自損自弁とは、交通事故においてお互いに損害が発生した場合にとられる解決方法です。
自損自弁はわかりやすい解決方法ですが、過失割合や損害額によっては、相手からの自損自弁の提案を受け入れると損になってしまうことがあります。そのため、本当に自損自弁を受け入れてよいのか、弁護士とともに十分検討することが大切です。
今回は、
- 自損自弁のメリットとデメリット
- 自損自弁で得した事例
- 自損自弁の示談書の書き方
などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
他にも、自損自弁によって双方が得するケースなどについても紹介します。この記事が、交通事故の示談を自損自弁で進めようか迷っている方の参考になれば幸いです。
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1、自損自弁とは
まずは自損自弁の概要について解説します。
自損自弁とよく比較される場合として、「過失割合50:50」のケースがありますので、両者の違いについても併せて押さえておきましょう。
(1)自損自弁とは自分の損害を自分で被ること
自損自弁とは、交通事故において両者に損害が発生した場合に、「自分に発生した損害をそのまま自分が被る」(=相手方には請求しない)という考え方です。
例えば、Aの車とBの車が交通事故で互いに衝突し、Aに50万円、Bに30万円の損害(車の修理費)が生じたとします。
このとき、AB間での精算を行わず、Aが50万円、Bが30万円の修理費をそのまま負担するというのが、自損自弁の考え方になります。
(2)過失割合50:50の場合との違い
自損自弁は、交通事故の両当事者が「痛み分け」の解決を図るという意味合いがあります。
この意味で、自損自弁は「過失割合50:50」のケースに似ているといえるでしょう。
しかし、自損自弁と「過失割合50:50」は、全く異なる解決方法です。
「過失割合50:50」とは、「両者に生じた損害を合計したうえで折半する」という考え方です。
これを前述の例(Aに50万円、Bに30万円の損害)に当てはめると、ABの損害の合計80万円を両者で折半するので、ABそれぞれが40万円の損害を負担します。
しかし、実際にはAに50万円、Bに30万円の損害が生じていることから、BからAに対して10万円の支払いが発生します。
自損自弁の場合は精算が生じなかったことと比較すると、自損自弁と「過失割合50:50」が全く異なる解決方法であることがわかるでしょう。
2、自損自弁のメリット
自損自弁の解決を行うメリットとしては、以下のものが考えられます。
(1)双方の損害額が少ない場合、早期解決を目指せる
示談交渉において過失割合に基づく解決を行う場合、損害額と過失割合についての交渉をまとめるのに長期の時間がかかる可能性があります。
損害額と過失割合の交渉は非常に揉めやすく、場合によっては調停や訴訟に移行することもしばしばです。
一方、自損自弁であれば、自分に発生した損害は自分で負担するというシンプルな考え方なので、損害額や過失割合についての追加の交渉が生じることがありません。
双方の損害額が少ない場合には、損害額や過失割合を計算して、互いにすり合わせるという面倒なステップをわざわざ踏む意味がほとんどありません。
この場合、手間を省くために自損自弁とすることが双方の利益となるでしょう。
自損自弁は、早期解決につながりやすいのです。
(2)自分の過失が大きければ得になりやすい
自損自弁は、自分側の過失が大きい場合に選択するとよい解決方法です。
例えば、自分に8割、相手に2割の過失があり、自分の損害が50万円、相手の損害が50万円であるケースを考えます。
実際の過失割合に従った示談を行う場合には、自分が80万円、相手が20万円の損害を負担します。
この場合、自分は相手に対して30万円を支払わなければなりません。
一方、自損自弁であれば自分が負担する損害は自分に生じた50万円だけであり、精算は生じません。
自分側の過失割合が大きいケースでは、自損自弁による解決の方が得になりやすいといえます。
(3)自分の損害が相手より小さい場合も得になりやすい
自分に発生した損害が相手より小さい場合にも、自損自弁の解決方法を選択すると特になります。
例えば、自分に5割、相手に5割の過失があり、自分の損害が20万円、相手の損害が80万円であるケースを考えます。
過失割合50:50に基づく示談を行う場合には、自分と相手の負担額はそれぞれ50万円です。
この場合、自分は相手に対して30万円を支払わなければなりません。
しかし、この場合に自損自弁をすると、自分は自分に生じた20万円の損害だけを負担すればよく、精算は生じないことになります。
このように、自分に生じた損害が相手より小さいケースでは、自損自弁の方が得になりやすいのです。
実際に自損自弁と過失割合による解決のどちらが得になるかは、過失割合と損害額の両方を考慮した具体的な金額を計算してみなければわかりません。自損自弁を選択する前に、正確なシミュレーションを行って検討することが大切です。
(4)自損自弁でも過失割合による解決でも同じくらいの負担になる
ざっくりと負担額を計算して、自損自弁でも過失割合による解決でもあまり結果が変わらない場合があります。このような場合には、手続きを簡単にするためお互いに自損自弁の合意に応じる場合があります。
ただし、自損自弁は良くも悪くも、損害についての厳密な議論を省いて解決にたどり着くという側面があり、それで双方が納得するかどうかはケースバイケースといえるでしょう。
3、自損自弁のデメリット
自損自弁は、過失割合による解決と比べて損になるケースもあります。
(1)自分の過失が小さければ損になりやすい
自損自弁の一つめのデメリットは、自分の過失割合が小さいと過失割合による解決よりも損になりやすいということです。
例えば、自分に2割、相手に8割の過失があり、自分の損害が50万円、相手の損害が50万円であるケースを考えます。
実際の過失割合に基づくと、自分が20万円、相手が80万円の損害を負担することになります。
この場合、自分は相手から30万円を受け取ることができるのです。
自損自弁の場合には、自分に生じた50万円の損害を負担しなければならず、相手から支払いを受けることはできません。そのため、自分の過失割合が小さいケースでは、自損自弁は過失割合による解決よりも不利になりやすいのです。
(2)自分の損害が相手より大きい場合は損になりやすい
もう1点のデメリットとして、自分に生じた損害が相手よりも大きい場合には、過失割合による解決よりも損になりやすいといえます。
例えば、自分に5割、相手に5割の過失があり、自分の損害が80万円、相手の損害が20万円であるケースを考えます。
過失割合50:50に基づく解決を行う場合、自分と相手の負担額はそれぞれ50万円です。
この場合、自分は相手から30万円を受け取ることができます。
これに対して自損自弁の場合には、自分に生じた80万円の損害をそのまま負担しなければならず、相手からの支払いは受けられません。
そのため、自分に生じた損害が相手よりも大きい場合、自損自弁は過失割合による解決よりも損になりやすいので注意しましょう。
4、自損自弁の方が得になる事例
自損自弁と過失割合による解決のどちらが得になるかを判断するには、実際に両方のケースで自分の負担金額がどのくらいになるのかを計算して比較する必要があります。
前の項目でいくつかのモデルケースを紹介しましたが、以下ではもう少し複合的な事例について、自損自弁と過失割合による解決のどちらが得になるかを計算してみましょう。
<事例>
- 過失割合は自分70:相手30
- 自分に発生した損害は65万円
- 相手に発生した損害は35万円
この事例では、過失割合は自分の方が多いので、自損自弁が有利になるケースに思われます。
一方で、実際に発生した損害も自分の方が大きいので、逆に自損自弁が不利に働くケースにも思われます。
果たして自損自弁は得なのでしょうか、それとも損なのでしょうか。
この事例で、自分と相手に生じた損害の合計は100万円です。
過失割合に基づく解決を図る場合、これを70:30で分担するため、自分が70万円、相手が30万円の損害を負担します。
実際に生じた損害は自分が65万円、相手が35万円なので、自分が相手に対して5万円を支払うことにより精算完了となります。
一方、自損自弁の場合は、自分が65万円、相手が35万円の損害をそのまま負担するため、精算が行われることはありません。
上記の事例では、5万円の支払いを免れることができる分、自損自弁の方が僅差で得という結論になりました。
5、自損自弁の示談書の書き方
自損自弁を内容とする示談に双方が合意した場合、その旨を示談書の形でまとめておきましょう。
自損自弁の示談書に記載すべき事項は、おおむね以下のとおりです。
(1)当事者の氏名
示談書に基づく権利義務の主体を明確化するため、当事者の氏名を明記しておきましょう。
「○○(以下「甲」)および〇〇(以下「乙」)は、・・・・・・以下のとおり合意する」
などと、示談書の冒頭に記載します。
(2)車両番号、事故発生日時、事故発生場所
示談をした事故を特定するために、車両番号・事故発生日時・事故発生場所を記載しておく必要があります。
「・・・甲の運転する車両(車両番号△△)と乙の運転する車両(車両番号□□)の間で●年●月●日●時●分ごろに●県●市●町●-●付近交差点において発生した衝突事故(以下「本件事故」)に関して、・・・以下のとおり合意する」
と冒頭書きに盛り込んでおきましょう。
(3)自損自弁とする旨
示談の中心的な内容として、双方の損害を自損自弁とする旨を記載しておきます。
「本件事故に関して甲および乙に生じた損害の一切は、各自の負担とする」
なお、純粋な自損自弁とする場合は、双方の損害額を記載する必要はありません。
(4)示談書記載の内容以外の権利義務が存在しないことの確認
示談をもって交通事故についての精算は完了となりますので、示談書記載の内容を超えて互いに請求を行わないことを確認する旨の文言を記載しておくことが必要です。
具体的には、次のように記載するとよいでしょう。
「甲および乙は、本件事故に関し、本示談書に定めるほか、甲乙間に何らの債権債務関係がないことを確認する」
6、自損自弁の示談交渉は弁護士に相談するのがお勧め
交通事故の示談交渉で自損自弁を提示された場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
交通事故の被害者が、自損自弁について弁護士に相談するメリットは以下のとおりです。
(1)被害者にとって有利になるように交渉を進めてくれる
弁護士は、自損自弁と過失割合による解決を具体的に比較して、本当に自損自弁を受け入れてよいかアドバイスを行います。
被害者の法律上の権利内容を踏まえて、相手方に対して専門的な視点から適切な主張をしてくれるでしょう。
(2)自損自弁に納得できないなら調停、訴訟の手続きを取ってくれる
相手方が自損自弁を強く主張していても、納得できない場合は受け入れる必要はありません。この場合、調停や訴訟に移行して強く争うことを検討しましょう。
弁護士は調停や訴訟の手続きに精通しているため、大いに頼りになることでしょう。自分が裁判所に行けない場合でも、弁護士が代わりに出廷して、適切に手続きを進めてくれます。
(3)相手方との交渉を一括して行ってくれる
弁護士は、相手方との示談交渉を代わりに進めてくれます。交通事故のプロである任意保険会社が示談交渉の相手であっても、弁護士に任せておけば安心です。
また、依頼者が交渉の矢面に立つ必要がないため、精神的負担が少なくなるメリットもあります。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は、自損自弁について解説しました。
自損自弁と過失割合に基づく解決のどちらが有利かは、ケースバイケースです。双方のケースについて、正確なシミュレーションを行って比較しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、交通事故に巻き込まれた方のために、交通事故専門チームが親身になって対応いたします。交通事故の示談交渉をどう進めてよいかわからないという方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。