保釈されるには、どうしたら良いのでしょうか?
逮捕で身柄拘束をされ、起訴までされた場合、自由になるための手段が「保釈」です。
保釈の正しい知識をもって、保釈申請していきましょう。
そこで今回は
- 保釈とは何なのか
- 保釈の条件〜保釈金(保釈保証金)について
- 保釈後に気を付けるべきこと
等について、ご説明したいと思います。ご参考になれば幸いです。
刑事裁判について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
目次
1、保釈とは?-逮捕され起訴されたあと、一時的に釈放されること
保釈とは、検察官が起訴した後に、暫定的に釈放することを言います。
釈放されるわけですから、保釈の対象者は、逮捕されて身柄を拘束されていた被疑者(容疑者)です。
そこで、保釈について解説する前に、逮捕から保釈までの身柄の拘束についてご説明します。
(1)逮捕されたらどこで寝泊まりするの?
逮捕から起訴までの流れは以下のとおりです。
①逮捕(最長72時間の拘束)→②(被疑者)勾留(最長20日間の拘束)→③起訴
まず、①の段階では、通常、各所轄の警察署内に設けられている「留置場(正確には留置施設)」に収容されます。
次に②の段階では、裁判官から指定された「留置場」へ収容されます。
指定される留置場は、通常、逮捕直後に収容される「留置場」と同じです。
ですから基本的には③起訴まで「留置場」が変わることはありません。
「留置場」は、鉄格子によって監禁される居住空間であるいわゆる施設ですから、寝起きする場所は、逮捕された人たちが雑居する鉄格子の中ということになります。
なお、上記①から③までの段階で釈放されることはありますが、釈放されるのは身柄を拘束する理由や必要性が無い場合です。
(2)起訴後はどこかに移動するの?
なぜ起訴前は警察署の「留置場」に収容されることが多いのかというと、有罪判決を受けるまでは無罪の推定を受けるため、有罪となった人とは別々に収容する必要がありますし、逮捕直後は取調べなどが活発に行われるため、警察の捜査の便宜を図る必要もあるからです。
しかし、起訴後、警察の捜査が終了した場合、警察署の「留置場」に収容しておく捜査の必要は無くなりますし、警察署の留置場は収容人数が多くないため、他の施設へと身柄を移さなければなりません(これを「移送」といいます)。
移送先は、「拘置所」あるいは拘置所がない場合は拘置支所や刑務所内に設けられた拘置施設に移送されるのが原則となります。
なお、実務上は、起訴後直ちに拘置所に移送されるわけではなく、一定の期間が経過したのちに移送されるという取り扱いが多いといえます。
(3)保釈は起訴後ならいつでも請求できる
ここまででお分かりのように、保釈とは起訴後、つまり、上記③の後に、身柄を拘束し続ける理由や必要性があるにもかかわらず釈放されるための制度のことをいいます。
保釈は起訴直後になされるイメージがありますが、かならずしも、そうとも限りません。
たとえば第一審の終了後や保釈金が用意できたタイミングで請求する場合もありますし、起訴後の捜査の結果、問われている罪名が変わって(例えば殺人罪が過失致死罪に変わる)保釈の要件に該当するようになった場合などがあります。
もしも、家族の保釈を希望するなら弁護人に聞いてみるとよいでしょう。
(4)保釈はいつ終了するの?
判決で刑務所に収監される実刑が言い渡されば、保釈は終了し収容されます。
他にも、保釈中に逃走するなど、保釈の条件に反する行為を行えば保釈は取り消され収容されることになります。
2、保釈してもらうにはどうするの?
(1)保釈請求権者からの請求が必要
事件を管轄する裁判所に対し、書面を提出して請求をしなければなりません。
また、保釈できる場合であることを示す証拠書類も併せて提出する必要があります。
(2)保釈請求権者一覧
保釈請求するといっても誰でもできるわけではありません。
保釈請求できる人は、刑事訴訟法88条1項により以下のとおり決められています。
- 勾留されている被告人
- 弁護人
- 勾留されている被告人の法定代理人(未成年の親権者、未成年後見人、成年後見人など)
- 勾留されている被告人の保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹
ただし、保釈請求するにあたっては、様々な事情を書面で訴える必要があり、そのためには高度な専門的知識・経験が必要です。
通常は、弁護人に依頼した方が無難でしょう。
3、請求すれば保釈してもらえるの?-「保釈条件」と「検察からの異議申立て」とは
裁判所へ保釈請求すると、裁判所(第一回公判前は裁判官)が保釈を許可するか否か判断します。
(1)保釈を許可する基準には2種類ある
刑事訴訟法では、大きく、「権利保釈(刑事訴訟法89条)」と「裁量保釈(刑事訴訟法90条)」の2種類を定めています。
(2)権利保釈の条件
法律上は、保釈を許可することを原則としています。
保釈を許可しない場合を1号から6号に列挙し、許可しない場合に該当しなければ保釈しなければならないことになっています。
1号:被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
2号:被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
3号:被告人が常習として懲役3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
4号:被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
5号:被告人が、被害者その他の事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
6号:被告人の氏名又は住居が分からないとき
(3)裁量保釈の条件
裁量保釈は、上記1号から6号に該当する場合でも、裁判所が諸事情を考慮し、裁量で保釈を許可するというものです。
考慮される事情に限定はありませんが、通常、逃亡、罪証隠滅のおそれの程度、犯罪の性質や情状、被告人の経歴・行状、拘束により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上、訴訟準備上の不利益の程度、訴訟の進行具合等が考慮されます。
(4)検察から異議申立てがなされる場合がある
保釈が許可されたからといって安心はできません。
検察側は、保釈の判断に不服がある場合は異議申し立て(準抗告)をすることができ、それが認められれば保釈を許可する決定はなかったことになるからです。
弁護人から保釈許可の連絡を受けた場合は、併せて検察の異議申し立てがないのかどうかも確認するとよいでしょう。
4、保釈金(保釈保証金)ってなに?
保釈金とは正確には保釈保証金といいます。
(1)保釈保証金の意味
保釈保証金とは、保釈に際して、被告人の逃亡を防止し、裁判への出頭を確保するために裁判所へ納付するお金のことをいいます。
(2)保釈保証金の金額はどうやって決まるの?
保釈保証金の金額は、裁判所が、事件の性質、難易度、被告人の経済状況等を勘案し、被告人の出頭を保証するため必要と考える金額を決定します(刑事訴訟法93条2項)。
(3)貯金がなくて支払えないときはどうすれば良いの?
貯金がなく、決定された保釈金額を支払えないときは、日本保釈支援協会が提供する「保釈保証金立替システム」の利用を検討されてみてはいかがでしょうか?
立替手数料はかかりますが、最高500万円まで援助を受けることができます。
(4)保釈保証金はいつ準備すべき?
保釈を許可されても保釈保証金を納付しなければ釈放されません。
したがって、少なくとも保釈が許可されるまでには準備する必要があります。
まとまったお金の準備には時間がかかるものですから、逮捕された段階から先を見通して準備しておくことも重要です。
(5)保釈保証金は戻ってくるの?
釈放された方が、通常の生活を送っていれば、判決後に戻ってきます。
ここでいう「通常の」とは、保釈許可に当たり裁判所から決められたことを遵守することをいいます。
被告人が逃走するなど保釈の条件に違反する行為があった場合は、保釈が取り消されるとともに、保釈保証金は没収されてしまいます。
5、保釈に向けて家族としてできること
第一に保釈保証金を準備することです。
準備するといっても、誰が負担するのか、ご両親が負担するとして、全額負担するのか、一部負担するのか、ご本人と面会するなどして決めておく必要があります。
次に、釈放された場合の環境を整えておくことです。
釈放された人が被害者や証人を脅さないことや、証拠隠しをしないなどの保釈されるための要件を満たすと判断されやすくするためにも、同居して保釈中に監督する体制を整えることは重要と言えます。
その場合、現在の住まいの契約をどうするのか、仕事、学校はどうするのか、これもご本人と面会するなどして決めておく必要があります。
その他、弁護人から保釈に向けて指示がある場合は基本的に従った方が無難です。
もしも弁護人の指示に疑問点がある場合は弁護人に尋ねましょう。
6、保釈された後に家族として気を付けるべきこと
保釈が許可されると、裁判所から様々な条件が指定されますから、それをご本人が遵守するようきちんと監督することが必要です。
裁判所から指定された条件は、保釈許可決定書という書類にかかれてありますので確認しましょう。
もし、裁判所から指定された条件を守らないと保釈は取り消され、ご本人は再び拘束されてしまいますし、保釈保証金は没収されます。十分気を付けましょう。
まとめ
以上、保釈についてご理解いただけましたでしょうか?
保釈されたからといって、刑罰を科されなくなるわけではありません。
しかし、長い期間留置場等の外に出ることができないことによる肉体的・精神的負担の軽減につながることは間違いないでしょう。
また、保釈中に資格を取得する、仕事をして貯金をするなど、刑罰を科されたあとの社会復帰をスムーズにするための準備もできるのではないでしょうか?
もし、この記事をお読みになられている方で、保釈をご検討中の方がおられましたら、ぜひ参考にしていただければと思います。この記事がそうした方々の一助となれば幸いです。