するライプニッツ係数22.167=1,795万5,270円
後遺障害が残ったことによってその後の日常生活や仕事において不自由な思いをしなければならないわけですから、適切な認定を受けることが重要です。
5、指可動域制限で後遺障害等級を獲得するためのポイント
交通事故による負傷のために指が動きにくくなり、後遺障害が残ってしまったら、その障害に見合う後遺障害等級認定を獲得しなければなりません。
適切な等級を獲得するためには、以下の5つのポイントに注意しましょう。
(1)医師に症状を具体的に伝える
まず、重要なことは、指が動きにくいと感じたら、すぐに医師に具体的な症状を伝えることです。
たとえ事故直後から指が動きにくくなっていたとしても、数か月後に初めて医師に伝えたような場合は、事故と症状の因果関係が否定されて、後遺障害等級の認定が受けられなくなるおそれがあります。
(2)適切なペースで通院する
事故後に医師の診察を受けた後は、治療の必要がなくなるまで適切なペースで通院することも重要です。
負傷したのが指だけの場合は特に安静にする必要がないことも多いので、事故後も通常どおりに会社や学校へ通う方が多いでしょう。
仕事や勉強などが忙しいからといってたまにしか通院しないと、早い段階で「これ以上の治療の必要性がない」と判断されてしまう可能性があり、やはり後遺障害等級認定で不利になる可能性があります。
適切なペースがどれくらいかは、負傷の内容や症状の程度によってさまざまですので一概にいえませんが、医師の指示に従ってきちんと通院するようにしましょう。
突き指の場合でも、当初は週に2~3回、痛みが軽減しはじめてからも週に1回は通院した方がよいでしょう。
(3)詳しい検査を受ける
後遺障害等級の認定を受けるためには、障害の内容や程度を客観的に証明しなければなりません。そのためには、できる限り詳しい検査を受けておくべきです。
指可動域制限の場合は、それぞれの指の関節の可動域を測定する検査が最も基本となりますが、その他にもレントゲン検査やCT、MRIなどの検査も必要となる場合があります。
突き指の場合でも、なかなか痛みが取れず、指の動きも回復しないなどで「ただの突き指ではない」と感じたら、詳しい検査を医師に申し出ましょう。
(4)後遺障害診断書の記載に注意する
以上の3点に注意して通院治療を続けても完治せず、それ以上治療を続けても症状が変化しない状態になったら、「症状固定」と判断されます。
症状固定を迎えたら、医師に「後遺障害診断書」を書いてもらうことになります。
後遺障害診断書とは、症状固定となった時点で残っている症状や検査結果、今後に予想される症状の推移などを主治医が記載する診断書のことです。
後遺障害等級認定の審査においては、この後遺障害診断書の記載が重視されます。
したがって、後遺障害診断書の記載が不十分であれば、審査で不利になってしまいます。
実際に後遺障害診断書をチェックしてみると、必要な検査結果が記載されていなかったり、今後の症状の推移について「いずれ軽快すると見込まれる」などと根拠もなく記載されていることもよくあります。
不十分な記載しかない場合には、訂正や再発行を申し出ることも考えるべきです。よく分からないという場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
(5)被害者請求で認定申請をする
後遺障害診断書が発行されたら、いよいよ後遺障害等級認定の申請を行うことになります。申請方法には、次の2種類があります。
- 事前認定:加害者側の任意保険会社に手続きを一任する方法
- 被害者請求:被害者側が自分で申請手続きを行う方法
この2つの方法のうち、有利な認定結果が得られやすいのは被害者請求の方です。
なぜなら、後遺障害等級認定は書類審査のみで行われるところ、事前認定の場合は保険会社が基本的な資料しか提出しないのが通常だからです。
被害者請求の場合は、自分に有利な資料を自由に収入して提出できるため、適切な後遺障害等級を獲得できる可能性が高くなります。
6、指可動域制限の後遺障害が残ったら弁護士に相談を
この記事では、交通事故による指可動域制限と後遺障害の問題について解説してきましたが、難しいと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
お困りのときは、すぐに弁護士に相談するのが得策です。
早めに相談すれば、適切な治療や検査の受け方についてアドバイスが得られるので、スムーズに後遺障害等級を獲得できる可能性が高まります。
ただ、示談成立前ならどのタイミングでも弁護士に相談できますので、少しでも不安を感じたら弁護士に相談するようにしましょう。
必要に応じて後遺障害診断書のチェックも受けられますし、被害者請求の手続きも代行してもらえます。
保険会社との示談交渉も弁護士が代理人として行いますので、ご自身で直接保険会社とやりとりをする必要はありません。
裁判に発展した場合にも、弁護士の全面的なサポートが受けられます。
一人で対応するよりも、弁護士という味方を得た方が、適切な後遺障害等級の獲得につながりやすいといえるでしょう。
指可動域制限で後遺障害の認定を受けるためのQ&A
Q1.指可動域制限で後遺障害の認定を受けられますか?
交通事故で手足の指を怪我した場合は、以下の要素によって後遺障害の認定を受けられる可能性の高低が異なってきます。
- どの指が曲がりにくくなったのか
- 曲がりにくくなった指が何本あるか
- どれくらい曲がりにくくなったのか
交通事故で指の可動域に制限が生じる原因としては、まず、指の骨折や脱臼、捻挫をした場合に、これらの負傷が治ったとしても指が変形したままになるケースが挙げられます。
また、指の筋肉や腱、靱帯などを損傷してしまい、治療を受けても完治せずに指を曲げ伸ばしする機能が完全に回復しないケースもあります。
これらの場合は、上記の3つの要素に該当する度合いに応じて、指可動域制限として後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
Q2.指可動域制限で後遺障害等級の認定を受けるともらえるお金は?
交通事故の損害賠償の対象となるのは、後遺症の中でも一定の基準に従って「後遺障害」と認定されたものだけです。
後遺障害に認定されてはじめて、治療費や入通院慰謝料等とは別に、以下の2つの賠償金を受け取ることが可能となります。
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
Q3.指可動域制限で後遺障害等級を獲得するためのポイントは?
交通事故による負傷のために指が動きにくくなり、後遺障害が残ってしまったら、その障害に見合う後遺障害等級認定を獲得しなければなりません。 適切な等級を獲得するためには、以下の5つのポイントに注意しましょう。
- 医師に症状を具体的に伝える
- 適切なペースで通院する
- 詳しい検査を受ける
- 後遺障害診断書の記載に注意する
- 被害者請求で認定申請をする
まとめ
交通事故で指を怪我した場合、突き指や単純骨折だけなら数週間~1か月ほどで完治することが多いでしょう。
しかし、複雑な怪我を負った場合や、関節の可動域制限がなかなか回復しない場合には、後遺障害等級の認定を受けることを考えなければなりません。
その場合には、弁護士があなたの味方となってサポートします。まずは、お気軽に無料相談を利用されるとよいでしょう。