最初は軽い気持ちで始めた借金も、100万円を超えると「大台に乗った」と感じ、焦り始める方が多いことと思われます。
とはいえ、何百万円もの借金を抱えるケースに比べれば、毎月の返済額や借入件数も少ない場合がほとんどでしょう。
そのため、まだ自力で返済可能と考え、債務整理は必要ないと思ってしまう方が多いのが「借金100万」という状態です。
しかし、借金は放っておくと膨らみやすいという性質を持っています。自力で返すつもりでも、利息が利息を呼んで、いつの間にか借金が膨らんでいたというケースがとても多いのです。
「借金100万」が気付かないうちに200万、300万と増えてしまい、返せなくなってしまうこともあります。
そうなると、自己破産をして財産を処分せざるを得ないことにもなりかねません。
そこで、今回は、
- 借金100万は自力で返せるのか?
- 自力で借金100万を返済する方法とは?
- 自力では借金100万を返済できないときの解決方法とは?
について解説していきます。借金100万円を抱えて返済に悩んでいる方のご参考になれば幸いです。
借金が返せないことにお悩みの方は、以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、借金100万円は自力で返せる?返せない?
借金100万円を自力で返せるかどうかを判断するには、
- ご自分がなぜ借金をしたのか
- これまでどのように返済してきたのか
を考えてみましょう。
事業での設備投資や離婚の慰謝料の支払いなどのために借金100万円を背負ったような場合は、自力で返せる方も多いもの。これらの方々には、もともと借金癖はないので、今までどおりの収入が順調に得られる限り、100万円程度なら突発的にできた借金でも問題なく返せるからです。
それに対して、生活費の不足や浪費のために少しずつ借入れを重ねて借金100万に到達したような方は要注意です。
このような方々は、借金が増えるような生活をしてきたわけですから、生活を変えない限りは借金100万を自力で返すのは難しいでしょう。
特に、借金を返すために新たな借入れをして、返済した枠でまた借り入れるという「自転車操業」に陥っているような方の場合、自力で借金100万を返すのはかなり難しいといえます。
自転車操業に陥った時点で、借金なしでは生活が成り立たなくなっているのですから、早めに債務整理で借入れを断ち切らなければ、借金は増える一方となります。
そう考えると、借金100万を自力で返せる人は多くないということがおわかりいただけるでしょう。
2、実はやばい「借金100万」
ただ、借金100万を自力で返すことが不可能というわけではありません。
やり方によっては、もちろん自力で返すことも可能です。
そのためには、まず、借金100万を返済するためにどれくらいの負担がかかるのかを正しく認識することが必要不可欠です。借金100万を自力で返済するためには、以下のように長い期間と多額の利息がかかることをしっかりと確認しておきましょう。
(1)返済にかかる期間
契約した内容の通りに借金100万を返済していく場合、完済までにどのくらいの期間がかかるのでしょうか。
借金100万なら、毎月の返済額は3万円前後であることが多いでしょう。
単純に100万円を3万円で割ると33~34ヶ月になります。
しかし、返済していく間にも利息がかかるので、この期間で完済できるわけではありません。
毎月の返済額が3~5万円の場合、完済までにかかる期間はそれぞれ以下のとおりです。
- 返済額3万円 … 34ヶ月(3年9ヶ月)
- 返済額4万円 … 32ヶ月(2年8ヶ月)
- 返済額5万円 … 25ヶ月(2年1ヶ月)
返済額3万円の場合は、完済までに4年近くかかってしまいます。
5万円ずつ返済できれば約2年で完済できますが、毎月5万円を欠かさず返済するのは厳しい方も多いのではないでしょうか。
しかも、返済の途中で借入れをすると、完済までの期間が長引いてしまいます。
(2)支払うことになる利息
借金にかかる利息は、次の計算式で求めます。
支払う利息=元金×金利÷365日×返済までの日数
元金が100万円以上の場合、上限金利は15%です。
消費者金融の場合は、多くの業者がほぼ上限金利にて貸し付けています。
借金100万で金利が15%の場合、1ヶ月後の返済日までにかかる利息は、
100万円×0.15÷365日×30日=約12,328円
となります。
毎月3万円を返済するとしても、そのうち4割以上は利息としてとられてしまい、6割弱しか元金の返済には充当されません。
元金が減るにつれて利息も減っていきますが、これだけの割合で利息がかかるのですから、完済までに多額の利息が必要になることがおわかりいただけるでしょう。
毎月の返済額が3~5万円の場合に、完済までに支払うことになる利息をそれぞれ計算すると、以下のようになります。
- 返済額3万円 … 315,379円
- 返済額4万円 … 216,163円
- 返済額5万円 … 164,987円
元金100万円に加えて何十万円もの利息を支払わなければならないのですから、借金100万を完済することは容易ではありません。
(3)自力で借金を返済するための最低条件
借金を返済するには期間と利息の負担が大きいため、誰もが借金100万を自力で返済できるわけではありません。
自力で返済していくためには、以下の3点が最低条件となります。
①新たに借りないこと
上記(1)と(2)でご紹介した返済期間と利息は、新たに借りないことを前提としたものです。
返済の途中で新たに借りてしまうと元金が増えます。
その分、返済期間と利息の負担も大きくなります。
その結果、いつまでたっても元金が減らず、下手をすると借金がかえって増えていくことにもなりかねません。
②滞納しないこと
滞納をすると、利息の他に遅延損害金がかかってしまいます。
遅延損害金の利率は、多くの貸金業者が14.6%と定めています。
もともとの利息である15%も当然かかるので、滞納すれば元金の他に2倍近くの金額を支払わなければならなくなります。
したがって、滞納することも元金がなかなか減らない事態を招く原因となります。
③ときどきは繰り上げ返済する余裕があること
借金を自力で返済するためには、返済期間と利息をできる限り抑えることが重要です。
月3万円ものお金を「4年近くにわたって」「毎月欠かさず支払い続ける」ことは容易なことではありません。
ときには突発的な出費などによって返済が厳しいこともあるでしょう。
そんなときに新たな借入や滞納をしてしまうと負担が増えますし、返済計画が狂ってモチベーションも低下してしまうことでしょう。
ですから、ときどきは繰り上げ返済によって負担を減らすことがおすすめです。
繰り上げ弁済をすることによって、返済期間が短くなり、利息の支払い額も抑えることができますので覚えておきましょう。
3、自力で借金100万を返済する具体的方法
借金100万を自力で借金を返済するための最低条件をご紹介したところで、次に具体的な方法をご説明します。
(1)コツコツと返済を続ける
基本的には、上記2(3)でご紹介した最低条件を守りつつ、約定どおりにコツコツと借金を返済していくことです。
ただし、長期間にわたって利息を負担しながら返済し続けるには強い意志が必要です。
また、生活費が不足するようなら家計を見直す必要がありますし、ギャンブルや遊び、買い物などで浪費しがちな方は浪費癖を改めることが前提となります。
(2)おまとめローンを利用する
おまとめローンとは、低金利の貸金業者からの借入金によって他の複数の貸金業者からの借金を完済することにより、借金を一本化するためのローンのことをいいます。
借金100万を抱えている方の多くは、消費者金融2~3社からそれぞれ18%の金利で借入れをしていることと思います。
おまとめローンを利用すれば、利息の負担を減らせるという大きなメリットが得られます。
また、借金を一本化することによって管理もしやすくなり、返済も楽になるでしょう。
ただ、返済期間はおまとめ前よりも長期化します。
その間に新たに借入をしてしまうと完済は遠のいてしまいます。
特に注意が必要なのは、完済した業者が再度借入可能な状態になっていることです。
生活費の不足や浪費癖などが改まっていないと、再度借り入れる誘惑にかられてしまいます。
おまとめローンと再度の借金の両方を抱えてしまい、返済不能となってしまう方も多いので、くれぐれもご注意ください。
(3)親族や友人から借りて返済する
利息の負担から免れるためには、親族や友人から借りて貸金業者に返済してしまうのが最も手っ取り早い方法です。
ただし、両親が返済資金を援助してくれるような場合は良いですが、多くの場合、結局は返済資金を提供してくれた人に返す必要があるでしょう。
また、おまとめローンの場合と同様、完済した貸金業者から再度借り入れて借金を膨らませてしまうおそれがあることにも注意が必要です。
(4)収入を増やす
借金を返済することで毎月の生活費が不足しがちな場合は、収入を増やすことを考えるのも良いでしょう。
収入を増やすためには、残業を増やしたり、夜間や休日にアルバイトをするのが手っ取り早いです。自宅でできる副業を始めてみるのも良いでしょう。
ただ、身体を壊すと返済計画が狂ってしまいますし、本業まで休むことになると返済が難しくなってしまいます。
資格を取得して昇進や転職を目指すのも良いですが、即効性や確実性に欠けることは否定できません。
コツコツと返済を続けながら、長期計画で取り組んだ方が良いでしょう。
(5)節約する
借金を返済するためには、節約することが必要不可欠です。
浪費癖を改めるべきことはもちろんですが、浪費癖がない方でも家計を見直せば節約できるポイントはいくつかあるはずです。
外食を減らして自炊したり、不要な保険を解約したり、携帯電話やスマートフォンを格安SIMに変更するなど、ご自分のライフスタイルに応じて削れるところは削りましょう。
毎月1万円を節約できれば、そのぶんを返済に回すことができます。
ただ、過度に節約するとストレスがたまることにも注意が必要です。
反動で浪費してしまうと、借金が増えるおそれもあります。
4、借金100万を解決するには債務整理も視野に入れよう
自力で借金100万を返済する方法を5つご紹介しましたが、どの方法をとるにしても強い意志が必要になります。
どうしても生活費が不足しがちな方であれば、努力しても限界があるかもしれません。
自力での返済が難しいと感じたら、債務整理も視野に入れてみましょう。
借金が200万、300万と膨らんで返済不能となってしまう前に、早期に適切な対策をとることが大切です。
ここでは、3種類ある債務整理の方法のうち、借金100万を解決するためにどの方法が適しているのかをご説明します。
(1)自己破産は現実的でない
自己破産をして免責が認められれば、借金は全額免除されます。
しかし、借金100万で自己破産をするのは現実的ではありません。なぜなら、多くの人にとって借金100万では支払不能状態とは認められないからです。
自己破産するためには、裁判所で「支払不能」と認められる状態でなければなりません。
どれくらいの借金であれば「支払不能」といえるのかは、ケースバイケースなので一概にいうことはできません。一応の目安として、月収の20倍以上の借金があれば「支払不能」状態であるといわれています。
例えば、月収20万円の方なら400万円以上、月収30万円の方なら600万円以上の借金があれば支払不能だということです。
借金総額がこれより低ければ自己破産できないというわけではありませんが、普通に働いている方であれば、借金100万では自己破産が認められない可能性も相当程度高いといわざるを得ません。
(2)個人再生は住宅ローンがある人向き
個人再生は、借金額を原則として5分の1に減縮し、3~5年で分割返済していく手続きです。
しかし、最低弁済額が100万円以上と定められているため、「借金100万」を抱えている方が利用するメリットはありません。
ただ、住宅ローンを返済中の方は別です。
自己破産の場合は、住宅ローンも支払いを停止しなければならないため、抵当権が実行されてマイホームを失ってしまいます。
それに対して、個人再生には「住宅ローン特則」(正式名称は「住宅資金貸付債権に関する特則」)という制度があるので、マイホームを失わずにすみます。
住宅ローン特則を利用すれば、延滞による期限の利益の喪失を回復させ、返済期限の延長や毎月の返済額の減縮、一定期間の返済猶予などを裁判手続きによって実現できる場合があります。
したがって、借金100万を抱えて住宅ローンの返済が厳しくなっている方にとっては、住宅ローン特則付き個人再生の利用が有効です。
(3)任意整理が最も現実的
住宅ローンの返済が厳しい方を除いて、借金100万を解決するために最も有効な債務整理方法は任意整理です。
任意整理は、借入先の貸金業者と直接話し合うことによって返済期間や毎月の返済額を変更して和解し、改めて返済していく手続きです。
自己破産や個人再生のように元金を自動的に減免してもらうことはできませんが、手続き後の利息はほとんどの場合、カットされます。
したがって、返済総額は減らすことができます。
今までに支払ってきた利息も法定金利で引き直し計算するため、利息を払いすぎていた場合は元金も減少します。
場合によっては、過払い金返還請求をすることで元金がなくなり、お金が戻ってくる可能性もあります。
ただし、どの債務整理方法でもそうですが、いわゆる「ブラックリスト」に掲載されることに注意が必要です。
任意整理の場合は約5年間、自己破産と個人再生の場合は約10年間、新たな借入れやクレジットカードの作成などが難しくなります。
したがって、今後の生活再建のために家計の見直しや浪費癖の改善などは、やはり必要です。
逆にいえば、今後は借金に頼ることができなくなるため、債務整理をすることで収支の改善を強制的に図ることができます。
5、借金100万でも債務整理を弁護士に依頼するメリット
債務整理をする場合もしない場合も、借金100万の返済が厳しいと感じたら、一度弁護士に相談してみるのがおすすめです。
その上で、債務整理を弁護士に依頼すれば、以下のメリットを受けることができます。
(1)返済額が減少する
任意整理は、裁判外の手続きであるだけに、交渉力が重要で、適切な内容で和解するためには専門的な知識も必要になります。
自分で手続きをした場合は、仮に利息を払いすぎていても気付かず、貸金業者が希望する和解案を押しつけられることになりがちです。
弁護士に依頼すれば、必ず利息の引き直し計算を行い、場合によっては過払い金の返還請求も可能です。
遅延損害金や和解までの経過利息も弁護士が交渉することによってカットできる場合は少なくありませんし、交渉次第では元金の一部免除に応じてもらえることもあります。
(2)催促の電話や手紙がストップする
借金の返済を滞納したことがある方は、債権者からの電話や手紙による催促に悩まされた経験をお持ちのことでしょう。
催促がいかに厳しくても、弁護士に債務整理を依頼すれば、すぐに一時的にストップします。
貸金業者は、弁護士からの受任通知を受け取った後は、債務者に直接返済の要求をすることが貸金業法で禁じられているからです。
債権者からの催促を止めた状態で、落ち着いて債務整理の方針や今後の生活設計を考えることができるようになります。
(3)正しい方針で対処できる
借金問題を正しく解決するための方針は、人によって状況によって異なります。
借金100万でも、病気などの事情で自己破産すべき方もいます。
逆に、自己破産したいと思っても、財産処分や資格制限などを避けるために自己破産しない方がよい方もいます。
また、ブラックリストに掲載されるのを避けるために、可能な限り自力で返済すべき方もいることでしょう。
選択を誤ると解決までに時間がかかり、下手をすると今後の生活が成り立たなくなってしまうおそれもあります。
早めに弁護士に相談することによって、正しい方針をアドバイスしてもらうことが非常に重要です。
まとめ
借金100万を自力で返済することが可能かどうかという問題についてまとめますと、もちろん可能性はありますが、それなりの覚悟が必要ということになります。
家計を見直し、浪費癖を改めるなどして収支を改善し、ぜひ完済を目指していただきたいと思います。
ただ、返済が苦しいのに無理をすると、更に借金を増やしてしまい、解決が難しくなってしまう危険性があります。
返済が厳しいと感じたら、お気軽に弁護士にご相談の上、正しい方針を選択されることをおすすめします。