夫婦関係において、浮気や不倫、価値観の不一致など、離婚に至る原因や理由は様々です。
そこで、
- 一般の夫婦の離婚の原因や理由
- 男女間での違いや国内外での傾向
- 有名人夫婦の離婚原因
について解説します。
目次
1、離婚原因・理由ランキング
我が国の民法では、夫婦が合意で離婚する場合、つまり「協議離婚」が成立しない場合は、家庭裁判所で話し合い(調停)を行い、それでも解決できない場合は、裁判で決着を図ることになっています。
では、家庭裁判所に持ち込まれた離婚に関する事件において、離婚調停を申し立てる原因として多かったのは、どのような原因があるのでしょうか。申立人が妻の場合と夫の場合にわけて見てみましょう。
(1)妻からの離婚原因ランキング
平成27年度司法統計によると、平成27年度に全国の家庭裁判所に申し立てられた離婚調停のうち、妻から申し立てがなされたものにおける申し立ての原因は、下記の表のとおりとなっています。
なお、本人のいう離婚原因のうち、主なものを3個まで挙げる方式で調査し、重複集計しています。
1位 | 性格が合わない | 19,380人(40%) |
2位 | 生活費を渡さない | 13,551人(28%) |
3位 | 精神的に虐待する | 12,282人(26%) |
4位 | 暴力を振るう | 10,882人(23%) |
5位 | 異性関係 | 8,643人(18%) |
6位 | 浪費する | 5,420人(11%) |
7位 | 家庭を捨てて省みない | 4,316人(9%) |
8位 | 家族親族と折り合いが悪い | 3,655人(8%) |
9位 | 性的不協和 | 3,653人(8%) |
10位 | 酒を飲みすぎる | 3,069人(6%) |
11位 | 病気 | 1,328人(3%) |
12位 | 同居に応じない | 1,165人(2%) |
【出典 最高裁判所平成27年度司法統計家事事件より】
最も多いのが「性格が合わない」で、次に多いのが「生活費を渡さない」、3番目に多いのが「精神的に虐待する」、その次が「暴力を振るう」という順位になっています。
「生活費を渡さない」というのが妻側に多い事情というのはわかりますが、それを除いても、「異性関係」が上位3つに入っていないというのは、意外と思われる方も多いのではないでしょうか。
(2)夫からの離婚原因ランキング
次に、夫から申し立てられた離婚調停の原因は下記の表のとおりとなっています。
1位 | 性格が合わない | 10,900人(61%) |
2位 | 精神的に虐待する | 3,322人(19%) |
3位 | 家族親族と折り合いが悪い | 2,656人(15%) |
4位 | 異性関係 | 2,637人(15%) |
5位 | 性的不協和 | 2,326人(13%) |
6位 | 浪費する | 2,209人(12%) |
7位 | 同居に応じない | 1,764人(10%) |
8位 | 暴力を振るう | 1,505人(8%) |
9位 | 家庭を捨てて省みない | 1,127人(6%) |
10位 | 病気 | 913人(5%) |
11位 | 生活費を渡さない | 784人(4%) |
12位 | 酒を飲みすぎる | 424人(2%) |
【出典 最高裁判所平成27年度司法統計家事事件より】
こちらも、「性格が合わない」が1位となっているのは妻が申立人の場合と同じですが、2位の「精神的に虐待する」の3倍以上と、妻が申立人の場合よりも圧倒的に割合として多いのが特徴です。また、妻の場合は8位だった「家族親族と折り合いが悪い」が、男性では3位になっている点も特徴的です。
2、熟年離婚の離婚原因・理由
次は、離婚の中でも熟年離婚の場合に限定して、その原因を見てみましょう。
熟年離婚においても、性格の不一致や精神的・肉体的な虐待、異性問題等が離婚の原因になることは多いといえますが、熟年離婚特有の原因として、「相手が家にいることがストレス」とか「価値観の違い」といった理由があるようです。
定年後、夫婦が日中一緒に過ごす時間が多くなることで、様々な価値観の違いが表面化し、そもそも相手と一緒にいること自体にストレスを感じてしまうということが生じるのだと思われます。
また、双方の親の介護や、配偶者自身の介護の問題が離婚に繋がってしまうのも、若い頃には表面化しにくい熟年離婚特有の離婚原因といえるでしょう。
詳しくは「熟年離婚の原因・理由|「そもそも一緒にいたくない」など主なもの14個」をご参照ください。
3、スピード離婚に多い離婚原因・理由
では、短期間で離婚をする夫婦に多い離婚原因は何があるでしょうか。
お互い好きで結婚する場合が多いと思うので、結婚してすぐに浮気、なんていう場合はあまり多くないでしょう。
むしろ、性格の不一致や価値観の違いとか、そもそも結婚に対する意識が低いこととか、相手の借金問題などが多いようです。
以前、スピード離婚の一つの事例として「成田離婚」なんていう言葉も流行りましたね。
新婚旅行で長い時間一緒にいて初めて相手の素の部分を見てしまい、それで嫌になって成田に帰ってきた時には離婚、なんていうのは究極のスピード離婚といえます。
相手を気に入って好きになって結婚したものの、結婚して、相手と長い時間一緒にいて初めて相手の欠点に気づいたり、相手が隠していた借金が発覚したり、そもそも結婚自体がスピード結婚だったために相手のことをよく知らなかった等、スピード離婚の場合は、結婚前に思っていたものと結婚後の現実との間にギャップがあった場合が多いようです。
詳しくは「新婚でのスピード離婚を検討するにあたって知っておくべき9つのこと」をご参照ください。
4、アメリカの離婚原因・理由
では、海外における離婚の原因は日本とは異なるのでしょうか。
ミネソタ大学教授で結婚・家族セラピストでもあるウィリアム・ドハーティ氏が、ミネソタ州で離婚の申し立てをした夫婦を調査したところ、1位が「気持ちが次第に離れた」、2位が「一緒に話ができなくなった」だったそうです。
個人がしっかりと主張をすることに価値がおかれているアメリカ社会だからこそ、夫婦の問題も、夫婦が「個人と個人」として、尊重できるかできないかということが重要視されているのかもしれません。
5、芸能人の離婚原因・理由
(1)湘南乃風の若旦那さんとMINMIさんの離婚原因
お互いにミュージシャン同士であった湘南乃風の若旦那さんとMINMI(ミンミ)さん。子供も3人おり、仲の良い夫婦として知られていました。ご本人達は、「互いの関係が愛情から友情に変わった」ことが離婚の原因だとおっしゃっているようです。
(2)ココリコの遠藤章造さんと千秋さんの離婚原因
ココリコの遠藤章造さんと千秋さんの離婚は、当初、芸能ニュース等では、遠藤さんの浮気が原因と言われていました。しかし、遠藤さんが、その後テレビ番組で、自分が未公開株に手を出して数千万単位の損を出したこと、それを千秋さんに黙っていたことが離婚の原因であると告白されました。
(3)おちまさとさんと河辺千恵子さんの離婚原因
プロデューサーのおちまさとさんとタレントの河辺千恵子の離婚は、芸能記者にとっても驚きだったようです。結婚して7年後の離婚でしたが、それまでは、芸能人夫婦にありがちな不仲説なども報じられることもなく、突然の発表でした。
お二人は、当時、それぞれのブログで、離婚原因について、「一つだった直線が、いつしかではありますが、角度がついた二つの直線となり、時間が経つ程に直線の先の幅が大きくなって行くのであればと、早い決断をした次第です」と述べられています。時間の経過とともに、お互いのすれ違いが大きくなっていったということなのでしょうか。
(4)清原和博さんと亜希さんの離婚原因
プロ野球選手の清原和博さんの離婚原因は、当初、清原和博さんが銀座のママと不倫していたとか、金銭的な問題であった等と報じられました。しかし、その後に清原和博さんが覚せい剤取締法違反で逮捕されたことを考えると、薬物の影響もあったのかも知れません。
(5)狩野英孝さんの離婚原因
最近、女性問題で世を賑わせた狩野英孝さんですが、過去に一般女性との離婚歴があります。2011年に、「ロンドンハーツ」の企画で公開プロポーズを行って結婚した狩野さんですが、2014年に離婚した際には、「私の未熟故に軽率な行動や言動が妻に大変苦労かけさせてしまいました」と言っておられました。
当時、写真週刊誌で、結婚直後の不倫疑惑を報じられた狩野さんが、これを否定せず謝罪のコメントを出されたことから、これが原因とも言われているようです。
(6)ル・クプルの離婚原因
「ひだまりの詩」の大ヒットで紅白歌合戦にも出場した夫婦デュオのル・クプル。2005年に活動休止をして2007年には離婚されました。
離婚の8年後にお二人で出演された「爆報!フライデー」では、「ひだまりの詩」の後にヒット曲にめぐまれず、お二人の関係も悪化していった中で、夫の藤田隆二さんが妻の恵美さんに、恵美さんの気持ちを確かめるために、カマをかけるつもりでいった「離婚だ!」といった言葉が原因になったと話しておられました。
(7)ヨネスケさんの離婚原因
「隣の晩ごはん」で他人の家の幸せなエピソードを聞き出していたヨネスケさん。そのヨネスケさんは平成27年にテレビ番組で離婚を発表しましたが、何より周囲を驚かせたのは、10年以上も別居状態にあったということでした。別居の原因が多忙のせいかそれ以外にあるのかはわかりませんが、10年以上も別居していれば修復は難しかったと思われます。
(8)TKOの木下隆行さんの離婚原因
TKOの木下隆行さんは、1999年に一般女性と結婚されましたが、2003年には離婚されています。離婚後に出演された「解決!ナイナイアンサー」でご本人が、まだブレイクする前でお金もなかったのに、対して働かなかったことが原因であると話されています。
6、裁判で認められる法定離婚原因とは?
我が国の民法では、夫婦の話し合い(協議離婚)や家庭裁判所での調停(調停)で離婚が成立しない場合は、裁判所で離婚が認められない限り離婚することはできないとされています。
そして、裁判所で離婚が認められるためには、下記の事由(法定離婚原因)が必要とされています(民法770条1項)。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
上記の中では、「5.」の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」が最も範囲が広く、裁判における離婚原因としては最も多いと言われています。
詳しくは「法定離婚事由(原因)とは?相手が拒否しても離婚できる場合について」をご参照ください。
7、このような原因・理由で離婚が認められる?
では、下記のような場合、裁判で離婚が認められるのでしょうか?
(1)借金などのお金問題は離婚原因として認められる?
借金などの金銭的な問題は、前記の法定離婚原因の「1.」~「2.」には該当しません。
ですから、その金銭問題が、「婚姻を継続し難い」といえる程度のものでなければ、離婚原因としては認められないことになります。借金の原因や額から考えて、夫婦としての生活を維持するのが困難な状況であると判断されない限り、単に借金があることを理由に離婚を求めることはできないことになります。
なお、金銭問題の中でも、「生活費を一切渡さない」というのは、前記「2.」の「配偶者から悪意で遺棄されたとき」に当たる場合があります。
詳しくは「弁護士が教える!離婚前に知っておきたい借金と離婚の関係」をご参照ください。
(2)同居などの嫁姑問題は離婚原因として認められる?
嫁姑問題は、多かれ少なかれどこの夫婦にも起こり得る問題です。ですから、それだけで、前記「5.」の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と認められることはほとんどないといえます。
ただ、嫁姑の関係が相当悪化しているのに、夫がその仲裁を全く果たそうとしない場合や、嫁姑問題が原因で夫婦が別居し、その別居が長期間に渡っているような場合には、例外的に、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と判断される場合もあるようです。
詳しくは「義両親との同居を理由に離婚できる?離婚するための方法は?」をご参照ください。
(3)産後クライシスは離婚原因として認められる?
産後クライシスは、出産を契機として、夫婦の愛情が冷めてしまうことによって起こります。ただ、愛情が冷めたというだけでは、離婚原因として認められないのが一般的です。
ただ、産後クライシスによって互いの愛情が冷え切り、夫婦のどちらか又は双方が浮気するに至ったような場合は、前記「1.」の「不貞行為」として離婚が認められる場合があるでしょう。
(4)浮気・不倫はどこからが離婚原因として認められる?
「浮気」や「不倫」の定義は人によって様々でしょう。どこからが「浮気」にあたるか、という問題については、厳しい人であれば「手を繋いだら」とか「二人きりで食事にいったら」と考える方もおられます。ただ、裁判所は、法定離婚原因である「不貞行為」にあたるかどうかは、「性的行為」があったかどうか、という基準で判断することが一般的です。
なお、「性的行為」そのものの証拠はなくとも、メールの内容などから「性的行為があったこと」がうかがわれる場合は、「不貞行為があった」と認定される場合もあります。
詳しくは「不貞行為とは?具体的事例と不倫された場合の対処法」をご参照ください。
(5)子供ができないことは離婚原因として認められる?
晩婚化が叫ばれる現在、子供ができないことに悩まれている方も多いと思います。しかし、子供ができないことだけでは前記の法定離婚原因があるとはいえません。
確かに、夫婦の一方が強く子供を望んでいるが他方がそこまでではない、といったように夫婦間に温度差がある場合は、子供ができないことが原因ですれ違いが生じることは少なくないと思います。ただ、そうは言っても、子供ができないことだけを理由に裁判所が離婚を認めることはほとんどないといえるでしょう。
(6)性の不一致は離婚原因として認められる?
夫婦というのは、男女の肉体的・精神的結合と考えられており、「性の不一致」は婚姻の根幹をなすものとして、前記「5.」の「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると判断される場合が多いといえます。ただ、病気や高齢等が原因の場合は、夫婦間に性的関係がなくても、例外的に離婚原因とは認められません。
また、そもそも性的関係を重視しないことを双方があらかじめ合意していたような場合には、離婚したくなったからといって突然「性的関係がないこと」を持ち出して離婚を求めるようなことはできないと考えられています。
詳しくは、「セックスレスで高額慰謝料を獲得して有利な離婚をするための全手順」をご参照ください。
(7)夫が子育てしないことは離婚原因として認められる?
夫婦の一方が子育てをしなかったり、協力しなかったりすることが、それだけで離婚原因となることは少ないといえます。
ただ、それが子供への虐待に発展したような場合は、前記「5.」の「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と判断されることもあるでしょう。
(8)モラハラは離婚原因として認められる?
モラハラは、比較的最近の概念であるため、裁判例もまだまだ多くないといえます。ただ、前記の「1.」~「4.」には該当しませんので、やはり、「5.」の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるかどうかが問題となるでしょう。
モラハラの程度が、「3年以上の生死不明」や「強度の精神病」などと同程度に重大であると認められるような場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と判断される可能性も十分あります。ただ、モラハラは、DVと異なり、証拠が残りにくいという側面があるので、相手の言動等を録音したりメモをとったりするなどして、記録をしておくことが大切です。
詳しくは「モラハラ夫(妻)からしっかり慰謝料をもらって離婚するまでの全手順」をご参照ください。
まとめ
夫婦としていったん双方の合意のもとに結婚した場合は、双方の合意がなければ離婚できないというのが日本の法律の原則です。配偶者に対して様々な不満があることも多いと思いますが、選んだ方にもその相手を選んだ責任があるということです。
ただ、そうはいいつつも、日本の裁判所は、夫婦関係が破綻してしまっていて修復不可能な状態に陥ってしまった場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と認めてくれる傾向にあります。
離婚したくても相手が離婚に同意してくれなさそう、というような場合は、いざという時に裁判で離婚を認めてもらうためにも、夫婦関係が破たんしてしまっているということを証明する証拠を集めておくことも必要といえるでしょう。