車検切れの車に乗るリスク|車検切れの罰則などを弁護士が解説

車検切れ

車検切れの車に乗るリスクをしっかり理解していますか?

忘れた頃にやってきて、車を所有している方を悩ませる「車検」。 
車検ってどうしてこんなに高額な費用がかかるのでしょうか。

こんなに費用がかかるなら車検切れのままで乗り続けちゃおうかな、と思いたくなるような金額です。

今回は、

  • 車検が必要な理由
  • 車検を受けないとどういう事態が待ち受けているのか

そうした疑問にお答えいたします。この記事が皆さまのお役に立てば幸いです。

交通事故の加害者全般について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

1、車検切れの車に乗るリスクを考える前に|車検とは何か

車検切れの車に乗るリスクを考える前に|車検とは何か

まず、そもそも車検とは何なのか。車検の基礎知識をまとめてみました。

(1)車検とは

「車検」とは、「自動車検査登録制度」の略称で、道路運送車両法(以下、法という)に基づき、自動車に不具合がないかなどを調べる自動車の検査制度のことをいいます。

「車検」には、「新規検査(法58条・59条)」、「継続検査(法62条)」、「構造等変更検査(法67条)」の3種類があります。

ただ、「新規検査」は販売店などが納車前に受ける検査であることから、通常、「車検」という場合「継続検査」のことを意味しています。

「車検」を受け、自動車が保安基準に適合すると認められた場合は、新たな有効期限が記入された自動車検査証(車検証)の交付を受けます。

なお、車検証の有効期限は、通常の自家用自動車の場合「2年」です(初めて車検証の交付を受ける場合は「3年」)。

「車検」を受けることができるのは有効期限満了日の1か月前からです。

(2)車検費用はいくらかかるか

車検にかかる費用は、大きく「法定費用」、「点検・整備料金」、「その他の付帯サービス」の3つにわけることができます。

「法定費用」は、自動車重量税、自賠責保険、検査手数料の合計額で、車種ごとに合計額が決まります。

「点検・整備料金」は、基本点検技術料、整備技術料、部品・油脂代などで構成されており、車検を受ける場所によって金額に変動があります。

「その他の付帯サービス」は、下回り塗装料、保安確認検査料、検査代行手数料、故障診断料、引取料・納車料などによって構成されています。

以上から、車種や車の状態によって車検にかかる費用は変動するといえます。

【ディーラーで車検を受ける場合の車検費用例】

車種

法定費用

車検基本費用

部品交換費用

合計

普通車(1500㏄)

5万円程度

4万円~10万円程度

コンディションによる

10万円程度~

軽自動車

3万円~3万5000円程度

4万円~7万円程度

コンディションによる

8万円~10万円程度

2、車検切れになるとどうなるのか

車検切れになるとどうなるのか

車検切れとは、正確には、車両検査証の有効期限が過ぎた状態のことをいいます。
車検が切れの車を所有しているだけでは何ら問題ありませんが、車検切れの車で公道を運転すると、次の処分や刑罰を受けるおそれがあります。

(1)車検切れの車で公道を運転すると?

車検切れの車で公道を運転すると道路運送車両法違反となります。

許可なく車検切れの車で公道を走行した場合の法定刑は、「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(刑罰)」(法108条)です。
加えて、違反点数6点を付加され、過去の違反歴がなくても、30日間の免許停止処分を受けます(行政処分)。過去に違反歴がある場合には、一発で免許取消になることもありえます。

(2)ほとんどが自賠責保険切れにもなる

また、どの車も「新規検査」時に自賠責保険に加入させられ(義務)、車検証の有効期限満了日から1か月ほど余裕を持たせて契約期間が設定されています。

しかし、その期間を過ぎると無保険車となり、無保険車を運転すれば自動車損賠賠償保障法違反となり、法定刑は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

加えて、違反点数6点を付加され、過去の違反歴がなくても、30日間の免許停止処分を受けます(行政処分)。過去に違反歴がある場合には、一発で免許取消になることもありえます。

もっとも、同時に車検切れの違反もしている場合、違反点数の高い違反の点数のみが適用されるため、違反点数的には6点が付加されることになります(刑事責任は併合罪になりますので、法定刑は「1年6月以下の懲役または80万円以下の罰金」となります)。

3、車検切れ後に再び車検を受けるには

車検切れ後に再び車検を受けるには

もちろん、車検が切れた後でも車検を受けることは可能です。

ただし、車検を受けようと思って、焦って車検切れあるいは無保険の車を運転してディーラーに行ったりしようとすると、先ほどご紹介した刑罰や行政処分を受けるおそれがありますし、何より車検を受けていない車は他車と比べて整備不良などで事故を起こす危険が高くなりますから、絶対に運転してはいけません。

では、どうすればいいのかといえば、

  1. 仮ナンバーを取得する
  2. 車検業者に車を引き取りにきてもらう

の2通りが考えられます。

(1)仮ナンバーを取得する

仮ナンバーは、皆さんも一度は見たことがあると思いますが、白の簡易なナンバープレートに赤い斜線が入ったものです。

市役所・区役所などで申請、発行してもらえます。事前に申請に必要なものを確認しましょう。

特に、自賠責保険の契約期間が切れている場合は、再度契約しなおし、有効な保険証を持参する必要があります。

なお、仮ナンバーには有効期限が決められていますから、有効期限内に車検の手続をしましょう。

また、決められた運転経路以外を運転してはいけません。

(2)車検業者に車を引き取りに来てもらう

車検業者に車の引き取りを依頼する場合は、以下のいずれの方法によるのか事前に確かめておく必要があります。

まず、車の車輪を路面に付けずに車を運ぶことができるのであれば、仮ナンバーを取得する必要はありません。車検業者に連絡し、車を引き取りにきてもらいましょう。

他方、車の車輪を路面に付けて運ぶ必要がある場合(後輪のみであっても同じ)は、仮ナンバーを取得する必要があります。手続が面倒な場合などは、業者に取得の代行を依頼することも可能です。

いずれの場合でも、(1)に比べ費用がかかることは覚悟しましょう。

4、車検切れはバレる?

車検切れはバレるの?

車検を受けるには費用がかかりますし、その費用は決して安い額ではありません。
そのため、車検切れに気づきながら、敢えて車検切れの無保険車を運転する方も少なからずおられるのではないでしょうか?

しかし、国は新たなテクノロジーを利用し、車検切れ、無保険車の監視を強化しています。

まず、国土交通省は、平成29年度に、街頭検査において可搬式の「ナンバー自動読取装置」を試験的に導入し、公道を走行する車検切れ車の運転者に対して直接指導のうえで警告書を手渡す対策を行いました。
その結果、7台の車検切れ車(読取台数3696台)を捕捉し、運転者に警告書を交付しています。

また、平成30年9月12日には、全国で行う街頭検査に、上記の可搬式の「ナンバー自動読取装置」を導入し、同月より運用を開始しています。
その結果、平成30年9月から平成31年3月までの間に3万7403台を読み取り、うち43台が車検切れだったとのことです。

また、国土交通省は、一般の方々からの通報を受け付ける無車検・無保険車通報窓口を設けています。

このように、行政機関による監視の目は強化されていますから、今後ますます車検切れの検挙は増えていくでしょう。

5、万が一車検切れ中に交通事故を起こしたら

万が一車検切れ中に交通事故を起こしたら

車検切れの車を運転したことのみならず、その途中で交通事故を起こした場合はどうなるのでしょうか?

(1)全損害額が自己負担になることも

車検切れということは自賠責保険の有効期限も切れていることが多いでしょうから、交通事故を起こすと自賠責保険を使うことができず、結果、相手方に生じた損害のうち、自賠責保険でカバーできるはずだった分(傷害部分について120万円、後遺障害部分について75万円~4,000万円等)について自腹で賠償しなければならないことになります。

なお、自賠責保険の有効期限が切れていても任意保険は使えることが多いですが、その場合でも、自賠責保険でカバーされるべき範囲については任意保険から保険金は出ませんので、その部分は自腹で賠償しなければならいません。

また、約款上、そもそも自賠責保険が有効でなければ保険金は支払わない(免責)と定められている場合には、全額について自腹で賠償しなければならないことになります。

(2)免許は一発免停、取り消しも

交通事故を起こせば、違反点数が付加されます。
そして、被害者の怪我の程度(死亡か傷害か、傷害の場合、治療期間はどの程度か)によって付加される点数は異なります。

前記のとおり、車検切れ、無保険車を運転した場合、免許停止の処分は免れません。
そして、それに加え交通事故による点数が付加されれば、停止期間が長期間となったり、場合によっては免許を取り消され、欠格期間(再び免許を取得できるまでの期間)が長くなるおそれもあります。

(3)懲役刑が科される場合も

交通事故を起こせば、前記でご紹介した道路運送車両法や自動車損害賠償責任保険法違反による刑罰に加え、危険運転致死傷罪(人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役)、過失運転致死傷罪(7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)などの罪に問われる可能性があります。

一般に、車検切れ、無保険車を運転した場合は50万円の罰金刑を言い渡されることが多いかとは思いますが、交通事故を起こした場合はもはや罰金刑では済まず、懲役刑を科される可能性もあります。   

6、車検は必ず受けましょう

車検は必ず受けましょう

そもそもなぜ車検が必要かといえば、交通の安全を確保し、公害を防止することにあります。
車検によって整備不良の車を発見することができれば、悲惨な交通事故を未然に防止することができますし、エアクリーナーやマフラー等を点検することで健康を害するガスを排出することを防止することができるのです。

また、被害者及びその遺族に生じた損害を賠償し、被害者、遺族の権利を保護するための最低限の補償として、自賠責には必ず加入しておく必要がありますし、自賠責保険では足りないときのために備えて、任意保険にもできる限り加入しておくことが必要です(任意保険の加入率は9割弱といわれています)。

決められたとおりに車検を受け、自賠責保険・任意保険にしっかりと加入しておくことの趣旨をきちんと理解することが大切です。

そして、これまでご説明してきたように、万が一、車検切れ、無保険の車を運転し、それによって交通事故を起こした場合は、厳しい刑罰、行政処分を受けることになります。

損害額を全額負担しなければならなくなる可能性があるなど、ご自身の生活にも多大な影響を与えます。
確かに車検には費用がかかりますが、一度事故を起こしてしまえば、払い渋った車検代の何十倍、何百倍、下手をすると何千倍もの賠償責任や、一生消えない刑事責任を負うことにもなりかねません。

車検は必ず受けましょう!

まとめ

車検を受け、自賠責保険・任意保険に加入することは、社会や他人のためであると同時に、ご自身やご家族の生活、身を守るためでもあります。

繰り返しになりますが、車検は必ず受けましょう。

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