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同一労働同一賃金が丸分かり!パート・アルバイト編

同一労働同一賃金,パート

本稿では、パート、アルバイト、有期雇用労働者について、

  •  「同一労働同一賃金」の考え方と注意点

 等を解説します。

なお、パート、アルバイト、有期雇用労働者とは、「非正規社員」の中で「会社に直接雇われている人」です。契約社員、嘱託、準社員など会社によって呼び方は様々でしょう。「非正規社員」のうち、現実に働いている先の会社に直接雇われていない「派遣社員」については、こちらの記事で解説をしています。

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1、パートでも「同一労働同一賃金」を求めていいの?

パートでも「同一労働同一賃金」を求めていいの?

「同一労働同一賃金」などと何やらむずかしい言葉。
パートの自分には関係ないとお思いの方も多いのではないでしょうか。
正社員の人と待遇に差をもうけられても当然と感じている方がほとんどかもしれません。

しかし、冒頭でも示した通り、同一労働同一賃金は、まさにパートの方(アルバイト、契約社員等正規社員以外の方)への施策です。

(1)非正規社員と正社員で不合理な待遇差は許されない

あなたがパートは待遇が低くて当たり前、と思う根拠はなんですか?
多くの方は、仕事内容や役割(責任)が違うから、と思うのではないでしょうか。
仕事内容や役割(責任)に応じて待遇が異なることは、この「同一労働同一賃金」でも同じことです。

しかし、よく考えてみてください。
パートは交通費が出ない。これはどう思いますか?
仕事内容や役割(責任)が違うからといって、労働者が自腹を切るべき合理的な理由はないのです。

パートとか有期といった働き方・役割などの違いがあったとしても、正社員との不合理な待遇差は許されません。
待遇差があったとしても、合理的な説明のつく内容でなければならず、働き方や役割などに応じた合理的な内容でなければならない。
それが「同一労働同一賃金」の意味です。

本稿で説明する「基本給」「賞与」は、賃金の待遇の一番の基本です。
基本給も賞与も、会社によりその体系が込み入っていることが多いでしょう。それを解きほぐして考えていく必要があります。

(注)「同一労働同一賃金」という言葉が用いられていますが、実際には「不合理な待遇差解消」という方が適切でしょう。厚生労働省もこの用語を広く用いています。

(2)待遇差が適切かどうかの見極め方イメージ

待遇差が適切かどうかの見極め方の概要イメージは、次の通りです。

もっとも、専門的な内容が含まれており、あなたご自身で判断するのは難しいでしょう。
「会社の説明に納得いかない」といったときには、公的機関への相談や弁護士のアドバイスを得ることをおすすめします。

①誰とどのように比較するのかを考える(「比較対象労働者」)

まず、誰と比較するのかを明確にしなければなりません。
比較対象は、いわゆる正規型の労働者、基本的には無期雇用フルタイム労働者です。
たとえば、あなたの仕事内容がタクシードライバーだとすれば、正社員のタクシードライバーと比べることです。
正社員であっても、内勤の人と比べるべきではありません。
そして、同業務の中でも、配置転換や転勤の可能性がある場合は、それらも考慮することが必要です。

②基本給や賞与の決め方の仕組みを考える

基本給や賞与の決め方には一定の決まりがあるはずです。
基本給で言えば、勤続年数とか職務能力とか様々な要素が組み合わされているでしょう。
それらを分析し、あなたと比較対象労働者の違いが合理的にちゃんと説明できるものかどうかを検討していきます。

2、非正規社員にとって合理的で適切な賃金とはどのようなものか

非正規社員にとって合理的で適切な賃金とはどのようなものか

(1)基本的な考え方は「職務の内容」「人材活用の範囲」の2つ

正社員との賃金差について考える場合、あなたと「①職務の内容」「②職務内容・配置変更の範囲(人材活用の範囲)」が同一の正社員がいるでしょうか。
仮に異なる場合、どの程度の差異でしょうか。

一例を挙げます。

あなたがパートとしてスーパーX 社のA 店のレジ係を担当しており、A 店レジ以外の仕事は現在も将来もしない、という場合を考えてみます。

正社員で同様にA 店のレジ係をしている人がいれば「①職務の内容」は同一です。

その正社員がA 店レジ以外の仕事を今後もしないならば、「②職務内容・配置変更の範囲(人材活用の範囲)」も同一です。
この場合、あなたは当該正社員と同じ待遇になるべきです。
すなわち「均等待遇」です。

ただし、正社員なら、今はレジ係をしているが、これから仕入れなど他の仕事も担当し、将来はフロア長とか店長とかに昇進していく事が期待されているのかもしれません。
A 店以外の別の店に転勤する事もあるでしょう。「②職務内容・配置変更の範囲(人材活用の範囲)」があなたと異なるのです。

この場合、均等待遇(同一の待遇)にするのは逆に不合理です。
とはいえ、著しく合理性を欠いた待遇差を設けるのもおかしいでしょう。バランスの取れた待遇、すなわち均衡待遇にするべきです。

バランスを考えるためには、他の様々な事情も考慮する必要があります。
以上を表で纏めれば、次の通りです。 

通常の労働者との比較結果

①職務の内容

同一

同一

相違あり

相違あり

②人材活用の範囲

同一

相違あり

同一

相異あり

対応

 

③その他の事情

考慮不要

考慮要素として検討

待遇の方法

均等待遇

(差別禁止)

均衡待遇

(不合理な待遇差禁止)

(出典)

不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル~パートタイム有期労働者法への対応~)業界共通編」(以下「点検・検討マニュアル」)28頁に基づいて作成

(このマニュアルは、「業界共通編」のほか、業界別にも作成されています。ポータルサイト「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)」を参照ください。スーパー、食品製造、印刷、自動車部品製造、生活衛生、福祉の各業界について業界の現状の調査結果が添えられています。)

(2)「①職務の内容」「②職務の内容・配置の変更の有無」の具体例

上でご紹介した「点検・検討マニュアル」では、具体例が掲載されています。イメージを掴んでください。

あなたご自身の仕事と、同様の仕事の正社員の方と比較してみていかがでしょうか。あなたなりに、一度判断してみてください。

①職務の内容の比較

(「取組対象労働者」はパート・アルバイト・有期社員、「比較対象労働者」は同様の仕事をしている正社員です。)

職務の内容の比較

②職務の内容・配置の変更の範囲の比較(「人材活用の範囲」の比較)

(出典)「点検・検討マニュアル」33~34頁

3、同一賃金を確認する方法〜基本給・賞与

同一賃金を確認する方法〜基本給・賞与

(1)まず給与明細を確認する

給与明細の「項目」ごとに、比較対象正社員との均等待遇・均衡待遇が図らなければなりません。まずは、次の給与明細のイメージ(薄黄色の部分)を概観してみてください。

本稿では、一番重要な基本給・賞与等を中心に説明します。

(手当については、別記事でまとめております。)

出典

事業主の皆さま、パートタイム労働者・有期雇用労働者の皆さま

パートタイム・有期雇用労働法が施行されます

正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止されます!

(2)会社から説明を受ける

会社は、非正規労働者から求めがあれば、均等待遇・均衡待遇としてふさわしい処遇を行っているかどうかを、ちゃんと説明しなければなりません(パートタイム・有期雇用労働法14条2項、労働者派遣法31条の2第4項)。以下の書面などで説明されます。

正社員は月給制の場合が多いですが、比較をする場合には時給換算で説明することになっています。

(会社の説明の内容の一例)

①相違の内容

同じ販売業務担当者として、基本給は、アルバイトの時給1,100円、比較対象となる正社員(入社3年目程度)は時給換算1,100円から1,400円。

②その理由

正社員には月間ノルマがあり、シフトも会社指定となっているが、アルバイトにはノルマがなく、シフトも希望通りになっている。

すなわち「職務の内容に違いがあり、それに応じて時給単価が違っている」と説明されていることになります。

「点検・検討マニュアル」 

(出典)「点検・検討マニュアル」11頁

4、基本給が適切かどうかを確認するポイント

基本給が適切かどうかを確認するポイント

前述の「①職務の内容」「②職務内容・配置変更の範囲(人材活用の範囲)」について納得ができたとしても、基本給や賞与は、それだけで決まるものではありません。
とりわけ、基本給は様々な要素を考慮して決定されているものです。
厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」では詳細な説明が行われています。

ここでは、一通りの考え方を説明します。
繰り返しですが、会社と交渉するならばぜひ公的機関に相談したり、専門の弁護士のアドバイスを受けたりしてください。

(参考)厚生労働省

同一労働同一賃金ガイドラインの概要

同一労働同一賃金ガイドライン」(全文:厚生労働省告示第430号)

(1)基本給の決定要素を確認する

基本給は概ね次のような要素で決定されます。
これらを組み合わせることが通常であり、会社によって決め方はまちまちです。
この辺も、ぜひ会社の説明を受けてください。

①労働者の能力または経験に応じて支給する(職能給)
②労働者の業績または成果に応じて支給する(成果給・年俸給)
③労働者の勤続年数に応じて支給する(勤続給)

仮に正社員とパート・有期社員との賃金の決定基準やルールの違いがあれば、その違いについて会社はちゃんと説明しなければなりません。
「将来の役割期待が違う。」といった抽象的な説明では許されません。
先に挙げた給与明細書の基本給の部分を再掲します(青色、赤線の部分をご覧ください)。

(2)基本給の決定要素ごとに適切かどうかしっかり説明を受ける

具体例をいくつか挙げます。

①労働者の能力または経験に応じて支給する場合(職能給)

次のような場合はどうでしょうか。

(例)

正社員総合職が、管理職となるためのキャリアコースとして新卒採用後数年間は、店舗にて短時間労働者と同じ定型的な業務に従事している。
当該短時間労働者については、職務内容や配置の変更は行われない。
正社員は、現在の職務にかかわらず、短時間労働者よりも基本給を高く支給している。

これは、将来の「職務内容・配置変更の範囲」(「人材活用の範囲)の相違に応じて基本給の相違が定められているものです。この場合は、問題にはなりません。

前述2、(1)で掲載したスーパーA店のパートの事例がこれに該当するでしょう。

②労働者の業績または成果に応じて支給する場合(成果給・年俸給)

次のような場合はどうでしょうか。

(例1)

短時間労働者も正社員も同様の業務に従事しているが、正社員は生産効率と品質の目標値が定められており、未達の場合には待遇上の不利益が課される。短時間労働者にはそのようなノルマが課されていない。
この見合いに応じて正社員の基本給を短時間労働者よりも高く設定している。

この場合の格差は、不合理とまではいえないでしょう。
前述3、(2)で掲載したアルバイト時給1,100円、3年目正社員時給換算1,400円というのがこれに該当するでしょう。

(例2)

所定労働時間が正社員の半分である短時間労働者について、その販売実績が正社員の販売目標の半分の数値になった場合には、正社員の目標達成の場合の半分の基本給が支給される。

この場合の格差も、不合理とまではいえないでしょう。

③労働者の勤続年数に応じて支給する場合(勤続給)

勤続給とは、支給金額を勤続年数に応じて変化させるものです。以下が例となります。

(例)有期雇用労働者について労働契約の更新を続けており、雇入れから通算した期間に応じて基本給を支給している。
この例の基本給の定め方であれば問題はありません。

(3)昇給について

これについても、勤続により能力が向上した非正規社員については、正社員と同様に能力向上に応じた昇給を行うべきものとされています。
合理的な理由もなく、「非正規社員だから昇給させない」とか、「微々たる昇給にとどめる」ということは許されません。

5、賞与が適切かどうかを確認するポイント

賞与が適切かどうかを確認するポイント

会社業績への貢献に応じて支給するものについては、その貢献に応じて正社員と同一の賞与を支給しなければなりません。
貢献に一定の違いがあれば、その差異に応じた金額の差を設けることは問題ありません。

次のような例は問題になりません。

(例1)

賞与を会社業績への貢献に応じて支給しているので、正社員・非正規社員とも、同じ貢献をした人には同一の支払いをしている。

(例2)

正社員は生産効率と品質の目標値が定められており、未達の場合には待遇上の不利益が課される。
短時間労働者にはそのようなノルマが課されていない。
そのため、正社員には賞与を支給しているが、非正規社員についてはノルマがなく待遇上の不利益がないこととの見合いの範囲内で賞与を支給していない。

6、不合理な待遇差がある具体例

逆に、どのような場合は不合理な待遇差と考えられるのでしょうか。

問題事例を挙げていきます。このような事例は皆さんの身近でも結構見受けられるのではないでしょうか。

(1)基本給の問題事例

①労働者の能力または経験に応じて支給する場合(職能給)

(例)

正社員について非正規社員よりも多くの経験を有するとして基本給を高く設定しているが、正社員のこれまでの経験は、現在の業務と関連性を持っていなかった。

②労働者の業績または成果に応じて支給する場合(成果給・年俸給)

(例)

販売目標を正社員・非正規社員ともに課しているのに、販売目標達成の場合の基本給の上乗せは正社員にだけ行われ、非正規社員には行われていない。

③労働者の勤続年数に応じて支給する場合(勤続給)

(例)

有期雇用労働者が労働契約を更新して勤続しているのに、当初の雇入れ時からの期間を通算せず、現在の労働契約の期間のみで勤続年数を評価して支給している。

上記の例は要するに、契約更新時に一度期間の通算をリセットして、更新時から通算した期間に応じた基本給を支給する形態です。

例えば、1年の有期労働契約を2度更新し、就労期間が通算で3年目となる労働者に対し、3年をベースとせず、更新された最新の雇用契約の期間(1年)をベースとしたような場合は、不合理な格差とされる可能性が高いでしょう。

(2)賞与の問題事例

(例1)

「賞与は会社の業績への貢献に応じて支給する」としながら、正社員にのみ貢献に応じて支給し、非正規社員には支給しない。

(例2)

「賞与は会社の業績への貢献に応じて支給する」としながら、正社員については、職務内容や会社の業績への貢献にかかわらず全員に支給し、非正規社員には支給していない。

別記事の「『同一労働同一賃金』不合理な待遇差の是正が未来を拓く。」でご紹介した大阪医科薬科大学事件が、これに該当するでしょう。
賞与が正社員には支給されていたが、アルバイト職員には全く支給されていなかったものです。
高等裁判所では、正社員の賞与が基本給にのみ連動し、年齢・業績などに連動していなかったもので、就労さえしていれば支払われていたことを重視しました。
そしてアルバイトにも同時期に採用された正社員の支給基準の60%程度の賞与は支給すべきと判断しました。
しかし、最高裁では、賞与がアルバイト職員に支給されなかったのは問題なし、とされました。
大学でのアルバイト職員と教室事務員(正社員)とは職務に様々な差がある、配置転換もある、さらに、正社員への登用制度もある、といった事情を考慮したものです。
しかし、この最高裁判決は、法改正前であって、同一労働同一賃金のガイドラインも適用されないときの判断です。
今後、同様の事態については、賞与不支給はパートタイム・有期雇用労働法違反、ガイドライン違反とされる可能性もあると考えられます。

7、不合理な待遇差がある場合は弁護士へ相談を

不合理な待遇差がある場合は弁護士へ相談を

以上は一通りの考え方を示したものですが、パート、アルバイト、有期契約の社員が内容を理解して会社と交渉するというのは、とてもハードルが高いと思われます。

厚生労働省では、都道府県労働局で相談やあっせんを行うことを勧めています。
これらの公的な機関のサポートを受けることはぜひ検討してください。

しかし、個別に会社と交渉する場合、労働問題に詳しい弁護士に助けを求めるのが一番です。
ご自身の待遇に疑問があるのならば、どうか一度弁護士の知恵を借りてみてください。

まとめ

これまで我が国では、就業人口の4割を占める非正規労働者が待遇の改善のないままに、取り残されてきました。
これは、非正規社員の希望を失わせ、結婚や子育ての妨げにまでなってきています。

それだけではありません。
我が国の生産性が先進諸国において非常に低い理由は、多くの会社が非正規社員の低い待遇に寄りかかって何とか業績を維持してきたということではないか、とさえ考えられています。
合理的・適切な賃金の設定は、労働者のためだけでなく、会社にも大きなインパクトを与え、生産性向上への真摯な取り組みに導くことになるでしょう。

あなたの今日の疑問こそが、この国の未来を切り拓く第一歩となるかもしれません。
この記事をあなたとご家族、職場の仲間のために、あなたの会社のために、ぜひ役立ててください。

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