離婚調停において親権を獲得することを望む方々は多いです。離婚の原因は多岐にわたりますが、子供の将来に対する懸念は普遍的です。中には「慰謝料は不要、親権だけが欲しい」と願う方もいます。
夫婦間の合意だけでは親権の取決めが難しく、離婚調停を回避するのは難しいです。しかし、裁判や調停の手続きに不慣れな方も多いでしょう。そのため、この記事では「離婚の親権問題」に焦点を当て、離婚調停の進行や手続き、親権争いで成功する秘訣について説明します。
離婚調停は自分で進めることも可能です。この記事では具体的なアドバイスや進め方も紹介していますので、ご参考にしてください。子供の親権を獲得するのは容易ではありませんが、この情報が皆様の力になり、親権獲得への第一歩を踏み出すお手伝いになれば幸いです。
目次
1、離婚時に子供の親権について調停が行われるのはどのような場合?
(1)調停で親権が争われる状況は主に3つ
どのような場合に親権を争う調停が行われるのでしょうか?
主なケースとして考えられるのは次の3つの場合です。
- 離婚自体をするのかしないのかが争われている離婚調停(夫婦関係調整調停)
- 離婚することについてはお互いの合意があるが、どちらが親権を持つか争っている離婚調停(夫婦関係調整調停)
- 離婚時に一度決定した親権を変更するために行われる親権者変更調停
今回の記事では、主に1.や2.の調停のケースについてご紹介します。
離婚調停では慰謝料や財産分与の内容などについても話し合うのが一般的ですが、1番の問題は子どもの親権をどちらが取るのかということだと考える方が大変多い現状があります。
(2)親権者を決めていない状態で離婚届を提出することは不可能!
親権者を決定せずに離婚することはできないことになっています。
子どもの親権者を決めていない状態では、市区町村に離婚届を提出しても不受理となります。
もっとも、子どもが既に成人している、もしくは未成年でもすでに結婚しているといった場合は、どちらが親権者になるかの決定は不要です。
2、親権が争点になる場合の離婚調停の流れ
調停で親権が争点になる場合、一般的には以下の流れで調停が進んでいきます。
(1)離婚調停の申立て
離婚調停は申立により始まります。
①調停の申立に必要な書類
離婚調停の申立の際に必要な書類は以下の通りです。
- 夫婦関係調整調停申立書
- 申立人の印鑑
- 申立人の戸籍謄本
- 相手方の戸籍謄本
それぞれの書類の具体的な記載方法などは、「離婚調停を有利に進めるための申し立ての方法」をご参照ください。
②調停の申し立て場所
一般的に相手方の住所のある場所を管轄する家庭裁判所に申し立てることとなります。
(2)調停の流れ
離婚調停は以下の流れで進むのが一般的です。
①家庭裁判所へ調停の申立て
②調停期日が決定される
③第一回の調停が開かれる
④必要に応じて第二回以降の調停が開かれる
⑤調停が終了する
(3)家庭裁判所調査官
離婚調停において親権をいずれが持つかが争われている場合、多くの場合、調停が開かれている間に家庭裁判書の調査官が家庭訪問を行います。
家庭裁判所の調査官は、親権獲得において非常に影響力を持っているので、知識を深めておく必要があります。
①家庭裁判所調査官とは?
子どもが両親の親権を争う様子を知ってしまうと、両親の喧嘩によってストレスを感じたり、両親が仲良くしてくれるように必死に努力したりすることがあり、それによって長期間にわたって心に深い傷を負うことがあります。離婚は夫婦だけの問題ではなく、子どもにも大きな影響を与えることがあるため、子ども自身の気持ちや将来を考慮して、今後の親子関係について考える必要があります。
今後の調停において、子ども自身の気持ちや環境を客観的に判断するためには、裁判所による調査が必要になることがあります。このような調査を担当するのが家庭裁判所調査官です。家庭裁判所調査官は、親や子ども自身と面談したり、家庭や学校を訪問したりすることがあります。これらの活動を通じて、子どもの状況を把握し、家庭裁判所に報告する役割を担っています。
②家庭裁判所調査官の主な役割
家庭裁判所調査官は具体的にどのような役割を持つのか具体的にご紹介いたします。
- 子どもとの面談
→まずは子どもが話しやすい身近な話題から話しを始めて、話しやすい状況をつくります。
そして子ども自身が父母と普段どのように関わり、どのような気持ちで過ごしているかなどを聞き、その子どもの気持ちをつかむようにします。
子どもがまだ小さくて上手く話せなかったり、気持ちを上手に表現できなかったりする場合には、心理テストなどを利用するなどして、客観的にその子の心理状態を理解しようと努めることもあります。
- 家庭訪問
→親子関係や実際に子どものおかれている家庭の環境を調査します。
具体的には家の中が片付いているか、清潔な環境で暮らせているかなどについても調査の対象になります。
- 学校訪問
→学校(保育園、幼稚園、学校や児童相談所など)に訪問をし、子どものおかれている環境について調査します。
③家庭裁判所調査官が調査する内容
では家庭裁判所調査官は具体的に何を調査しているのでしょうか。
内容は以下の通りです。
- あなたが親権者になるのが適当かどうか、またその理由について
→ちゃんと愛情を持って接しているか、これまでの看護養育している状況に問題がないこと、子どもと生活していくにあたって経済的に差し支えがないことなど
- 現在までの子どもを養育していた環境について
→夫婦のどちらが主体となって養育をしていたのか
- 今後の養育方針について
→今後の監護養育の方針(場所等も含む)
- 相手の親が親権者となるのが不適当かどうか、またその理由について
→相手が子どもの養育に以前から関与をしておらず、今後も養育していくことは難しい状態だといえることなど 以上の内容を調査した上で、家庭裁判所調査官は裁判官に現状を報告することになります。
裁判官は、これらの調査で得た情報をもとに、今後の調停の方針を決定していきます。
親権の獲得にあたっては、家庭裁判所調査官と調査をした内容は大変重要な影響力を持っています。
3、離婚調停で親権を獲得するためのポイント
では親権を獲得するために重要なポイントは何でしょうか。
具体的にどのように行動すればよいでしょうか。
以下、詳しく説明します。
(1)親権を判断するポイント
子どもの親権を決める際には、調停委員が様々な要素を考慮して話し合いの方針を決めます。そのため、以下で紹介する点に注目することが重要です。
①監護状況
これまでの監護状況、つまりどちらが子どもを主体的に面倒を見てきたかが最も重要視されます。裁判所は継続性の原則に従い、離婚前と同様の環境を維持することを目指します。
②子どもに対する愛情
愛情の大きさは客観的に判断され、より大きい方が親権者として相応しいとされます。これまで一緒に過ごした時間が長いことがポイントです。
③健康状態
健康状態に問題がある場合、親権を獲得することが難しくなることがあります。肉体的・精神的に健康であることをアピールする必要があります。
④子どもの年齢
子どもが幼い場合は、母親が親権を持つことが適当とされる傾向があります。
⑤子どもの意思
子どもの意見は調査され、15歳以上の場合は裁判所で尊重されます。
⑥育児にかけられる時間
子どもと一緒に過ごす時間が長い方が親権者として適任とされます。
⑦経済的な面
子育てには多額の費用がかかるため、経済的に余裕がある方が有利とされます。ただし、養育費が支払われることもあります。
自身が子どもと一緒に過ごす必要がある場合は、子ども優先のライフスタイルを実現することが重要です。また、相手の収入より自分の収入が多い場合は、その点をアピールすることが効果的です。
(2)調停で親権を獲得するためには?
調停で親権を獲得するためには実際にどのように行動していけばよいでしょうか?
具体的には以下の点を意識して調停を進めるとよいでしょう。
①調停委員を味方につける
あまり表現がよくないかもしれませんが、「調停委員の情に訴えて、同情してもらう」ということも重要となってきます。
子どもをどれだけ愛しているか、一緒にいたいかを伝えていきましょう。
②家庭裁判所調査官の調査に注意
嘘をついてはいけませんが、前述の家庭裁判所調査官が調査するポイントを意識して準備するとよいでしょう。
③自分が親権者として相応しいことを主張する
「3-(1)親権を判断するポイント」でご紹介した内容をご参考に、相手より自分の方が親権者として適しているということを、客観的にみて分かる状態にして求められたらすぐの証明できる用意をしておきましょう。
以上、ご紹介した点を参考にしていただき、調停を進めていきましょう。
4、父親が親権を獲得できる場合はある?
一般論として、父親が親権を獲得することは難しい、ということを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
調停委員は基本的には母親に親権を獲得させようという方向で調停を進めていくことが多いです。
実際8~9割のケースで親権を取得しているのは母親です。
親権を獲得したいと思っている父親にとっては残念な現実ですが、調停委員は特に乳幼児や幼児の場合には、母親が親権を持つことが適当と見なされる場合が多いです。
父親が不利であるという現実はありますが、親権者になることは不可能であるということではありません。
別居した場合において、子どもを養育する環境を整えて、すぐに養育するなど、「父親が養育することが子どもにとって良い」と調停委員に思わせることが重要です。
そのような点に注意すれば父親も親権を獲得できる可能性があります。
例えば、既に夫婦が別居して生活をしていて、夫が子どもと一緒に暮らし養育しているというような場合などは特に有利になる可能性が高いです。
また、離婚するときに妻が夫の子どもを妊娠しているといったケースでは原則として妻がそのまま親権者になります(この場合にも夫が親権を獲得したいと考えるのであれば、裁判所に申し立ては可能です)。
5、不倫・浮気してしまった側でも親権を獲得できる
離婚となる原因を作った側にも、親権を持つ権利はあります。
妻が浮気をしたことが原因で離婚に至ったというようなケースでも、結果的にその妻が親権を獲得することは十分に出来る可能性があります。
これは離婚の原因と親権の問題は分けて考えることになっているため、親権については、どちらが子どもの親権を持つのかが適当かという角度からのみ判断されることになります。
6、親権が取れそうにない場合は面会交流権を有利な内容で獲得しよう!
上記にご紹介したとおり、父親がどんなに調停で子どもへの愛情をアピールできたとしても、不利な状況を覆すのは大変難しい可能性があります。
例え親権が取れなかったとしてもこのような場合には、調停で有利な内容で面会交流権を獲得できるようにしておきましょう。
下記の内容については特に具体的に話し合っておくことが重要です。
- 面会の回数(月に何回、週に何回など頻度を決定する)
- 1回あたり何時間会うことが可能か
- 会う際に一緒に宿泊することは可能か
- どこで会うか
- 電話やメールのやりとりをしてもよいか
7、もし離婚調停で話し合いが解決しなかったら?
調停で親権について調整が不可能な場合(不成立)には、その調停が離婚調停の場合は離婚訴訟へ、親権者変更の調停の場合は家事審判に移行することになります。
家庭裁判所が調停での話し合いの内容を踏まえつつ、親権者を決定することになります。
今後離婚訴訟や家事審判に切り替わったときのことを考えて、調停内で自分の主張とその根拠となる証拠をしっかりと揃えてアピールしておくことが重要になります。
離婚調停の親権に関するQ&A
Q1.不倫・浮気してしまった側でも親権を獲得できるの?
離婚となる原因を作った側にも、親権を持つ権利はあります。
妻が浮気をしたことが原因で離婚に至ったというようなケースでも、結果的にその妻が親権を獲得することは十分に出来る可能性があります。
これは離婚の原因と親権の問題は分けて考えることになっているため、親権については、どちらが子どもの親権を持つのかが適当かという角度からのみ判断されることになります。
Q2.調停で親権を獲得するためには?
調停で親権を獲得するためには以下の点を意識して調停を進めるとよいでしょう。
- 調停委員を味方につける
- 家庭裁判所調査官の調査に注意
- 自分が親権者として相応しいことを主張する
Q3.調停で親権が争われる状況ってどんなとき?
主なケースとして考えられるのは次の3つの場合です。
- 離婚自体をするのかしないのかが争われている離婚調停(夫婦関係調整調停)
- 離婚することについてはお互いの合意があるが、どちらが親権を持つか争っている離婚調停(夫婦関係調整調停)
- 離婚時に一度決定した親権を変更するために行われる親権者変更調停