「期限の利益って一体何?」
「期限の利益喪失通知書が自宅に届いてどうすればいいのか分からない」
期限の利益とは、お金の返済は期日までにすれば良い、という債務者と債権者(銀行や貸金業者など)との約束事。
そもそも返済日を決めるのは、債権者から「明日全額返して!」と突然言われても困るからです。
いつまでに返せば良いのか、返済日をあらかじめ決めることにより、債務者は返済の目処を立てることができます。
そして、「返済日に返す」ということは、それまでは返さなくていいということ。
その「返さなくてもいい」ということを「利益」と表現されています。
そこで今回は、
- 期限の利益について
- 期限の利益を喪失するケース
- 期限の利益喪失通知が来た場合の対処法
などについて解説していきます。
期限の利益について悩んでいる方のご参考になれば幸いです。
督促状に関しては以下の関連記事もご参照ください。
目次
1、期限の利益とは約束した返済日までに返済すればいいという権利
期限の利益とは、約束した返済日までにお金を返済すればいいという権利です。
期限の利益があるからこそ、貸金業者から「やっぱり100万円すぐに返してください」と言われることはありません。
2、期限の利益を喪失するケース
期限の利益「喪失」とは、「期限の利益がなくなってしまう」ということです。
つまり、期限の利益を喪失すると、すぐにお金を一括返済しなければなりません。
どういう場合に期限の利益喪失になるのでしょうか。
(1)民法の規定
まず、民法第137条に定められています。
(期限の利益の喪失)
第一三七条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
民法では、
- 破産手続開始の決定を受けたとき
- 担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
- 担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき
といった3つの場合において期限の利益が喪失すると定めています。
これらは全て、債権者の債権回収が難しくなると考えられるケースです。
つまり、返済の期日まで待っていては債権回収ができなくなるリスクが債権者に発生するのです。
そのため、このような3つの場合には、債務者は期限の利益を主張できなくなり、債権者はすぐに返して!と言えるようになる、というわけです。
(2)契約
そして、民法以外でも、多くの場合、契約によって期限の利益を喪失する条件が定められています。
債権者が法人である金銭消費貸借契約(お金の貸し借りの契約)では、たいてい期限の利益喪失についての規定があります。
例えば、以下の事由です。
- 約束の期日までに返済しなかった
- 契約違反をした
- 契約する時に虚偽の申告をした(年収をごまかしたなど)
- 再生手続きをした
契約は基本的には守らなければなりませんので、契約に記載された期限の利益喪失事由はよく確認しておいてください。
以下、ご説明していきます。
3、契約上の期限の利益喪失事項
(1)期日に返済を怠った場合
契約上、1回の返済の遅れでも期限の利益を喪失することになっていることも多いと思いますが、債権者が実際1回の遅れで期限の利益の喪失を主張するケースは稀です。
債権者は、期限の利益を喪失させ一括請求するメリットと、そのまま催促し続け利息を受け続けるメリットを天秤にかけるからです。
また、いちいち期限の利益の喪失を主張して一括請求していては、金銭貸付サービスとして利便性に欠けます。
実務上は、何度も繰り返して遅延する場合や、債権者がその他の債務者の事情により債権回収が難しいと判断した場合、この事由を使って一括請求することが多いでしょう。
(2)契約違反・契約時の虚偽申告
これについても、軽微な契約違反であれば、即期限の利益の喪失を主張されるということは考えづらいでしょう。
実務上、債権者がこの条項で期限の利益の喪失を主張して一括請求するのは、債権回収の危機が相当程度迫る場合の契約違反に限られると考えます。
(3)再生手続き等
再生などの債務整理手続きに入った場合は、債権者は期限の利益の喪失を主張します。
4、期限の利益喪失通知が来た場合の対処法
自宅に期限の利益喪失通知が届いた時の対処法は3つです。
(1)滞納した金額を期日までに返済する
お金があることが条件ですが、期限の利益喪失通知に記載されている日付までに滞納した分を支払いましょう。
滞納した金額を支払えば、期限の利益喪失は回避できます。
期限の利益を喪失すると、まだ期限未到来の債務まで全額返済しなければなりません。
支払期限が来た分のみの返済で済みますので、可能な限り支払いましょう。
(2)債権者へ相談する
期限内にお金を支払えないなら債権者(※)へ相談しましょう。
(※)債権者・・・お金を請求する権利のある人。貸金業者など
お金を返せる目処があれば、具体的にいつ返済するかを話すことで期日を延長してくれる場合もあります。
(3)債務整理をする
どうしても借金を返済できないなら債務整理(※)があります。
(※)債務整理・・・借金を減らす方法。自己破産など
あなたの返済状況によって債務整理の方法は変わりますが、借金を減らせる可能性があります。
債務整理について分からないけれど検討してみたい人は、弁護士に相談してみてください。
5、期限の利益喪失を事前に防ぐ方法2つ
現在、お金を借りた段階で、期限の利益の喪失を予防できる段階であれば、以下の方法により期限の利益の喪失を予防することができます。
(1)貸金業者への返済を自動引き落としにする
給料の翌日に貸金業者へ自動引き落としになるように銀行口座を設定しましょう。
振込み返済に比べ、期限の利益を喪失する確率は格段と下がるはずです。
(2)毎月の収入と支出額をしっかり把握する
手取り(収入)と生活するのに必要な金額(支出)をしっかり把握してください。
毎月の収入と支出が分かれば、余計な買い物をしてしまうことの歯止めとなります。
またお金が足りないと事前に分かれば、日払いのアルバイトをしたりネットオークションで不用品を売ったりして、毎月の返済額を返すための工夫ができるでしょう。
まとめ
期限の利益とは、約束の期限までにお金を返済すればいいという権利です。
期限の利益があることで、貸金業者から借入れをしても約束の期限にならない限り返済しなくても問題ありません。
また借入れした金額の一部だけ返済すればいい、分割払いに対応可能になっています。
しかし、約束の期限を破って返済しないと期限の利益を喪失して、貸金業者から一括返済を求められてしまいます。
もし返済が難しいのなら、貸金業者へ相談するか、弁護士に依頼して債務整理することをオススメします。
借金が返せない場合は、以下の関連記事もご参照ください。