法テラスを利用すれば、いま手元にお金がなくても、弁護士に依頼して債務整理をすることができます。
借金問題を解決したい方のために、弁護士がお伝えする法テラスの利用方法とデメリット回避について解説します。
目次
1、法テラスを利用して債務整理をする流れ
法テラスではいったい何をしてくれるのかが気になる方も多いと思いますので、まずは法テラスを利用して債務整理をする流れをご紹介します。
(1)法テラスへ連絡
まずは、法テラスへ連絡しましょう。
次の電話番号に電話をかけると、借金問題を解決するための法的手段についての一般的な情報の提供や、相談窓口の案内などを受けることができます。
電話番号:0570-078374
この電話番号は全国共通ダイヤルですが、最寄りの法テラス地方事務所へ直接連絡をすることもできます。
法テラス地方事務所は各都道府県にあり、無料法律相談の予約を直接とることもできます。
したがって、弁護士の無料法律相談を利用したい場合は、最寄りの事務所に直接連絡した方が早いでしょう。
最寄りの法テラス地方事務所の場所と連絡先は、次の法テラスのページで検索できます。
(2)無料法律相談を予約する
弁護士による無料法律相談は予約制なので、予約をとる必要があります。
電話で「無料法律相談を受けたい」と申し出れば、民事法律扶助の係から利用条件の確認のために収入や資産の状況を尋ねられます。
利用条件を満たしていることが確認されると、無料法律相談の予約をとることができます。
(3)弁護士による無料相談を受ける
予約をしたら、決められた日時に法テラス地方事務所または指定された相談場所へ赴きます。
相談の前に「援助申込書」に記入し、再度、利用条件を満たしているかのチェックを受けます。この時点では収入や資産を証明する資料を提出する必要はありません。
援助申込書を提出したら、弁護士による無料法律相談が行われます。
無料法律相談は1回30分で、同じ問題について3回まで利用することができます。
(4)弁護士を通じて民事法律扶助を申し込む
相談の結果、その弁護士に債務整理を依頼したい場合は、先に民事法律扶助を申し込みます。
申込み手続きは自分でもできますが、通常は受任予定の弁護士が行います。あなたは、必要書類をその弁護士に提出するだけです。
必要書類は住民票や収入を証明するための給与明細や確定申告書の控えなどです。
(5)弁護士と法テラスとの三面契約を結ぶ
民事法律扶助の審査が通ったら、弁護士との委任契約を結びます。
法テラスを介して弁護士に依頼する場合は、依頼者であるあなたと受任者である弁護士、それに法テラスとの三面契約を結ぶことになります。
これによって、正式に債務整理を弁護士に委任したことになります。
(6)弁護士が債務整理手続きを開始する
委任契約を結べば、あとの流れは一般的な法律事務所に債務整理を依頼した場合と同じです。
最初に弁護士から債権者に対して受任通知書を送付し、それからケースに応じて必要な手続きを弁護士が行っていきます。
(7)立て替えられた弁護士費用を分割で償還する
ここまでの段階で、あなたに費用の負担は一切生じません。
弁護士費用は、三面契約を結んだ後に法テラスから担当弁護士へ立て替えて支払われます。その立替金については、あなたから法テラスへ分割で償還していくことになります。
毎月の支払い額は5,000円~1万円です。
支払い方法は三面契約を結んだ翌々月から、あなた名義の銀行口座からの引落しとなります。
2、債務整理において法テラスを利用するメリット
次に、債務整理において法テラスを利用することで、どのようなメリットが得られるのかを具体的にみていきましょう。
(1)低料金で弁護士に依頼できる
法テラスを介して弁護士に依頼する場合の料金は、法テラスの基準に従って一律に定められています。
法テラスの弁護士費用の基準は通常の法律事務所の基準よりも低水準なので、法テラスを介した場合は低料金で弁護士に依頼することが可能です。
では、債務整理を法テラスで依頼した場合と、通常の法律事務所に依頼した場合とで、弁護士費用がどの程度違うのかを比べてみましょう。
以下では、通常の法律事務所の弁護士費用についてはおおよその相場をご紹介します。
実際の弁護士費用は事務所ごとに料金体系が異なりますし、ケースによっても異なることにご注意ください。
①任意整理の弁護士費用
債権者数5社の任意整理を依頼し、総額250万円の借金を200万円に減額できた場合にかかる弁護士費用を比較してみましょう。
| 法テラス | 通常の事務所 |
着手金 | 110,000円 | 220,000円 (1社あたり4万円+税) |
減額報酬 | 0円 | 55,000円 (減額した金額×10%+税) |
実費 | 25,000円 | 15,000円 (郵送費、通信費など) |
合計 | 135,000円 | 290,000円 |
このケースでは、法テラスを利用することで弁護士費用が15万5,000円安くなります。
法テラスでは着手金の基準が低い上に、減額報酬がかからないので弁護士費用を抑えることができます。
なお、過払い金を回収できた場合は法テラスでも通常の事務所でも別途報酬金がかかりますが、その基準も一般的に法テラスの方が低くなっています。
②個人再生の弁護士費用
次に、債権者数10社の個人再生を依頼した場合の弁護士費用を比べてみましょう。
| 法テラス | 通常の事務所 |
着手金 | 165,000円 | 440,000円 |
実費 | 35,000円 | 30,000円 (郵送費、通信費など) |
合計 | 200,000円 | 470,000円 |
このケースでは、法テラスを利用することで弁護士費用が27万円安くなります。
個人再生は債務整理の中でも最も複雑な手続きなので弁護士費用も高額になりがちですが、法テラスの基準は低く抑えられていることがおわかりいただけるかと思います。
③自己破産の弁護士費用
債権者数10社の自己破産を依頼した場合の弁護士費用も比べてみましょう。
| 法テラス | 通常の事務所 |
着手金 | 132,000円 | 330,000円 |
実費 | 23,000円 | 30,000円 (郵送費、通信費など) |
合計 | 155,000円 | 360,000円 |
このケースでは、法テラスを利用することで弁護士費用が20万5,000円安くなります。
自己破産をするとなると弁護士費用も高額になるというイメージがあるかもしれません。
しかし、法テラスを利用すれば、安くはないかもしれませんがそれほどのお金はかからないと感じられるのではないでしょうか。
(2)弁護士費用を立て替えてくれる
法テラスでは、以上のように弁護士費用が低水準である上に、その弁護士費用も立て替えて支払ってくれます。
初期費用は必要ありませんので、いま手元にお金がなくても弁護士に依頼することができるのです。
通常の法律事務所では、着手金の分割払いに応じる事務所はあっても、過払い金の回収が見込める場合を除いて完全後払い制のところはあまりないでしょう。
(3)分割払いでOK
法テラスに立て替えてもらった弁護士費用は、いずれ償還する必要がありますが、毎月5,000円~1万円の分割払いで無理なく支払うことができます。
生活保護を受けている場合や、その他の特別な事情がある場合は、支払いの猶予や免除が受けられることもあります。
(4)相談料が無料
前記「1(3)」でもお伝えしたように、法テラスでは同じ問題について3回まで無料法律相談を利用できます。
最近は通常の法律事務所でも債務整理の事案については無料法律相談を受け付ける事務所も増えてきていますが、無料で利用できるのは初回の30分のみというところが多いようです。
(5)自分で弁護士を探す必要がない
法テラスでは、無料法律相談を予約すれば弁護士を手配してもらえるので、自分で弁護士を探す必要がありません。
初めて法律相談を利用する方で、弁護士の探し方がわからないという方にとっては、この点も嬉しいメリットといえるでしょう。
3、実は利用制限がある!法テラスの条件をチェック
債務整理で法テラスを利用すると大きな経済的メリットが得られることがおわかりいただけたと思います。
ただし、法テラスの民事法律扶助は誰でも利用できるわけではありません。
利用できるのは、次の3つの条件をすべて満たす場合です。
(1)収入
まず、民事法律扶助を利用できるのは、本人と配偶者の月収(賞与を含みます。)の合計額が次の表に掲げる基準以下の場合です。
| 一般の地域にお住まいの方 | 一級地にお住まいの方 |
単身者の場合 | 182,000円 | 200,200円 |
2人家族の場合 | 251,000円 | 276,100円 |
3人家族の場合 | 272,000円 | 299,200円 |
4人家族の場合 | 299,000円 | 328,900円 |
以降、家族が1人増加するごとに30,000円ずつ加算されます。
ただし、家賃や住宅ローンの支払いがある場合は、次の表に掲げる金額を上限として、上の表の基準額に加算できます。
| 一般の地域にお住まいの方 | 東京都特別区にお住まいの方 |
単身者の場合 | 41,000円 | 53,000円 |
2人家族の場合 | 53,000円 | 68,000円 |
3人家族の場合 | 66,000円 | 85,000円 |
4人家族の場合 | 71,000円 | 92,000円 |
ただし、医療費や教育費、職業上やむを得ない出費等の負担によって生計が困難と認められる場合は、以上の基準額を上回る収入があっても民事法律扶助を利用できる場合があります。
(2)保有資産
収入とは別に、本人と配偶者の保有資産の合計額が次の表に掲げる金額以上あるときは、民事法律扶助を利用することはできません。
単身者の場合 | 180万円 |
2人家族の場合 | 250万円 |
3人家族の場合 | 270万円 |
4人家族の場合 | 300万円 |
ただし、医療費や教育費、職業上やむを得ない出費等の負担によって生計が困難と認められる場合は、以上の基準額を上回る保有資産があっても民事法律扶助を利用できる場合があります。
(3)勝訴見込み
3つ目の条件として、「勝訴の見込みがないとはいえないこと」が必要とされています。
債務整理の場合は、弁護士や司法書士に依頼することによって借金問題を解決できる可能性があればこの条件を満たします。
4、法テラスで債務整理すると「時間」と「弁護士」は運任せ
法テラスで債務整理をすることには、デメリットもあります。
次の2点において、通常の法律事務所に依頼する場合よりも不利になってしまいますので、ご注意ください。
(1)審査に「時間」がかかる
前記「1」でご説明したように、法テラスを介して弁護士に依頼する場合には、法律相談を利用してから実際に依頼するまでに時間がかかります。
正式に依頼する前に民事法律扶助を申し込み、利用条件を満たすかの審査を受けなければならないからです。
審査にかかる時間は地方事務所によって異なりますし、事案の内容や審査案件の混み具合によっても異なりますが、1~2週間ほどかかる場合が多いようです。
その間は原則として弁護士が債務整理手続きに着手することはありませんので、迅速に解決したい場合は不向きです。
(2)担当する「弁護士」は債務整理の経験が少ないことも
もうひとつのデメリットとして、法テラスでは相談・依頼する弁護士を選べないということが挙げられます。
そのため、債務整理の経験が少ない弁護士が担当となる可能性も十分にあります。
債務整理案件は他の法律トラブルに比べると事務手続きの要素が多いものの、弁護士なら誰もが最高の結果を出せるとは限りません。
落とし所を把握し、無駄のない手続きを行うには、やはり豊富な経験が必要です。
5、メリットだけを享受する「持ち込み方式」とは
法テラスに連絡して紹介された弁護士に依頼する場合には以上のデメリットを受けることになりますが、実は、これらのデメリットを排除する方法があります。
その方法とは、自分で弁護士を選んだ上で、その弁護士を介して法テラスに民事法律扶助を申し込むことです。
この申し込み方法のことを「持ち込み方式」といいます。
債務整理に詳しい弁護士を自分で探して相談すれば、前項「(2)」のデメリットは回避できます。
また、弁護士によっては民事法律扶助の利用条件を満たしていると判断すれば、審査結果を待たずに債務整理手続きに着手してくれることもあります。
この場合、前項「(1)」のデメリットも回避できます。
つまり、持ち込み方式を用いることによって、法テラスのデメリットを排除し、メリットだけを享受することもできるのです。
債務整理に詳しい弁護士を探すには、インターネットで検索して債務整理の実績が豊富な法律事務所や、債務整理に関する詳しい解説記事をホームページに多数掲載している法律事務所を探すのがおすすめです。
まとめ
法テラスの民事法律扶助は、法テラスに直接連絡しなければ利用できないわけではありません。
持ち込み方式に対応している法律事務所に相談すれば、迅速に、かつ低料金で弁護士に債務整理を依頼できます。
借金問題で切羽詰まっている方は、お早めに無料相談を利用してみてはいかがでしょうか。
債務整理に関する詳細は以下の関連記事をご参照ください。