鎖骨骨折の後遺症とは?慰謝料相場や等級認定のポイントを解説

鎖骨骨折 後遺症

交通事故に遭い、「鎖骨骨折で後遺症が残る」と言われ、先が見えずお困りではありませんか?

交通事故によって鎖骨骨折になった結果、後遺障害の等級認定を受けると、等級認定を受けられない場合に比べ、多くの補償を受けられます。
もっとも、痛みなどが残ってしまい事故前の状態に戻らなかったにもかかわらず、等級認定を受けられないケースがあることも事実です。
等級認定を受けるために、後遺障害の等級認定を受けるためのポイントを知っておきましょう。

そこで今回は

  • 鎖骨骨折による後遺症の症状と認定される等級
  • 鎖骨骨折で後遺症が残った場合の慰謝料相場
  • 鎖骨骨折で等級認定を受けるためのポイント

などについて解説します。

この記事が、交通事故で鎖骨骨折のケガを負ってしまった方のための手助けとなれば幸いです。

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1、交通事故による鎖骨骨折の後遺症に関する基礎知識

(1)交通事故により鎖骨を骨折することがある

鎖骨は、首の下(胸の上)にあり、胸骨と肩甲骨とをつないでいる骨です。
鎖骨は比較的折れやすい骨ですから、転倒して肩を打ちつけるなどすると骨折してしまうことがあります。

交通事故でも、鎖骨を骨折するケースが多くみられます。
たとえば、バイクの運転中に衝突され、転倒時に肩を打った場合や、自動車を運転中に交通事故にあい、座席などに打ち付けられて骨折するケースなどがあります。

交通事故による鎖骨骨折によって、後遺症が残らないように適切な治療を受ける必要があるのはもちろんですが、後遺症が残ってしまった場合には、加害者への賠償請求によって適切な補償を受けることとなります。

(2)鎖骨骨折の症状・治療法

鎖骨骨折の症状としては、以下が挙げられます。

  • 痛みや腫れ
  • 肩が上がらない
  • 手のしびれ

骨折かどうかを判断するためにはレントゲン(必要に応じてCT)が使われます。
治療法としてはバンドで患部を固定する保存療法や症状によっては手術が行われることもあります。

(3)「後遺症」があっても「後遺障害等級認定」が受けられるとは限らない

鎖骨骨折を負って医師から「後遺症が残る」と言われ、「賠償金が増えるはず」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、「後遺症」が残ったとしても、交通事故における「後遺障害等級認定」がされるとは限りません。両者は、厳密には異なる意味を持っているからです。

まず「後遺症」とは、治療をしても完治せず、ケガをした前の状態に戻らなかったことを指す言葉です。
これに対して「後遺障害」とは、「後遺症」のうち、以下の条件を満たすものだけを指します。

  • 交通事故との因果関係が認められる
  • 労働能力が低下・喪失した
  • 後遺症の程度が自賠責保険で定められた症状に該当する

認定対象となる症状の詳細は、次の項目で説明します。
ここでは「後遺症」の一部しか「後遺障害」とは認定されないことを頭に入れておきましょう。

2、鎖骨骨折による後遺症の症状と認定される後遺障害等級

鎖骨骨折による後遺症の症状と認定される後遺障害等級

鎖骨骨折による後遺症のうち、後遺障害として認定されるのは次の3つです。

  • 変形障害
  • 機能障害
  • 神経症状

詳しい症状と認定される等級について以下で解説します。

(1)変形障害

変形障害とは、骨折した部分が元通りにつかず、変形してしまうことです。
鎖骨骨折による変形障害は「著しい変形を残すもの」といえれば、後遺障害12級に認定されます。

「著しい変形」といえるかは「裸になったときに鎖骨の変形が明らかにわかるか」で判断されます。
したがって、レントゲンを撮ってはじめて変形が明らかになる程度のものであると、後遺障害とは認定されません。

なお、以下に述べる機能障害や神経障害を含まない変形障害だけでは、痛みや可動域制限を伴わないため、相手の保険会社から「労働への影響はなかった」として休業損害や逸失利益の存在を争われることがあります。

(2)機能障害

機能障害とは、関節を十分に動かせなくなってしまうことです。

鎖骨骨折において、肩関節の可動域制限という機能障害は残らないケースが多いものの、鎖骨遠位端骨折により、クラビクルフックプレートを使用するような手術が必要な場合には、肩関節の可動域制限が残りやすいと考えられます。
可動域は、ケガをしていない側との比較で計測され、認定される等級は以下のとおりです。人工関節を入れた場合は基準が別になっています。

等級

可動域制限の程度

8級

全く動かないか、それに近い

人工関節を入れても可動域が2分の1以下

10級

可動域が2分の1以下

人工関節を入れて可動域が2分の1超

12級

可動域が4分の3以下

(3)神経症状

神経症状とは、痛みやしびれのことです。鎖骨骨折を負った結果、痛みやしびれといった神経症状が残ると、12級または14級が認定される可能性があります。

12級は、MRIなどの画像検査から、症状があることが客観的に明らかといえる場合に認定されます。
画像からは明らかでなくても、自覚症状を医学的に説明できれば14級の認定を受けることが可能です。

3、鎖骨骨折で後遺症が残った場合の慰謝料相場

鎖骨骨折で後遺症が残った場合の慰謝料相場

該当する症状があり後遺障害の認定が出ると、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。これは、入通院の慰謝料とは別に後遺そのものについて支払われる慰謝料です。後遺障害慰謝料はどの程度の金額になるかを以下で解説します。

(1)慰謝料計算の3つの基準

慰謝料を算出する際には、誰が計算するかによって3つの異なる基準があります。
金額が大きく異なってきますので、慰謝料の話をする際にはどの基準に基づいたものであるかに注意が必要です。

3つの基準とは

  • 「自賠責保険基準」
  • 「任意保険基準」
  • 「弁護士基準(裁判基準)」

をいいます。

まず、自賠責保険基準は、自賠責保険に請求した際にもらえる金額のことです。
自賠責保険は、すべての車両が加入しなければならないとされている強制保険です。補償は最小限のものとなっており、自賠責保険基準の金額は3つの中でもっとも低額になっています。

次に、任意保険基準は、任意保険会社が用いている基準で、自賠責保険基準と同等であったり、自賠責保険基準よりも少し高めだったりします。

最後に、弁護士(裁判)基準は、弁護士が請求する際に用いる基準です。裁判になった場合に認められてきた金額を元にしたものとなっています。任意保険基準よりも大幅に高い金額です。

まとめると「自賠責保険基準≦任意保険基準<弁護士基準」となっています。

(2)等級ごとの後遺障害慰謝料

鎖骨骨折の場合の具体的な後遺障害慰謝料は、等級ごとに以下のようになっています。任意保険基準は保険会社によって異なり非公開のため、ここには載せていません。

等級

自賠責保険基準

(逸失利益を含む)

弁護士基準

8級

819万円

830万円

10級

461万円

550万円

12級

224万円

290万円

14級

75万円

110万円

弁護士基準は自賠責基準より高くなっています。

また、受け取れる賠償金はこれだけではありません。
入通院慰謝料も弁護士基準の方が大幅に増額されるのが通常ですし、後遺障害に伴う仕事への悪影響を補償する逸失利益についても、自賠責保険基準を超えて大幅に増額できる可能性があります。

4、鎖骨骨折で等級認定を受けるためのポイント

鎖骨骨折で等級認定を受けるためのポイント

後遺障害の認定にはポイントがあります。以下の点に注意して、適正な等級の認定を受けられるようにしましょう。

(1)病院へは定期的に通う

まず、病院には定期的に通院するようにしてください。
通院の頻度が少ないと、症状がなかったと判断されてしまいます。
特に神経症状の場合には、通院頻度が認定の際に重要な要素になるとされています。1ヶ月全く病院に行かないようなことがあると認定は困難になるため、定期的な通院を心がけてください。

(2)必要な検査を受ける

認定のために必要とされる検査を受けなければ、認定がおりません。たとえば、機能障害であれば、可動域検査が必要になります。

注意してほしいのが、医師は必ずしも後遺障害認定に必要な検査を把握していないということです。
医師は治療のプロではありますが、後遺障害認定のプロではありません。受けるべき検査がわからなければ、後遺障害認定に詳しい法律の専門家に相談するのがよいでしょう。

(3)保険会社から症状固定をもちかけられても簡単に応じない

症状固定とは「それ以上治療を続けても症状の改善が期待できない状態」を意味する言葉です。
事故から時間が経つと、保険会社が「症状固定になるので今後の治療は補償しません」と伝えてくることがあります。保険会社からこう言われても、安易に治療をやめてはいけません。

なぜなら、「治療期間が短い=症状が軽い」と判断される可能性があるからです。
症状固定の時期は医学的見地から医師が判断すべきであり、保険会社が勝手に決めるべきではありません。
保険会社に言われるがまま早期に症状固定を受け入れてしまうと、後遺障害の認定がされづらくなるおそれがあります。

保険会社に症状固定をもちかけられた際には、医師に症状を伝えて適切な症状固定時期を話し合うようにしてください。

(4)後遺障害診断書は正確に記載してもらう

後遺障害認定にあたって必ず提出しなければならないのが、後遺障害診断書です。
後遺障害診断書は医師が記載する書類で、認定判断にあたっては重視されます。後遺障害の審査は書面審査なので、書いてないことは判断の材料となりません。

特に注意して欲しいのが、自覚症状を書く欄です。
この項目は、被害者本人にしかわからない症状も記載されます。
症状をはっきりと伝え、それが診断書に反映されているかを確認してください。もし正確に記載されていなければ、訂正をお願いするとよいでしょう。

(5)申請は「被害者請求」で

後遺障害の申請方法にも注意が必要です。申請方法には「事前認定」と「被害者請求」がありますが、被害者請求の方が認定されやすいといえます。

事前認定は、必要書類の収集と提出を保険会社にまかせられるため、手続としては簡単です。

しかし、保険会社は有益な資料を提出しなかったり、認定にマイナスとなる医師の意見を添えたりするケースがあります。これを避けるために、すべての書類の収集から申請手続までをすべて自分で行う被害者請求がオススメです。

自分に有利な資料を提出できるため、認定の可能性が高まります。もっとも、自力で手続を行うのは簡単ではありません。弁護士などの専門家に依頼して被害者請求することがベストな選択と言えるでしょう。

5、交通事故で鎖骨を骨折して後遺症が残ってしまったら弁護士にご相談を

交通事故で鎖骨を骨折して後遺症を負ったら弁護士にご相談を

鎖骨骨折をしてしまい、後遺症が残る可能性のある方は、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。弁護士に依頼すれば次のメリットがあります。

(1)後遺障害等級認定を徹底サポート

後遺障害等級認定に向けて様々なサポートを受けられます。

まず、治療中から通院方法や必要な検査についてのアドバイスを受けられます。通院していない、検査を受けていないなどで申請前から認定が困難となっているケースも少なくありません。早めに相談することでそうした事態を避けられます。

また、後遺障害申請手続も代わりに行います。

  • 後遺障害診断書のチェック
  • 医師への申請依頼

なども可能です。ご自身ですべての作業を行うのは時間がかかります。
面倒なことは弁護士にまかせてしまえば、治療や日常生活に集中できます。

(2)賠償金の交渉もおまかせ

後遺障害等級認定後の相手方との交渉も弁護士におまかせできます。

弁護士基準に基づいた金額を適切に請求するため、保険会社に言われるがまま示談することはありません。

また、保険会社の担当者は配慮が不十分なケースがあり、そういった場合のやりとりは被害者の方にとってストレスとなり得ます。
法律や交渉のプロである弁護士に依頼すれば、精神的負担を減らしながら、より高額の賠償金が期待できます。

鎖骨骨折で後遺症に関するQ&A

 Q1.「後遺症」があっても「後遺障害」になるとは限らない?

鎖骨骨折を負って医師から「後遺症が残る」と言われ、「賠償金が増えるはず」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、「後遺症」が残ったとしても、交通事故における「後遺障害等級認定」がされるとは限りません。両者は、厳密には異なる意味を持っているからです。

まず「後遺症」とは、治療をしても完治せず、ケガをした前の状態に戻らなかったことを指す言葉です。
これに対して「後遺障害」とは、「後遺症」のうち、以下の条件を満たすものだけを指します。

  • 交通事故との因果関係が認められる
  • 労働能力が低下・喪失した
  • 後遺症の程度が自賠責保険で定められた症状に該当する

「後遺症」の一部しか「後遺障害」とは認定されないことを頭に入れておきましょう。

Q2.鎖骨骨折による後遺症の症状と認定される後遺障害等級

鎖骨骨折による後遺症のうち、後遺障害として認定されるのは次の3つです。

  • 変形障害
  • 機能障害
  • 神経症状

詳しい症状と認定される等級について以下で解説します。

①変形障害

変形障害とは、骨折した部分が元通りにつかず、変形してしまうことです。
鎖骨骨折による変形障害は「著しい変形を残すもの」といえれば、後遺障害12級に認定されます。

「著しい変形」といえるかは「裸になったときに鎖骨の変形が明らかにわかるか」で判断されます。
したがって、レントゲンを撮ってはじめて変形が明らかになる程度のものであると、後遺障害とは認定されません。

なお、以下に述べる機能障害や神経障害を含まない変形障害だけでは、痛みや可動域制限を伴わないため、相手の保険会社から「労働への影響はなかった」として休業損害や逸失利益の存在を争われることがあります。

②機能障害

機能障害とは、関節を十分に動かせなくなってしまうことです。

鎖骨骨折において、肩関節の可動域制限という機能障害は残らないケースが多いものの、鎖骨遠位端骨折により、クラビクルフックプレートを使用するような手術が必要な場合には、肩関節の可動域制限が残りやすいと考えられます。

③神経症状

神経症状とは、痛みやしびれのことです。鎖骨骨折を負った結果、痛みやしびれといった神経症状が残ると、12級または14級が認定される可能性があります。

12級は、MRIなどの画像検査から、症状があることが客観的に明らかといえる場合に認定されます。
画像からは明らかでなくても、自覚症状を医学的に説明できれば14級の認定を受けることが可能です。

 Q3.鎖骨骨折で等級認定を受けるためのポイント

後遺障害の認定にはポイントがあります。以下の点に注意して、適正な等級の認定を受けられるようにしましょう。

・病院へは定期的に通う

まず、病院には定期的に通院するようにしてください。
通院の頻度が少ないと、症状がなかったと判断されてしまいます。
特に神経症状の場合には、通院頻度が認定の際に重要な要素になるとされています。1ヶ月全く病院に行かないようなことがあると認定は困難になるため、定期的な通院を心がけてください。

・必要な検査を受ける

認定のために必要とされる検査を受けなければ、認定がおりません。たとえば、機能障害であれば、可動域検査が必要になります。

注意してほしいのが、医師は必ずしも後遺障害認定に必要な検査を把握していないということです。
医師は治療のプロではありますが、後遺障害認定のプロではありません。受けるべき検査がわからなければ、後遺障害認定に詳しい法律の専門家に相談するのがよいでしょう。

・保険会社から症状固定をもちかけられても簡単に応じない

症状固定とは「それ以上治療を続けても症状の改善が期待できない状態」を意味する言葉です。
事故から時間が経つと、保険会社が「症状固定になるので今後の治療は補償しません」と伝えてくることがあります。保険会社からこう言われても、安易に治療をやめてはいけません。

なぜなら、「治療期間が短い=症状が軽い」と判断される可能性があるからです。
症状固定の時期は医学的見地から医師が判断すべきであり、保険会社が勝手に決めるべきではありません。
保険会社に言われるがまま早期に症状固定を受け入れてしまうと、後遺障害の認定がされづらくなるおそれがあります。

保険会社に症状固定をもちかけられた際には、医師に症状を伝えて適切な症状固定時期を話し合うようにしてください。

・後遺障害診断書は正確に記載してもらう

後遺障害認定にあたって必ず提出しなければならないのが、後遺障害診断書です。
後遺障害診断書は医師が記載する書類で、認定判断にあたっては重視されます。後遺障害の審査は書面審査なので、書いてないことは判断の材料となりません。

特に注意して欲しいのが、自覚症状を書く欄です。
この項目は、被害者本人にしかわからない症状も記載されます。
症状をはっきりと伝え、それが診断書に反映されているかを確認してください。もし正確に記載されていなければ、訂正をお願いするとよいでしょう。

・申請は「被害者請求」で

後遺障害の申請方法にも注意が必要です。申請方法には「事前認定」と「被害者請求」がありますが、被害者請求の方が認定されやすいといえます。

事前認定は、必要書類の収集と提出を保険会社にまかせられるため、手続としては簡単です。

しかし、保険会社は有益な資料を提出しなかったり、認定にマイナスとなる医師の意見を添えたりするケースがあります。これを避けるために、すべての書類の収集から申請手続までをすべて自分で行う被害者請求がオススメです。

自分に有利な資料を提出できるため、認定の可能性が高まります。もっとも、自力で手続を行うのは簡単ではありません。弁護士などの専門家に依頼して被害者請求することがベストな選択と言えるでしょう。

まとめ

ここまで、交通事故で鎖骨骨折のケガをしてしまったときの症状、慰謝料、後遺障害認定のポイントなどを解説してきました。

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