破産法とは? 自己破産において知っておきたい7つのこと

破産法とは破産手続きに関する法律です。
人も会社も借金がたまりにたまって返せなくなったとき、そこから逃れる方法として、自己破産することが考えられます。

自己破産のときに使われる法律を、破産法といいます。

破産法といっても、なじみにくい法律ですから、よくわからないかと思います。

  • 破産法とはどんな法律?
  • 破産手続きの流れはどのようになるの?
  • 自己破産の申請とそれにかかる費用はどれくらい?
  • 実際のところ、自己破産のメリットとデメリットはどうなの?

このような疑問に対して、破産法に詳しいベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく説明します。

オーナー社長として会社を経営している場合等は、融資を受ける際に、社長個人が連帯保証人になっているケースが多いでしょうから、そのような場合は、会社と個人と両方の破産が必要なことがあります。

破産法について、正しい知識を身に着け、破産すべきかどうか、また、破産する場合もスムーズに手続きができるように、この記事が参考になれば幸いです。

自己破産に関してはこちらの記事をご覧ください。

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1、破産法とはどんな法律?

破産法とは?

破産法とは、債務整理の1つである破産手続きの要件・効果・手段などを定める法律をいいます。

破産とは、借金を清算して、経済生活の再生の機会を図る手続きをいいますから、破産法は、そのために適用される法律です。

そして、破産法の目的は、破産法1条に定められています。

破産法 第1条

この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

出典:破産法|e-Gov法令検索

このように、破産法の目的は、債権者の権利の確保を図るとともに、債務者の経済生活の再生の機会を図るところに、重きがおかれているのです。

そして、破産法の適用対象は、個人だけでなく、会社等の法人も含まれます。

2、破産法における「個人の破産」と「会社の破産」5つの違い

個人と法人との違い

個人の破産と法人の破産とで違う点は何でしょうか。

その違いは、大きく分けて5点ありますので、以下では、その違いをみていきましょう。

個人法人
破産しても個人は消滅しない破産すると法人は消滅する
免責するかどうか裁判所が判断免責不要(法人自体が消滅するので)
破産しても生活に必要最小限度の財産は残る財産はすべて処分
同時廃止になること多いほとんど管財事件
費用が低額費用が高額

(1)個人や法人が消滅するか否か

個人の場合、破産してもその個人が消滅することはなく、破産者にもその後の生活があります。

これに対し、法人が破産すると、その法人は消滅してしまいます。

(2)免責手続きがあるか

個人破産の場合、個人が破産してもその個人は消滅しないので、破産手続きによって支払いきれなかった債務は、破産後であっても残ってしまうことがあります。

残った債務を免除させる制度として、免責というものがあり、裁判所によって許可されれば、破産手続きによって支払いきれなかった借金は帳消しとなるのです。

これに対し、法人の場合には、破産によって法人自体が消滅しますので、免責の制度はありません。

(3)財産が全て処分されるか

個人の場合、破産後も生活しなければならないので、生活に必要最小限度の財産は処分しなくてもよいことになっています。

これを自由財産制度といいます。

これに対し、法人が破産する場合には、法人自体が消滅しますので、財産を残しておくわけにはいかず、法人の財産は全て処分されるのが原則となります。

(4)同時廃止事件があるか

個人の破産の場合、債権者に支払うべきめぼしい財産がないときには、同時廃止事件となることがあります。

同時廃止事件とは、破産管財人が選任されず、破産手続開始決定と同時に破産手続が廃止される破産手続きの例外的形態をいいます。

債権者に弁済又は配当すべき財産が集まらないことが明らかな場合には、破産管財人による調査を行う必要がないので、このような例外的な手続きをふむことになります。

そして、同時廃止事件の扱いとなれば、破産管財人などが選任されることはなく、破産手続きは開始と同時に終了します。

これに対し、法人の破産の場合には、個人の場合に比べて複雑な財産関係や法律関係が存在する場合があります。

そこで、破産管財人による調査が行われる管財事件として扱われることになり、同時廃止事件となることはほとんどありません。

(5)費用がどれくらいかかるか

個人が破産する場合よりも、法人が破産する場合のほうが、費用は高額となります。

法人が破産するときには、管財事件となるのが通常ですから、手数料や官報公告費だけでなく、予納金の納付が必要となります。

また、弁護士報酬についても、個人の破産よりも法人の破産のほうが高額になる傾向があります。

3、破産法における破産をするために必要な条件4つ

破産をするために必要な条件

では、破産をするためには、どのような条件が必要となるのでしょうか。

以下では、法人が破産する場合についてみていきたいと思います。

(1)破産手続開始決定の申立て

旧破産法では、破産宣告という呼び方がなされていたので、破産宣告というワードのほうがまだなじみがあるかもしれません。

しかし、法律が改正され、改正後の新破産法では、破産手続開始の決定と呼ばれるようになりました。

(2)予納金の納付

自己破産をするためには、その申立てをした人は、裁判所に対し、一定金額の予納金を支払わなければなりません。

裁判所に納める金額の内訳の目安としては、破産手続きの手数料(1000円)、官報公告費(1万0000円~1万6000円程)、郵便切手(約5000円)、管財事件の場合にのみ必要となる引継予納金(20万円~30万円)となります。

(3)破産手続開始原因があること

破産手続開始の原因とは、債務超過をいいます。

債務超過とは、法人において、負債が資産を超過している状態をいいます。

このような場合に、破産手続きを始めるに値する原因があることになります。

(4)破産障害事由がないこと

破産よりも適切な手段があって、その手段を優先させるべきときには、破産手続きを濫用してはいけません。

そこで、破産手続きを始めるためには、破産障害事由がないことも要求されています。

例えば、予納金を納付しなかった場合や、濫用的な申立てがなされた場合には、破産障害事由があって、破産手続きの開始は認められないことになります。

4、破産法を使用して実際に破産したらどうなるの?

破産したらどうなるの?

では、実際に破産をすればどうなるのでしょうか。

破産には、原則的な形態として管財事件というパターンがあります。これについてみていきましょう。

管財事件となるのは、裁判所によって破産管財人が選任され、その破産管財人が破産者の財産を調査して換価処分する破産手続きの原則形態をいいます。

東京地方裁判所では、管財事件について、予納金額が少なくて済む「少額管財」とそれ以外の「特定管財」に分けられます。

では、管財事件として扱われることになれば、どうなるのでしょうか。

まず、破産者の財産管理処分権が奪われ、破産管財人に専属します(破産法78条1項)。

これにより、管理換価の対象財産である破産財団が、破産管財人の管理下となります。

つまり、破産者は、自分の財産を自由に処分できなくなるのです。また、破産債権者の権利行使が制限されます(破産法100条1項)。

破産手続開始決定があれば、強制執行や仮差押え、仮処分等の手続きは失効します(破産法42条1項)。

そして、破産手続開始後に破産財団に対し債務を負担した場合、この債務をもって相殺することもできなくなります。

5、破産法における自己破産の手続きの流れとは?

自己破産の手続きの流れは?

自己破産の手続きの流れについて、もう少し詳しくみていきましょう。

下記は、一般的な流れになりますが、裁判所によって運用が異なります。

(1)必要書類の提出

まずは、必要書類を裁判所に提出します。自己破産の申立書を、申立人の住所地を管轄する地方裁判所に提出することになります。

裁判所書記官と面談して、添付書類等に不備がなければ、申立ては受理されます。

(2)破産手続開始決定

申立後1~2ヶ月後に破産審尋という裁判官との面接を行います。

そして、破産者に一定の財産がある場合には、管財事件と扱われ、裁判所によって、破産手続開始が決定されます。

(3)管財人の選任・面接

裁判所によって破産管財人が選任され、破産者と管財人との面接が行われます。

(4)債権者集会

債権者が集合し、破産管財人による財産管理が適切に行われ、良い条件での金銭の分配がなされるための意見調整が行われます。

(5)債権者への配当

破産者の財産の処分・換価が終了し、債権者への配当ができるような原資が確保できた場合、配当の手続きがなされます。

配当は、一般債権者に対して債権額に応じて平等に配当されます。

(6)終結・廃止決定

終結又は廃止決定により、会社の権利義務は消滅し、会社の法人格は完全に消滅します。これにより、破産手続きは終了します。

詳しくは「自己破産手続きの流れや知っておくべき4つの注意点を弁護士が解説」も併せてご参照ください。

6、破産法における自己破産の申請とそれにかかる費用は?

自己破産の申請とそれにかかる費用は?

自己破産の申請をするには、どのような方法があるでしょうか。それは、大きく分けて3つの方法があります。

すなわち、(1)自分で申立てをする、(2)弁護士に依頼する、(3)法テラスを活用するといった方法です。

実際のところ、費用はどれくらいかかるのかが、破産を検討されている方にとって気になるポイントでしょう。

以下では、それぞれの方法について解説します。

(1)自分で申立てを行う場合

自分で自己破産の申立てを行う場合、費用は比較的安くすみます。

予納金や収入印紙代などの実費のみですので、約2万円~3万円で済むことになります。

ただし、弁護士などの専門家に頼まないのであれば、専門的で難しい手続きを全て自分でしなければならないので、苦労は多いといえます。

(2)弁護士に依頼した場合

弁護士などの専門家に依頼した場合、専門家である弁護士が書面の作成から手続きの進行まで行ってくれるので、自己破産の手続きをスムーズに行うことができます。

ただし、弁護士などの専門家に依頼すれば、約20万円~30万円のお金がかかり、手続きが無事に終了すれば、報酬としてさらにお金を支払うことになります。

なので、弁護士に依頼すれば、費用はどうしてもかさむでしょう。

(3)法テラスの活用

弁護士に依頼すれば、上記の通り、費用が高くついてしまいます。

他方、自分で手続きをするとなると、なかなか手続きを上手く進めることができません。

そこで、法テラスを活用することが考えられます。

自己破産をする際に、法テラスを活用すれば、弁護士費用が安く利用でき、弁護士費用を分割で支払うことができるというメリットがあります。

また、費用を立て替えることが可能です。

ただし、法テラスは、予納金についてまでは立て替えてくれません。

予納金については、自分で用意する必要があります。

例外として、生活保護受給者の場合には、20万円まで法テラスが立て替えてくれることが可能です。

また、法テラスを活用するためには、収入要件と資産要件という条件をクリアしなければなりません。

例えば、法テラスの扶助制度を活用するための収入要件とは、申込者が1人の場合に手取り月収額が18万2000円以下であることです。

また、資産要件としては、申込者が1人の場合、保有する現金及び預貯金の合計額が180万円以下である必要があります。

これらの要件をみたすのであれば、法テラスを活用するのがオススメです。

詳しくは、「自己破産の費用を安く抑えてお金が無くても借金を0にするための知識」も併せてご参照ください。

7、破産法における自己破産のメリット・デメリット

自己破産のメリット・デメリット

実際のところ、自己破産をする場合のメリットとデメリットはどのようなものでしょうか。

これらを十分に知った上で、自己破産をするかを決断すべきでしょう。

自己破産の他にも、債務整理の方法は存在しますので、他の方法と比較してみていきましょう。

(1)破産法の適用を受けない(自己破産をしない)場合との比較

①メリット

破産法の適用を受けることで得られるメリットしてはなんといっても、債務が免除され、借金が消滅し、借金の取立てがなくなることでしょう。

これによって、債務者の安心も取り戻せるのではないでしょうか。

②デメリット

破産法の適用を受けることによるデメリットは、実際には多く考えられます。

まずは、社会的な信用不安を引き起こすことです。破産者と認められれば、信用を失ってしまいます。

また、換価処分がなされれば、不動産などの一定の財産を失うことになります。

連帯保証人がいた場合には、連帯保証人にも迷惑をかけてしまうでしょう。

さらに、官報に記載される、住所の移転と旅行が制限され、職業や資格の制限を受け、破産管財人により郵便物の制限を受けるといったデメリットもあります。

加えて、7年間は再び免責を受けることができません

そして、破産者はしばらくクレジットカードを発行してもらうことができず、また、ローンを組むこともできません。

(2)私的整理との比較

①メリット

自己破産をすれば、私的整理とは異なり、裁判所の関与とともに手続きを進めることになるため、手続きが信頼できるというメリットがあります。

また、自己破産では、債権者の同意がなくても手続きを進めることができます。

②デメリット

他方、私的整理では裁判外で手続きを行い、柔軟な解決を望めるのに対し、自己破産によれば、裁判外で手続きを行うことができないので、柔軟な解決をすることができないというデメリットがあります。

詳しくは「債務整理(任意整理)のデメリットは?クレジットカードを作れなくなる?」もご参照ください。

(3)民事再生法が適用される場合との比較

①メリット

民事再生法によれば、債務が完全に免除されるわけではありません

これに対し、破産法が適用されれば、自己破産が実現でき、借金を帳消しにすることができます。

②デメリット

民事再生法によれば、法人の場合、債務者は消滅せずに事業を継続できるのに対し、破産法が適用されれば、債務者は破産者として消滅するので、もはや事業を継続しながら債務免除を受けることができなくなります。

詳しくは「民事再生の手続きの流れは?申請から会社再建まで徹底解説!」もご参照ください。

これらを表にすると、以下のようになります。

メリットデメリット
破産法の適用を受けない場合との比較債務が免除され、借金が消滅し、借金の取立てがなくなる
  1. 社会的な信用不安をひき起こす
  2. 一定の財産を失う
  3. 連帯保証人に迷惑をかける
  4. 官報に記載される
  5. 住所の移転と旅行が制限される
  6. 免責許可を受けてから7年間は再び免責を受けられない
  7. 職業や資格の制限を受ける
  8. 不動産を手放す
  9. 破産管財人により郵便物が制限される
  10. クレジットカードを発行し、又はローンを組むことができない
私的整理との比較
  1. 自己破産は私的整理とは異なり、裁判所の関与とともに手続が進行するため、手続の信頼性が厚い
  2. 自己破産では、債権者の同意がなくても手続を進められる
裁判外で手続を行えないため、柔軟な解決を望めない
民事再生法との比較債務が全て免責される
  1. 破産法が適用されれば破産者は消滅する
  2. 事業を継続しながら債務免除を得られない

詳しくは、「自己破産のデメリットとデメリットを回避する方法」をご参照ください。

まとめ

  • 破産法とは自己破産の際に適用される法律
  • 自己破産の手続きには、管財事件と同時廃止事件がある
  • 自己破産をするには、メリットとデメリットを十分に把握すべき
※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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