労働災害(労災)とは、労働者が勤務中や通勤中など業務が原因で負傷したり病気になったりすることをいいます(労働安全衛生法第2条第1項第1号)。
労災が発生した場合は、使用者が必要な療養費用等を負担しなければなりません(労働基準法第75条)。
また、使用者に支払能力がない場合であっても、被害者が泣き寝入りしなくて済むよう、労災保険制度が整備されており、被害者は労災補償を受けることが可能です。
さらに、被災者は、必要に応じて、労災保険だけでなく、加害者や使用者に対して損害賠償請求することが出来ます。
本記事では、
- 労災の被害に遭ってしまった場合にどうすれば良いのか
- どのような場合に弁護士に相談をすべきか
- 弁護士の探し方
について解説します。
本記事が参考になれば幸いです。
労災保険の請求についてお悩みの方は以下の関連記事をご覧ください。
1、こんな労災トラブルは弁護士へ相談
労災トラブルといっても、転倒して擦り傷を負ってしまった場合や、機械に巻き込まれて大事故を負ってしまった場合など様々なケースが考えられます。
会社が協力的で、賠償額についても納得をしている場合は、労災申請をして補償を受けることで早期解決ができるかもしれません。
では、どのような場合に弁護士への相談が必要なのでしょうか。
(1)労災が認定されなかった
労災は、仕事によるもの(業務災害、複数業務要因災害)、通勤によるもの(通勤災害)に分類され、各災害にとして認定されるための一定の基準があります。
労災申請を行うと、労基署の労災担当調査官は、その申請について労災認定をすべきかの調査を行います。
労基署の調査がされている時に、請求者(被災者)からの働きかけが必要な場面があります。
労基署の調査官の中には十分に調査を行わずに結果を出している場合があります。
こういった不十分な調査で結果が出てしまうことを避けるためにも、請求者も独自に証拠収集を行わなければなりません。
ただし、どのような証拠でも提出をすれば良いということでは無く、労災認定の基準を抑えた証拠収集が必要となります。
また、労災が認定されなかった場合や、実態よりも低い障害等級が認定された場合は、不服申立制度が用意されております。
具体的には、不支給決定等(原処分)を行った労基署長の所在地である各都道府県の労働局に置かれた労働者災害補償保険審査官に対して審査請求を行う事になります。
しかし、単に審査請求をすれば良いと言うものではなく、原処分を行った担当調査官に対して聞き取りや不服部分の不合理性を正確に主張しなければ、良い結果は出ないでしょう。
以上のように、労基署によって不十分な調査しかなされず、実態にそぐわない処分がなされた場合は、弁護士に相談をする必要があるといえます。
(2)会社が労災申請に消極的
労災事故が発生した場合には、会社は遅滞なく労基署に報告する義務を負っています(労働安全衛生法97条)。
しかしながら、会社の中には、労基署に報告をすることで、事故の原因や事業環境が明らかになり、行政指導や刑事罰を受けるリスクがあることから、
労災申請に非協力的な態度を取ることがあります。
会社が労災申請に消極的な場合は、ご自身だけで労災申請を進めるのは事実上難しいでしょう。
そのような場合には、弁護士に依頼をして労災申請をしてもらいましょう。
なお、労災申請には時効期間があり、障害給付と遺族給付以外は、2年と比較的短期です。
そのため、会社が非協力であるからといってそのままにしておくことは、請求できなくなってしまう危険があります。
(3)被害が大きいため、会社や加害者にも損害賠償請求したい
労災保険給付だけではなく、会社や加害者に対して直接損害賠償を請求したいという場面も弁護士に依頼をしたほうが良いといえます。
労災保険を受給しながら、会社や加害者に対して損害賠償請求をできるという点に疑問を感じられる方もいらっしゃると思いますが、労災保険では慰謝料や物損については補償の対象になっておりません。
そのため、会社側の責任で重大な損害を負ってしまった場合は、別途慰謝料請求をして損害の回復を目指すことになります。
しかしながら、損害賠償請求では、訴訟も見据えた交渉や証拠収集が必要になり、また実際に判決で良い結果を得るためには、ご自身だけでは難しいといえます。
このような場面でも早めに弁護士へ依頼をすることが得策でしょう。
(4)労災保険請求と自動車保険請求の関係が分からない
勤務中や通勤中に交通事故などに遭われることも考えられます。
その場合、労災といえますので、労災保険の適用があります。
一方で、交通事故ということで自動車保険(自賠責保険や加害者の任意保険)が適用になるケースもあります。
労災保険と自動車保険のいずれも適用になる場合、基本的には、両保険間で調整が行われますので、どちらから請求をしたからといって損をするケースは多くないですが、労災保険でのみ支給される休業特別支援金など例外的な場合もあります。
交通事故の保険関係で損をしたくない場合は、一度弁護士に相談してみましょう。
(5)労災における障害等級認定が難航している
労災における障害等級認定が難航をしている場合も、労災認定がされなかった場合と同様に、積極的な行動が求められます。
一方で、調査期間は、給付の種類や事故内容によって標準処理期間が1か月~8か月の範囲内で決められております。
特に心臓疾患や精神疾患では、発症した疾病や事実関係が複雑な場合が多く、支給までも相当期間かかることもあります。
早期に支給決定がなされるように働きかけをすることもできますが、十分な調査も必要なところであり、その見極めは難しいといえます。
このような場合も弁護士に一度相談して、アドバイスをもらった方が良いでしょう。
2、労災に詳しい弁護士の探し方
労災に遭ってしまった場合に、弁護士への相談・依頼が必要になる場面があるということについてはお分かりになったかと思います。
しかし、労災に詳しい信頼できる弁護士を知っているという方は、少ないかと思います。
そこで、どのようにして弁護士を探すべきか解説をしたいと思います。
(1)インターネットで検索
多くの法律事務所では、ホームページを掲載しており、その事務所の所属弁護士や得意分野等事務所ごとの特徴について記載をしております。
ただし、都心部ではインターネットでホームーページ上の検索をすることは容易ではありますが、地方では、あまりホームーページを掲載していない事務所も多く、インターネット内だけで、弁護士の比較検討は難しいかもしれません。
また、弁護士とは、依頼をしてから、数か月間は密接にかかわることになりますので、人柄なども十分に考慮しなければなりません。
そのため、実際に会ってみて、ホームーページと印象が大きく変わるようであれば、依頼をすることは慎重に検討した方が良いかもしれません。
(2)無料相談を利用して実際に会う
次に、弁護士会や自治体、法テラスなどの無料法律相談を利用する方法が考えられます。
実際に会ってみて、話を聞けるため、インターネットよりも人柄を判断しやすいというメリットがあります。
しかし、弁護士会や法テラス等の無料法律相談は、名簿に沿ってランダムに派遣をされた弁護士が対応しますので、担当弁護士によっては、労災案件をあまり扱っていないかもしれません。
また、担当弁護士は、事前に相談内容も聞いていませんので、十分な調査ができないこともあり、30分程度という短い相談時間内で適切なアドバイスを受けることが難しいこともあります。
このような無料法律相談は、複数の弁護士に会うための一つの手段として考えられた方が良いかもしれません。
気に入った弁護士と出会うことが出来ましたら、その弁護士の事務所でもう一度相談を実施してもらいましょう。
また、初回相談を無料にしている法律事務所もあります。
このような事務所であれば、ホームページや受付時に労災分野を数多くこなしているということを確認した上で相談することができます。
(3)複数の弁護士に会い、比較検討
正式に依頼をする前には、複数の弁護士に会うことをお勧めします。
一度依頼をすると、途中で弁護士を変えることは、費用面だけでなく、早期解決の面でもマイナスに働いてしまいます。
弁護士によって、事案の捉え方や進め方も異なりますし、信頼を出来ない弁護士に依頼をすることはかえって心配事やストレスを増やす結果になってしまいます。
そのため、早く弁護士に依頼をしたいという気持ちは抑えて、慎重に見極めを行わなければなりません。
お住まいの地域でホームページを出されている法律事務所が多いのであれば、ホームページの内容を比較してもらい、無料相談を行っている事務所があればこれを利用して下さい。
複数の弁護士に相談をしたうえで、どの弁護士に依頼するのか実際に依頼をすることをお勧めいたします。
3、労災で頼るべき弁護士のタイプ
次に、どのような点を意識して、弁護士を選ぶべきかについて解説します。
都心部では、特に弁護士の数が多く、相談や依頼をする際に悩むかもしれませんが、以下の点を重点的に探してみて下さい。
(1)労災事件の豊富な経験がある
まずは、労災事件に精通しているかどうかが最重要ポイントになるかと思います。
そもそも、労災事件を数多く扱っている弁護士はそれほど多くないかもしれません。
労災事件は、家事事件や交通事故事件に比較して相談件数は多くないため、より専門的に扱っている弁護士との経験値の差が出やすい分野といえます。
労災事件に精通している弁護士の中では大きく、会社側と労働者側に分かれます。
会社側の弁護士を多くしている弁護士は、労働者側の依頼についてはそもそも受け付けてない場合もありますし、受け付けていても、労働者側での請求について経験が少ない可能性もあります。
もっとも、会社側の視点で物事を捉えられるので、会社側からの主張を予想し、的確な反論をすることができます。
そのため、労働事件の経験については重視して確認する必要があるかと思います。
(2)弁護方針がしっかりとしている〜希望との兼ね合い
次に、弁護方針についてしっかりとしているかの確認も必須といえます。
例えば労働事件が豊富な弁護士であっても、全く同じ事件というものはありませんので、ご自身の希望と弁護士の方針に違いが出てくることも少なくありません。
よく相談したうえで、ご自身の希望と弁護方針がマッチしているのかよく検討する必要があります。
(3)弁護士費用が明確である
弁護士報酬は、以前は、弁護士会が報酬基準(旧報酬基準)を設け、一律で決まっていましたが、平成16年に、報酬の自由化が進められました。
そのため、弁護士報酬は、事務所によってそれぞれであり、事務所によっては報酬自体が不明確である所もあります。
報酬が不明確な場合は、事務所に聞いてみるといいでしょう。
なお、事務所によって、独自に報酬を決めてはいるものの、多くの事務所では、旧報酬基準を参考にしており、(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準を確認することで当該事務所の報酬が高額であるか検討材料の一つにすることが出来ます。
4、労災事件におけるベリーベスト法律事務所の弁護士費用
最後にベリーベスト法律事務所における、弁護士費用についてご紹介を致します。
法律相談
初回法律相談(60分まで) | 無料 |
法律相談(30分まで) | 5500円(税込み) |
このように、ベリーベストでは、初回相談が60分まで無料ですので、まずはご相談をしてみて、弁護士との相性をみてみるのが良いかと思います。
また、労災申請手続きと会社に対する損害賠償請求の示談交渉をする場合は、着手金が無料となっています。
そのため、実費相当の事務手数料をご負担いただく以外、最初に負担する着手金はありません。最後に支払をする成功報酬は以下のとおりです。
労災申請手続き+示談交渉
経済的利益 | 報酬金額 |
300万円以下 | 22%(税込み22%)(最低報酬は税込み11万円) |
300万円超~3000万円以下 | 19.8%(税込み)+6万6000円(税込み) |
3000万円を超える場合 | 16.5%(税込み)+105万6000円(税込み) |
このように、労災申請手続きと会社に対する損害賠償請求の示談交渉で最初の着手金がかからないことは、お金がなくて、弁護士に依頼をすることが出来ないという場合であっても気軽に弁護士に依頼することができます。
会社に対する損害賠償請求は、示談交渉で決着が付くことが多いものの、中には交渉では折り合いが付かず、訴訟提起まで必要な場合もあります。
そのような、場合は、別途着手金として33万円(税込み)がかかります。
報酬金につきましては上記と同様の金額になります。
まとめ
本件記事では、労災事故が発生した場合に、弁護士に相談・依頼する必要性が高いケースや、相談・依頼する際に、どのような弁護士を選ぶべきかについて解説しました。
多くの方にとって、労災事故による治療と並行をして会社と交渉したり、会社相手に裁判をすることは大きな負担になってきます。
信頼できる弁護士に相談・依頼をすることが出来るのであればその負担も軽減されることになるでしょう。
今回の記事があなたにとって最良の弁護士への相談・依頼に繋がれば嬉しく思います。