民法で定められている契約とは?13種類の契約を徹底解説

民法 契約

民法で定められている契約はどんな契約で、それぞれどんな意味があるのでしょうか。

今回は、

  • 契約とは何か?
  • 民法で定められている契約の種類(2020年改正内容も)
  • 民法に規定のない契約
  • 契約と約束の違い

をご紹介していきます。
安心して契約に臨めるように、まずは民法に定められた契約について、理解していきましょう。

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1、民法で定められている契約の前に|契約とは?

(1)契約とは?

契約は、一方の申し込みの意思表示に対して、相手方が承諾の意思表示を示すことで成立します。

契約で生じた権利や義務を遵守しなければ債務不履行となり、強制執行の対象となり、また契約を解除をされたり損害賠償責任を問われる可能性があります。

(2)契約書は必ず必要?

契約は必ずしも書面で行われるものではありません。
スーパーなどで物を買うことも契約です。

契約書を作成するのは、後に紛争が生じる場合に備えて、契約内容について証拠を残しておくためです。

(3)典型契約・非典型契約

民法で規定されている契約のことを典型契約といい、それ以外の契約を非典型契約といいます。
次項から、民法で定められている典型契約について、いくつかご紹介していきましょう。

2、財産権を譲渡する契約 – 契約の種類①

まずは財産権を譲渡する契約についてです。

(1)売買契約

売買契約とは、売る、買う、という合意により所有権を移転する契約です。
日常の買い物から不動産などの大物まで、金額の大小は問いません。

売買契約の特徴として、売主は売ったものに責任をもつという「瑕疵担保責任」(2020年4月以降「契約不適合責任」に変わります)があげられます。
瑕疵担保責任の詳細はこちらをご覧ください。

(2)贈与契約

贈与契約も民法で定められた財産権の譲渡に関する契約です。
贈与とは、財産を無償で第三者に譲り渡す契約のこと。
「プレゼント」がこれにあたります。

贈与契約はお金をあげる、という場面でよく使われます。
相続税対策の「生前贈与」が実務上の典型例でしょう。

贈与は無償で物をもらう契約のため、贈与者には基本的には売買のような責任はありません。

(3)交換契約

交換の契約とは、物々交換のこと。

実務で多く使われる契約ではありませんが、土地の売買において、土地の交換とすると節税効果があるため、相手方から代金を受け取るのではなく別の土地を受け取るとする交換契約にするということも、行われることはあります。

3、貸し借りの契約 – 契約の種類②

次に、典型契約の貸し借りの契約についてご紹介します。

(1)消費貸借契約

消費貸借契約とは、借りた金銭や物は消費してしまい、同額や同等の物を返していく契約のこと。
生活の上では「お金」の貸し借り(キャッシングやローン)でこの契約を使うことが一般的でしょう。

金銭の消費貸借契約では、今はその成立に「お金を引き渡すこと」が必要でした(これを「要物契約」と言います)。
つまり、金銭の貸し付けがないにもかかわらず、金銭消費貸借契約を事前に締結していた場合には、基本的にはその契約は成立していないということになっていたのです。
もっとも、貸し借りの合意をしたにもかかわらず、引き渡しが済んでいないことをいいことに、「契約は成立していないのでやっぱり貸さない」と言われてしまう余地があるという不都合がありました。

2020年4月施行の改正民法では、金銭を引き渡す前の「貸します、借ります」という契約も、書面ですれば成立するという規定になっています。

(2)賃貸借契約

賃貸貸借契約は、住宅、倉庫、衣装、DVDなど、有料で貸す、借りるという契約です。
住宅についての賃貸借は、民法だけでなく借地借家法も適用されることになっています。
改正民法では賃貸借契約に関する条項にも多くの改正点があります。

しかしながら、その大部分が、これまでの裁判での判断結果など、実務上の共通認識を明文化したものです。
そのため、改正によって大きな変化は基本的には生じないと考えていいと思います。

(3)使用貸借契約

使用貸借契約とは、無償で貸す、借りるという契約です。
知人に使っていない家を無償で貸す場合などが、これにあたります。
消費貸借同様、要物契約でしたが、改正民法では物の引き渡しは契約の成立に不要とされました(諾成契約へ)。

その他改正民法では、主に以下の点が改正されます。

  • 目的物を引き渡す前であれば、貸主からいつでも解除ができる(書面による契約をした場合を除く。改正民法593条の2)
  • 目的物引き渡し後も、貸主は解除しやすくなった(改正民法598条1項、2項)
  • 借主はいつでも解除できる(改正民法598条3項)
  • 借主は契約終了時に、原則、原状回復義務を負うとされた(改正民法599条)

4、労務を提供する契約 – 契約の種類③

また、典型契約には労務を提供する契約も存在します。見ていきましょう。

(1)雇用契約

雇用契約とは、給料を支払って労働者を雇う契約です。
一般的な会社員がこの雇用契約に当たると考えてください。
雇用契約は民法で定められていますが、労働基準法や労働契約法でその詳細が定められています。

(2)請負契約

請負契約とは、仕事の成果物に対して対価を支払う契約のこと。
例えば、建物の建築請負契約などのことです。
その他、フリーのプログラマーにプログラミングを依頼し、成果物に対して対価を支払うなどの契約も請負契約といいます。
なお、改正民法では、売買契約と同様、瑕疵担保責任が契約不適合責任へ変更となります。

(3)委任契約・準委任契約

委任契約や準委任契約とは、プロに委任して仕事を任せる契約を指しています。
結果は確約できない契約です。
委任契約は法律行為を、準委任契約とは法律行為以外のことを任せる契約のこと。

例えば、委任契約としては、弁護士に事件の解決を依頼することなどが挙げられます。

準委任契約の例としては、医者に治療を依頼することなどが挙げられます。

いずれもプロが全力で委任事務に取り組むことを内容とする契約になりますが、結果は確約されてはいません。
そのため、結果が望んだものでなかったとしても、直ちに債務不履行責任を追求できるというものではありません。

5、その他の契約 – 契約の種類④

その他の典型契約には以下の4種類の契約があります。

(1)寄託契約

寄託契約とは、物を預かり保管する契約のこと。
身近な例では銀行にお金を預ける契約や、コインロッカーに荷物を預ける契約、さらには友人に物を預けて保管してもらう行為も寄託契約になります。
寄託契約も改正民法で諾成契約になります。

(2)組合契約

組合契約とは組合員全員で組合を作る契約です。
企業の労働組合や商店街の振興組合などがあります。

(3)終身定期金契約

終身定期金契約とは、当事者の一方が、自己や相手方または第三者の死亡に至るまで定期的に金銭や物を相手方または第三者に給付することを約束する契約です。

身近な例では年金制度が相当します。

(4)和解契約

和解契約とは、紛争を譲歩しあって和解する契約のことです。

例えば、解雇された会社員が解雇は不当だと解雇の撤回を申し立てた場合に、会社側は解雇を撤回はせずに退職金を上乗せし300万円支払って合意するなどのこと。
この例では300万円で和解契約が成立したことになります。

6、非典型契約の種類

ここまでは民法に規定がある典型契約の種類についてご紹介しました。

では民法に規定のない非典型契約には例えばどのようなものがあるのでしょうか。

  • リース契約
  • フランチャイズ契約
  • 秘密保持契約
  • 労働者派遣契約
  • 共同研究開発契約
  • ライセンス契約 など

これらは主に新しいビジネスモデルで多く取り交わされる契約です。

民法で規定がないことが特徴ですので、非典型契約を結ぶ際にはより一層契約書に記載された内容が重要になります。

7、契約と約束の違いとは?

(1)契約と約束の違い

契約と約束は違います。何が違うのか。
それは、法的拘束力があるか、ないかです。
相手が違反をしたときに、それが単なる約束であったのでは、泣き寝入りをするしかありません。

しかし、契約となれば、契約の種類によっては、違反をした相手に対して、裁判などを通じて、強制的に契約を履行させたりすることができるのです。
また、相手に直接契約を履行させるだけでなく、様々な手段を通じて、契約の結果等を強制的に実現させることができる場合があります。

(2)強制的に実現させる方法とは

強制的な実現の方法は、

  • 直接強制
  • 代替執行
  • 間接強制

の3つです。

直接強制は、物の引き渡し(金銭の支払いを含む)について行われます。

たとえば、賃貸不動産をなかなか明け渡してくれない場合。
不動産の中に入れなくすることで、強制的に明け渡すことができます。

代替執行は、第三者が代わって目的を達成することができる義務の場合に行われます。

たとえば、土地を更地にして返す義務があるのに、建物を壊そうとしない場合。第三者の業者が取り壊し、その費用を義務者に請求することができます。

間接強制は、間接的に強制するという方法です。

具体的には、「やらなければお金を取ります」と通知するやり方です。
離婚した場合の面会交流などにおいて行われることがあるでしょう。

面会交流させる義務があるにもかかわらず、会わせたくないとして元配偶者に会わせないというようなケースでは、会わせなければお金を取りますと通知し、間接的に強制することができます。

(3)強制的に実現できない義務内容の場合は損害賠償請求

ただ、これらの強制執行によりすべての義務が実現可能なわけではありません。

たとえば、12月24日にケーキを届けて、という契約をしたとして、24日に届かなかったとします。
この場合、もはやバックデートして24日にケーキを届けるとはできないのです。
このような場合は、その分の損害を賠償してもらうことになるでしょう。

(4)契約か約束かは内容次第

このように、約束と契約の違いはありますが、そのどちらになるのかは内容次第です。

権利義務が発生するような内容であれば、約束のつもりであっても、お互いの意思の合致があれば契約として保護されます。

ただし、その事実があったのかどうかが第三者から見てわからないような内容であれば、契約書に残していなければ事実上権利義務の存在が確認できず、保護してもらうことは難しいでしょう。

8、特別法があれば民法に優先する

ここで、民法上規定されているにもかかわらず、その契約を考える際に別の法律をよく使うものもよくあります。

たとえば不動産の賃貸借契約。
民法の規定はあまり使われず、もっぱら借地借家法が使われます。

雇用契約も、上記のとおり、労働基準法や労働契約法等が使われます。
組合契約も、その組合契約の内容に従った細かい法律を使うことが主でしょう。

また、非典型契約に至っては、準ずる内容については民法をベースに考えますが、特別法があればそちらが主に使われます(クレジット契約ならば割賦販売法など)。

民法を「一般法」と呼ぶのに対し、これら民法以外の法律は「特別法」と呼ばれます。
特別法は一般法よりも優先的に適用されるため、契約をする際は、その契約に適用される特別法は何か、を意識しておく必要があります。

9、契約に関するトラブルは弁護士に相談

民法上、または特別法の規定はこうなのに、契約書には違うように規定されている。
このような場合は、基本的に契約書の定めが優先します。
民法の世界では、私的自治の法則といい、個人が自由に決めた内容が優先するとされているからです。

しかし、契約内容をよく見ずに、相手方に言われるがままにサインをしてしまい、トラブルになってしまうケースもあるでしょう。

このような場合は迷わずに弁護士に相談してください。
不当な契約内容であるとして、あなたに不利益のないよう解決できる可能性があります。

まとめ

民法には13種類の典型契約が規定されていますが、もしその契約内容に関係する特別法があれば、特別法が優先して適用されます。契約をする際は、民法とともに、特別法の存在も注意しましょう。

さらに、詳細な契約内容はこれらの法律より優先する場合があります。
そのため、盲目的にサインしてしまった契約で、こんなはずじゃなかったと後悔することもあるでしょう。

このようなときは、迷わず弁護士にご相談ください。
きっとあなたに不利益にならないよう動いてくれるはずです。

2020年4月1日からは、改正民法が施行されました。
これまで明文規定がなかったものも、実情に合わせて明文化されました。
契約については実務上大きな影響はないと考えますが、不明点があればどうぞ弁護士に質問してみてください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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