なぜ「ゴミ屋敷」はできてしまうのでしょう?
ご近所にゴミ屋敷があると、どうしたら良いのか途方に暮れるのではないでしょうか。
そこで今回は、
- ゴミ屋敷が発生する原因
- ゴミ屋敷住人に適用できる法律
- ゴミ屋敷を解決する方法
等について、ご説明したいと思います。ご参考になれば幸いです。
目次
1、近所にゴミ屋敷!困っている5つのポイント
近所にゴミ屋敷が存在する場合、ゴミ屋敷の住人以外にも近隣の住人にも被害が及びます。
ゴミ屋敷は周囲の住人にどんな被害を与えているのでしょうか?
(1)悪臭がする
ゴミはすべて紙や衣類などではありません。
中には、肉や魚を購入する際のプラスチック容器や、野菜や果物などの生ごみも含まれています。
冬ならまだしも、清掃が行き届いているゴミ集積所でも、夏場のゴミの悪臭に顔をしかめたことがある方が多いのではないでしょうか?
ゴミ屋敷にはこういった生ごみなども蓄積されています。
ですから当然強烈な悪臭が発生しています。
夏場などは自室の窓を開けることもできなくなるほどです。
このようにゴミ屋敷は近隣の住人に「悪臭」という直接の被害を巻き散らかしているのです。
(2)害虫がいる
生ごみにつきものなのが、ゴキブリなどの害虫です。
しかも、ゴミ屋敷の場合は長期でゴミが放置されているため、害虫の巣窟となっていて、簡単に駆除することができなくなっていることもあります。
ネズミなどの害獣まで発生することもあります。
害虫を放置すると、近隣の住宅にも害虫被害が拡大することになります。
(3)道路を阻(はば)む
ゴミ屋敷に収まり切れなくなったゴミが、ゴミ屋敷の前面に溢れていることがあります。
通行の妨げになりますし、崩れてくるおそれもありますから大変危険です。
(4)火災発生リスクがある
ゴミが積みあがっている場所に一旦火がついてしまったらどうなるのでしょうか?
勢いよく燃え上がるのは誰にでも想像することができるかと思います。
このようにゴミ屋敷は火災の発生リスクを高めることになりかねない迷惑な存在だといえます。
(5)見た目-景観が悪い
以上のような実際の被害に至らないケースでも、見た目がストレスであることは間違いありません。
ゴミの山の近くに住んでいる。これだけで相当なストレスです。
また、街の景観を損ねますので、ゴミ屋敷の近所というだけで、マイホームを売却するときになかなか売れない、ということもあり得ます。
2、ゴミ屋敷住人たちの心理-どうしてゴミを捨てないの?
(1)高齢化社会により、物理的にゴミを捨てられない人が増加
エレベーターのない高層住宅(5階建て以下)に4階や5階に住んでいるお年寄りが、足を患ってしまい、物理的にゴミを捨てることが困難になることでゴミ屋敷化してしまうケースがあります。
(2)ゴミ捨てのシステムが複雑化してきている
昔は「ゴミの分別」ということをしなくても、なんでも「ゴミ」として捨てることができました。
近年リサイクルなど環境問題がクローズアップされてきたことで、ゴミも資源であり、リサイクルできるものは分別して捨てなければいけなくなっています。
このようにゴミ捨てのシステムが複雑化することで、特に独身男性などが「ごみの捨て方がわからない」ということで、ゴミ屋敷化するケースがあります。
また仕事の時間が不規則な職業の場合、ゴミ回収の時間に間に合わないなどといった理由で、ゴミがだんだん増加していきゴミ屋敷化するケースも存在します。
(3)もったいない精神からゴミを収集してしまう心理
ゴミであるとの判断は個人差があります。
包装紙や箱を「いつか使える」と収集する方も多くいらっしゃいます。
まだ紙であればよいのですが、カップラーメンの容器や、肉や魚が入っていたプラスチック容器までも「もったいない」と収集してしまう方も存在します。
もったいないとモノを捨てることができなくなってしまうことから、人の居住空間にまでゴミが氾濫することになり、最終的にゴミ屋敷になってしまうケースも存在します。
(4)病気が原因でゴミ屋敷化してしまうケースも
「ADHD」の症状として、「片付けられない」という症状があります。
また認知症により、ゴミを捨てることができなくなってしまうケースも存在します。
見てきたように、ゴミ屋敷が形成される背景は単純ではありません。
まずは「なぜゴミ屋敷になってしまったのか」その理由を個別具体的に考えることが重要であることがお分かりいただけると思います。
3、ゴミ屋敷の原因の1つ「セルフネグレクト」とは
ゴミ屋敷の原因の1つ「セルフネグレクト」があります。
ここではセルフネグレクトとはどのような症状であるのか、また原因や対処方法を探っていきたいと思います。
(1)日本におけるセルフネグレクトの数
セルフネグレクトとは、個人自身に対して興味を抱くことなく無視してしまう行為のことです。
具体的には、満足な食事をとらなくなったり、お風呂に入らなくなったり、部屋の掃除をしなくなってしまうといったことです。
日本でもセルフネグレクトの数は増加しています。
内閣府の調査によると、高齢者のセルフネグレクト件数はおよそ7,400件です。
中高年や若者のセルフネグレクトも含めた場合、セルフネグレクトの件数はかなり多くなることがわかります。
(2)セルフネグレクトの原因
セルフネグレクトの原因は「孤独感を感じること」であるといわれています。
具体的には、失業や定年などで社会ともかかわりがなくなったりすることで孤独感や疎外感を感じることからセルフネグレクトが引き起こされます。
(3)セルフネグレクトの対処法
セルフネグレクトは孤独感や疎外感から引き起こされるため、社会と密にコミュニケーションをとることがセルフネグレクトの対処方法であるといえます。
このように社会からの疎外感や孤独感を感じることでセルフネグレクトに陥り、部屋を掃除することに興味を失ってしまった結果、ゴミ屋敷化してしまうケースもあります。
4、ゴミ屋敷住人に適用できる法律等は?
ゴミ屋敷の住人は何らかの理由をもっていることはお分かりいただけたかと思いますが、しかし実際に近隣の住人は多大な迷惑を被っています。
ここでは、ゴミ屋敷の住人に適用できる法律等はあるのかについてみていきたいと思います。
(1)廃棄物処理法
ゴミの法律といえば「廃棄物処理法」です。
ゴミ屋敷を廃棄物処理法で取り締まることはできるのでしょうか?
そもそも廃棄物処理法とは、(清潔な国を保つために)国として「ゴミ」をどう廃棄していか、という法律です。
ざっくりいえば、家庭や事業所に適切にゴミを排出する義務を負わせ、それを処理する事業者が勝手な投棄をしないように規制するものです。
家庭(廃棄物処理法では「建物の所有者又は占有者」)は、自己の土地建物を清潔にし(廃棄物処理法第5条第1項)、自治体のルールにしたがってゴミを出す(廃棄物処理法第2条の4)という義務が課されていますが、これらの義務を果たさなかったからと言って罰則はありません。
いわゆる努力義務です。
どうして罰則がないのでしょうか。
それは、清潔か否かは人の主観によって様々な感じ方があり、清潔でないことを理由に罰則を課すとすると、これを判断する人次第で罰せられるか否かが決まってしまうため、不安定な法律になってしまいますし、また、どれくらいゴミを溜めていたら罰則を課すことが適当なのかの基準を設けにくいという実際上の不都合もあると思います。
明らかな不潔状態、明らかなルール違反というものは、残念ながら一概に定義しにくいのです。
そのため、個人の敷地内にあるゴミについては、基本的にこの法律の管轄外といえます。
(2)道路交通法
参考:道路交通法第76条
道路にまでゴミがあふれている場合、道路交通法第76条の「何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。」に該当します。
そのため道路にあふれているゴミに関しては撤去できる可能性はありますが、それではゴミ屋敷の解決にはなりません。
(3)自治体の条例
ゴミ屋敷は社会問題化することにより、ゴミ屋敷に関して条例を定める自治体も出てきています。
具体的には足立区では、「足立区生活環境の保全に関する条例を制定しています。
条例により、近隣住民の生活環境に多大な影響を及ぼすような状態にある、いわゆるごみ屋敷に対し、以下の措置をとることが可能になりました。
≪ゴミ屋敷にとることができる措置≫
- 近隣住民からの苦情が出た場合ゴミを撤去することができる
- 最大100万円まで区がゴミ屋敷の撤去費用を負担する
現在では、このような自治体の条例が解決への頼みの綱です。
自治体でゴミ屋敷に関する条例がない場合、法律によってゴミ屋敷を処分することが難しい状況であるといえます。
自治体でゴミ屋敷に関する条例がない場合、自治体への問題提起から始めていきましょう。
5、結局、どうやって解決すれば良いの?
足立区のように実効性の高い条例がない場合、ゴミ屋敷問題の解決が難しいことがわかりました。
ここでは条例がない場合のゴミ屋敷解決方法を考えていきましょう。
(1)住人と話し合う
まずはゴミ屋敷の住人と話し合いを行って、自主的にゴミ屋敷を解決してもらえるように説得しましょう。
この場合、1人で交渉に行っても、高い効果を得ることはできません。
多くの人間が迷惑しているということを理解してもらうためにも、複数の近隣住人と一緒に、話し合いに行くようにしましょう。
(2)話がまとまらない場合は
ゴミ屋敷の住人と話し合いを行っても解決しない場合、以下の方法をおすすめします。
①自治体へ相談
まずはお住いの自治体に相談してみましょう。
自治体がゴミ屋敷住人へ面談を行ってくれたりとゴミ屋敷問題を解決するために、何らかの措置をとってくれるからです。
②弁護士へ相談
交渉のプロといえば弁護士です。
ゴミ屋敷の存在によってあなたに損害が発生していれば損害賠償の対象になり得ます。
よって、民事的にゴミ屋敷の住人に圧力をかけることも可能です。
自治体は仕事の優先順位があるため、フットワーク軽く動けないときもあります。
この点弁護士であれば自治体への声かけを共に行うことも含めて、包括的にゴミ屋敷問題の解決へ向けての道筋を立てて交渉をしてくれます。
ゴミ屋敷問題を本気で解決したいとお考えの方は、弁護士に依頼することが解決への早道といえます。
(3)ゴミ屋敷住人が独居老人である場合
住人が他界してしまった場合、ゴミ屋敷は相続人のものになります。
そのため、長い目で見た場合、ゴミ屋敷を片付けてほしいと依頼する先は相続人になり得ます。
弁護士であれば相続人を調べることが可能ですので、相続人に対してゴミの片付けにかかる交渉することで、ゴミ屋敷問題が解決することもあるでしょう。
まとめ
ゴミ屋敷住人に対し、何で片付けないのよ・・と思うかもしれませんが、そもそも「ゴミ出し」は大変な作業ではないでしょうか。
通常ゴミでも決まった曜日に出さなければいけません。
最近では分別も必要で、ゴミの袋を購入しなければならない自治体も珍しくなくなってきました。
またゴミ捨てに関するシステムも複雑なため、たとえば衣服や家具家電はどうするのか、即答できない人も多いのではないでしょうか?
そして使わなくなったものを捨てる気持ちになるタイミングも人それぞれです。
現時点では、条例がない地域では特に、住人またはその親族との交渉を重ねることが、数少ない打開策です。
基本的には、ゴミ屋敷近隣の方にはもちろん、そしてゴミ屋敷住人の方にも寄り添った交渉が必要です。
ゴミ屋敷問題でお困りの際は、交渉のプロである弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。