ブラックリスト入りの真実:恐れる前に知っておくべきこと

「ブラックリスト入り」というフレーズは、多くの人にとって借金に関連する恐怖の対象です。

しかし、実際には公式な「借金ブラックリスト」という体系は存在しません。

多くの人が「ブラックリストに載ることは避けたい」と感じる一方で、この思考が誤った判断を引き起こす可能性もあることを知っておくべきです。

この記事では、「ブラックリスト」という用語の意味や、「ブラックリスト入り」という言葉の真の定義や条件について詳しく解説します。

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1、ブラックリストとは

ブラックリストとは

ブラックリストとは、一般的な用語法としては、要注意人物などをまとめた一覧表のことを意味するものです。たとえば、飲食店などにおいて過去にトラブルを起こしたことで「出入り禁止(入店お断り)」の取り扱いにする顧客リストのようなものがその典型例といえるでしょう。
借金の文脈においては「貸付などを行ってはいけない顧客のリスト」といえます。

(1)公的なブラックリストは存在しない

実は、借金やクレジットカードなどの文脈おいて「公的なブラックリスト」、つまり「この人にはお金を貸してはいけない」といった一覧表のようなものは存在しません

「金融機関がどの顧客と取引するか」いったことは、反社会的勢力に対する融資が禁止されているようなケースを除けば、それぞれの金融機関が自由に判断すべきことであるからです。 

また、「破産者にお金を貸してはいけない」という法律があるわけでもありません。

その意味では、破産者名簿もブラックリストとはいえません(そもそも、いまの運用では自己破産をしただけで破産者名簿に氏名などが載ることはありません)。

ただ、個別の金融機関が自社の取引でトラブルを起こした顧客について、一覧表を作成することも自由ですから、その限りにおいて、「○○銀行が保有するブラックリスト」のようなものが存在する可能性は高いといえます。

(2)「ブラックリストに載る」とはどういうことか?

借金にかかわる話題において「ブラックリストに載る」ということは、「信用情報機関とよばれる民間機関が保有するデータベースに『悪い情報』が掲載されること」を意味しています。

信用情報機関というのは、金融機関と消費者との間で実際に交わされた信用取引(借金やクレジットカードなどに関する契約)についてのさまざまな情報を管理している民間会社のことをいいます。

銀行・消費者金融・クレジットカード会社といった金融機関は、顧客と信用取引を締結した際には、必要な情報を国の指定を受けた信用情報機関が管理するデータベースに登録することが法律で義務づけられているものです。

日本においては、現在、次の3つの信用情報機関が「指定信用情報機関」として認められています

  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

この3つの信用情報機関は、JICCが消費者金融系、CICがクレジットカード会社系、KSCが銀行系と一応の区別をすることができます。

しかし、実際の金融機関の多くは、CICとJICC、KSCとCICといったように複数の信用情報機関に加盟しています。

また、信用情報機関同士もそれぞれが保有する情報の共有をはかっていますので、たとえば、CICで登録された情報についてKSC加盟の金融機関が照会することも可能です。

2、ブラックリストに登録される情報(いわゆるブラック情報)

ブラックリストに登録される情報(いわゆるブラック情報)

信用情報機関に登録されるいわゆる「ブラック情報」には、次のようなものがあります。

  • 61日以上もしくは3か月以上の延滞
  • 債権者による強制解約
  • 加重申込み(いわゆる申込みブラック)
  • 代位弁済の実行
  • 債務整理(任意整理・特定調停・個人再生)を行った事実
  • 回収不能となった事実(いわゆる貸倒れ処理した場合)

とはいえ、実際に登録される情報の内容・程度は、それぞれの信用情報機関によって微妙な違いがあります。 

たとえば、任意整理などについては「任意整理をした」ということがストレートに登録されるというよりは、(任意整理交渉期間中を含む)延滞の情報や代位弁済の実行という登録のされ方をすることもあります。

(1)ブラックリスト入りしてしまう典型的な場合4つ 

上で触れたこととも重複しますが、ブラックリスト入りしてしまう典型的な4つの場合について確認しておきましょう。

①債務整理をした場合

債務整理は、借入れの際の約束を債務者の都合で変更する債権者にとって不利益な行為といえますから、信用取引上の事故と評価できるものです。
したがって、債務整理をした場合にはその方法(任意整理個人再生自己破産)を問わず、信用情報への登録があります

なお、金融機関に対して過払い金請求を行ったことは、原則としてブラックリストの掲載理由にはなりません。過去に支払った違法金利を取り戻すことは信用事故でなく、顧客の正当な権利行使であるからです。

ただし、過払い金請求が実質的に債務整理としての意義を有する場合(過払い金の返済を受けてもなお借金が残ってしまう場合)には、信用情報にブラック情報が登録される余地があることに注意しておく必要があります。

②借金の返済、カードの支払いなどを長期間滞納した場合

借金の返済を長期間滞納した場合にも信用情報にブラック情報が登録されます。
一般的には、3ヶ月以上の延滞もしくは61日以上の延滞(の繰り返し)がある場合には、ブラック情報登録の理由となります。

③短期間での複数の申込み(申込みブラック)

ブラック情報は返済を怠った場合だけではなく、問題のある申込みがなされた場合にも登録されます。たとえば、詐欺的な申込みなどは、滞納よりも重要なブラック情報と評価することもできるでしょう。

申込みの態様についてブラック情報が登録される典型例は、「短期間での多数の申込み」です。
たとえば、借金を取り扱った映画や漫画などで描かれるような、同じビルに入居している消費者金融で上の階から下の階まで順番に借入れの申込みをするようなことは申込みブラックの例として最もわかりやすいものといえるでしょう。

なお、クレジットカードの申込みについても同様の取り扱いとなるので注意が必要です。
収入が少ない人などには、「数を打てば当たる(どこかは審査に通してくれるかもしれない)」と一気に複数のカード申込みを行うことがあるようですが、これは完全に逆効果です。

④携帯電話会社への支払いを滞納したことでブラックリスト入りするケース

近年になって急増しているのが、携帯・スマホ会社への支払いの滞納によるブラックリスト入りです。 

携帯・スマホ料金は、それ自体は信用取引ではありませんので、通話料金のみを滞納してもブラックリストへの影響は基本的にはありません(ただし、携帯料金未納の情報は、携帯キャリア各社で信用情報とは別に共有されています)。 

しかし、携帯・スマホ端末料金の分割払いを通話・接続料金と一緒に支払っているケースでは、携帯・スマホ会社への支払いの滞納は、分割払いの滞納でもあります。

端末料金の分割払いは、いわゆる割賦販売の支払いとなるので信用情報の対象となります。 

借金の返済に行き詰まっている人には、携帯会社への支払いが遅れがちになっている人も多く、このことが原因で信用情報が汚れていることが原因でいわゆる「詰み」の状況に追い込まれるケースも少なくありません。

(2)ブラックリスト入りしているかどうかを調べる方法

自分の信用情報にブラック情報が含まれているかどうかは、それぞれの信用情報機関に対して情報開示を請求することで確認することができます(それ以外に方法はありません)。

JICC・KSC加盟の金融機関のほとんどはCICにも加盟をしているので、基本的にはCICに情報開示請求をすれば、概ねの情報は確認できるといえます。

とはいえ、銀行からの融資の可否を検討したい場合にはKSC、消費者金融からの借入れを検討しているのであればJICCと、情報開示を求める理由に応じて対応を決めるのがよいでしょう。 

CICとJICCについては、オンライン(やスマホアプリ)からでも信用情報の開示を請求することができます(ただし、オンラインでの申込みには、手数料決済のためにクレジットカードが必要です)。

情報開示の手続の詳細は、それぞれの信用情報機関で異なりますので、詳細は下記のリンクを参考にしてください。

(3)ブラック情報を自分で消すことはできる? 

信用情報にブラック情報が登録されると、金融機関との取引において一定の不利益をうける可能性が高くなります(詳しくは3、で解説)。そのため、すでに登録されたブラック情報を何とか消してもらいたいと考える人も多いかもしれません。

しかし、一度登録されたブラック情報は、その情報を登録した金融機関以外が変更・消去することはできません(登録された情報が真実ではない場合は除きます)。 

近年では、「ブラック情報を消します」といったキャッチコピーで顧客を募る悪質業者も増えていますが、他の業者がブラック情報を消去することは100%不可能ですので、だまされないように注意しましょう。

3、ブラックリスト入りするとどのような不利益があるのか?

ブラックリスト入りするとどのような不利益があるのか?

ブラック情報が登録された場合には、金融機関と信用取引を行う際に不利な結果となる可能性が高くなります。
金融機関は、融資の実行、クレジットカード発行に際して行う審査の際に、必ず申込者の信用情報を調査(照会)するからです。
直近に信用事故を起こした申込者と取引したくないと考えるのは、当然なことといえます。

さらに、ブラック入りしたことは、新規の取引だけでなく、現在の取引にも悪影響を与える可能性があります
クレジットカードの契約更新の際には信用情報の調査が行われますし、利用状況などによっては、契約期間途中で任意あるいは法定義務に基づく信用情報調査(途上与信)が行われるケースがあるからです。

(1)「ブラックリスト入り=絶対に借金できない」というわけではない

ブラックリスト入りすると、金融機関との取引に大きな支障が出ることは間違いありません。
信用情報の調査結果は、金融機関の行う審査のなかでも重要な要素とされているからです。 

とはいえ、信用情報にブラック情報の登録がある人と信用取引を行ってはいけないという法律があるわけではありませんので、「ブラックリスト入りしたら絶対に金融機関と取引できない」というわけでもありません

たとえば、5年前のブラック情報(債務整理の事実など)よりも現在の年収や資産状況(いわゆる属性評価)を重視する金融機関も存在するといえるからです。

また、クレジットカードの更新審査の場合でも、他社を任意整理したことよりも、「自社との取引に事故がない」ことを重視するということも珍しいことではありません。

(2)ブラックリスト入りは一生続くわけではない~ブラック情報の登録は原則5年

信用情報に登録されたブラック情報は、永久登録されるというわけではありません。
それぞれの信用情報機関は、ブラックリストの登録(保存)期間を定めていますので、その期間を経過すれば、過去のブラック情報は必ず消去されることになっています。

したがって、「自己破産をしたからといって一生ブラックリスト入りする」ことはありません。

なお、ブラック情報の登録期間は、「登録から5年」が基本となりますが、KSCについては、官報掲載事項(自己破産・個人再生に関する情報)の登録期間を10年としていることに注意する必要があります

まとめ

「ブラックリストに載る」といわれると、誰でも不安に感じてしまいます。

たしかに、ブラックリスト入りすれば、今後の信用取引において一定の不利益が生じることは事実です。

とはいえ、「ブラックリスト入りを回避したい」と考えて、焦って対応をしてしまえば、状況はさらに深刻になり、ブラック情報がより長い期間登録されるような事態になってしまうことも少なくありません。

また、ブラック情報は、信用審査の重要な要素ですが、要素のひとつに過ぎません。
過去に債務整理をしたという事実があったとしても、その後に十分な収入・資産を得られた場合などには「過去のことは不問」と評価してもらえる可能性も十分にあります。

ブラック情報については、「不安を煽る」ことで不当な利益を得ようとする悪質業者や、必ずしも正しいとはいえない情報も蔓延しています。わからないことなどは、専門家などの信頼できる人に相談・確認することをオススメします。

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※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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