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労災の申請には期限がある!申請期限と注意すべき4つのこと

労災,申請,期限

労災の申請には期限があることをご存知でしょうか?

また、勤務中に仕事が原因で病気やケガをしたとき、労災保険を使えることに気づかずに健康保険で治療しませんでしたか?

あとになって「労災保険の給付を受けることができるのではないか?」と知ったとき、時すでに遅し⁈と焦ることでしょう。

 本稿では、

  • 労災申請の期限について
  • 労災申請で注意すべきパターン
  • 労働災害保険給付の時効等に関する相談先

 以上のことでお困りの社員の方や、社員から相談を受けた人事労務担当者の方のために、労災申請の期限について弁護士がわかりやすく解説します。
「昔のことだからもういい」などと諦めずに、まず目を通してみていただけたらと思います。

労災の申請に関して詳しく知りたい方は以下に内容が記載されていますので、ぜひご覧ください。

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1、労災の申請には期限(時効)がある

労災の申請には期限(時効)がある

労災の申請には、時効(※)という制度による一定の期限があります。

労災保険の給付には、療養給付(治療費等の給付)、休業給付(仕事を休んだ日の給与相当額の一部の給付)など様々な種類がありますが、時効までの期間は労災保険の給付の種類によって異なります。

※「時効」とは、「給付を請求する権利があるのに長い間手続をしないと、給付を受ける権利が消滅する(消滅時効)」ことをいいます。

(1)労災給付の時効一覧

労災給付の時効一覧は次の表のとおりです。
いつ請求権が発生するか(時効の起算点はいつか)、時効が成立して給付請求ができなくなるまでの期間はどれだけか(時効の完成といいます)、この表でまず概要をつかんでください。

給付金

時効(いつから起算し、いつ時効が完成するのか)

①療養(補償)給付

療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生

その翌日から2年

②休業(補償)給付

賃金を受けない日ごとに請求権が発生

その翌日から2年

③遺族(補償)年金・一時金

被災労働者が亡くなった日の翌日から5年

④葬祭料(葬祭給付)

被災労働者が亡くなった日の翌日から2年

⑤未支給の保険給付・特別支給金

それぞれの保険給付と同じ

⑥傷病(補償)年金

監督署長の職権により移行される

請求時効はない

⑦障害(補償)給付

傷病が治癒した日の翌日から5年

⑧介護(補償)給付

介護を受けた月の翌月の1日から2年

⑨二次健康診断等給付金

 一次健康診断の受診日から3ヶ月以内

(出典:厚生労働省労災保険に関するQ&A7-5 労災保険の各種給付の請求はいつまでできますか。

(注1)業務災害の場合は「○○補償給付」、通勤災害の場合は「○○給付」と名前が違いますが、時効期間は、業務災害と通勤災害に共通の定めです。
(注2)遺族(補償)年金・一時金や障害(補償)給付については、権利保護の必要性が特に高いことから長めの時効が定められていると考えることができます。

(2)給付ごとの時効を解説

①療養(補償)給付

  • 「療養の給付」:時効を考える必要はありません。

療養の給付は、労災病院や労災指定病院・薬局等(以下「指定病院等」)で、無料で治療や薬剤の支給等が行われるものです。
「時効」を考える必要はありません。

  • 「療養の支給の給付」:費用支出の翌日から2年間で時効となります。

指定病院等以外で療養を受けて費用を支払った場合や健康保険で払った場合などに、その後で支給されるものです。

療養の費用の支出が確定した日の翌日から2年間を経過すると、時効により請求権が消滅します。
療養の費用を何度も払っている場合には、それぞれについて時効が進行することになります。

②休業(補償)給付

賃金を受けない日から2年間で時効となります。

療養のため労働することができないときには、賃金を受けない日ごとに請求権が発生します。
その翌日から2年が経過すると、時効により請求権が消滅します。

③遺族(補償)年金・一時金

被災労働者死亡日の翌日から5年間で時効となります。

遺族(補償)年金は、被災労働者の死亡の当時にその収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・兄弟姉妹に対して支給されます。
受給権者となる順位が明確に定められています(詳細は厚生労働省「遺族(補償)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続)。

遺族(補償)一時金は、被災労働者の死亡の当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいなかった場合、あるいは、その受給権者全員が失権したが、受給権者に支払われた年金(および年金前払一時金*)の合計額が給付基礎日数の1,000日分に満たない場合に支払われます。
この遺族(補償)年金・一時金は被災労働者が亡くなった日の翌日から5年間で、時効により請求権が消滅します。

④葬祭料(葬祭給付:通勤災害の場合)

被災労働者死亡から2年間で時効となります。

葬祭料(葬祭給付)は、葬祭を行うのにふさわしい遺族に支払われます。
葬祭をとり行うご遺族がおられずに社葬にした場合に、会社に葬祭料等が支払われることもあります。

被災労働者が亡くなった日の翌日から2年間で、時効により請求権が消滅します。

⑤未支給の保険給付・特別支給金

それぞれの保険給付と同じ時効があります。

療養(補償)給付や、休業(補償)給付を受ける権利者が給付を受ける前に亡くなったときに、次の方が未支給の保険給付や特別支給金を受け取ることができます。

「亡くなった方の、配偶者・子・父母・孫・兄弟姉妹で受給権者が亡くなったときにその方と生計を同じくしていた方(必ずしも同居している必要はありません)。」

このような方がいらっしゃらない場合には、相続人が請求することができます。
未支給給付などの時効は、療養(補償)給付や、休業(補償)給付と同じです。

⑥傷病(補償)年金

時効はありません。

労働基準監督署長の職権で決定します。

傷病(補償)年金は、業務災害や通勤災害で負傷や疾病になった方が、療養開始後1年6ヶ月を経過した日以降に次の2つの要件に該当する場合に休業(補償)給付にかえて支給されるものです。

  • その負傷または疾病が治っていないとき(症状が固定していないとき) 

かつ

  • その負傷または疾病による障害が一定の傷害等級等に該当するとき。

この支給・不支給の決定は労働基準監督署長が職権で行います。
労働者が請求するわけではないので「請求のための時効」というものはありません。

なお、療養が続く限り療養(補償)給付は継続します。前述の通り「療養の給付」なら時効を考える必要はありませんし、健康保険などで療養を受けて療養の費用の給付を受けるのなら2年間の時効があります。

⑦障害(補償)給付

傷病が治癒(症状固定)した日の翌日から5年間で時効となります。

業務災害や通勤災害で負傷や疾病になった方について、一定の障害が残り、これ以上治療しても回復の見込みがない場合(「症状が固定」)に支給されます。

障害の程度によって、年金または一時金が支給されます。

請求権の時効については、「傷病が固定した日の翌日から5年」とされています。

なお、労災保険では「症状が固定してこれ以上治療しても回復の見込みのないこと」を「治癒」と呼んでいます。「治癒した日」は「回復した日」ではないことに注意してください。

⑧介護(補償)給付

介護の翌月1日から2年間で時効となります。

障害(補償)年金、傷病(補償)年金受給者のうちで障害傷病等級1級(全員)、または2級のうちで「精神神経・胸腹部臓器の障害を有している方」が介護を受けられている場合に、介護(補償)給付が受けられます。

介護を受けた月の翌月の1日から2年間で、時効により請求権が消滅します。

⑨二次健康診断等給付金

一次健康診断の受診日から3ヶ月で時効となります。
労働安全衛生法に基づく一次健康診断で脳心臓疾患に関連する異常所見がある場合に、二次健康診断や特定保険給付を受けることができるものです。

一次健康診断の受診日から3ヶ月以内に受診しないと、時効により権利が消滅します。

2、知ってほしい!労災申請で注意すべき4つのこと

知ってほしい!労災申請で注意すべき4つのこと

(1)うつ病における労災申請

「うつ病で労災の申請をしようと思うが、認定されるかどうかわからないし、認定までに時間もかかるのでは?」
という声をよく耳にします。
現実に、精神障害等について労災補償が認められているのは請求件数の30%程度にとどまっています。

ですが、逆に言えば30%は認められているのです。

労災の申請が認められれば健康保険の傷病手当金より有利です。
労災請求には時効があるので、ともかく労災申請も早めに検討することをお勧めします。

もっとも、実務では、認定が不確実なことから、まず健康保険の「傷病手当金」を申請したうえで、労災の休業補償給付を申請することも普通に行われているようです。

【健康保険(傷病手当金)と労災保険(休業補償給付)の比較表】

 

健康保険 ( 傷病手当金 )

労災保険 ( 休業補償 )

治療費

3割負担 ( 原則 )

 自己負担0円 ( 原則 )

休業補償日額
or
傷病手当金

6割

8割

1日につき標準報酬日額の 2/3

休業給付 給料基礎日額の60%

休業特別給付金 

給付基礎日額の20%

期間

最長1年6ヶ月

治癒(症状固定)まで期限なし

但し、次の例外あり(手厚い給付に切り替え)

①休業開始から1年半経って症状固定せず重い症状の場合には、傷病(補償)給付に切り替え。

②症状固定し障害が残る場合には障害(補償)給付に切り替え

(2)石綿(アスベスト)被害等における特例

大規模な労働災害が発生していたが、事態・原因等の判明したのが相当後になり、労災補償の請求権が時効消滅している、ということがあり得ます。
被災者の救済のために、特別な定めが行われることがあります。

一例として、石綿被害について「石綿健康被害救済法」という特別の法律が定められ、被災者や遺族を救済するために様々な改正が行われてきています。その中の『特別遺族給付金」についてご紹介します。
遺族補償給付について5年間で時効消滅しているのを救済する特別立法です。

「石綿にさらされる業務に従事することにより石綿を原因とする中皮腫や肺がん等にかかり、これにより石綿救済法の施行日の前日(平成18年3月26日。今回の改正により平成28年3月26日まで拡大。)までに亡くなった労働者のご遺族の方について、労災保険の遺族補償給付を受ける権利が時効(5年)によって消滅していた場合にその請求に基づき支給されるものです。」

このほか、石綿については労災補償の対象とならない周辺住民などに対しても救済給付が支給される、といった取扱いも定められています。

出典:厚生労働省「石綿健康被害救済法が改正されました」

(3)請求権が時効消滅していると思ってもあきらめない

療養(補償)給付や休業(補償)給付などは、「療養の費用を支出した日ごと」あるいは、「賃金の支給を受けない日」ごとに、時効が進行するものです。

「2年以上前の病気だから時効で請求権が消滅している。」といった誤解がしばしば見られます。
病気の発症やケガを負った日そのものが2年以上前のことであっても、治療を受けたり休んで賃金を払ってもらえなかった日が2年以内であれば、その分の給付の請求ができることがあります。

自分だけで考えずに、公的機関や専門家に相談してみるべきでしょう。

(4)労災保険だけが救済手段ではない(労災民訴「債務不履行責任」時効10年)

労災保険についてよく知らなかったとか、会社が労災の請求を妨げたりして(労災隠し)、請求権が時効消滅することもありえます。
これはあくまで労災保険法に基づく請求権の消滅であり、会社の労災についての責任については、別の請求権であり、別の消滅時効期間が存在します。

社員の業務上のケガや病気については、本来、会社が補償する責任を負っています(労働基準法75条以降)。
ただ、労災保険による補償がある場合には、その範囲で責任が免除される、ということにすぎません(労働基準法84条1項)。
労災保険を使わないならば、会社の責任が残ることになります。

また会社は、社員に対する安全配慮義務を負っています(労働契約法第5条)。

さらに、労災保険の給付額が現実の損害にかかわらず定型的に定められているため、社員が労災保険の給付だけでは損害がすべて補償されるわけではありません。
代表的なところでいえば、労災保険からは慰謝料に相当する給付は行われません。

そこで、我が国では、労災保険制度とは別に民法上の損害賠償請求も認められています。

労働契約法上の安全配慮義務違反は「債務不履行責任」であり、損害賠償請求権の消滅時効は10年となります(民法167条。なお、民法改正により、施行後に発生した安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の時効期間は5年となりますので注意が必要です)。

労災保険の申請(請求)期限が来てしまっていたとしても、会社に対しては損害賠償請求が可能です。
ぜひ専門家に相談してみてください。

3、労災給付の時効等についての相談窓口

労災給付の時効等についての相談窓口

以上、労災給付の時効、さらに労災民訴についてもご説明して参りました。
期間は経過しているものの損害を賠償してほしい、という場合もあるでしょう。

以下、主な相談窓口をご紹介します。
決して1人で悩まないでください。

【公的な相談窓口の一例】

(1)厚生労働省

全国労働基準監督署の所在案内

労働保険適用・徴収、労災保険相談ダイヤル[PDF形式:928KB]

 個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)「総合労働相談コーナー」

(2)東京都労働相談情報センター

働く人たちのための窓口

(3)その他

東京都社会保険労務士会総合労働相談所

まとめ

労災申請には労災保険の種類によってそれぞれ時効の期限が決まっています。
経過してしまわないよう、十分に注意しましょう。

もし経過してしまったと思われる場合も、経過していない部分があるかもしれませんので専門家への相談をお勧めします。

大きな労災であったにもかかわらず会社が労災の案内をしなかったり、労災の相談をしたにもかかわらず会社に却下されたような場合は、会社に対し損害賠償を請求できる可能性もあります。
このような場合は人事労務関係に詳しい弁護士にご相談ください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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