個人再生失敗事例:成功への道を切り開くポイント

個人再生失敗事例:成功への道を切り開くポイント

個人再生は、多額の借金が返済できない場合に、財産を処分せずに「借金の一部免除と分割返済」を実現する便利な制度です。

再生計画(借金の減額と分割返済のプラン)が認められれば、借金の元金が大幅に減少し、その後の返済の失敗リスクも低くなります。

今回は、

  • 個人再生が失敗する具体的なケース
  • 失敗を避けるための注意点

について解説します。

個人再生に関してはこちらの記事をご覧ください。

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1、個人再生の成功率はどれくらい?個人再生失敗のリスク

総数

廃止

不認可

取消し

棄却・却下

取下げ

小規模個人再生

11473

356

22

25

440

給与所得者等再生

813

19

49

平成30年司法統計(第109表)に基づいて作成

上の表は、裁判所が公表している司法統計から、個人再生の申立件数と失敗に該当しうる案件の終結件数をまとめてみたものです。

この表のうち、取下げは必ずしも失敗ではないものも含まれている可能性があることを考えれば、個人再生の成功率は95%近いことになりますから、とても成功率の高い手続きであるということができるでしょう。
以下では、個人再生が失敗になってしまうケースを5つの場面に分けて解説していきます。

2、個人再生の失敗|再生の申立てが認められない

個人再生の手続きを利用するためには、法律が求めている要件(条件)を満たした申立てを行う必要があります。

(1)個人再生の申立てに失敗する4つのパターン

個人再生の申立てに失敗する(申立てが却下・棄却されてしまう)主なパターンとしては次のような場合があります。

  • 申立書が正確に記載されていない(必要な書類が足りない)
  • 借金総額が5000万円を超えるケースでの申立て
  • 手続き費用を納付できなかった場合(分割予納金の支払いに遅れた場合)
  • すでに債権者から破産を申し立てられている場合

(2)個人再生の申立てに失敗しないための対応策

上で挙げたケースの大半は、個人再生についての知識が不足していることが原因で起こるものです。
特に、個人再生は申立ての際に裁判所に提出する書類も多く、法律知識のない人が準備した場合には、書類の不備などが起こりやすいといえます。

また、分割予納金をはじめとする手続き費用の納付についても、その重要性を正しく認識できてないことが原因で「1日くらい遅れても大丈夫」と思い込んでしまうこともあるかもしれません。

しかし、分割予納金の納付は、再生計画認可後の分割返済の履行テストも兼ねているため、「きちんと返済できていない」ことは、手続き開始の判断に不利になることがあります。

したがって、個人再生の申立てに失敗しないためには、個人再生に詳しい弁護士に依頼し、その指示にしたがって申立て準備を進めるのが最も良いでしょう。

3、個人再生の失敗|再生計画案の提出が締め切りに間に合わない

個人再生の手続きは、今後の分割返済の内容を定めた再生計画案を裁判所に認可してもらうための手続きであるといえます。
抱えている借金を免除してもらう効果も再生計画の認可に基づいて生じるものだからです。

その意味で、再生計画は個人再生において最も重要なものですが、債務者自身が作成しなければならない点に注意する必要があります。
裁判所は、あくまでも債務者が作成した再生計画(案)について「認可・不認可の決定」を下すだけになります。

再生計画案は、個人再生手続きが開始された後の裁判所が指定する期日(申立てから18週目程度)までに提出しなければなりません。
この指定された期日を1日でも遅れてしまったときには、開始された個人再生手続きは必ず「廃止(途中終了)」となるので注意しましょう。

4、個人再生の失敗|再生計画案を債権者に否決されてしまう

個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つのやり方がありますが、ほとんどのケースでは小規模個人再生が選択されています。
小規模個人再生の方が返済総額が少なくなることが多いからです。

しかし、小規模個人再生においては、裁判所が再生計画を認可する前提として、再生計画案に対する債権者の同意が必要となることに注意する必要があります。

(1)債権者による同意の要件

小規模個人再生において再生計画案に対する債権者の意思は、「書面決議」によって確認されます。
この書面決議の際に、「債権者の過半数の不同意」もしくは「債権額の1/2を超える不同意」があったときには、再生計画は「否決」という取り扱いになります(したがって、積極的に賛成している債権者が過半数でなければならないというわけではありません)。

(2)書面決議で特に注意すべきケース

上で触れた書面決議に関するルールでは、特に「債権額の1/2を超える不同意」があったときには、他の多数の債権者が同意している場合でも否決となることに注意する必要があります。
たとえば、債権者が5人いたとしても、債権額最大の債権者が全体の債権額の過半数を超えているときには、最大債権者1人の不同意で再生計画案は否決されてしまうということです。

また、少額債権者が多数いるときには、「毎回(月)の返済額(返済総額)が少なすぎる」ことが理由で、不同意に回られるリスクがないわけではありません。
個人再生では、すべての債権者は同じ割合での債権の減額を求められるので、少額の債権者が回収できる金額は「ほんのわずか」になってしまうこともあり得るからです。

以上のように、実際の再生計画案は、借金の状況・債務者自身の家計状況に応じた「最善の計画」を作る必要がありますから、個人再生の経験の豊富な専門家の助言なしに作成することは難しいといえるでしょう。

5、個人再生の失敗|裁判所から再生計画案を認可してもらえない

債権者による書面決議において再生計画案が可決された場合でも、再生計画案に問題があるときには、裁判所が「不認可」の決定を下す可能性があります。
裁判所によって再生計画案が不認可とされる場合としては、次のようなケースが考えられます。

  • 財産隠しなど問題のある行為が発覚した場合
  • 再生計画で示された返済総額が清算価値を下回っていることが発覚した場合(計算違いなど)
  • 再生計画案の提出(書面決議後)に事情が変わった場合(勤務先が突然倒産したなど)
  • 上の場合のほか、履行可能性が疑われる事情がある場合(分割履行テストにおける滞納・遅延など)

とはいえ、実際に再生計画が不認可となる件数は、個人再生全体のなかでは、ほんのわずかに過ぎません(平成30年の司法統計によれば、再生計画不認可となったのは全体の0.2%に過ぎません)

【参考】平成30年司法統計(第109表)

6、個人再生の失敗|分割返済ができなくなってしまう

個人再生は、裁判所から再生計画を認可してもらったとしても、それで終わりではありません。
債務者自身が、再生計画で定めた内容にしたがって決められた金額の分割返済を完了しなければ、借金の一部免除の効力は消滅してしまうからです。
その意味で、再生計画の履行を滞らせてしまった場合も個人再生は失敗ということになってしまいます。

しかし、再生計画の履行が難しくなったときには、裁判所に申立てをすることで「再生計画の変更(リスケジュール)」を認めてもらうことができます。
再生計画の変更を認めてもらえれば、分割返済の期間を最大で2年間延長することができます。

返済期間が延びれば、毎月の返済額を減らすことができるので、多少の事情変更であればこれで対応できる場合が多いでしょう。
リスケジュールでも対応できないほどの事情変更があった場合には、自己破産や再度の個人再生申立てといった方法で対応することもあります。

7、個人再生に失敗しないためには、弁護士に依頼するのが一番確実

個人再生における失敗は、債務整理(個人再生)の経験が乏しいことを原因とするものがほとんどです。
書類の不備などはもちろん、再生計画の決議・認可・履行に関する失敗も、債務整理についての専門知識・スキルがないために、「債務者にだけ都合の良い再生計画」や「背伸びしすぎの再生計画」を立ててしまった場合がほとんどといえるでしょう。

また、法律で定められたルールを正しく理解していなければ、清算価値の計算間違い、財産の申告漏れが原因で、手続き上の不利益を受けることも考えられます。
したがって、個人再生を成功させる(失敗させない)ためには、個人再生の実務に詳しい弁護士に相談・依頼し、その助言・指示にしたがって対応するのが一番確実であるといえます。

実際に、ほとんどの裁判所は、個人再生は弁護士に依頼して手続きを行うように強く指導しています。

まとめ

個人再生は、借金の多くを免除してもらえる代わりに、複雑な手続きを確実に実行する必要のある点で難易度の高い手続きといえます。
借金で困っている人には、「債務整理の費用を節約したい」と弁護士に依頼せずに、自分で手続きを行うことを考える人もいると思いますが、あまりおすすめできません。
個人再生の本人申立ては失敗してしまう確率がかなり高いからです。
また、本人申請の場合には、「個人再生委員」が必ず選任されることになるため、個人再生委員の報酬が必要になり、結局手続きに必要な費用が高額になってしまいます(全件選任の東京地裁でも弁護士申請では予納金が安くなります)。
このように本人申立てでも費用面のメリットがほとんどない以上は、個人再生を失敗したくないという人は、弁護士に依頼するのがやはり一番安心なのではないでしょうか。

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