交通事故で胸部を強く打つと肋骨を骨折し、後遺症が残ってしまうことがあります。
肋骨は骨折しやすいと言われていますが、一定期間の治療を終えても痛みが残ったり、骨が変形してしまったなどの後遺症が残存するときは、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
後遺症が残ると、その後もずっとつらい思いをすることになりますので、賠償金については適正な金額を獲得することが大切です。
そこで今回は、
- 肋骨骨折の後遺症で認められる後遺障害等級
- 肋骨骨折で適正な後遺障害等級を獲得する方法
- 肋骨骨折の後遺症で保険会社と示談交渉する際の注意点
などについて、交通事故の損害賠償請求の実務に精通したベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説していきます。
この記事が、交通事故による肋骨骨折が完全に治らず、後遺障害に関する損害賠償請求でお困りの方の手助けとなれば幸いです。
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目次
1、後遺症の問題を考える前に~肋骨骨折の基礎知識
後遺障害に関する賠償金を適切に請求するために、まずは肋骨骨折の基本的な知識を押さえておきましょう。
(1)肋骨骨折とは
肋骨とは、心臓や肺、さらには肝臓や脾臓、腎臓の一部を「かご」のような形で覆っているもので、左右12本ずつの骨で構成されています。
そのいずれかの骨を骨折することが「肋骨骨折」に当たります。
骨にヒビが入る程度の症例も多いですが、場合によっては折れた骨によって心臓や肺など内部の臓器が損傷することもあります。
そのため、交通事故で胸部に強い衝撃を受けたときは、早急に治療を受けることが重要です。
(2)症状
肋骨を骨折すると、その部位に強い痛みを感じます。
- 咳
- くしゃみ
- 深呼吸
をするだけでも強く痛みます。皮下出血や腫れが見られることもあります。
骨折だけでも強く痛みますので、加えて内臓を損傷していても素人では気づかないことが少なくありません。「ヒビが入っただけだろう」と安易に考えず、早急にレントゲンなどの検査を受けなければ生命に関わることもあります。
(3)発症する原因
交通事故では、胸部を強く打った場合だけでなく、背中を強く打つことも肋骨骨折の原因となります。
その他にも、転倒や高所からの転落などさまざまな原因が考えられます。
机やタンスなどの角で胸部を打った場合や、野球・ゴルフなどで上半身を急激にひねった場合にも肋骨骨折が生じることがあります。
また、高齢者や骨粗鬆症の方では、咳をするだけで肋骨を骨折するケースも見受けられます。
(4)治療方法
骨折の程度が比較的軽い場合は、ギプスやバストバンドなどで骨折部位を固定した上で安静にするという保存的治療によって、骨が結合するのを待ちます。
- 骨折の程度が重い(または複数の箇所を骨折している)場合
- 内臓を損傷している場合
などでは、手術による外科的治療が行われることもあります。
(5)治療期間の目安
肋骨の骨折は、他の部位の骨折よりも早期に回復しやすい傾向にあると言われています。
骨の折れ方や個人の体質などによって差がありますが、最短3週間程度で骨が結合することもあるようです。
ただ、通常はやはり1~2ヶ月はできる限り安静にする必要があるでしょう。
その後にリハビリも必要なので、全治まで3ヶ月ほどは見ておいた方がよいといえます。
後遺症が残る場合には、骨折の程度もある程度重いと考えられますし、長期のリハビリも必要となるので、症状固定の診断を受けるまでに6ヶ月程度は見ておくべきです。
2、肋骨骨折で生じうる具体的な後遺症
肋骨の骨折自体が治っても、後遺症が残ることがあります。
内臓を損傷した場合には重大な後遺症が残ることもありますが、ここでは肋骨骨折自体から生じうる後遺症についてご説明します。
(1)骨の変形や欠損が残る(変形障害)
肋骨を骨折すると、骨折した部位が変形した状態で結合してしまったり、一部の骨が欠損したままになることがあります。痛みが残る場合もあれば、痛みはなく変形だけが残ることもあります。
骨の変形や欠損が残る後遺症のことを「変形障害」といいます。
(2)痛みやしびれが残る(神経症状)
肋骨骨折自体はきれいに治っても、患部やその周辺に痛みやしびれが残ることがあります。
この症状は、骨折によってその部位または周辺の神経を損傷したり、圧迫することによって生じると考えられています。
痛みやしびれが残る後遺症のことを「神経症状」といいます。
3、交通事故による肋骨骨折の後遺症で認められる後遺障害等級
肋骨骨折によって生じうる2種類の後遺症をご紹介しましたが、後遺症があれば必ずしも損害賠償の対象となるわけではありません。
後遺症に関する賠償金を受け取るためには、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
後遺障害等級とは、交通事故による負傷で後遺症が残った被害者に対して公平かつ適正な賠償を実現するために、
- 障害の部位
- 内容
- 程度
に応じて14段階に分類した等級のことです。
1級が最も重い後遺障害で、賠償金も高額となります。14級は最も軽い後遺障害で、賠償金は最も低額です。
以下、交通事故による肋骨骨折で後遺症が残った場合に何級の後遺障害に認定される可能性があるかを解説します。
(1)変形障害がある場合
肋骨骨折による変形障害で認定される可能性のある後遺障害等級は、以下のとおりです。
後遺障害等級 |
障害の内容 |
12級5号
|
ろく骨に著しい変形を残すもの
|
ここにいう「著しい変形」とは、裸の状態を目で見て
- 肋骨の変形
- 欠損
が明らかに確認できる状態を意味します。
そのためエックス線写真によって確認できる変形や欠損が生じていても、目で見て分からない程度の場合は後遺障害等級には認定されません。
(2)神経症状がある場合
肋骨骨折による神経症状で認定される可能性のある後遺障害等級は、以下のとおりです。
後遺障害等級 |
障害の内容 |
12級13号 |
局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号
|
局部に神経症状を残すもの
|
12級と14級の違いは、痛みやしびれの程度の違いというよりも、他覚的所見があるかどうかがポイントとなります。
レントゲンなどの画像検査や神経学的検査で他覚的所見があり、神経症状の存在が医学的に「証明」できる場合は、12級に認定される可能性が高いです。
他覚的所見がない場合でも、治療状況や症状の経過によって神経症状の存在を医学的に「説明」可能な場合は、14級に認定される可能性があります。
4、肋骨骨折の後遺症で受け取れる賠償金の種類と相場
交通事故の損害賠償金は、「傷害」に関する部分と、「後遺障害」に関する部分に分けられています。
傷害に関する賠償金は、
- 治療費
- 入通院慰謝料
- 休業損害
などです。後遺障害に関する賠償金は、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の2つです。
後遺障害等級の認定を受けると、後遺障害に関する賠償金を受け取ることができるようになります。
ここでは、肋骨骨折の後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益について、それぞれ相場をご紹介します。
(1)後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故で後遺症が残ったために、その後の日常生活や仕事で何らかの制限を受けることで被る精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことです。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級に応じて定められています。ただし、慰謝料の算定基準には
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
の3種類があり、以下の表のように金額が大きく異なっています。
任意保険基準は各保険会社で独自に定められた基準であり、公開されていませんので、この表では推定値を掲載しています。
後遺障害等級 |
自賠責保険基準 |
任意保険基準 |
弁護士基準 |
12級 |
94万円 |
100万円 |
290万円 |
14級
|
32万円
|
40万円
|
110万円
|
後ほど詳しくご説明しますが、任意保険会社は当然ながら任意保険基準による慰謝料額を提示してきます。
弁護士基準で請求できる方法を知らずに示談に応じてしまうと、損をする可能性が高いので注意が必要です。
(2)後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害の影響で労働能力が制限されて将来の収入が減少するのが通常であることから、事故に遭わなければ将来に得られたであろう利益との差額が支払われる賠償金のことです。
後遺障害逸失利益の金額を求めるには、次の計算式を用います。
【基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数】
基礎収入額とは、基本的には事故に遭う前の年の年収額のことですが、専業主婦や若年者などのケースでは「賃金センサス」という統計上の平均年収で計算されることもあります。
労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて数値が定められています。肋骨骨折の後遺障害では、以下のようになっています。
後遺障害等級 |
労働能力喪失率 |
12級 |
14% |
14級
|
5%
|
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除する計算をするために定められている数値のことです。
逸失利益では将来の利益が前払いされるため、その間の利息を控除するためにライプニッツ係数を掛けることとされています。
では、肋骨骨折の後遺障害逸失利益を実際に計算してみましょう。
【事例】
- 症状固定時30歳
- 事故前年の年収は450万円
- 交通事故による肋骨骨折で神経症状が残った
- 後遺障害等級第12級13号に認定された
(計算式)
基礎収入額450万円×労働能力喪失率14%×ライプニッツ係数22.167=1,396万5,210円
このケースでは、1,396万5,210円の後遺障害逸失利益を請求できます。
5、肋骨骨折の後遺症で後遺障害等級認定を受ける方法と注意点
後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益が認められると、高額の賠償金を受け取れる可能性があります。
そのため、後遺症が残ったら適切な後遺障害等級の認定を受けることが非常に重要となります。
そこで次に、肋骨骨折の後遺症で後遺障害等級認定を受ける方法と注意点について、流れに沿って解説していきます。
(1)症状固定するまで治療を続ける
まずは、完治を目指してしっかりと治療を受けましょう。
体が元の状態に戻るに越したことはありません。ある程度治療を続けても症状がそれ以上改善しない状態と医師が判断したら、「症状固定」の診断を受けます。
治療継続中に保険会社から、「そろそろ症状固定と思われるので、治療費の支払いを打ち切りたい」と打診されることがありますが、安易に応じてはいけません。
症状固定の時期を決めるのは医師です。保険会社は、一般的な治療期間の目安を参考にして打診しているに過ぎません。
保険会社から治療費打ち切りの打診を受けたら、主治医または弁護士に相談して、治療費支払いの継続を求めましょう。
(2)後遺障害診断書を受け取ったら内容を確認する
医師が症状固定と判断したら、「後遺障害診断書」が発行されます。
後遺障害診断書は、後遺障害等級認定の審査資料の中で最も重要な資料となりますので、受け取ったら記載内容を確認しましょう。
医師に訴えた自覚症状がすべて記載されているか、検査結果が漏れなく正確に記載されているか、今後予想される症状の経過として不利なことが記載されていないか、などを確認するのです。
もし、記載内容が不十分であったり、不利な内容が記載されている場合は、後遺障害診断書の訂正や再発行を求めるべきです。よく分からない場合は、弁護士に相談した方がよいでしょう。
(3)保険会社に任せず被害者請求で申請する
適切な内容の後遺障害診断書を受け取ったら、いよいよ後遺障害等級認定の申請を行います。申請方法には、次の2種類があります。
- 事前認定:加害者側の保険会社に手続きを一任する方法
- 被害者請求:被害者自身が認定申請を行う方法
事前認定では、保険会社の担当者は基本的な資料しか収集しないため、後遺障害等級の認定結果が不利になる可能性があります。
それに対して、被害者請求では自分で自由に資料を集めて提出できるので、有利な認定結果が期待できます。事前認定の方が楽ではありますが、適正な後遺障害等級を獲得するためには被害者請求の方が望ましいといえます。
(4)認定結果に納得できない場合は異議申立てをする
後遺障害等級の認定結果に納得できないときは、異議申し立てをして再審査をしてもらうことが可能です。
ただし、一度下された認定結果を覆すためには、
- 再検査を受けたり
- 医師に意見書を書いてもらったり
- 自分で後遺症の内容や生活状況などをまとめた陳述書を作成する
などして、新たな資料を提出する必要があります。
そのため、異議申し立ては被害者請求の方法で行うほうがよいでしょう。
当初の認定申請を事前認定の方法で行った場合でも、異議申し立ては被害者請求で行うことができます。
6、肋骨骨折で保険会社と示談交渉する際の注意点
後遺障害等級の認定を受けたら、保険会社と示談交渉を行います。通常は、まず保険会社から示談案として賠償金の額が提示されます。
示談案を提示されたら、以下のポイントを確認しましょう。
(1)後遺障害等級が適切に認定されているか
保険会社は、認定された後遺障害等級に基づいて示談案を提示してきますが、本当にその等級が適切かどうかを改めて検討しましょう。
肋骨骨折の場合、変形障害は目視で判別しやすいですが、神経症状については判断が難しいケースが多くなっています。
12級と14級、14級と非該当の差は微妙で細かいものであることが多いので、異議申し立てによって認定が覆ることも少なくありません。
異議申し立ては何度でもできますし、示談案の提示を受けた後でもできます。
等級に納得できない場合は、必ず異議申し立てを行いましょう。
(2)慰謝料が適正な基準で計算されているか
実は、ほとんどのケースで、保険会社が提示する慰謝料額は適正とは言いがたいものとなっています。
その理由は、任意保険基準で慰謝料額が算定されているからです。
先ほどご紹介した3種類の慰謝料算定基準の中で、正当な法的根拠に基づくものは弁護士基準だけです。
任意保険基準は、保険会社の利益を確保のため、スピーディーな賠償を実現するために金額が不当に減額されているのです。
弁護士基準による慰謝料を受け取るためには基本的には裁判をする必要がありますが、弁護士に依頼すれば保険会社も弁護士基準を前提に示談交渉に応じることが多いす。
(3)逸失利益が不当に減額されていないか
保険会社は、肋骨骨折の逸失利益については、
- 変形障害の場合は、事務職などでは労働能力に影響がない
- 神経症状の場合は、やがて寛解するか慣れることによって労働能力が回復する
などの理由で、逸失利益を不当に減額してくることがよくあります。
たしかに、裁判でもこれらの主張が正当なものとして認められることもありますが、保険会社の示談案では、正当な範囲を超えて大幅に減額されている可能性が高いです。
不当に減額されている場合は、実際の症状や仕事への支障を具体的に立証して保険会社と交渉することが必要です。
7、肋骨骨折の後遺症でお困りのときは弁護士に相談を
肋骨骨折の後遺症で適切な賠償金を獲得するためには、主に以下の点がポイントとなります。
- 適正な後遺障害等級を獲得すること
- 保険会社の示談案が適正か判断すること
- 保険会社との示談交渉を有利に進めること
- 示談交渉がスムーズに進まない場合は裁判をすること
いずれのポイントにおいても、専門的な知識が必要となります。そのため、後遺症が残ったときには法律の専門家である弁護士に相談することが得策といえます。
弁護士に相談すれば、重要なポイントを押さえて示談交渉を進めることもできるでしょう。
さらに、弁護士に損害賠償請求を依頼すれば以下のメリットが得られます。
- 後遺障害等級認定における被害者請求の手続きを代行してもらえる
- 弁護士基準で慰謝料を請求してくれる
- 保険会社との交渉を代行してもらえる
- 裁判をする場合も複雑な手続きを任せることができる
その結果、高額の賠償金を獲得できる可能性が高まるといえます。
まとめ
肋骨は骨折しやすい部位であるため、骨折しても深刻に受け止めない方も少なくありません。
しかし、心臓や肺などの内臓を損傷している可能性もあるので、交通事故で胸部や背部を強打したら、必ず直ちに病院で検査を受けてください。
十分な治療を受けて、それでも後遺症が残った場合は、本記事を参考にして適正な賠償金の獲得を目指しましょう。
お一人では難しいこともあるかと思いますので、困ったときはお気軽に弁護士に相談することをおすすめします。