金銭消費貸借契約書とは?お金を貸すときに注意すべき5つのこと

金銭消費貸借契約書とは、お金の貸し借りをするときに交わす契約書のことです。俗に、「借用書」「借用証」と呼ばれることもあります。

貸付額(借入額)や利息、返済期限など債務の内容を具体的に記載し、貸主・借主の双方が署名・押印したものを2部作成し、お互いに1部ずつを保管するのが一般的です。

銀行や消費者金融などの貸金業者から借金をする場合には、必ず金銭消費貸借契約書が作成されます。

友人・知人同士や親族間でのお金の貸し借りでも、金銭消費貸借契約書を作成しておくことが大切です。

債権債務の内容を証拠化しておくことで、貸主にとっては取り立てがしやすくなりますし、借主にとっては過大な請求を受ける心配がなくなるからです。

今回は、

  • 金銭消費貸借契約書とは
  • 金銭消費貸借契約書を作成しないとどうなる?
  • 金銭消費貸借契約書の作成方法

などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説していきます。

無料で利用できるテンプレートもご紹介しますので、個人間でお金の貸し借りをしている方や、これか使用とお考えの方にとって手助けとなれば幸いです。

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1、金銭消費貸借契約書とは

金銭消費貸借契約書とは

まずは、金銭消費貸借契約書とは具体的にどのようなものであるかについて、説明します。

(1)そもそも消費貸借契約とは

消費貸借契約とは、当事者の一方が種類、品質、数量が同じ物を返還することを約束して相手方から金銭その他のものを受け取ることを内容とする契約のことです(民法第587条

代替可能なものを貸し借りすることが消費貸借契約であり、その中でも金銭を貸し借りすることを「金銭消費貸借契約」と呼びます。

金銭の貸し借りにおいては、紙幣や硬貨といった現物に意味があるのではなく、額面に意味があります。

借主が返還する際には、貸主から受け取ったお金を現物で返還するのではなく、同額の金銭を返還することになるからです。

現物の受け渡しに意味がある貸し借りは、賃貸借契約(賃料が発生する場合)または使用貸借契約(賃料が発生しない場合)というように、別の契約となります。

なお、金銭消費貸借契約において利息の受け渡しは本質的な要素ではなく、当事者の合意によって自由に決めることができます(利息制限法や出資法による上限規制はあります)。無利息でのお金の貸し借りも、金銭消費貸借契約に当たります。

(2)金銭消費貸借契約書の種類

金銭消費貸借契約を結ぶ際に作成するのが「金銭消費貸借契約書」ですが、作成する場面やタイミングよって、主に3種類のものがあります。

以下で、それぞれについて解説します。

①通常の金銭消費貸借契約書

通常の金銭消費貸借契約書は、金銭消費貸借契約を結ぶのと同時または間近な時期に作成するものです。

お金の受け渡しを行った後に契約書が作成される場合もあります。

ですが、できる限り事前に契約書を作成し、双方が内容を確認して署名・押印をした上でお金を受け渡す方が安全といえるでしょう。

「借用書」は、通常の金銭消費貸借契約書を指すこともありますが、借主のみが署名・押印して貸主に差し入れる念書のことを指す場合もあります。

念書にも法的効力が認められるので、記載された内容のとおりに貸主は返済を請求でき、借主は返済義務を負います。

債権債務の内容をお互いに確認するためには、契約書を作成する方が安全であるといえるでしょう。

②債務承認弁済契約書

債務承認弁済契約書とは、当事者の一方が相手に対して債務を負うことを認め、支払額や支払方法に関する合意内容を記載する契約書のことです。

  • 既にお金の貸し借りをしていて金銭消費貸借契約書を作成していなかった場合
  • 当初の金銭消費貸借契約書に記載された内容(返済額や返済方法、利率など)を変更する場合

などに用いられます。

債務承認弁済契約書を作成する際には、債務の内容を具体的に特定することが重要です。

いつどのような理由で、いくらの債務が発生したかを特定して記載しなければ、「どの事実に対する債権債務か」が不明確となり、トラブルが発生する可能性があるからです。

お金の貸し借りの場合なら、いつ誰が誰からいくらを借りて、契約時点での残債務額がいくらであるのかを明記する必要があります。

③準消費貸借契約書

準消費貸借契約書は、金銭等を支払う義務を一方当事者が負っている場合に、その支払い義務を金銭消費貸借に置き換えた契約書となります。

このような契約を「準消費貸借契約」といいますが(民法第588条)、元の契約が消費貸借契約であっても準消費貸借契約とすることもできます。

準消費貸借契約書を作成する際も、既存の債権債務について、いつどのような理由で、いくらの債権債務が発生し、契約時点での残債務額がいくらかを特定することが重要です。

2、お金の貸し借りで金銭消費貸借契約書を作成しないとどうなる?

お金の貸し借りをしたときに金銭消費貸借契約書を作成しなければ、どのような不利益があるのかが気になる方は多いことでしょう。

この点について、以下で詳しく解説します。

(1)書面がなくても契約は有効

日本の法律では、口約束だけでも契約は原則有効に成立します。

お金の貸し借りでいえば、当事者間で貸し借りする金額を決め、借主が後に同額を返還することを約束し、お金の受け渡しが行われることによって金銭消費貸借契約が成立します。

契約書がなくても、貸主は法律上の返還請求権を有し、借主は法律上の返還義務を負うのです。

(2)証拠がなければ請求できないことも

とはいえ、口頭の合意だけ契約が有効に成立するといっても、金銭消費貸借契約書を作成しておかないと証拠が残らず、当事者の認識に齟齬が生じ、後日の紛争となる可能性が高まります。

借主から後になって「そんなお金は借りてない」「あのお金はもらったものだ」等と主張されると、お金を貸した事実を証明しなければ、返還請求が事実上、困難となります。

借主としても、実際に借りた金額や合意した利率よりも高い元金や利息を請求された場合、契約書がなければ借入額や合意内容を証明することは難しいでしょう。

これらのトラブルを防止するためには、金銭消費貸借契約書を作成して契約内容を証拠化し、取り交わしておくことが有効なのです。

(3)裁判を起こすためにも証拠が必要

貸主としては、借主が返済期限までにお金を返してくれなければ、裁判を起こさなければならないことがあります。

しかし、裁判では証拠の裏付けのない貸付に関する主張は、相手が自主的に認めない限り、事実として認定されません

この場合、お金を貸した事実を契約書以外の証拠で立証できればよいですが、立証できる証拠がなければ裁判を起こしても契約が認定されず、貸主としては、金銭消費貸借契約書を作成していなかったばかりに、最終的にお金を返してもらえなくなるという結末を迎えることもあるのです。

(4)相手の実家や職場への取り立ては要注意

借主本人がお金を返してくれない場合、相手の実家や職場へ電話をしたり、督促状を送ったりすることも考えられますが、借金をしているというプライベートな事実を、相手の家族や職場の人に対してことさらに告げると、名誉毀損罪(刑法第230条1項)に問われるおそれがあります。

第三者に「お金を返すように本人に伝えてほしい」と依頼する場合も、発言内容等に注意しなければ、脅迫罪(同法第222条)や強要罪(同法第223条)などに問われるおそれがあります。

このような事態とならないように金銭消費貸借契約書を作成しなかったために返還請求に困った場合は、改めて、平穏な話し合いを行ったうえで、可能であれば、債務承認弁済契約書等を作成して、本人に対する法的手続きをとる方が得策でしょう。

借主の経済状況からして返済が見込めない場合には、相殺や債権譲渡などの手段を活用して債権回収を図ることも考えられます。

3、金銭消費貸借契約書の条項と記載方法【テンプレート付】

特に貸主にとって、金銭消費貸借契約書を作成することの重要性はお分かりいただけたことでしょう。

そこで次に、金銭消費貸借契約書の作成方法を解説します。

(1)無料テンプレートのダウンロード

金銭消費貸借契約書は比較的定型的な書面ですので、作成する際はテンプレートを利用すると便利です。

こちらのリンクから一般的な金銭消費貸借契約書のテンプレートを無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

金銭消費貸借契約書 テンプレート

(2)必要な条項と記載方法

金銭消費貸借契約書には、最低限、以下の条項を記載しなければなりません。

  • 借入(貸付)金額
  • 返済する旨の約束
  • 実際に借入(貸付)金を受け渡したことの確認

これらの事項は金銭消費貸借契約の成立要件ですので、1つでも記載が欠けると訴訟において金銭消費貸借が成立していないと判断される可能性があります。

以下では、一般的に金銭消費貸借契約書に記載される条項について、記載方法を説明します。

①借入(貸付)金額

いくらの金額を貸し借りするのかを、1円単位まで正確に記載します。

②返済期日

一括払いの場合は、返済期限とする年月日を記載します。

分割払いの場合は、テンプレートのように、何年何月から何年何月まで、毎月何日までに、いくらずつを支払うのかを特定して記載しましょう。

③返済方法

持参払いとするのか、銀行口座への振り込みとするのかを記載します。振り込みの場合は、振込先口座も記載するのが一般的です。

その他の方法で支払うこととする場合には、具体的な方法を記載する必要があります。

④利息

利息を付する場合には、利率を特定して記載します。

個人間の金銭貸借には利息制限法の適用はありませんが、出資法で上限金利が年109.5%と定められていることにご注意ください。

⑤遅延損害金

遅延損害金を付する場合には、その利率と、いつから遅延損害金が加算されるのかを特定して記載します。

通常、借主が返済を怠った期日の翌日から加算されます。

⑥期限の利益喪失

分割払いとする場合は、期限の利益喪失条項を記載することが一般的です。

多くの場合、借主が返済を2回以上怠った場合に、残債務(遅延損害金の約定をした場合は遅延損害金も付して)を一括で返済すべき旨を記載します。

⑦連帯保証

テンプレートには記載していませんが、連帯保証人を付ける場合には、その住所・氏名、および連帯保証人が借主と連帯して返済義務を負う旨を記載します。

4、金銭消費貸借契約書は公正証書で作成するのがおすすめ

金銭消費貸借契約書を作成する際は、公正証書にしておくことをおすすめします。

そうすることで、債権を回収できる確実性を大きく高めることができるためです。

本章では、公正証書とはどのようなものか、作成するにはどうすればよいのか、費用はどれくらいかかるのかについて解説します。

(1)公正証書とは

公正証書とは、法務大臣から任命された公証人が公証人法に従って作成する公文書のことです。

公正に作成された文書ですので証明力が高い上に、「強制執行認諾文言」を付しておけば、裁判をせずに強制執行を申し立て、相手の財産を差し押さえて債権回収が可能となります。

厳格な作成手続きを経て効力の強い書面を作成することで、相手が「約束どおりに支払わなければ大変なことになる」と考え、自主的に返済に努めてくれる効果も期待できます。

(2)公正証書を作成する手順

公正証書を作成する前提として、金銭消費貸借契約の内容を当事者間の協議で決めておくことが必要です。

公証人は正確な書面を作成してくれますが、契約内容の妥当性に関するアドバイスはしてくれません。

前記「3」(2)の解説とテンプレートの内容を参考にして、不利・不足のない契約内容を予め決めておきましょう。

契約内容が決まったら、いったん金銭消費貸借契約書の形で記載します。

これは公正証書の下書きとなるものですので、完璧な文言でなくても構いません。

契約内容に、不利な点や不足する条項がないかを再確認しながら記載してみましょう。

次に、公証役場の予約をとります。最寄りの公証役場へ電話やメールで連絡すれば予約をとることができます。

予約後、公証人から下書きがあれば送るように指示されますので、下書きとして作成した金銭消費貸借契約書をメールか郵便で送ります。

公証人が下書きを確認した後、面談による打ち合わせが行われるのが一般的です。

この打ち合わせで公正証書の文面の素案が固められ、内容に間違いないか確認を求められます。「強制執行認諾文言」が付されているかを忘れずに確認してください。

この確認は、当事者が意図したとおりの文面になっているかを確認するだけであり、契約の有利・不利についてアドバイスしてもらえるものではないことにご注意ください。

文面が固まったら、当事者が出頭する日時が指定されますので、その日時に当事者双方が出頭することになります。

当事者双方は内容に間違いないかを確認した上で署名・押印し、続いて公証人も署名・押印します。これで公正証書は完成です。

完成した公正証書の原本は公証役場に保管され、債権者には正本、債務者には謄本が交付されます。

(3)公正証書の作成にかかる費用

金銭消費貸借契約書を公正証書で作成する際には、公証役場へ納める手数料と、完成した公正証書に貼付する印紙代が必要となります。

①手数料

手数料の金額は、目的価額に応じて以下の表のとおり決められています。

目的価額とは、金銭消費貸借契約においては借入(貸付)額のことです。

目的価額

手数料額

100万円以下

5,000円

100万円超~200万円以下  

7,000円

200万円超~500万円以下  

1万1,000円

 500万円超~1,000万円以下 

1万7,000円

1,000万円超~3,000万円以下

2万3,000円

3,000万円超~5,000万円以下

2万9,000円

5,000万円超~1億円以下

4万3,000円

当事者のどちらが手数料を負担すべきかについて、法律上の決まりはありません。

貸金業者からの借金の場合は借主負担とされるのが一般的ですが、個人間の借金の場合は話し合って決めておく必要があります。

手数料は、公正証書の正本・謄本が交付される際に現金で支払います。

②印紙代

金銭消費貸借契約書の公正証書には、原本に印紙を貼付する必要があります。

印紙の金額は、記載された契約金額に応じて以下のとおり定められています。

記載された契約金額

印紙代

1万円未満           

0円

10万円以下          

200円

10万円超~50万円以下    

400円

 50万円超~100万円以下   

1,000円

 100万円超~500万円以下  

 2,000円

 500万円超~1,000万円以下 

1万円

1,000万円超~5,000万円以下

2万円

 5,000万円超~1億円以下   

6万円

5、金銭消費貸借契約書の作成は弁護士に依頼~そのメリットとは?

金銭消費貸借契約書は当事者だけでも作成できますが、失敗しないためには弁護士に依頼することをおすすめします。そのメリットは以下のとおりです。

(1)正確な契約書を作成できる

契約書は法律に関わる書面であり、使用する文言や言い回しによって法律上の意味・内容が変わってしまうことがあります。

場合によっては、気付かないうちに不利な契約書を作成してしまうことにもなりかねません。

必要な条項が不足すると、契約が成立していないと判断されてる可能性があります。

弁護士に文面を作成してもらえば、当事者が意図したとおりの内容で、有効な契約書を正確に作成することができます。

(2)契約内容に争いがあるときは交渉してもらえる

弁護士は公証人とは異なり依頼者の味方ですので、契約書の作成にあたって、できる限り契約内容が有利となるようにアドバイスしてくれます。

契約内容について相手と争いがある場合には、弁護士が代理人として相手と交渉してくれますので、有利な契約書の作成が期待できるでしょう。

(3)公正証書の作成も代行してもらえる

公正証書の作成手続きは慣れていなければ面倒に感じるものですので、「やめておこう」ということになりがちかと思われます。

しかし、弁護士がついていれば公正証書の作成まで代行してもらえます。ご自身で面倒な手間をかけることなく、公正証書の作成が可能となるのです。

(4)借主が返済しないときの対処法も相談できる

金銭消費貸借契約書を適正に作成したとしても、借主が約束どおりに返済してくれないことはよくあります。

そんなときは、借主に催促して交渉し、それでも返済してもらえなければ強制執行を申し立てなければなりません。

公正証書を作成していない場合には、支払督促の申し立てまたは訴訟の提起も必要となります。

これらの対応には専門的な知識とノウハウが要求されますので、弁護士に相談することが得策です。依頼すれば、すべての手続きを代行してもらえます。

契約書の作成段階から弁護士に依頼していれば、借主が返済してくれない場合にも、よりスムーズに対応してもらえるはずです。

結果として、円滑な債権回収が期待できます。

まとめ

金銭消費貸借契約書は定型的な書面ですので、テンプレートを参考にして記載すれば、一応の形式を整えることはそれほど難しくありません。

ただ、債権回収の確実性を高めるためには、契約内容や文言の言い回しを法的観点から精査することが不可欠で、公正証書にしておくことも重要です。

金銭消費貸借契約書の作成で分からないことや困ったことがあれば、気軽に弁護士に相談してみましょう。

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