将来住宅ローンを組むつもりがある方など、債務整理をしたくても、将来の借入れができなくなるかどうか不安でなかなか踏み切れないという方も多いようです。
そこで今回は、債務整理後の借り入れに関する情報をお伝えします。
目次
1、そもそも債務整理とは?
債務整理とは、債務(借金)を整理することを言います。債務整理には大きく分けて3つの方法があります。
それは任意整理、自己破産、個人再生の方法です。
それぞれの手続によりその方法、効果は異なりますが、債務整理をすることによって、債務の全部又は一部が免除されたり、毎月の返済額を少なくすることができます。
債務整理についてより詳しくは「債務整理とは?意味やデメリットなど弁護士が簡単解説」をご参照下さい。
2、債務整理後借り入れができなくなる?その理由は?
債務整理後は新しく借金ができなくなるのでしょうか。
(1)信用情報機関への情報登録
そもそも借金をすると、貸付をした金融機関は、個人の経済的信用力に関する情報(これを「個人信用情報」といいます。)として、金融機関が登録している各信用情報機関に対し、その契約内容等を登録します。
また、返済が滞ったり、債務整理の手続を取ることになった場合にも、延滞情報や債務整理に入ったこと等の追加情報を、個人信用情報として登録することとなります。
(2)信用情報の開示
借金の申込を受けた金融機関は,申込をした個人の信用情報を確認します。
そのため、個人信用情報に延滞情報や債務整理の事実等の事故情報が登録されていると,借金の申込を受けた金融機関にも延滞や債務整理の情報が分かります。
そして、延滞や債務整理をした人に対しては金融機関が貸付に慎重になることから、審査が通らず、新たに借金をすることが困難になります。
なお、登録された信用情報は、金融機関(銀行、貸金業者、信販会社等)がその与信審査のために参照するためのものであり、信用情報機関に加盟している金融機関及び本人(ないし本人の代理人)以外に開示されることはないため、信用情報の登録内容を家族、友人等に知られることはありません。
(3)過払い金返還請求を行った場合
以前は、過払い金返還請求をした場合にも信用情報機関に事故情報として登録されることがありました。しかし、そもそも過払い金返還請求と債務整理とは性質が全く異なります。そのため、金融庁は「そもそも信用情報とは支払い能力に関する情報であり、過払い返還請求の有無は信用情報ではなく信用情報機関に掲載されるべきではない」という見解を示しました。これにより、過払い金請求があった際に、信用情報機関に履歴が登録されることがなくなりました。
なお、従前に過払い金返還請求したことがある方で、もし、登録されるはずのない自分の過払い金返還請求の履歴が信用情報機関に「事故情報」として残ってしまっている場合、登録を消してもらうことが可能です。具体的には、事故情報の登録届出をした業者(貸金業者)に対して、「事故情報取り消し申立書」を提出して、事故情報の取消を求めることとなります。
3、債務整理後おおよそどのぐらいの期間が経過すれば借り入れができるようになる?
債務整理後、どれぐらい経てば新たな借り入れができるようになるでしょうか。
債務整理に関する信用情報は、登録事由発生日(もしくは登録時)から5年ほどは情報が消えません。また、自己破産や個人再生の手続を取った場合には、10年ほど信用情報に記載が残ることもあります(全銀協HP)。
そのため、債務整理後、少なくとも5年程度を経過するまでは新たな借り入れをすることは難しいでしょう。
また、5年(ないし10年)を経過したからといって、必ず借り入れができるわけでもありません。
4、債務整理後も借り入れができる金融機関がある
債務整理後5年以上経過しなければ、どこからも借り入れをすることができないのでしょうか。
(1)金融機関の審査
金融機関が貸付をするにあたって、信用情報を参照することは上述のとおりです。そのため、原則的には、債務整理手続後5年以上経過しなければ、新たな借り入れをすることは難しいと考えられます。
しかしながら、金融機関が貸付をする際は、信用情報のみならず、当該時点での収入状況、勤務先なども併せて調査し、審査を行います。金融機関によっては、信用情報だけでなく、収入状況、勤務先の状況などから、債務整理手続後5年を経過しない間であっても、新たな貸付を行うところもあるようです。
(2)闇金のおそれ
信用情報は支払い能力についての情報であり、金融機関はこれをもとに借り入れの申込をした人が返済できる状況にあるかどうかを判断します。
ただ、中には信用情報を参照した上で、たとえば自己破産をしていてお金に困っているはずだ、どのような条件であっても借り入れて返済するに違いないとして、悪意をもって貸付を行う業者もあります。
さらに、いわゆる「闇金」業者のように、金融機関から借入ができない人を狙って貸し付けて、法外な利息を取ったり、自宅や勤務先に違法な取立行為に来たりする業者も存在します。
債務整理手続後5年を経過しない間に貸付をするような業者には、このように違法な業者が含まれる危険性が高いので、容易に貸付に応じる業者には注意が必要です。
まとめ
以上に見てきたとおり、債務整理手続後も、一定期間を経過すれば新たな借入は可能となります。
しかし、一度、債務整理手続を取った場合、二度目の手続は非常に困難(もしくは不可能)です。
債務整理手続は、自身の収入で支出をまかない経済的に立ち直るための手続ですので、もし、新たな借入ができる状態となっても、安易に借入に頼らず、生活を再建することを目指してください。