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不同意性交等罪とは?強制性交との違いや処罰範囲の問題点について解説

従来、相手の同意なく性交等をした者は強制性交等罪や準強制性交等罪として処罰されていましたが、性犯罪に関する法律の規定が見直され、2023年7月13日から施行された改正刑法において犯罪の成立要件が幅広く具体化されたことにより、処罰範囲が広がったことに注意が必要です。
今回は、
  • 不同意性交等罪とは、どのような犯罪なのか
  • 不同意性交等罪と、かつての強制性交等罪や強姦罪とはどのように違うのか
  • 万が一、不同意性交等罪で訴えられた場合はどうすればよいのか
などについてわかりやすく解説します。

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1、不同意性交等罪とは

不同意性交等罪とは、被害者が拒否できないか、拒否しにくい状態で性交等を行う犯罪のことであり、行為者は5年以上の有期(最長20年)の拘禁刑に処せられます(刑法177条)。
まずは、不同意性交等罪の構成要件や刑罰についてご説明します。

(1)不同意性交等罪の構成要件

構成要件とは、何をすれば犯罪が成立するのかを示した要件のことです。
不同意性交等罪の構成要件に関して、刑法177条で以下の①から③の類型が定められており、これを前提に性交等(④)を行うことで同罪がせいりつするとされています。

①   同意しない意思を形成し、表明し、若しくは全うすることが困難な状態にさせること、あるいは相手がそのような状態にあることに乗じること

1つめの類型は、次の8つの行為や事由またはこれらに類する行為や事由を原因として、相手を「同意しない意思を形成し、表明し、若しくは全うすることが困難な状態にさせること、あるいは相手がそのような状態にあ
ることに乗じ」て、性交等をすることです(刑法177条1項)。

 

 

 行為・事由       

わかりやすくいうと               

 ①

 

暴行・脅迫

 

 

身体に向けられた不法な有形力の行使や、畏怖させるような害悪の告知により、相手の抵抗を抑圧すること。

 ②

 

心身の障害

 

身体障害、知的障害、発達障害、精神障害などで、一時的なものも含む。

 ③

 

 

アルコールや薬物の影響

 

 

お酒や薬物を飲ませたり使用させたりすること。薬物は覚せい剤や大麻などの違法薬物に限らず、合法な薬物も含まれる。

 ④

 

 

睡眠中などで意識不明瞭な状態

 

睡眠やその他の原因で意識が失われていたり、意識がもうろうとしたりなど、意識がはっきりしない状態にさせること、またはその状態にあること。

 ⑤

 

 

不意打ち

 

 

性交等がされようとしていることに気付いてから、性交等をされるまでの間に、行為に応じるかどうかを自由意思で決定する時間的なゆとりがない場合。

 ⑥

 

 

フリーズ

 

 

相手の予想を超える事態に直面して恐怖や驚愕、動揺などにより精神的な平成を失った状態にさせること、またはその状態にさせること

 ⑦

 

虐待

 

虐待を受けて無力感を抱いている状態や、虐待を目の当たりにして恐怖心を抱いている状態など。

 ⑧

 

 

 

立場による影響力

 

 

金銭その他の財産に関する経済的な力関係や、家庭・会社・学校など社会的な力関係を背景として、弱い立場にある者が強い立場にある者の要求を拒めば、自分や親族等に不利益が及ぶことを不安に思うこと。

性交等に同意しない意思を「形成」するとは、ノーと思うことです。
「表明」するとは、相手に対してノーと伝えることです。
「全う」するとは、ノーと伝えた上で実際に拒否することです。

相手が意識を失っているうちに性交等をしたり、相手の意思に反して無理やりに性交等をした場合はもちろんのこと、相手がノーと言いたくても言えない状態で性交等をした場合にも不同意性交等罪が成立することに注意が必要です。

②   わいせつな行為ではないと誤信させたり、人違いをさせること又は相手方がそのような誤信をしていることに乗じること

2つめの類型は、「わいせつな行為ではないと誤信させたり、人違いをさせること又は相手方がそのような誤信をしていることに乗じ」て、性交等を行うことです(刑法177条2項)。
「わいせつな行為ではないと誤信」させるとは、外形的には性交等を行うものの、性的な意味合いで行うものではないと信じ込ませることです。
例えば、宗教的な儀式であると信じ込ませたり、妊娠を望む女性に対して精子提供のためであると偽って性交等を行うようなケースが挙げられます。
「人違いをさせること」とは、被害者が同意している相手になりすまして性交等をすることです。
例えば、睡眠中の女性宅に忍び込んで夫と誤信させたり、被害者にアイマスクを装着させて行為者が途中ですり替わって性交等をするようなケースが挙げられます。
これらのケースでは、被害者が性交等そのものには同意していても、真実を知れば同意しなかったはずであることから、不同意性交等罪の一類型として位置づけられています。
従来は準強制性交等罪(さらに以前は準強姦罪)で処罰されていた類型ですが、今回の法改正で条文に構成要件が明記されました。
ただし、処罰範囲には特に変更がないと考えられます。

③  相手が13歳未満の子どもである場合、又は、相手が13歳以上16歳未満の子どもで、行為者が5歳以上年長である場合

3つめの類型は、「16歳未満の子ども」と性交等をすることです。ただし、被害者が「13歳以上16歳未満の子ども」である場合は、行為者が5歳以上年長である場合に限り、不同意性交等罪が成立することとされています(刑法177条3項)。
被害者の年齢が低い場合には性交等に関する判断を適切に行う能力が低いと考えられるため、13歳未満の子どもと性交等をした場合は、それだけで不同意性交等罪が成立します。
この点は、かつての強制性交等罪や強姦罪と同じです。
しかし、今回の法改正ではさらに、13歳以上16歳未満の子どもとの性交等について、行為者が被害者より5歳以上年長である場合には不同意性交等罪が成立するとされました。
例えば、15歳の子どもと性交等をした場合、行為者が19歳までであれば不同意性交等罪は成立せず、20歳以上であれば不同意性交等罪が成立することになります。
この改正は、性交同意年齢が16歳に引き上げる一方で、同世代間の恋愛などで自由な意思決定による性的な交流を処罰の対象から除外したものといえます。

④  性交等をしたこと

不同意わいせつ罪が成立するには、これら①から③のいずれかの類型に該当する状態で性交等をしたことが必要です。
性交等には、性交そのものの他に、肛門性交と口腔性交、さらには膣または肛門へ陰茎を除く身体の一部や物を挿入する行為が含まれます(刑法177条1項)。
このうち、膣または肛門へ陰茎を除く身体の一部や物を挿入する行為については、以前は強制わいせつ罪として処罰されていました。
しかし、今回の法改正では不同意性交等罪に該当することとされ、重罰化されたことに注意が必要です。

(2)不同意性交等罪と強姦との違い

不同意性交等罪と、かつての強姦罪との違いを簡単にいえば、強姦罪が無理やりに性交をする犯罪であったのに対して、不同意性交等罪は被害者の同意なしに性交等をする犯罪であることです。
強姦罪の内容は、2017年7月12日まで施行されていた旧刑法で次のように定められていました。

 

第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦(かん)淫(いん)した者
は,強姦の罪とし,三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も,
同様とする。
引用元:法務省|参照条文
強姦罪と現在の不同意性交等罪の主な違いは、以下のとおりです。

 

 強姦罪             

 不同意性交等罪         

 手段 

 

暴行または脅迫を用いて相手の抵抗を抑圧すること

暴行・脅迫を用いる場合に限らず、相手の同意を得ないこと

 行為 

 

 

性交のみ

 

 

性交の他に、肛門性交と口腔性交、さらには膣または肛門へ陰茎を除く身体の一部や物を挿入する行為が含まれる

被害者

女性のみ

女性だけでなく、男性も含まれる

このように、不同意性交等罪が新設された現在では、かつての強姦罪よりも処罰範囲が広がっています。

2、不同意性交等罪と強制性交との違いと改正内容

かつての強姦罪は、2017年7月13日から施行された刑法で強制性交等罪に変更され、さらに2023年7月13日から施行された現行刑法で不同意性交等罪に変更されました。
ここでは、不同意性交等罪と強制性交等罪の違いと、今回の法改正の内容を解説します。

(1)① 性交同意年齢の変化

強制性交等罪では、13歳未満の者と性交等をした場合は同意があっても処罰対象とされていました。
このように、同意があっても処罰される年齢を性交同意年齢といいます。
不同意性交等罪では、それに加えて、13歳以上16歳未満の者と性交等をした場合についても、行為者が5歳以上年長の場合も処罰対象に含まれました。
この改正が行われた背景として、近年ではSNSやゲームアプリなどインターネットを通じて見知らぬ人と出会うことが容易となり、中学生など低年齢の男女が性被害に遭うケースが増加したという事情があると考えられています。
「行為者が5歳以上年長の場合」という要件が規定されたのは、簡単にいうと、大人こと子どもでは対等な関係とはいえず、子どもが大人に対して有効な同意をすることはできないと考えられるからです。
したがって、大学生が中学生と性交等をした場合は、同意があったとしても処罰対象となります。
しかし、高校生と中学生や、中学生同士が交際中に性交等をした場合は、状況にもよりますが基本的には処罰されません。

(2)② 暴行や脅迫以外の事例も処罰対象となったこと

強制性交等罪では、暴行または脅迫を用いて相手の抵抗を抑圧し、性交等をした場合のみが処罰対象とされていました。
不同意性交等罪では、暴行・脅迫に加えて、以下の7つの行為や事由を原因として性交等に同意しない意思を形成し、表明し、もしくは全うすることが困難な状態にさせ、またはその状態にあることに乗じて性交等をした場合は、相手の抵抗が抑圧されていなくても処罰対象とされました。
  • 心身の障害
  • アルコールや薬物の影響
  • 睡眠中などで意識不明瞭な状態
  • 不意打ち
  • フリーズ
  • 虐待
  • 立場による影響力
この改正が行われた理由は、断りたくても断れない状況や、そもそも抵抗できない状況で、被害者の意思に反して性交等が行われたケースも処罰しなければ、被害者を十分に保護できないと考えられたからです。
そのため、不同意性交等罪では、被害者の有効な同意がないと考えられるケースが広く処罰対象とされました。

(3)③ 公訴時効期間の延長

今回の刑法改正に伴い、刑事訴訟法の公訴時効期間に関する規定も改正され、2023年6月23日から施行されました。
具体的には、強制性交等罪の公訴時効期間は10年でしたが、不同意性交等罪の公訴時効期間は15年に延長されました(刑事訴訟法250条3項2号)。
また、被害者が18歳未満の場合は、犯罪行為が終わったときから被害者が18歳未満になるまでの期間が時効期間に加算されます。
つまり、被害者が33歳になるまで公訴時効は成立しません。
この改正が行われた理由は、性被害に遭っても羞恥心や自責の思いを抱えたり、報復を恐れたりして被害を訴えるまでに長い年月を要するケースも多いことから、従来の10年という公訴時効期間は短いと考えられたからです。
特に、18歳未満の年少者が性被害に遭った場合には、行為の意味や重大な被害に遭ったことを理解するまでにも時間を要します。
このような考慮により、改正法では時間がかかっても被害者が被害を申告できるように、公訴時効期間が延長されたのです。

(4)④ 拘禁刑の導入

有罪となった場合の刑罰について、強制性交等罪では5年以上の有期「懲役」とされていましたが、不同意性交等罪では5年以上の有期「拘禁刑)が導入されました。
拘禁刑とは、受刑者を刑務所等の刑事施設に収容して、改善更生を図るために必要な刑務作業を課したり、指導をしたりする刑罰のことです。
従来の懲役刑と禁錮刑を一本化して創設された刑罰であり、受刑者は必ずしも刑務作業を課せられるわけではありません。
これまでの懲役刑とは異なり、受刑者それぞれの特性に合った指導などの処遇が行われます。
この改正が行われた理由は、性犯罪の加害者は服役した後も性犯罪を繰り返すケースが多いことから、再犯を防止するためには従来の懲役刑よりも改善更生の効果が高い刑罰を導入する必要性が高いと考えられたからです。
拘禁刑の導入は性犯罪を厳罰化するものではありませんが、刑事裁判では加害者にとっても望ましい処遇であると判断され、実刑判決が言い渡される可能性が高まるのではないかという懸念もあります。

3、不同意性交等罪は処罰範囲が広すぎる?

強制性交等罪が不同意性交等罪に変わったことで、処罰範囲が広がったのは事実です。
従来、相手の抵抗を抑圧するほどの暴行や脅迫を伴わない性的行為については、強制わいせつ罪や各都道府県の条例違反など強制性交等罪よりも軽い犯罪による処罰対象とされていました。
しかし、これからは上司と部下など断りにくい関係を悪用したケースや、アルコールの作用を利用したケース、大人が言葉巧みに子どもを誘惑したケースなどで、不同意性交等罪として処罰されるケースが増えてくると考えられます。
ただ、被害者の立場からみれば、真摯な同意のない性交等は許されるものではありません。
相手の意思に反した性交等の強要が法的に許容されることは、あってはならないといえるでしょう。
したがって、不同意性交等罪の処罰範囲は広すぎるわけではなく、適正なものとして捉えるべきです。
とはいえ、実務の運用によっては処罰範囲が広がりすぎるおそれもあるので、万が一、訴えられた場合には弁護士のサポートを受けて冤罪を防止する必要性も出てくるでしょう。

4、不同意性交等罪でよくある質問

不同意性交等罪については、他にも以下のような質問を受けることが多いので、ここでまとめてお答えします。

(1)不同意性交等罪は親告罪ですか?

不同意性交等罪は非親告罪です。かつての強姦罪は親告罪でしたが、強制性交等罪に変わったときから非親告罪になりました。
親告罪とは、被害者側の告訴がなければ検察官が起訴できない刑事事件のことです。
不同意性交等罪は非親告罪なので、告訴がなくても起訴される可能性があります。
かつての強姦罪は被害を公にすることを望まない被害者の意思を尊重して親告罪とされていましたが、本来処罰されるべき悪質な行為が処罰されていないという批判があったことなどから、非親告罪とされたのです。

(2)不同意性交等罪の具体例は何ですか?

不同意性交等罪の具体例としては、様々なものがありますが、注意が必要な具体例として次のようなものが挙げられます。
  • 部下が人事評価などを恐れて断りにくいのをよいことに、上司が性交等を強要した
  • 風俗店の面接で研修という口実で性交等をした
  • 飲酒して相手の気が緩んだ状態で性交等に及んだ
  • DV夫が妻の意思に反して性交等を強要した
  • 大人が13歳以上の中学生と援助交際をした
  • 結婚の約束をして性交等をしたが、約束が虚偽だった
不同意性交等罪は、構成要件として紹介した8つの行為や事由だけでなく、それらに類する行為や事由による場合でも成立する可能性があります。
そのため、相手が本心から同意したといえる場合以外は、不同意性交等罪に該当する可能性があると考える必要があるでしょう。

(3)不同意性交等罪の問題点は?

不同意性交等罪には、冤罪のリスクが高まるという問題点があります。
具体的には、構成要件が類型化されたものの、明確とまではいえない上に、同意があったことを行為者側で証明するのは難しいことから、被害者が「同意していなかった」「拒否できなかった」と言えば有罪とされてしまうおそれがあるのです。
このことから、男性がうかつに女性を誘えなくなり、少子化が加速するのではないかという声も上がっています。
刑事裁判では、行為当時だけでなく前後の状況も考慮して社会通念上、同意があったといえるかどうかが判断されますが、被害者の言い分が尊重されて冤罪が発生するリスクはあると考えられます。
性交等にあたって逐一、相手の明確な同意を得ることは現実的ではないので、相手の意思を慎重に確認して、無理な行為はしないことを心がける必要があるでしょう。

5、万が一訴えられてしまったら弁護士に相談

万が一、不同意性交等罪の被害を訴えられている場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
相談するだけでも、不同意性交等罪に該当するかどうかについてアドバイスが得られます。
不同意性交等罪に該当しないと考えられる場合は、相手方に対する対応、警察や検察との戦い方などについて弁護士からアドバイスを受けるなどして、その後の裁判に備えた的確な準備をすることができます。
不同意性交等罪に該当する場合でも、被害者との示談交渉を弁護士に依頼すれば、刑事事件となる前に解決できたり、逮捕・勾留されたとしても不起訴処分を獲得できる可能性があります。
起訴された場合は、不同意性交等罪に該当しない場合は無罪判決を、該当する場合は執行猶予判決などの軽い判決を目指すことになります。
適切な判決を獲得するためには、刑事事件の実績が豊富な弁護士によるサポートを受けることが重要となります。

まとめ

刑法改正によって不同意性交等罪が新設されたことで、従来の強制性交等罪よりも処罰範囲が拡大されました。
そのため、これまでは問題ないと考えていた行為でも、不同意性交等罪で有罪とされるおそれがあります。
今後は性交等にあたって相手の意思を慎重に確認するとともに、万が一、訴えられてしまった場合はすぐに弁護士にご相談ください。
「この程度の問題で刑務所に行くことはない」などと高を括っていると、有罪の方向で刑事事件の手続きが進められていき、重い刑罰を受けることにもなりかねません。
不同意性交等罪で不安なことがあれば早めに刑事事件の実績が豊富な弁護士に相談し、適切に対処していきましょう。

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