交通事故に遭って、指先を痛めて曲がってしまい、病院で診てもらったらマレットフィンガーと診断されることがあります。「マレット」とは、日本語で「木槌(きづち)」を意味します。マレットフィンガーとは、木槌のようになってしまい、指が曲がったまま固定されてしまうことを指します。
今回は、交通事故に遭ってマレットフィンガーになってしまった場合に気になる以下の点について、弁護士が詳しく解説をしていきます。
- マレットフィンガーは後遺障害等級の何級なのか
- マレットフィンガーでの後遺障害等級の申請方法
- マレットフィンガーで後遺障害等級を獲得した際の賠償額
この記事がご参考になれば幸いです。
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目次
1、交通事故によるマレットフィンガー 〜マレットフィンガーとは?~
(1)マレットフィンガーの症状
マレットフィンガーは、指先の第一関節が曲がってしまったままの状態になることを示します。第一関節が自由に曲げたり伸ばしたりできない状態になってしまうのです。
指を伸ばす伸筋腱が切れたものを「腱性マレットフィンガー」、第一関節内の骨折を伴うものを「骨性マレットフィンガー」と呼びます。
(2)マレットフィンガーの治療法
マレットフィンガーの治療法は、保存療法と手術の2種類があります。
保存療法は、指先を、固定器具によって固定するもので、主に腱性マレットフィンガーの場合に用いられる治療法です。
骨性マレットフィンガーの場合は、手術によって治療することがあります。
(3)マレットフィンガーの治療期間
マレットフィンガーの治療期間は、個人差はありますが、概ね6週~12週(1か月半~3か月)程度とされています。
(4)マレットフィンガーは完治する?
上記の保存療法や手術により、指が動かせるようになることもあります。
他方で、治療をしても完治せず、指が曲がったままで動かせない、動かそうとすると痛みが生じるという後遺症が残ることもあります。
これ以上治療しても良くならならない状態のことを、法律上は「症状固定」と言います。症状固定かどうかは主には医師の診断により判断されます。
症状固定になって残ってしまった後遺症について、法律上の「後遺障害」に当たるかどうか、また、当たるとしても等級がどうなのかによって、賠償額が変わってきます。
以下では、完治せずに後遺症として残ってしまった場合を見ていきましょう。
参考元:公益社団法人 日本整形外科学会
2、マレットフィンガーの後遺障害等級は14級〜12級
交通事故による後遺障害については、1級~14級の等級があり、等級ごとに認定基準が設けられています。
マレットフィンガーに関していうと、後遺症としては、指先が動かせないという機能障害と、動かそうとすると痛みが生じるという神経障害の2種類あります。
指が動かせないという機能障害については、手の指について「片方の手の親指以外の指の遠位指節間関節を屈伸できない場合」に14級7号とする認定基準があります。
また、動かそうとすると痛みが生じるという神経障害については、「局部に頑固な神経症状を残す場合」に12級13号、「局部に神経症状を残す場合」に14級9号とする認定基準があります。つまり、マレットフィンガーが後遺症として残った場合には、後遺障害12級か14級に該当すると認定される可能性があります。
3、マレットフィンガーで後遺障害等級の認定を受ける理由
(1)後遺障害等級が認定されると賠償額が上がる
交通事故による賠償額は、細かく項目が設けられています。
大きく分けると治療中のものと、これ以上治療しても良くならないとされる症状固定後のものとに分けられます。
治療中のものとしては、事故後の治療中の入通院にかかる治療費、通院交通費、入通院に対する慰謝料等が挙げられます。
また、症状固定後の項目としては、残存してしまった後遺障害に対する慰謝料(後遺障害慰謝料)と、後遺障害によって労働能力が制限されることになりますので、労働能力が制限されなければ得られたであろう将来の利益(逸失利益)等が挙げられます。
症状固定後の後遺障害慰謝料と逸失利益とは、残存した後遺症の症状や程度によって異なってきます。
その判断の基準とされるのが後遺障害等級です。つまり、事故後に残存した後遺症については、後遺障害の等級認定を受けることで、等級に応じた後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益がプラスされるということになります。他方、後遺障害の等級が認められなければ、基本的に後遺障害慰謝料、逸失利益は請求できないこととなります。
(2)マレットフィンガーでの賠償額
マレットフィンガーが後遺症として残ってしまった場合、後遺障害の等級によって以下のように、賠償額が変わってきます。
まず、後遺障害慰謝料については、任意保険会社が提示してくる相場(※任意保険基準)でいくと、だいたい12級で100万円、14級で40万円程度のケースが多いです。
※任意保険基準とは、保険会社が独自に定めている基準額のことであり、保険会社により異なるうえ、公開されていません。
これに対して、弁護士や裁判所が用いる裁判所基準(弁護士基準)では、12級で290万円、14級で110万円となるため、後遺障害が認定された場合には、特に弁護士に依頼するメリットも大きくなると言えます。
次に、逸失利益については、労働能力喪失率に労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を乗じる方法により算出されますが、この労働能力喪失割合が、12級で14%、14級で5%とされています。労働能力喪失期間は、高齢者を除いては、症状固定時から67歳に達するまでの期間のことを指します。なお、むち打ちなどの神経症状などで14級9号が認定された場合は、労働能力喪失期間が5年ほどに制限ケースも多いです。
例えば、工場内で作業に従事している年収500万円、37歳の男性の方を想定してみましょう。この男性が事故に遭い、マレットフィンガーが後遺症として残ってしまった場合を想定します。
①後遺障害12級に該当すると認定された場合
逸失利益は、下記の算定式により1372万円と算定されます。なお、ライプニッツ係数とは、将来貰えるであろうお金を今一括で貰うとしたらいくらになるかという計算の際に用いられる係数のことです。本件では、37歳から67歳までの30年間で貰えるお金を一括で賠償してもらうとしたらということになりますので、30年に対応するライプニッツ係数である19.6を乗じることになります。
(計算式)
500万円×0.14(労働能力喪失割合)×19.6(ライプニッツ係数)
つまり、12級に該当するとされた場合には、計算上、逸失利益は1372万円となります。
②後遺障害14級に該当すると認定された場合
14級の場合、逸失利益は、下記のとおり、計算上、490万円となります。
(計算式)
500万円×0.05(労働能力喪失割合)×19.6(ライプニッツ係数)
なお、14級9号の場合には、労働能力喪失期間を5年程度として計算されることがあります。その場合は、逸失利益が下記計算式のとおり約114万円となります。
(計算式)
500万円×0.05(労働能力喪失割合)×4.5797(ライプニッツ係数)
④後遺障害等級に非該当とされる場合
この場合には、後遺障害慰謝料も逸失利益も原則賠償されません。0円です。
後遺障害の等級認定を受けることでいかに賠償額が変わってくるかということがお分かりいただけたかと思います。
4、マレットフィンガーにおける後遺障害等級の申請方法
(1)被害者請求がオススメ
後遺障害等級の認定を受けることで、いかに賠償額が変わってくるかということがお分かりいただけたと思いますが、では、その等級認定を受けるにはどうすれば良いでしょう。
まず、等級認定を行うのは損害保険料率算出機構、自賠責損害調査事務所です。これらに対して、等級認定を申請することになります。
その方法としては、事前認定(加害者側の任意保険会社を通じて行う方法)と被害者自らが請求する被害者請求の二つの方法があります。
事前認定では、手続が楽である反面、賠償をする加害者側の保険会社が行うため、なるべく認定が降りるような積極的な申請は期待できません。
被害者請求であれば、手続面で少し手間がかかりますが、被害者側で書類を整えるので、なるべく認定が降りやすいように書類を整えることができます。なお、弁護士に被害者請求を依頼すれば、弁護士側で積極的に書類を揃えるので、「手間がかかる」というデメリットもほとんどなくなります。
(2)被害者請求の仕方
被害者請求では、必要な書類を自分で取り寄せて、損害保険料率算出機構、自賠責損害調査事務所に郵送等で提出することになります。
必要な書類としては、
- 交通事故証明書
- 支払請求書兼支払指図書
- 事故発生状況説明図
- 印鑑証明書
- 診断書
- 診療報酬明細書
- 後遺障害診断書 等
です。これら必要書類のリスト、書式は、自賠責損害調査事務所に事前に求めれば送ってもらえます。
5、交通事故でマレットフィンガーと診断されたら弁護士へ相談を
(1)後遺障害等級の認定申請をサポート
後遺障害の等級が得られるかどうかで、後遺障害慰謝料や逸失利益等の賠償額が大きく変わってきます。
上記のような理由から、適切な後遺障害等級認定を得るには被害者請求で行った方が良いですが、必要は書類が複雑であったりして、ご本人では煩わしく感じられるかもしれません。弁護士は、こうした被害者請求も被害者ご本人に代わって行うことが出来ます。
(2)適正な賠償額を算出
弁護士は、交通事故の損害を適切に算定することができます。
症状固定までの通院期間に応じて通院慰謝料が賠償の項目に含まれますが、いつどの時点を症状固定とするかも悩ましい問題で、相手方保険会社が早期に治療費を打ち切ってしまい、症状固定と診断されてしまうケースもあります。このような場合では、弁護士に相談すれば、適切な治療を継続してもらうよう、アドバイスしてくれるなどして、通院慰謝料額が増えることも期待されます。
(3)保険会社との交渉を代理
弁護士は、被害者ご本人に代わって、加害者側保険会社との交渉ができます。
さらに、弁護士に依頼した場合には、裁判所基準額での交渉が可能になります。
後遺障害慰謝料は先に挙げましたように、例えば12級であれば任意保険基準だと100万円程度であるのに対して、裁判所基準では290万円と、大きく異なります。
裁判所基準で協議してもらえるようになるだけでも、弁護士に依頼するメリットは大きいと言えます。
マレットフィンガーの後遺障害等級に関するQ&A
Q1.マレットフィンガーの症状とは?
マレットフィンガーは、指先の第一関節が曲がってしまったままの状態になることを示します。第一関節が自由に曲げたり伸ばしたりできない状態になってしまうのです。
指を伸ばす伸筋腱が切れたものを「腱性マレットフィンガー」、第一関節内の骨折を伴うものを「骨性マレットフィンガー」と呼びます。
Q2.マレットフィンガーで後遺障害等級の認定を受ける理由とは?
- 後遺障害等級が認定されると賠償額が上がる
事故後に残存した後遺症については、後遺障害の等級認定を受けることで、等級に応じた後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益がプラスされるということになります。
Q3.マレットフィンガーの治療法とは?
マレットフィンガーの治療法は、保存療法と手術の2種類があります。
保存療法は、指先を、固定器具によって固定するもので、主に腱性マレットフィンガーの場合に用いられる治療法です。
骨性マレットフィンガーの場合は、手術によって治療することがあります。
まとめ
交通事故の後遺症としてマレットフィンガーが生じてしまった場合、後遺障害等級認定を受けるようにしましょう。等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料と逸失利益が加算されて賠償額が大きく変わってきます。
そのため、後遺障害等級認定を得ることはとても大切ですが、被害者請求の場合、必要書類等、手続きが分かりにくいところもあります。
また、慰謝料額の基準については任意保険基準、裁判所基準等があり、裁判所基準の方がより高額となります。事故によって残ってしまった後遺症に対しては適切な賠償がなされるべきです。
被害者請求による適切な後遺障害等級認定を受け、裁判所基準での交渉を行えるよう、弁護士に相談することを検討してみるべきでしょう。